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即攻略を目指しにつき!①

「最初に言っておく!今日の俺は、かーなーりー、急いでいる!」



案内地図を手に発見された遺跡の前に辿り着くと、俺はシルフィと観月、そして、シルクに向けて作戦会議を開始早々にそう告げた。



「作戦は分かってるな?今日は最速で、遺跡を制圧する!」


「うん。依頼達成の後に屋敷に行って報告した足で、教会に向かうためだよね。」


「そう。怪しいとされる教会を訪れて、詳しく調査したいんだ。スライムを忍び込ませて、情報を掻っ攫うぞ。」


「近く、乗り込むつもりなんでしょ?」


「あぁ。悪事の証拠を掴み次第、美神教(カリテス)の拠点を破壊していく。場所が分かれば、なんとでもできる。俺の戦闘力なら大天使までは対応できるらしいし、最悪闘うことになってもなんとかなるだろう。」



俺は頷くと、とりあえず今はこちらが先決だと遺跡の入口に向き直った。


地面にぽっかりと空いた穴が街の住民により発見され、地盤調査のために広げて行ったら、遺跡の入口を発見したらしい。


魅玖曰く、土を入口に被せてカモフラージュしていたのだろうとのこと。


中の構造を聞いてみたが、部下の施設までは管理していなかったので詳しいことは分からないそうだ。



「まぁ、索敵ならウチには最強の風使いが居るからね!」


『ふふーん!任せて任せて!』



肩に乗ったシルフィの頭を指先を使って撫でていると、隣の観月が目を細めて俺を見ていた。というか、俺の手の上に注目していた。



「んー。やっぱり見えないなー。そういえば、見えるように調節してくれるじゃなかったっけ?」



魔法図書館(マギアメモリ)を隅々まで検索し、適切な方法を発見しました。


▶︎視覚の共有です。念話のようにパスを繋いで主様の見ている視覚を皆さんの視覚に転送する方法です。


▷認識すること。これにより、結界が解けてパスなしでも触れたり、話ができたりできるようになるはずです。


▷▶︎さぁ!ご覧あれ!これがかの有名な妖精王にして、四大精霊の一柱!風精霊のシルフィさんです!


二人の合図で、俺の手の上に注目する。



『なになに……?何するの?』


「あ……なんだろ。ぼんやりと……見えそうな……。」


「うー?うー……。」



目を擦りこすりしながら、観月とシルクが俺の手の上を見つめている。



「お?見えそうか?よし、シルフィ!はい、ポーズ!」


『え!?あ、うん!……コホン!いえーい!シルフィちゃんでーす!』


~ ジャジャーン♪ ~


「見えたー!!!」

「うー!!!」



シルフィがダブルピースを決めた瞬間だった。

はっきりとシルフィの姿を見た二人が叫びをあげて飛び上がる。



『え?えぇ!?ほんと!?見えた?見えたの?』


「うんうん!見えるよ!シルフィちゃんの声も聞こえるよ!」


「うぅ!う!」


『う、うわあぁーん!やったよー!見える人が増えたよぉ!』



シルフィは感極まって、俺の手を飛び立つと観月とシルクの頬に抱きついた。

それからしばらく、嬉しさを全身で表すように、飛び回ったり触れ合ったり、女の子たちだけでキャッキャウフフのお話しをはじめる。

あー。ちゃんと観月を通して、二人の秘書たちも話に加わっているようだ……。


……あれ?俺なんかぼっちじゃない?


まぁ、仕方ない。女子トークは女の子だけの花園だ。男の俺は大人しくしてるとしよう。


俺は足元に綺麗な花を見つけると、しゃがみこんで指先でくすぐったり葉っぱを撫でたり、魔法で水を与えたりして一人で遊んでいた。


なんだこれ、すっげー寂しい!



