プロローグ
僕は背が小さい。
高校生にもなって身長は150cm弱。
周りの男子はどんどん見上げるほどに大きくなっていくのはもちろん、女子だって僕より背が高い人の方が多いくらいだ。
牛乳を飲んだ。ぶら下がり健康法だって試した。毎日遅くとも11時には寝るようにしてる。
しかし効果はなかった。
僕のこの低身長はどうやら親譲りらしかった。
らしかった、というのは既に僕の両親は僕が幼いころに他界しているからだ。
僕の育ての親は母さんの妹、つまりは叔母さんだ。
その叔母さんが言うには、僕の父さんはそれは低身長だったそうだ。
その逆で母さんは童顔ながら190を超えるほどの高身長だったらしい。
…どうして僕は母さんから童顔の部分の遺伝子しか引き継げなかったのか。
ともかく、僕のこの低身長は父さんから受け継いだものだという事だ。
父親譲りっていうのが嫌なわけではないけど、如何せん低身長というのは悩みが多い。当然高い所にあるものは取れないし、母さん譲りの童顔も相まって高校生に見られず、電車とか映画館での入場の際には決まって年齢の確認を求められる。
なによりも、好きな女子に告白しようものなら「君は男性というよりは弟みたいなポジションなんだよね」なんて言われる始末だ。
人生で一番勇気を出して告白して、そんでこの言葉が返ってきたらそりゃもう落胆なんてレベルじゃない。気分なんて地の底まで落ち込んだものだ。
それが昨日の話。
そして今日、僕は昨日のショックに打ちひしがれながら登校していた。
せめて170cmあればなぁ…。
そんなことを思いながら僕は、車通りの多い横断歩道の前で立ち止まった。
視線の端では小学生が横断旗を持つ老齢の男性へ元気に挨拶しているのが見える。きっとあの子達もそのうち僕よりも身長が高くなるんだろうな…。
今の僕はそんな日常にすら悲観していた。
その時だ、歩行者用の信号が青に変わったというのに異様なスピードでトラックが走ってくるのに気が付いたのは。
先ほどの小学生たちはそんなことに気が付かず、元気に横断歩道の横断を開始している。
横断旗を持つ男性は迫りくるトラックの異常に気が付いたようで、横断し始めた小学生たちを引き戻していた。
しかし、少し離れたところから横断していた一人の男の子は男性の制止が間に合わず、道路の中ほどまで進んでしまっている。
瞬間、体が勝手に走り出していた。
助けなければ、なんて考えていたわけではなかったと思う。ただ考えるよりも先に体が動いた、という感じだった。
力いっぱい男の子を突き飛ばす。
ドンッと、鈍く重たい音が聞こえた瞬間僕の意識は霧散した。