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新情報、入手につき!

俺は腕を組んで、目を閉じると当時の状況を整理していく。


▷ マスター。お手伝いします。

▶︎私たちはお話を聞いて“ある結論”に至りました。



「(……さすが情報体。思考が早いな。)」



▷その上で申し上げます。奥さまは女性ですよ、マスター。マスターの夢をもう一度、私たちにお聞かせください。



「(ん?それはもちろん!この世界の女性は、すべからく俺が助ける……!だろう!)」



▶︎そうですよ、旦那様。この女性を助けられるのは貴方だけです!



「ん?サカエくん?どうした?」


「ユーちゃん?」


「(わかった……。二人とも手伝え。)」



▷▶︎よろこんで!!



以下は、二人によって結論に至るまでの整理された情報だーー



▶︎ 兄と奥さまは心から愛し合っていました。

▷ 弟はそれを祝福していました。

▶︎ 政治面では弟の妻を演じていました。

▷ 私生活では兄の妻として過ごしていましたね。

▶︎ 両親から子供を作るように催促されたそうです。

▷ 子供が必要な理由は繋がりを強めるためのもの。

▶︎ かなりの圧力がかかっていたでしょう。

▷ 奥さまは焦っていたはずです。

▶︎ ですが、ここで疑問が生まれます。

▷ 奥さまは子供の作り方を知っていたのか?

▶︎ 奥さまは王都から来たと言っていました。

▷ 王都は王の膝元であると同時に

▶︎ かの者達の力が強い場所でもあります。

▷ その者達とは?



美神教(カリテス)……。」


「宗教がどうかしたのか?」



ぽつりと呟いた俺を不思議そうな顔で、領主様は見つめてくる。

これは……少し確認した方がいいか?



俺は拳を握ると、真っ直ぐに領主様を見つめた。



「少し聞いても?」


「あぁ。構わないよ。」


「奥さまは美神教(カリテス)の信者ですか?」


「あぁ、そうだよ。よくわかったな。」



領主様は目を丸めると、驚いたように声をあげる。だとすれば、奥さまの行動に意味が出てくる。だけど……それはどういうことだ?



「ちなみに、ワルフォイ様たちも美神教(カリテス)でしょうか。」


「私の家は無宗教だ。二人とも宗教などに興味はなくてね。」


「……ふむ。」



つまり、三人の間に性知識に偏りができていたことになるのか。



「ち、ちなみに……ワルフォイ様、女性経験は……。」


「ば、バカにしているのか!?私は今も昔もモテていたのだぞ?それこそ時効だが、結婚前には夜の領主となっていた時代もあったんだ。」



フフン!と鼻を鳴らして、領主は胸を張るが『すまん、ウソだ……。』と少し半泣きで頭を垂れた……。



「夜の領主様という言葉が出るあたり、性知識は普通にあるみたいだな。」


「童貞みたいだけどね……(ボソッ)」


「ん゛んん!?何か言ったかね、観月くん?」


「いえ!なんでもないです!あは、あはは……。」



じろりと睨まれ、観月は慌てて手を振ると笑って誤魔化した。

いらんこと言うなよ、観月。


「それで、その美神教(カリテス)がどうしたんだ?」


「奥さまが美神教(カリテス)ということは・・。」



俺はもう一度、目を閉じると我が秘書たちと対話を再開する……。



▷もしも、今回の件に“美神教(カリテス)”が関わっているとするならば、奥さまの行動には意味が出てきます。


『キスをせがんできた。』といっていたが、美神教(カリテス)である奥さまはキスを性行為と同義と考えていたはずだ。


だが、無宗教である俺たちは知っている。

キスくらいで妊娠などしないと。

当然ながらワルフォイ家の皆も同じはず。


奥さまは……本当はどうしたかったんだ?


奥さまは兄と子供作るつもりだった。

でも、弟と子供を作らなければならない……。


これじゃあ、単なる浮気だ。

ハロルド様の思った通りになってしまう。


▷マスター。見方を変えてみてください。

▶︎今の視点は誰視点のものですか?


