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その依頼、達成につき!

薬草、“月の涙”の採取依頼を達成したイブさんたちは、俺たちと別れると、足早に親子の待つ家へと向かった・・・。



「サカエ!明日!明日!会おう!」


「お!?デートのお誘いか!喜んで!」


「即答すんな、エロスケ!私たちが隣にいること忘れてるんじゃないだろうな!?」


「う~~~!」


オッケー!と親指を立ててミルナンの誘いに乗ると、観月とシルクが、俺を見上げて抗議の声をあげる。


“ 女の子の誘いは断らない! ”


それが、俺の紳士道だってばよ!

(あ、誰かに怒られそうw)



「ミルナンは、感動したぞ。サカエのあの強さ。もっと知りたくなったから、ミルナンと手合わせしよう!」


「あー、なんだ、手合わせかぁ。うん、いいよ?・・・でも、タダではいやだね~?タダより高いものは、ないんだよ~?」


「もちろんだ!サカエが勝ったら、なんでもいうことを聞いてやるぞ!」


「ほぅ・・・ほほぅ?なんでもとな?いいぞ!いいぞぉ!その話、のった!」



にこりと笑うミルナンに、俺はニヤリと黒い笑みを浮かべ強く頷く・・・。



『(あ、あぁ・・・。これヤバいやつだ・・・。 )』


と、観月とシルクは心中、穏やかではなかった・・・。どうにか、止めなければと思っているが、二人を止める言葉が浮かばない・・・。



「じゃあ、明日の・・・昼頃に!ギルドで会おう!」


「ん!分かった!昼にギルドだな!」


ー キュッ!


「「(あぁッ・・・!?あ~・・・。)」」


そうこうしている間に、ミルナンとユースケの手は、固く結ばれてしまった・・・。



「よし!さぁ、いくぞ!」


「え?ミルナン?なんで、私を棺に乗せるの!?」



約束を取り付けたミルナンは嬉しそうに笑うと、イブさんの背中を押して棺の上に座らせる。


何をするのかと思えば・・・。



「ゆっくり歩いてちゃ時間がかかるもんな。ミルナンが連れてってやる!」


「え?・・・えぇっ!?」


別れ際に、ブンブン!と手を振ったミルナンはイブを乗せた棺を引いて、全力疾走で駆け出した・・・。



「え?冗談でしょ・・・ちょ、待って、待っ・・・!?」


「喋ると舌噛むぞ?しっかり歯食いしばって、掴まってろー!よーい・・・ど~ん!!」


「いぃ~~~・・・!!?」


ーググッ!ビューーーーン!!



まるで、飛ぶように走っていくミルナンと、実際、飛んでる棺・・・とそれに掴まるイブさんの背中を見ながら、俺たちは苦笑を浮かべると、自分たちも戻ることにした。


深夜ということもあり、誰も居ないだろうと言うことで、ミルナンに倣って、久しぶりの全力疾走で街まで戻ることに。


当然・・・。


「うっ!?うぅぅ〜〜・・・!!? 」


おんぶで運ばれたシルクが涙目になったことは言うまでもない・・・。


ー ビューーーーン!!!


「とうちゃーく。イッチバーン!」


「やっぱ、早いなー、観月。」


「ふふーん!」


「う・・・うぅ・・・!」



ぐったりとなったシルクを下ろすと、ぺちぺち!と小さな手で腰を叩かれる。

はは・・・ごめん、ごめん。



「あ、サカエ殿。依頼は無事に達成したみたいだな。」


「あ、マタイさん。ただいま。」


「うむ!怪我もなさそうで何よりだな。・・・ところで、街に向かって矢を飛ばしたか?」


「あー、うん。ギルマスにハメられたから、仕返しに矢を打ち込んだよ。ちゃんと、届いたでしょ?」


「あぁ・・・。綺麗な魔力の尾を引いて、街に突っ込んで行ったよ。最初、彗星かと思うほどに輝いていたな。」


「はは・・・!結構、魔力込めたからね。あと、風魔法も追加しておいた。」


「ふー・・・。万が一、誰かに当たったら大変だから、これからはやめるように・・・。」


「はーい・・・!」



俺は素直に手を挙げて返事を返すと、観月たちと、門をくぐる。



「さーて、お次は天使だな・・・。どこに隠れているのやら・・・?」



周りをキョロキョロと見回すが、気配が感じ取れない。ちなみに、奴ら天使は隠密スキル持ちで、簡単には発見できないようになっている。


長年の時間経過で、その種族が進化し、特殊なスキルを持つことはあると魅玖は言っていた。


ではどうするのか・・・?

