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女神は不在につき②

仕事に戻ったシルク。

今までよりも、集中力爆上がりで仕事に挑む。


シルクの指示で、各々から情報が伝達される。

聖徳太子よろしくで、多くの情報を一気に処理していく。

通常のスライムでは、パンクする情報量。


しかし、“サカエと観月の情報”を取り込み、ハイレアへと進化した彼女に不可能はなかった。彼女は洞窟にいた当初、三十弱のスライムを配下にして操作していたが、進化後に訪れたこの街では百余りを操作可能になっていた。


三十弱でも、その数にB級冒険者は苦戦するだろう。

百余りとなれば、間違いなく戦闘不能になるだろう。

つまり、シルクは子供の見た目ながら、実力はB級なのだ。

しかも……。


「(シルクの魔力総量が上がってきてるんだよな……。このまま行くと、A級も目指せるかもしれん。)」


「うー……。」



ステータスを最近チェックしていて気付いたのだが、日に日にシルクの魔力総量(魔力量・魔攻・魔防)が上がってきているのだ。


細かい理由は不明だが、予想では主人である俺の魔力が上がったこと、部下が増えたことで経験値が献上される量が増えたことが要因と考えられる。


前にも言った通り、スライム達は基本遺伝子情報が同じのために情報や経験を瞬時に共有できるのだ。


つまり、シルクが分身してそれぞれ経験値を稼ぎ、本体に戻ればそれはシルクが経験したものとして計算されることになる。


なんて、チートな能力……。

経験値倍加どころの話ではない。


そんな彼女にとって、この場にいるスライム十体程度を操作することなど朝飯前のことだろう。


軽い緊張感は見て取れるものの、キャパオーバーになっている様子は全くない。

むしろ、このミッションをゲーム感覚で楽しんでいるようだった……。



「頼むぞ、シルク……。」


「う!」



シルクの身体をキュッと抱きしめ、優しく頭を撫でるとシルクは強く頷く。


シルクはこの時、大変な幸福感に満たされていた。

愛する人に頼られる感覚に胸がドキドキと脈動していた。その実、シルクは仕事に対して緊張などはしていなかった。

いつものように、スライムから受け取った情報を自身の感覚としてトレースし、指示を細かく出していくだけだ。

緊張して見えたのは、背中に感じる温もりに対してだ。

期待を寄せられている。いつも見ていた背中に今日は自身の背中を任せている。

その感覚がとても、幸せだった。


「(好き好き好き好き好き……!)」


もう、幸せの絶頂!指示と共に荒れ狂うシルクの思考と微熱。

その感覚はもちろん……。


ーぷぷん!(姫が幸せそうだ!)

ーぷーん!(頑張るぞ!期待に応えないと!)


スライムたちにも伝達され、結果としてモチベーションを120%引き出すことに繋がった……。


様々な場所に忍び込み、資料を手当り次第に持ち出すスライム。

頭に乗せて運んでいては逆に目立つので、口を開けてバクり。


ーぷぷん……パク!パク!

ーぷん……バク!バク!


資料を丸呑みして持ち去っていく……。

シルクによれば、スライムは自身の意思で口にした物を栄養にするのか、はたまた保管するのか選べるそうだ。しかも、質量に制限は無いとのこと。アイテムバックと同じ効果があの口の中には広がっているらしい。あっという間に本棚は空っぽにされていく。



「う、うー……?」


「大丈夫。全部、持ってきていいよ。全部の資料をかっさらって来て。隠し部屋もあるようなら、その中も全部やっちゃえ!」


「うっ!」



シルクもさすがに、これはまずいか?と思い俺に指示を仰ぐが、俺はむしろそれを狙ってやっているので、ドンドンやるように指示を出した。

数分後、全ての資料が教会から姿を消した。


皆の負担も考えて、一旦、戻ってきて貰うことにする。たくさんの本や資料を回収し、自身のバックに収めていくとスライムたちの口にオヤツとなるモンスターの燻製肉を放り込んでいく。



「あとは、これを持ち帰って中身を調べるだけだね?」



バックを持って、観月は満足気に頷くが俺は首を振ってシルクに向き直る。



「いや、これからさ。シルク、次の任務だ。もう一度、中に潜入してみんなで中の人たちを観察して欲しい。」


「うっ!」



シルクの指示で、スライムたちが再び《ゆりかご》の中へと戻っていく。



「「んー?」」



それを眺めて、観月とハヤーは首を捻った。


スライムたちが、中のシスターたちや神父、司教に張り付いたと連絡が来たのはそれからすぐの事だった。



「よし。そのまま対象を観察してくれ。付かず離れず。擬態を駆使して尾行してくれ。」


「うー……。」


ーぷるん!

ーぷるん!