「てっきり、シルフィちゃんにハレンチなことしてると思った。」


『あはは……!ハレンチしてくれるならすごく嬉しいけど、このサイズ差じゃ無理があるかなー。ねぇ?ダーリン?』



シルフィはしゃがみこんでいる俺に気付いたのか、話に混ぜようと肩に乗ってくる。


肩に乗って、ナイナイと手を振って苦笑すると、俺の髪を引っ張って皆の輪に入るように促した。



「シルフィ……。」



シルフィは確かに可愛い女の子だが、本人も言う通りサイズが違い過ぎるからな。


30cmフィギアくらいのサイズしかないし、強めに掴んだ日にはポッキリと折れてしまいそうだ。


こわいこわい。



「ハレンチなら、いつかする予定だ。シルフィのサイズを俺たちと変わらない大きさにできる日がきたら、即ハレンチしてみせるさ!」


『ダーリンがそんなこと考えてくれてたなんて!嬉しいよぉー!』



ギュ!と頬に抱きつき、シルフィはキスの雨を降らせる。

さらりとした髪と小さな唇の感触が、とてもくすぐったく感じるが彼女の愛情も伝わってくるので喜んで受け入れた。


ー ギューっ!ちゅ!ちゅ!ちゅ!



「まさか見えないことをいい事に、ずーっと隣でこんなことしてたの?」



あまりに激しくキスをするので少しジェラシーを覚えたのか、観月はジト目で俺の頬に抱きつくシルフィを見る。



「シルフィはちゃんと、TPOは守ってたよな?誰かさんみたいにどこでもキスはしてなかったと思うぞ?」


『うん……。観月ちゃんは、どこでもかんでも、キスし過ぎだよ。どちらかといえば、観月ちゃんの方がハレンチだよ。』


「なっ!?ハ、ハレ……///」



真顔で答える俺たちに、観月は顔を真っ赤に染めると顔を覆い隠して地面に突っ伏してしまう。


その明るい橙色の髪がフワリと地面に広がる。


なんだ、自覚なかったのか?逆に驚いたぞ。



「言っとくけど、こっちの世界に来てから1ヶ月で観月は吹っ切れたのか、キスとかハグとか× × × とか、逐一するようになってるぞ?周りから見たら、俺よりも観月の方がハレンチしてると思われても仕方ないからな?」


「ぐっ!?うぅ……!」



突っ伏していた観月は、グサリ!と痛いところを突かれたのか、胸を押さえて悶える。



「だって……だってぇー。ユーちゃんのことが……自分を抑えきれないくらい 好きなんだもぉ~ん。ぐすん!うぅえぇ……。」



終いにはグズグズと泣き出してしまった。

前なら、照れ隠しにグーパンの一つでも飛んできそうなもんだが、否定もしなくなったのは二人の関係がそれだけ変化したことの現れだろう。



「俺も観月のこと大好きだよ?だけど、TPOは守らないとな。皆の目がないところなら、どれだけでも受け止めるから。」


「ユーちゃぁ~ん!うぅあ~ん!好きぃ!好きぃ~!」



感極まった観月は俺に抱きつくと、嬉しいそうに頬を擦り付け、キスの雨を振らせる。



「それそれ!」


「うーうー!」


『あー。やっぱり、ハレンチだなー。』


「はっ!?うぅ~……!」



いつの間にか俺に跨っていた観月は、ヨダレを垂らして俺の服のボタンを外し始めていた。

慌てて周りがツッコミを入れると、観月は我に返ったのか真っ赤になって再び地面に突っ伏してしまった……。



「はぁ……。なぁ、リライア。これもアスモデウスの〈魅了〉のせいなのか?」


▷そうですね。多少はあると思いますよ。でも、前にも説明した通り、魅了は完璧ではありません。気を引くくらいの効果しかありません。この場合は、完全に観月さんがマスターに心を開ききっているせいでしょう。


▶︎逆に言えば、旦那様のハーレムに入ってる女の子は皆のそうなる可能性があるということです。あまり、誘わないでくださいね?



「そっか……。気をつけないとな……。」


▶︎といいつつ、私の服を脱がすのやめ……うゃあぁ~~ん♡


もはや、挨拶代わりのように魅玖の服を脱がすと俺は観月に向き直る。



「まぁ、それだけ、相思相愛ってことだな。な!観月。」


「ユーちゃん……。うん。好きだよ、ユーちゃん。」



突っ伏した観月を抱き抱えると、ギュッと抱きしめ、ゆっくりと立ち上がらせる。



「全部終わったら、今夜はゆっくりイチャイチャしような。」


「うん……うん!」



観月は嬉しそうに胸に頬を擦り寄せると、何度も頷いた。

今日もハレンチのため!いっちょ、やりますか!