「(誰ってそりゃ、奥さんの視点に……いや待てよ?これ、本当に奥さんか?旦那さんの視点しか聞いてないよな。)」


▷大丈夫ですよ、マスター。これだけの情報と、“過去の体験”から推測できるはずです。

▶︎この件に関わっているもう一人の視点から考えてください。


「(この件に関わっているもう一人の視点?誰だ?ハロルド様じゃなければ、亡くなったマユルド様か?)」


▷マユルド様は今回の件には、関係ないと思われます。


▶︎アンリ様を産んでいることから、二人の間にはちゃんと『肉体関係』はあったと推測されます。この世界にはDNA鑑定はないので確証はありませんが、状況から見えてもまず間違いはないでしょう。


ハロルド様でも、マユルド様でも、奥さまでもない視点って誰だ?


俺は煮詰まった考えを解すように、頭をグルリと回して部屋を見回す。


そこでふと、ある一点に目が止まる。



「天使の画だ……。」


「あぁ。これは妻が運び入れた物だな。天使は神聖な存在だ。この部屋は商談もすることがあるから、私に加護があるようにと置いたようだよ。」



部屋にかけられた小さな額の中には“弓を持った天使”の画が描かれていた。



「天使か……。美神教(カリテス)の御使い。人類を苗床にする性悪なモンスター。俺たちの敵……。」


「敵?なにを言って……。」


「っ!……そうか!わかったぞ!」



天使を見つめていた俺はある可能性に気付いて、思わずその画に飛びついた。


新たな情報が追加されたことで、点と点が繋がり始める。


三人の関係に天使を置いたことで、さらに状況はハッキリと浮き彫りになってくれた。


結論から言えば、天使は今回の件に直接的に関与していないはずだ。

いや、《《関与できなかった》》と言っていいだろう。


なぜなら、奥さまとハロルド様はただの一度もキスをしていないのだから。


キスというトリガーを引けなかったことで、子供を宿すことができなかったはずだ。


もしも、ここで天使が手を出せば、自分たちが広める〈キスをするだけで妊娠する。〉という教えに矛盾することになるのだから 。


だから、指を咥えて見ていることしかできなかったはずだ。ただ、その時を待つことしかできなかったはずだ。


そうなったら、天使はどう出る?