答えは簡単だ。


相手が隠密スキル持ちなら、コチラは感知をバカみたいに上げればいいだけのこと。


ウチのできる秘書(リライアちゃん)に、情報を整理してもらい、“天使だけを対象”に索敵をかけるのだ。



▷んー・・・?居ませんね・・・。


「おかしいな。アイツらは人が寝静まった頃に行動するはずだよね。」


▷のはず、ですけど・・・。


深夜ということなら、今がまさにその時。

特に目の前の女の子に興奮状態の天使(バカ)なら、すぐに見つけられるハズなのだが・・・。



「今日は、諦めて帰ったのかなー?」


「んー。毎日、どっからか湧いてくるからなー。いないハズはないと思うけど・・・。」



俺は一応、全ての街を巡回するつもりで、足を進めることにした。


「居ないなー。」


ー ぷるん!


「・・・う?・・・うー!」



しばらくすると、シルクが何かに気付いたのか、トコトコと走って路地裏に入ってしまった・・・。



「シルク・・・?危ないぞ。こんな時間に、そんな暗がりに女の子一人で入っちゃダメ・・・あれ?」



シルクの後を追いかけて薄暗い路地裏を覗き込むと、シルクが路地裏にしゃがみこんでいた。

後ろからシルクに歩み寄り観月と二人で見てみると、しゃがんだシルクの前に白いスライムがいる。



「うー?う、うぅ、うー。」


ー ぷるん!ぷーぷー!ぷー。



二人で何かを話しているようで、声をかけることができない。



「うー・・・。うぅー。」


ーぷるん!ぷぅー。



しばらく待っていると話を終えたのか、シルクはスライムの頭を撫でると代わりに何かを受け取り立ち上がった・・・。


振り返ったシルクの手には、綺麗な魔石がある。



「うー・・・。」


「え?これ、天使の魔石なのか。」


「てことは、天使は討伐されてるの?誰か、討伐してくれたのかな?」


『うんん。天使が大怪我したのは、旦那様の矢が原因だよ。』


「お、シルフィ、知ってるのか。矢って、ギルマスに向けた矢?」


『うん!そうそう!』



目の前を飛びながら、シルフィが状況を説明し始める。


風を付与したことで、風の精霊であるシルフィがある程度の操作をすることが可能になったので、見かけた天使を貫いたらしい。



「へぇー・・・便利だなー。」


『ふふ・・・!大まかな方向が合っていて、矢に魔力が篭っていれば私が操作できるから、何かあったら頼っていいよ?』


「ありがとう、シルフィ。」


『んーふふ!いっぱい、イタズラしちゃおうね♪』


「あぁ!」



指先でシルフィの頭をヨシヨシと撫でると、俺はシルクから魔石を受け取り、鞄にしまった。



「ということは・・・今日の天使討伐は終わったってことだな。はぁ・・・。」


「お疲れさま、ユーちゃん。」


「うー。(お疲れ様でした、ご主人様。)」


▷お疲れ様でした、マスター。

▶︎お疲れ様でした、主様。


『お疲れ様、ダーリン♪』



「みんな、今日はありがとうね。本当、いつも助けてもらってばかりで申し訳ない。」



方々から聞こえる労いの言葉に、目を閉じると小さく苦笑して頭を下げる。

本当に最近、皆には頼りっぱなしだな。


さっきの白いスライムだって多分、シルクが巡回させてる子だろうし。

戦闘では、観月とリライアと魅玖とシルフィには助けられっぱなしだし。


男としてこれでいいのか、不安になってくるなぁ・・・。



「むしろ、もっと皆に頼っていいと思うよ?ユーちゃんは昔から一人で抱え込んじゃうからね。人にはお節介なほど、優しいくせにねー。」


「そんなつもりはないけどなぁ・・・?」



俺は苦笑を浮かべると、観月とシルクの手を取る。


宿へ戻ろう、そう促した瞬間だった。



「サカエく~~ん!みーつけたー!」



ドスの効いた低い声が背後から響き、ガッチリと肩を掴まれた。


振り返ると、怒り心頭のギルマス真っ赤な顔で額に血管を浮かせながら、にっこりと笑っていた。


うわーお。


まさに、ギルマス大激怒って感じ。



「見つかっちゃった♡」


「余裕があんのは、了解だ!!今からお前に特別任務を与える!」


「・・・えー。」


「俺の楽しみを奪った罰だ!!これまでにないくらい、最高の依頼を与えてやる!うぉーりゃー!!」


「いってえぇー!!?」



ボコンッ!!と強い音が鳴るほど、俺の頭を依頼書で殴りつけると重い足音を立てながらコートを靡かせてギルマスはギルドへと戻っていく。



「いってー・・・。」


「新しい依頼?なんだろねー?」


「ろくなもんじゃないよ、きっと・・・。」



落ちた依頼書を手に、観月は微笑むと今日のところは宿に戻ってゆっくりと休むことにした・・・。


ージュン・・・ジュン・・・!