「さぁ!やるぞ!遺跡最短攻略!」


▷▶︎『「おーー!!』」



俺たちは拳を大きく天に突き上げる。

風がそよぎ、周りの草花も音を立てて応援してくれているようだった。


「さて!シルフィ!よろしくーね!」


『はーい!見てくるね!』



ー ビューン!


シルフィは風に乗って、入口から遺跡中を駆け巡る。


数分後、中から出てきたシルフィは俺たちの前へと戻ってきた。



「どうだった?」


『んー。中はそんなに広くないよ?宿くらいの大きさかな。それが、地下三階まで続いてる。中はモンスターが沢山いたよ。全部、コウモリ種だね。で、問題なのは地下三階。あそこに得体の知れないモンスターがいるね。たぶん、ゴーレム種だと思う。』


「……なるほどな。当然、人は?」


『うん。今回もいないかな。モンスターだけ。』


「んじゃぁ、ちゃっちゃとやるか!」



俺は頷くと、皆が見ている前で、くるりと回って今日のコスチュームに着替えた。



『……どんどん、人間離れしてきてるねー?着替える姿が見えなかったんだけど。』


「本当、スゴいよねー!今日はどんな格好なの?」


「今日はねー……。【木こり】だ。」



キャメルの色に千鳥格子の袖のジャケットを羽織り、フサフサの髭を生やしたオジサン(俺)は帽子を深々と被ると、遺跡に向けて手を突き出す。



「〈|土魔法 アースウォール《 土の壁 》真実の口Ver.〉」



そのままと入口へ向かうと、前回のゴブリン退治と同じように入口に土壁を作る。

今日はオシャレに、ローマにある真実の口を模造してみたが……入口が大きい分、なんだか迫力が増した気がする。



「な、なんかこわいんだけど……。人の顔って大きいとこんなに怖く感じるんだね。」


「う……うぅ……!」


『な、なんか、この無表情な感じがなんとも不気味だね……。夢に見そう……。』


▷まるで、巨人のようですね……。怖すぎますよ……。

▶︎さすがにこんなに不気味だと、手を突っ込む気にもなりませんよ……。本当、嘘ついてなくても、食いちぎられそう。



皆、ガタガタと震えながら、目の前の壁を見ていた。



「そ、それで?今日も粉塵爆発するの?」


「前回は実験も込めてやったからね。今日はもっと簡単に手っ取り早く行くよ。」



俺は慎重に土壁の形を整えると、真実の口に大量の木を放り込んでいく。



「え?また買ってきたの!?今度こそ怒られるよ!?」


「大丈夫だよ。林から貰ってきたやつだから。二十本ばかりの大木を切り倒して、バラバラにして薪にして持ってきたんだ。」


「あー、朝いなかったのってそういうこと。」


「そうそう。これをやるつもりでね。」



観月と話している間も、延々と木を放り込んでいく。


ある程度放り込んだところで、次は酒樽を取り出した。


それを再び真実の口の口から中へと流し込んでいくがこれは少量で済ませる。


そして最後。


俺はてくてくと、皆の背を押して距離を取らせると前回同様に弓を構えた。



「さぁ!やるぞー。みんな、もしものことがあるから伏せといてー。」


「え!?えぇ!?すっごく見たことある光景!?」


「うぅ!?」


『ま、またぁ!?』



俺の号令に、皆は姿勢を低くすると、脇から除くように真実の口を見つめる。



「せーの!シッ!」


ーギリギリ……!ひゅん!チリッ!


ーぶぅおおぉぉー……!!!



