即攻略を目指しにつき!③
「改めていう!ハーレムに来い!」
「……まだ誘うんですね。驚きの諦めの悪さに苦笑しかありません。まるで、何度倒れても蘇る魔王のようで呆れてしまいます。」
「はは!曲がりなりにも魔王だからな!簡単には諦めないさ。」
「それ以前に、しつこい男は嫌われますよ?」
「何を言う。周りを見てみろ!このしつこさで俺はここまでやってきた!俺の妻たちは、しつこい俺を愛してくれているんだ。」
▷▶︎『 「ばっ!?バカッ!(うー!)」』
結果、四方から殴られた。力がそれほど篭っていないのは、彼女たちの照れ隠しゆえか。
「はは……。お気持ちは嬉しいですが、私はここを動けません。主との約束がありますから。」
「ふむ……。それ、キミの認識でどの辺?」
「ここですよ。ここ。この場所を護れと言われています。」
と、ゴーレムちゃんは自身の真下を指さした。
「床……?ほー。ちょっと見せてもらえる?」
俺はゴーレムちゃんに横に退いて貰うと、彼女の座っていたタイルを見る。
シルクが横になれるほどの石のタイル。
普通の正方形のタイルだ。
だけど確かに、このタイルだけ他のタイルよりも擦れている気がする。たぶん、ここで何度もこの子が身動ぎしたせいだろう。
「ユーちゃん、何する気?」
「んー……。よし、やってみるか。何事もチャレンジ!」
「なんだろう。すごく嫌な予感がする……。」
アイテムバックからハンマーを取り出すと、高々と掲げる。
「【なんちゃって神器:ニョルニョル】~!」
「にょるにょる?何それ、金槌?」
俺が手にしたハンマーを手に俺はニッカリと笑うと、それを見ていてた観月が首を傾げる。
▶︎ニョルニョル?どこかで聞いたことがあるような……。
▷もしかして、マスターの世界に伝わる伝説の武器『ミョルニル』ですか!?いつの間に、そんなもの手に入れたんですか!?
▶︎ミョルニル!?えぇ!?それって、本当の神器じゃないですか!?
「いや、だからこれは“なんちゃって神器”だって。あと、ミョルニルじゃなくて、ニョルニョルだからね。柄に、“にょるにょる”って書いているだけのただの金槌だよ。気分だよ、気分~♪」
▶︎な、なんだ~。偽物ですか……。
▷待ってください。その文字って、誰が書いたんですか?
「え?俺だけど。あんま恥ずかしいから、言わせないでくれよ。若気の至りさ。あははっ!さぁ!やるぞー!せーの!」
▷……待ってください!それって、マスターの世界の字で書かれてるんですよね!?しかも、魔力込めて書かれてますよね!?そんな物、本当の神器と変わりな……
「よいしょー!」
ー バキン!ズドオオォーーン!!!
俺は試しに、その板を割るつもりで叩いてみると、辺り一帯の床が吹っ飛んだ!
凄まじい衝撃と轟音、そして土埃が起こり辺り一面を覆っていく。
「うぉー!?」
「ええぇーー!?」
「ゆ、床があぁー!!?」
「うぅーー!?」
土埃が辺りを舞う中、俺を中心に観月たちが絶叫をあげて逃げ惑うように走り回る。
予想した斜め上の結果に俺はもちろん、ゴーレムちゃんも固まって互いに顔を見合わせる。何が起きたのかと、互いに問い掛け合った。
「え……?なにこれ。俺、そんなに力込めてないぞ?」
「床が……守護対象が粉々に……はあぁ~……!」
ゴーレムちゃんは目の前で粉々に散らばったタイルに視線を落とすと、信じ難い光景に目眩を覚えたのかパタリと倒れた。
▷な、何やってるんですかー!?
「え?いや、だってさ、床が守護対象なんて違和感しかなかったから、きっとこの下に何かあるんだろうと思って、叩き割ろうと思ったんだけど……。んー、脆いな?老朽化してたのかな?」
▷違いますよ!パワーがありすぎたんです!その金槌は“魔王であるマスター”が魔力を込めて加工した道具なんですから、こうなるのは必然ですよ!
「そんな名前を書いたくらいで大袈裟なー。しかも、“にょるにょる”だぞ?間違ってるんだぞ?」
▷大袈裟じゃありません!それだけの力が魔王にはあるって事ですよ!真偽はどうでもいいんです。《魔王が加工した物という事実》だけで十分なんです。もう!変なことする前にこれからは私に相談して下さい!!