聞いた限りでは相当の美人らしいし、天使だって何としても苗床にしたかったに違いない。


きっと、天使から何かアクションがあったはずだ……。それもかなり強めのアクションが。


アイツらのことだ。奥さまを言葉巧みに、ハロルド様と関係を持たせようとしたに違いない。または……脅したかだな。


どちらにしても、奥さまはキスをせがんだことは事実だ。



「見えそう……!見えそうなのに!あと少しが分からない!」



俺は頭をガジガジと掻きながら、目の前の天使の画を睨みつける。


しかし、結果としてアンリ様を妊娠している。

ハロルド様ではなく、マユルド様の子を。

天使はずっと監視していたはずだ。

なら、マユルド様とアンリ様の関係は知っていたはず。

なら、マユルド様とキスをした時点で子供を宿すこともできたはず……。



「どういうことだ?」


「どうしたんだ、サカエくん。何か気付いたのか?」


「ユーちゃん?」


「あと少しが分からないんだ。奥さまが何故、アンリ様を妊娠できたのか、そこが分からない。」



一緒に隣に並び俺の見るものを通して考えていることを読み取ろうと、観月とハロルド様が顎に手を当て首を捻る。



「何故って、それは関係を持ったからではないかな?」


「それだと変なんですよ。奥さまはキスをせがんできたんですよね?何か他に変わった様子はありませんでしたか?」


「いや特にないよ?兄とも上手くやっていたようで、メイドの話では夜な夜な兄の部屋で密会をしていたそうだ。恐らく、その期間でアンリを妊娠したはずだ。」


「それはいつ頃でしょう?キスをせがんできた前ですか?後ですか?」


「そうだな……。メイドが二人の関係を報告してきてから三ヶ月ほど後だったと思うぞ?」


「となると、妊娠が分かってから、キスをせがんできた可能性があります。」


「妊娠してから?何故だ?なぜそんなことを……。」



妊娠しているのに子供を求める理由。


さらにこんがらがる状況にハロルド様は首を捻るが、俺は逆に順番が明確になったことでこの答えに大分近付いた気がした。


結局は当人たちにしか答えは分からない。

しかし、その一人である奥さまは、墓までその真相を持って行くつもりもなのだろう。

でなければ、もうとっくに解決していてもおかしくないはずなのだから。


何か、大きなきっかけが必要だ。



「その全ての答えを知っているヤツを知ってます。」


「いるのか!?そんなヤツが!」


「奥さまに直接聞いてもいいでしょうが、恐らくは真相は口にはしないでしょう。だから、別のヤツから白状させます。あの時に裏では何が行われていたのか。それを知るのは、間違いなくソイツしかいないはずですから。」


「それは誰だ?私の知っている者なのか?」


「直接的にあったことはないはずです。ですが、必ずこの状況にも何か進展があるはず。お約束しましょう。よければ今夜、またお会いできませんか?それも深夜になると思いますけど。」


「今夜か?わかった。案内人を準備しておこう。」


「ありがとうございます。その時に、かなり過激なモノを見せることになると思います。それでも、真実を受け入れる覚悟はありますか?」


「随分と脅かしてくれるな……。だが、私も領主だ。多少のことでは驚きはしない。それに…このまま放っておいても、わだかまりが解決することはないだろう。解決できるなら解決したい。彼女の行動の意味を知りたいのだ。」


「分かりました。では、夜にまたお伺いします。よければ、アンリ様とハロルド様、お二人に会ってもらいたいので、頑張って起きていてくださいね。ね、アンリ様。」


「ふぁ、ふぁい!」



扉に向けて声をかけると、カチャンッ!と扉の向こうから物音と共に間の抜けた返事が聞こえる。

ゆっくり中に入ってきたのは、手にティーセットを持ったアンリ様だった。



「アンリ、遅かったな。また、迷ったか?」


「も、もう!サカエ様の前でやめてください、ハロルド様!それは子供のときの話です!」



プイ!と怒ったようにそっぽを向くと、アンリ様は気を取り直してテーブルに紅茶カップを並べていく。

とても、手馴れた手つきだ。

お嬢様とは思えないな。



「あはは…。すみません、話し込んでしまって。入りにくかったでしょう。」


「ふふ……。すみません。あまりに真剣なご様子だったので。でも、今夜にはやっと疑問に答えがでるんですね?」


「えぇ。ところで、アンリ様は無宗教ですか?」


「えぇ。私も父や叔父様と同じで、無宗教です。確か、母も無宗教になられたと聞いています。」


「え……!?それは本当ですか!?」


「え、えぇ。私が生まれてすぐに〈司教〉様が訪れ、破門になったと聞いています。」


「司教……?あぁ。そういえば、そんな奴がいたな。洗礼を与えに来たと言って乗り込んできながら、しばらくして無言で帰って行った失礼なヤツが。アイツ、今は街外れの教会にいるんだろう?」



昔のことを思い出してか、腕を組んで目を細めハロルド様は次第に怒りが湧いてきたのか眉を寄せ始めた。相当、嫌いみたいだ。



▶︎ 新情報!教会があるんですね!なるほど。もしかしたら、毎夜くる天使たちと何か関係があるかも知れませんよ!



「(だな。今日の件が片付いたら、ぶっ潰しに行くか。もういい加減!お兄ちゃん、疲れたよ!)」



俺はニヤリと笑うと、窓の外を眺める。

外は晴天。きっと今夜も晴れるだろう。

絶好の天使狩り日和だ。




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