▷▶︎『「ひぃっ!!?」』



放たれた火矢は寸分の狂いなく真実の口に飛び込むと見事、中の酒と木々に引火したようだった。


弾みで、真実の口の鼻や目や口から火が吹き出したがそれも一時のこと。

直ぐに収まり、中からパチパチと生木の燃える音が聞こえると、真実の口の穴という穴から煙がもくもくと上がり始めた。



「おっと、急がないと消えちゃうな。シルフィ!こっからが正念場だ。そよ風を鼻の辺りから流し込んで、新鮮な空気を中に入れ続けてくれ。」


『わ、分かった!』



シルフィは頷くと巨大な顔に近付き、鼻から風を流し込んでいく。


再び、口から火が吹き出した。


俺は隙を見ては、中に生木と酒を足し続ける。



『な、何してるの?ダーリン。』


「あ。私、分かったかも……。」



観月は理由に気付いたのか、目からもくもくと上がる煙に目を向けると苦笑を浮かべて立ち尽くした。


かれこれ二時間、そうしていただろうか。


もくもくと上がる煙がやがて無くなったことを確認した俺は、最後に真実の口を砂に戻すと火の着いた薪にかけて鎮火する。



「さて!終わったかな。シルフィ!お疲れ!」


『え?本当、何してたの?』


「はは!もちろん、全討伐さ。試しに見てきてみ?ついでに、中に新鮮な空気を流し込んでくれると助かる。」


『う、うん。』



シルフィは風を纏うと、中へと入って行った。


数分後……。


隅々まで空気を運んだシルフィは、この世の終わりを見たような顔で戻ってくるとフラフラと俺の手に降り立つ。



「どうだった?」


『中のモンスター、全部死んでたよ。一体も残ってなかった。なにこれ。こわい……。毒でも撒いたの?って、状態なんだけど。』



ガタガタと手の中で震えながら、シルフィは頭を抱える。


ここで行ったことは、観測者の皆さんならご存知のやつだ。



「観月は分かったみたいだな?」


「うん!“一酸化炭素中毒”だね。不完全燃焼が原因で起こる有毒ガスが部屋に充満したせいで、モンスターが全滅したんだよね?」


「せーかい。さぁ!シルク!恒例のモグモグタイムだ!みんなで行こう!」


「うー!」


ーぷるん!ぷるるん!

ーぷるる!ぷるる!

ーぷん!ぷん!ぷぷん!


シルクの号令で呼び出されたスライムたちが、一斉に遺跡の中へとなだれ込んだ。


なんか数が前回よりも増えている気がするが、気の所為だろうか?



ものの数分で中のモンスターは全てモグモグされ、帰ってきたスライムたちは、駄賃として魔石をシルクの前に置いていく。



ー シー……ぷるん!

ー シーシー……ぷるる!


ー カチャン!カチャン!



出てくるスライムが続々と魔石を持ってくる中、シルクは入口でバックを広げ、中にせっせと魔石を詰めていく。


もはや、スライム専用のバイキングのようであった。



「さて、残るは一体だな。」


「え?まだ居るの?」


「地下三階の魔物だ。ゴーレム種とか言ってたろ?ゴーレムなら一酸化炭素中毒なんて関係ないからな。」


「あー、そうか。ゴーレムって元々石だもんね。」


「そうそう。さぁ、それじゃあ、本番行くとするか!」


「うん!」



俺と観月は武器を構えると、遺跡の中へと足を踏み入れた。


遺跡の中に入ると俺たちは目を丸める。

入口で不完全燃焼を起こしていたため、中は煙が充満して真っ黒に煤けてしまっていたからだ。


こ、これは、下手したらギルマスに怒られるかもしれん……。



「一階はほとんど真っ黒だったね。」


「アウ……セーーフッ!!」


「いや、ほぼアウトだと思うよ?」


「セーフ!!」



隣からのツッコミに俺は両手を広げて首を振る!


崩壊してないから、アウトに近いセーフ!

実質セーフ!と心の中で勝手に解釈すると

歩みを進めて地下二階へ進んだ。


ここは比較的綺麗に維持できていた。

しかも驚くことにとても明るい。

恐らく、この壁に等間隔で埋め込まれている宝石が原因だろう。

明るい暖色の光を放っている。

ランプじゃなくてライトなのかな?

なんか、LEDみたいだ。



「ここは綺麗だね?」


「ふふ……!セーフ!」



ウンウンと頷きながら、俺は自信満々に再び両手を広げる。


ここは疑いようもなくセーフでしょ。

壁も壊れてないし?煤けてないし?