ーチチ・・・チッパイ・・・!



「チッパイ・・・ん・・・んん・・・ふぁ~・・・!」



朝の光と共に、レースカーテン越しに聞こえる鳥の声に意識が呼び起こされた俺は、ゆっくりと起き上がる。

眠気の抜けきらない頭で隣を見ると、一糸まとわぬ姿の観月が眠っていた。


そうか・・・。あれから帰ってきた俺は、ウトウトしてきたシルクを寝かせて、観月から女の子パワーをもらったんだった。



「スー・・・スー・・・。」



可愛い顔で、よく寝ている。もう少し寝かせておこう。


俺は観月の前髪を指先で軽く流すと、その寝顔を眺めて微笑む。


可愛いなぁ・・・。この子が昨日、あんなに乱れた女の子とは思えないな。



「まったく、どっちがハレンチなんだか。」


「ん・・・。」



観月の頬にキスすると、洗面台に向かった。



「(っ~~!だから、不意打ちはダメってばぁ~///)」


「ん?起こしちゃったかな?」


「す、すー・・・。」



僅かに身動ぎを感じた俺は部屋から出る前に、観月の様子を見るが寝返りをうった程度で起きる気配はない。



「そういえば、依頼書、確認しとかないと。」


▷おはようございます、マスター。

▶︎おっはよ〜ございま~す!



「おはよう。リライア、魅玖。」



二人と挨拶を交わし、今日の予定を確認しながら、身支度を整える。



▷今日はギルマスからの依頼に向かいますか?


「昼からのミルナンとのデートに間に合うのなら、さっさと終わらせようかな。」



▶︎あは!本当、主様は女の子が大好きですね!


「当然!ふふ・・・!さぁ!今日もハレンチな一日にしよう!」



俺は最後に鏡に向かって笑いかけると、洗面所から抜け出した。


身支度を整え終えた観月たちと共に朝食を済ませて、いよいよ、ギルマスの依頼書を広げることに。


物々しい雰囲気の《特別任務 》の印鑑が打たれた依頼書に思わず、手が止め俺は観月の顔を見る。



「これ、絶対にしないといけない?」


「やらないと、うるさいと思うよー?」


「だよなー・・・。はぁ・・・。」



よし!っと、気合いを入れると丸められた依頼書を一気に開いた。



「どれどれ・・・。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【 特別任務 】


街近くで発見された地下施設跡に潜入し、中の状態を確認。また、強力なモンスターがいる場合、これを速やかに討伐すること。


尚、この施設は後にマタイ部隊の訓練施設にする予定。過度な損壊は依頼不達成とみなす。


依頼者:領主 マルフォイ

担当者:ヴァイシュ=フレイム


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「過度な損壊・・・?」


「依頼不達成とみなす・・・だって。あはは・・・!念押しされちゃったね!」


「ちっ・・・。また小麦粉買っていこうと思ったのに・・・。」



【なんちゃって爆裂魔法(粉塵爆発)】の使用を禁止され、苦い顔をして依頼書を見る。さらに、その下の名前を見て俺は息を吐いた。



「しかも見てみ、この名前。」


「領主さんだね。依頼書では初めて見る名前だぁ・・・。」


「いよいよ来たって感じだな。今までも、貴族たちの依頼は来てたけど、今回のはそれとはレベルが違うんだろうな。」


「ここに、地下施設なんてあったんだね。全然、気付かなかったよ。」


▶︎下水道に繋がっている施設があるようですよ。百年前はここに、遺跡がありましたから、恐らくはその名残りでしょう。


「遺跡の上に、街を建てたのか。ちなみに、元魔王関係の遺跡だったりする?」



▶︎あはは・・・。実はそうなんですよ。私の城は、あの遺跡なんですが、四天王の一人がここで魔導の研究をしていました。恐らく、下には、魔導関連のモンスターがウヨウヨしてますよ。


「こりゃ、少し荷が重そうだな・・・。領主から話を聞こうか・・・。」



俺は依頼書を手にすると、領主が住んでいる屋敷へと向かうことにした。


今日はワルフォイさんから話を聞いて、その後にミルナンたちのところに向かうとしよかな。



「なんか、ワルフォイって名前・・・」


「うん。“ワルっぽい”よね。もしかして、悪い人なのかな?」


「はは・・・。まさかそんな、わかりやすい名前じゃ・・・ないだろ・・・。」



俺たちは想像のワルっぽい人を頭を振って消去すると、先入観を極力捨てて依頼に向き合うことにする。


でもなぁー。この街に【ディケイナ(デケーな)】なんて名前付ける人だもんなー。


一概に、間違いとはいえないかもしれない・・・。






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