「お、おう……すみません。」
激怒するリライアの声が頭に響く!
こんなに怒るリライアは初めてなので、俺もさすがに反省した。(見た目普通の)ハンマーに目を向けると、俺は頭を抱えてがっくりと項垂れる。
「あ、これって……。」
ふと、割れた地面を見ると、板の下に包みがあることに気付く。
中から取り出すと、項垂れるゴーレムちゃんに差し出した。
「これは……?」
「たぶん、それを護ってくれってことだったんじゃないか?開けてみてくれないか?」
「……。」
ゴーレムは俺に促されるように、こくりと頷くと包みを解き中身を確認する。
中にはペンダントが入っていた。
金の装飾に蒼い宝石の嵌められたペンダントだ。
「手紙もあるな。見てもいいか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。一緒に読みましょう……。」
俺たちは首を揃えて、ゴーレムの持つ手紙に目を落とした。
ー 我が娘へ
このペンダントに気付いたということは、もう私がこの世に居ないということだろう。
また、これが残っているということは、結局のところ直接話す勇気がなかったということでもある。本当に申し訳なく思っている。
今頃、お前は研究所に一人取り残されているだろう。
これを見つけたのが、早ければ早いほど嬉しく思う。
お前は周りに魔力がある限り、いくらで強くなるし、いくらでも長生きできる。
壊れても、自己再生で元に戻れる。
ただ一部を除いてだが……。
「ただ一部……?」
「そこには触れていないようです。続きを読みます。」
ー 私は何度もお前が最高傑作だと言っておきながら、最後まで勇者との戦いに投入することはしなかった。
その理由は、一つだ。
全てを注ぎ込んで創り上げたお前を私は兵器や守護者としてではなく、一人の娘として愛してしまったからだ。
娘が傷付く姿も、破壊される姿も見たくなかったのだ。
周りから、研究者として失格だと笑われることだろう。だが、それでも私は娘を危険に晒したくなかった。
だから、ここに隔離したのだ。
時がくればこの研究所の扉は開かれ、ここの存在が明らかになる。
あとはここを開けた者に委ねよう。
お前を殺そうとするなら、倒してここを出て自由に生きなさい。
お前を愛してくれるというのなら、共について行きなさい。
一緒に入っているペンダントは、周りの魔力を吸収し使用者に送る効果がある。
これで、普通に生活する程度は問題ないはずだ。
お前の幸せを心から祈る……。
父 ガブラスより ー
「ということです。今は亡き主様より命令されましたので、仕方ありません。これからお世話になります。」
ゴーレムは手を伸ばすと握手をするように手を伸ばす。
命令だから、か……。
なんか、強制してるみたいで嫌だな。
「無理しなくていいよ?俺と一緒になるのが嫌なら、手紙にも書いてあるように自由にしてもいいんだよ?せっかく、解放されるようになったんだ、俺は止めない。」
「主様の……命令ですので……。」
手を振って握手を断ると、唇を噛み締めてを見上げる。
あれ!?もしかしなくても、すごく睨まれてる!?
そ、そんなに嫌なら、やめた方がいいよ、絶対!
「命令だからって、従う必要はないんだぞ?キミは自由になったんだ。ペンダントがあれば、自由に外も歩き回れるって書いてあるし好きに旅でもしたらいいじゃないか。」
「ちっ……。」
「え!?舌打ち!?」
「この鈍感……もういいです!……ちゅっ!」
「え?むぐっ!?」
▷▶︎『「 あーーっ!? 」』
ゴーレムは俺の胸ぐらを掴むとそのまま強引に口付けを交わしてくる。
柔らかく温かな感触が唇に触れ、俺をさらに驚かせた。
彼女はゴーレムというから、当然、硬くて冷たい唇を想像していたが、その唇はまるで普通の女の子のようだ……。
「ちゅ……はぁ……。」
ゴーレムちゃんは唇を離すとしたり顔で微笑み唇を撫でる。
「主様がこれほどまでに大切にしてくれたこの唇は今、初めてを奪われてしまいました……。この責任は取ってくださいますね?」
「いや、奪われたというより……押し付け……。」
「取ってくださいますよね!?」
「は、はい……。責任、取らせて頂きます……。」
「良かった……。ふふ……!」
強い口調で俺に詰め寄るゴーレムちゃん。
半ば強引に責任を押し付けてくる彼女に、俺は頷くことしかできなかった。
▷互いの共鳴を確認。
隷属契約を結びますか?