ある程度、見て回ったが特に真新しい発見もなかったので、地下三階へ続く階段に向かった。


「この階段を降りたら地下三階、ボス部屋だな。」


「ゴーレムがいるんだよね?」


「らしいけどな……。こーんな石の塊だろ?矢とか通用するのか?」



近くに落ちていた石ころを拾い観察する。

石というより、宝石の原石のような物体だ。

よく見れば壁にもチラホラ見られる。この遺跡自体が、宝石の鉱山を利用して造られているみたいだ。

遺跡としては、そんな凄い発見は無いようだし、採掘場として利用してはどうだろうか。

領主様に提案してみよう。


原石をバックにしまうと、俺は階段に目を向ける。



「大丈夫だよ。ほら、おとぎ話とかでもあるじゃない?どんなに強いゴーレムでも弱点があるよ。」


「あー……。なんだっけ?〈emeth(真理)〉って書かれてる場所があるから、その頭の“e”を消して〈meth(死んだ)〉に変えるんだったか。」


「そうそう!」


「そんな、簡単な方法でいいなら、即終わりそうだな。」



俺は弓矢を携えると、ゆっくりと階段を降りていく。


部屋に降りると、ここも明るかった。

特に天井には二階で見たものよりも大きな宝石が埋め込まれていて、一際明るく感じる。


真ん中には石像があった。

こちらに背を向けた石像。


天から降り注ぐ光に手を伸ばす女性を模しているように美しい見た目をしている。


女性らしい艶かしいボディラインと申し訳程度に着せられたゆったりとした服。石とは思えないほどさらりと流れた長い髪。


まるで女神がそのまま固まっているような美しさに、俺たちは思わず息を飲む。


綺麗……なんだけど……うーん。背中をこちらに向けているせいで顔は見えない。


安易に近く付くのも抵抗があったので、入口からゴーレムを観察することにした。


「《|Observation《観察》》」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


Name:NoName

性別:女

状態:睡眠

種族:ゴーレム

クラス:ハイレア


HP 3000 / 3000

MP 1200 / 1200


性癖:なし


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「(ピク……!)性別が女だと……?」


「……ユーちゃん?」



コキコキと首を鳴らすと、俺は瞬時に正装に着替える。


女の子へ対しての正装……それはもちろん【モンキーモード】だ。



「ウー……ウキャー!!女の子~!!」


「うえぇっ!?出た!エロザル!?ま、待ちなさい!どんな相手か分からないのに、飛び込まないの!」


「ウキャ!キャキャ~!観月ちゃんは白パンチュ~♪」


ー ピラリ!


「ひゃっ!?こ、こんの~変態ザル!待ちなさ~い!」



俺を捕まえようとする観月のスカートを捲って隙を作ると、腕を掻い潜り部屋の真ん中まで四つん這いに駆け寄る。



「ウキャ~!」


ーピタッ!


「ムフフ……ムフフ……!」


「…………。」



石像に背後から抱きつくと、周到に全身を撫で回す。


硬度はやはり素材が石なだけにとても硬い。


しかし、その肌は大理石でも使用しているかのようによく磨かれており、触り心地はキメ細やかなスベスベな肌と同じだった。


長いこと放置されていただろうに、埃ひとつなく美しさをちゃんと保っている。


髪は本当の髪ではないかと思うほど、近くで見ても違和感がなかった。


温度は……うん!石らしく冷っこい!


後ろから抱きつき胸やお尻を撫でていると突如、ガタガタと石像が震え始める。

振り落とされないように、しっかりと抱きつくと、石像はゆっくりと動き始めた。



「起動。研究所内に侵入者あり……。排除します。」



石像は天に伸ばした腕を下ろすと、ゆっくりと観月たちに向き直る。

動く石像。まさにこの子がゴーレムであり、この遺跡のガーディアンである証だった。



「わわっ!?こっち向いた!?」


「侵入者を確認。排除します。」


ー ムフフ……!


「生命反応を感知……。」



駆け出そうとした瞬間、ゴーレムは動きを止めゆっくりと背後を振り返る。



「……?」



しかし、後ろを確認したがそこには何も発見できなかったのだろう、再び観月に向き直ると一気に距離を詰める。



「わわわっ!?き、来た!」


ームフ……ムフフ……!


「…………?」


「え?また、止まった……。」


「…………??」



対応すべく武器を構える観月のすぐ目の前で立ち止まると、ゴーレムは再び背後を振り返る。



ームフフ!ムフフ~!


「……?」



三度振り返るゴーレム。

何かの気配を感じ、振り返るがその正体が掴めないのか、首を傾げるばかりだった。


ームフフ!ムフフ!