速やかに俺の言葉はシルクから伝達され、各所のスライムに届けられる。


数分後、施設内が騒がしくなり始める。

礼拝に使う聖書が消えたことに気付いた神父を皮切りに、あらゆる資料が忽然と姿を消したことに気付いた皆が慌て始めたのだ。



「さぁ、みんな集中だ。動き出すぞ!」



その中でも、特に注視するべきは何度も登場している【司教】の動向だろう。


皆に資料の捜索を命じると、自身は皆とは反対の方角に向かって歩み出していた。


長い廊下を抜け、血相を変えて一つの部屋に飛び込むと部屋の中を見回して愕然としていた。



「な、ない……。この部屋の本や資料も一切無くなっている……。何者かが侵入したのか!?ま、まさか、“あの書類”を狙って!?」



慌てた様子で自身の机に駆け寄ると、司教は机の引き出しを調べ始める。



「ない!?ない!?この引き出しに入っていた決裁書が無くなってる……。まずい……。あれが表に出たら、金の動きが丸わかりだ。これが、狙いか?いや、待て!ということは、この書類も狙われたんじゃ!?」



司教はポケットから鍵を取り出すと、引き出しの下にある鍵付きの引き出しを開ける。

中を確認すると、ホッと胸を撫で下ろし静かに息を吐いた。



「良かった……。子供たちの売買記録までは奪われてなかったか……。」


「んん!?売買記録だって?」



ピクリと司教の言葉に反応すると、俺はシルクの肩に手を置いて話しかける。



「シルク!そいつを取り押さえろ!その資料は是が非でも欲しい!」


「うぅ!!」


ーぷるん!!


「え?な、なんだ!?ネバネバとした感触が……。むぐっ!?んん!?」



シルクの指示でスライムは物陰から司教に襲いかかると、素早い動きで司教の口を覆い隠す。


助けを呼ぼうとするがスライムにより口を塞がれ司教は、じたばたと暴れることしかできない。



「暴れさせるな。音で周りに気付かれるぞ。」


「うぅ!」


ーぷるん!


「むぐっ!?うぅー!?」



スライムは頑丈な粘糸を吐き出すと、ギチギチに司教を縛り上げる。繭のようになった司教は手足の自由を完全に奪われ、為す術もなく床に転がされる。司教が動けなくなったことを確認したスライムは隠されていた資料を口に放り込みスルスルと扉の隙間から出ていった。



「んんー!?んんー!」



後には、繭にされた司教の助けを求める呻き声だけが部屋に木霊していた……。



「よし!全員、撤収!」


「うぅ!」


ー ぷるん!



騒ぎに紛れて教会から俺達は息を殺して脱出すると、裏手から回って結構な距離を迂回しながら再び街に戻ることにした。



「ふぅー……。とりあえず、ミッションクリアだな。みんな、お疲れ様。」


「お疲れ様ぁ……。」


「うー……。」


「お疲れ様です……。」


▷▶︎お疲れ様でした……。



自身の宿泊している宿に戻ると、俺たちは肩の荷を下ろし深く息を吐く。


今頃、教会は大変なことになっているだろうな……。


資料や本が無くなった上に、司教が部屋で繭にされてるんだ。


明らかに何者かの侵入を許したことに、皆、大混乱に陥っていることだろう。


部屋を締め切り、ハヤーとスライム達に周囲の警戒を任せる。

俺とシルクと観月、リライアと魅玖、そして肩の上のシルフィは集められた資料に目を向ける。


部屋に設置された机は結構な大きさなのだが、いざ全ての本と書類を並べてみれば、それでも足りないと思うほどだった。


それだけ今回、回収してきた資料が多かったということでもある。


この中に、きっと有力な情報は隠れているのだろうが……何分、慌てていた為に乱雑に放り込んだせいで、積み上がった物は何が何やらという状態だった。


観月は、げんなりした表情で机の上を見ている。



「け、結構な数だよね……。」


「まぁ、教会中の書類や本が集められてるからね。まずは仕分けしないと、なにも始められないな。リライア、お願いできる?」


▷おまかせください。シルクさんの操作能力と私の処理能力を合わせれば、これくらい朝飯前ですよ。


「う!」



シルクはリライアと共に、スライムたちに協力を仰ぎ沢山の資料の山を手分けして選別していく。


ものの五分とかからず、不要な本と資料は分別された。



「残ったのは、たった六つか。」


▷あの教会の歴史が浅いことも関係しているでしょう。ただ、これは貴重な資料ですよ。



資料の一つを手に取ると中を確認する。



「これは、司教が隠してたヤツだな。」


▷この六つとも、司教の部屋から見つかったものです。恐らく、天使のことや美神教(カリテス)の黒い部分を知っているのは司教だけなのでしょう。



「なるほどな。てことは、司教を潰せばとりあえず、あの教会はおしまいってわけか。」


▷そうなりますね。他の教会はまだ見てないので分かりかねますが、今のところ怪しい動きをしているのは司教だけのようです。



皆で中を確認してみれば、出るわ出るわ、悪事の数々。結論から言えば、美神教(カリテス)は真っ黒な組織だった……。



「人に善行を求める宗教がこれとはね。どうやら、あの教会は女神様が不在みたいだ……。」


「じゃあ、不在の女神様に代わって私たちがやるしかないね!」


「あぁ!私欲に塗れた悪い子は、女神に代わって~~お仕置よん♡」



皮肉混じりに呟くと、皆でビシッとポーズを決めた!



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