毎度おなじみ天の声が二人の頭に届く。
「まぁ、それじゃあ、これからよろしく頼むね。」
「はい!なんなりとお申し付けください。どんな事でもご満足頂けるよう誠心誠意尽くさせて頂きます。ニュー主様。」
服をチョンと摘み、ゴーレムちゃんは恭しくお辞儀をする。とても、先程まで脅迫めいたことを口走っていた女の子とは思えない。
ゴーレムちゃんの身体に光が宿り、俺との間に確かに繋がりを感じる。パスが繋がったか。これで魔力も渡せるし、念話も使えるだろう。
▷隷属が完了しました。
「なんだ、ニュー主様って。」
「今更ながら、名前を存じませんので。」
「そういえば、自己紹介がまだだったね。俺は栄咲遊助。この世全ての女性を幸せにするために旅してるんだ。」
「サカエユースケ様。私は名前がありません。よければ、名前をつけて頂けませんか?」
「キミの創造主はなんと読んでくれてたんだ?」
「“おーい”、“お前”、“なぁ”、“ちょっと”等様々な名前で呼んでいました。」
「それ、名前じゃないから……。」
創造主って、あれかな?結構なおじさんなのかな。まるで、熟年夫婦のような呼び方に俺は思わず苦笑する。
「それじゃあ、名前を決めよう。創造主さんの気持ちも汲んでいい名前にしような。」
「お願いします。」
俺は頭の辞書をペラペラと捲り、ゴーレムの歴史に似合いそうな言葉を探っていく。
「決めた。キミの名前は【ハヤー】だ。」
「| ハヤー(chayah) 《生きる》ですか。たしかに、父の意思にマッチしていますね。ハヤー。それが私の名前。」
ゴーレム娘・ハヤーは胸に手を当てるとにっこりと笑って見せる。なかなか、気に入ってくれたらしい。
▷一段落したところで、 奥の部屋も見ておきたいですね。ハヤーさんの情報もあるかもしれません。
「恐らくあると思います。私の身体のことや能力を示す情報が満載です。まさに、乙女の秘密の部屋。」
案内するようにハヤーは俺の手を取ると、歩みを進める。
「あ……。」
後ろで観月の声が聞こえ、振り返ると複雑な顔を浮かべた彼女は手を胸の前で握りしめ俺たちを見つめていた。
「……観月、おいで!」
「……うん!」
すぐに表情の意味を理解した俺は、少し悲しそうな顔の彼女に手を差し伸べる。
俺の手を見た観月はパァッ!っと明るい表情を取り戻すと俺の手を握り隣に寄り添う。
「なるほど。観月様がハーレムカースト第一位ですね。了解しました。」
「へ?」
反対の手を握っていたハヤーが、腕に抱きついた観月を見て小さく微笑む。
「新参者ですが、どうぞお手柔らかにお願いします。なんなりとお申し付けください、観月様。」
「あ、はい……。」
ぺこりと頭を下げるハヤーに観月は目を丸めると戸惑い気味に頷き返す。
手を引かれる俺に、置いていかれるような寂しさを覚えた彼女だったが、相手のこんな献身的な姿を見せられちゃな。怒るに怒れないか。
まぁだからと言って、観月も命令を好むような性格じゃないし、ハヤーを困らせることもないだろう。
上手くやれるといいけど。
「これから、よろしくな!」
「「わっ!?」」
俺は二人を両手に抱えて抱きしめると俺は二人から離れて、扉の前で待っていたシルクに駆け寄る。
そのまま、抱き抱えて、全力でスリスリ!とそのほのかな胸に顔を埋めた。
「スリスリ攻撃だぁ!」
「うぅ~……!」
くすぐったいのか、シルクは声をあげて笑い出す。じゃれ合う俺たちを見て、観月とハヤーは小さく笑い合うと手を繋いで、足を踏み出した。
「これからよろしくね、ハヤーちゃん。」
「よろしくお願いします、観月様。」
新たなメンバー加入。それでも、今日もハーレムは笑顔だ。
▷地下迷宮探索クエスト クリア!
▶︎ ネクストクエスト《街外れの教会》が解放されました。報告がてら、領主様の元に行き、情報を獲得しましょう!