「……!?」


「えぇ!?こっち向いた!?」



また背後で気配。


ゴーレムは振り返ると観月と目が合う。

驚く観月を睨むように見つめるが、気配の元ではないと判断したのかまた背後を振り返る。



「…………。」



やはり見つからないのか、ゴーレムはぐるぐると回って背後で絶えず感じる気配を探していた。



ゴーレムが探しているのは、紛れもなく背中に抱きついている俺のことだろう。

ただ、俺はゴーレムが振り返る度に背中に隠れているので彼女の視界からは完全に消えている状態だった。



「……????」


「(ちょっとー!な、何してるの、ユーちゃん!!)」


「(このまま、ぐるぐる回して目を回してくれないかと思ってたけど……やっぱ、ゴーレムだから無理そうだな。そもそも、ゴーレムに三半規管なんかあるわけないし当然といえば当然かー……。)」



早々に目回し作戦を諦めると、遠心力で半ば吹っ飛ばされるように背中から離れて地面に着地した。



目の前でコマのようにくるくると回っていたゴーレムだが、俺の存在に気付くとゆっくりと減速して足を止めた。



「侵入者を確認。排除します。」



俺が反撃するより早く、ゴーレムは一足で目の前に跳んでくると、腹に向けて拳を握り振り抜いた。



「むっ!?コイツ、早い!」



ゴーレムは動きが遅いものだと認識していたがそれは誤解だったようだ。見事に虚をつかれ、対応の遅れた俺は拳を防ぐこともできずに吹っ飛ばされる。

そのまま俺は勢いを殺すこともできずに、壁に激突した。



「……排除完了。次の対象を排除します。」



壁にめり込んだ俺の姿を確認したゴーレムは、俺を排除できたと判断して踵を返す。


見つめる先には観月とシルクが居た。



「……え?こっち向くの?」


「うー?」



二人は次の標的が自分たちに向いたと気付くと、顔を見合わせ苦笑を浮かべる。



「排除します。」



最低限の礼儀とばかりに不意打ち気味にいきなり襲いかかるのではなく、ちゃんと相手に認識をさせた上で攻撃するスタンスのようで、二人が反応したことを確認してからゴーレムは駆け出した。



「正々堂々と勝負した上で、優劣を決めることに拘ってるんだな。製作者のこだわりかな?」


「っ!?」



世間話をするように、突如かけられた声に振り返ったゴーレムは目を丸める。



「……お?そんな表情もできるんだ。可愛いね!」


「……排除。」



俺はグッ!と親指を立てて笑ってみせると気に触ったのか、ゴーレムは姿勢を下げて胸元に飛び込んでくる。


ゴーレムが大きく拳を振りかぶった瞬間、俺は笑みを浮かべてそっと囁いた。


「【凍結の鎖(フリーズ)】」


「……!?」



ジャラジャラと音を立てて、黒い鎖がゴーレムを縛り上げる。



▶︎もう頭の中じゃなくても、難なく使えこなせるようになってるんですねー……。元は私の技なのに。


▷まぁ、頭で理解できているんですから、使用することも可能でしょう。驚くべきは、その応用能力の高さですけど。


▶︎さすが、元の世界であらゆる経験をされた方。


「そうなんだよねー。ユーちゃんって、基本的に器用なんだよね。だからこその……。」


▷▶︎“完璧超人の変態”……ですか……。


「そういうこと。」



何やらガヤが言っているが、とりあえず、今回はスルーしておく。

現実世界でも、使えるようになったとは言っても、拘束には細心の注意を払うため目の前の状況に集中する必要があるためだ。



「……!」


ゴーレムちゃんは鎖に拘束されて尚、拳を振り下ろそうと腕に力を込めているようだった。


なるほど。一度、行動パターンを決めた場合、それを途中から変更することはできないのか。


つまり、今回は“殴りつける”という指示で動いているため、とりあえず、目の前の俺に対して一撃を加えるまでその行動はキャンセルできないわけね。



「となると、攻撃を受けさえしなけば、自由に何でもできるわけか!ムフフ!それでは、ゴーレムちゃんのおパンツ様、いただきまー す!」


「出たー!!?ザ・HENTAI !!」


「お褒めの言葉、ありがとうございます!」


「褒めてないから!」



俺はゴーレムの下に屈むと、手を合わせそのゆったりとした服に隠れた下半身を捲りあげる。


おっと、鎖には触れないように!


この“凍結の鎖”は実は繊細で、捕縛された対象の動きは全てキャンセルできる代わりに、外からの衝撃にはめっぽう弱いのだ。

それこそデコピンで断ち切れてしまう程に。


だからこそ、慎重に行動しないとな。



「さぁ、ご開帳~!」


「……!?」



ゆっくりと古代ローマ風の服の裾を捲り上げると白く細い足の付け根が見えた。



「あっ……!」


「…………!!?」



俺は目の前の光景に思わず息を呑むと、すぐさま裾を下ろして立ち上がる。


目の前の女ゴーレムを見ると目を丸めて今にも泣きそうな表情を浮かべていた。俺の表情から何を見たのか悟ったのだろう。やがて、唇を噛みしめると、俺を涙目で睨みつける。



「キミ……下着、履いてないんだね。」


「〇×〇△□!×□△〇~~!!?」



パクパクッ!と口を動かして抗議の声をあげるゴーレムちゃん。


余程恥ずかしかったのか、ボロボロと涙らしきものを流して俯いてしまった。


ゴーレムの目にも涙が出るんだな。

泣かせるつもりはなかったんだけど……。



「でも、すごく綺麗だよ?本当、ゴーレムに対して言うのもなんだけど、彫刻のように美しい形状をしていた。すごく、女性らしさを感じたよ。とても、素敵だ。」


「う、うぅ……ぐすん……うわぁ……排除ぉ……。」



俺の言葉など聞こえないように、ゴーレムは俯いたまま声を嗚咽混じりに涙を流す。

本当に、見られたことがショックだったらしい。

なんだろう。すごく、女の子らしい反応にお兄さんはなんだかすごく胸が熱くなってきたぞ。



「ゴーレムちゃん。」


「…………。」



名前を呼ぶと、ゴーレムは顔を上げて俺を見上げていた。

顔は石像の面影はなく、涙に濡れそぼった紅い瞳と涙の染みた白い肌、銀色の髪がサラリと流れる。


まさに女神のようであった。

美しい。今は捕らえられているが、戦闘能力も高いはずだ……。


やばい、どうしよう……。



「ねぇ!みんな!この石像っ娘、ウチのハーレムに欲しいんだけど!」


▷▶︎『「だと思いましたよ!!」』


「……!?……!?」



俺の言葉にハーレム娘たちが総出で叫びをあげた。



「排除します……。」



しかし、目の前のゴーレムちゃんは俺の言葉を理解していないのか、はたまた下半身をバッチリ見られたことを恨んでいるのか、真っ赤になった顔で拳を振り抜こうともがいている。

何としても殴りたくなったらしい。



「観月、いいか?」


「はぁ……。まぁ、もう止めても無駄だろうからいいよ。でも、何でその子なのか理由を聞いてもいい?」


「……うん。この子、この遺跡にずっと居たんだよな。それこそ、前魔王マモンの時代から。」


▶︎そうですね。部下にこういうのに詳しい者が確かに居ましたよ。“人工女神計画”という本も出してたくらい女神にご執心な魔導研究家でした。結局、理論を組み立てたところで、前勇者に討伐されてしまい夢半ばでこの世を去ったようですけどね。その研究過程で、こうしたゴーレムを研究していたようです。そういえば……彼がゴーレムを研究していた際に、ほぼ人間に近い最高傑作ができたと嬉々として報告してきたことがありましたね。まさか、このゴーレムのことでしょうか?



「かもね。だけど、能力とかはどうでもいいんだ。ただ、この広い空間に一人でずっと過ごしてきた彼女が、なんの救いもなく討伐されるなんてあまりに可哀想じゃないか。今日まで一人で、この遺跡を護って頑張ってきたんだ。そろそろ、自由になってもいいんじゃないかな?」


▷お気持ちは分かりますが、ゴーレムは基本的に主人は一人と決まっています。彼女を創造した方がまだ登録されている限り、マスターは主人にはなれませんよ?


「うむー……。そこだよなー。」



俺は目の前で真っ赤になって睨んできているゴーレムを眺めて呻く。


どうにか、この子をハーレムに加える方法はないだろうか……。



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