その者たち、転生者につき
「聞け!観測する全ての者よ!我、【エヴァグリア】の名の元に世界を渡る扉が今開かれた。この者たちを使者とし、彼の世界に安寧を授けよう!」
エヴァグリアと名乗った神様は、石の扉に手を置いた。
五メートルはあろうという、巨大で重たそうな石の扉だったが、普通の扉と変わらない軽さで扉は開いた。
開いた扉の隙間から、目が眩むほどに眩い光が溢れ出て、中から覗く俺たちを照らし出す。
「扉は開かれた。この光の向こうが、新世界【レイナス】だ。彼女が考え、彼女が育んだ世界。そして今では、彼女が隠れてしまった世界だ。」
「新世界レイナス。綺麗な響きだね!」
観月は名前を聞いて、期待を胸に膨らませているようだった。
気持ち、観月の胸が弾んで見える。
ぽよんぽよん…してるね、期待に胸が弾んじゃうね。
うんうん。いいお胸様だ!
「レイナス…。たしか、スペイン語で女王って意味だっけ?女尊男卑な世界なのかな?」
「だとしたら、ユーちゃんは私が守るよ!」
「おお、カッコイイ…。」
胸を叩いて、フンス!と鼻息荒く観月は胸を貼る。
もう、そんなポヨンポヨンして!
ボタンが弾けとんじゃうよ!
こぼれ落ちちゃうよ!
「任せて、任せて…って、何してるの?」
「え?あまりにポヨンポヨンするから、こぼれそうでさ。少し支えとこうと思って…。俺もお前を、主にお前の胸を支えるよ。ドンと任せて欲しい!」
観月の胸に手をそっと添える。
柔らかな弾力が、両手を包み込んだ。
揉んでみると、若く張りのある弾力が、俺の指を押し返してくる…。
ふむ。観月、また大きくなって、まぁ…お兄さん嬉しいぞ♡
「幼なじみとはいえ、嫁入り前の乙女の胸を遠慮なしに触るどころか、揉みしだくなんて…本当、ユーちゃんって変態さんだね?この手、折っていい?いいよね?」
ニコリと笑って、観月は胸を揉んでいた手を握りしめると、そのままギリギリと握りしめる。
「イギィャアアアー!!?折れる!折れる!ていうか、たぶん、折れた!折れたぁー!」
「折れたの?そうかぁ!これで少しは、女の子に手を出すリスクが減ったね♪よかった、よかった!」
「あぁ、減らされたよ!物理的にね!片腕失ったわ!ゴリラかよ、ったく。」
「ふふ…もう一本、いっとく?」
チラチラと俺の生き残った腕をみて、頬を染めながら観月はキュッ!と口ずさみながら、腕を掴む真似をする。
なんで、頬染めてんの!?バカなの!?
ていうか、腕折るってのに、『キュッ!』って、可愛らしい擬音だな!?
そんなんで折られるとか、俺の腕はマッチ棒かよ!
「爪楊枝…♡」
「今後一切、触んな!近寄んな!だいたい、なんで、転生前に両手を折られなきゃいけないんだよ!見たことも聞いたことないよ!そんなハードモードな転生物語!」
「それは~転生が初めてだから、あ・た・り・ま・え♪」
「黙らっしゃい!!もういいよ!」
俺は痛む腕を擦りながら、観月から離れると遠くで苦笑していたお姉さんに向き直る。
「グダグダ感満載だけど、安心して見ててくれよ。こんな幼なじみでも、結構、信頼してる頼れる相棒なんだ。」
「ふふ…。うん。二人を見てたらわかるよ。とても、信頼し合ってるのが、伝わってくる。姉さんのこと、お願い、ゆー君。」
名前を呼ばれたことに、一瞬、気を取られたが彼女のお願いは十分に分かっているつもりだ。
「…おう!任せてくれ。」
「あ、そうだ。大事な物忘れてた。コレ、あげる。大切に使って。」
お姉さんが思い出したように手を差し出すので、俺もつられて手を差し出す。
何が貰えるのかと、手に意識を向けた瞬間だった。
そのまま腕を掴まれると、お姉さんに引き寄せられ抱きしめられる。
驚く俺に、お姉さんは顔を寄せると…
chu♡
俺の頬に口付けをする。
少し頬を赤らめた顔で見上げると、お姉さんは少し笑って、俺の胸を撫でる。
「キス…実は初めてなんだ。君に私の初めてあげるよ。あと、ついでに私の“名前”も預けとく。きっと助けになるから。その力も好きに使って。きっと、ゆー君なら使いこなせるよ。」
「え?初めてなの?申し訳ないな、俺なんかでよかったのかな。でも、俺はすごく嬉しいよ。ありがとう!」
「ふふ…。私も貴方にあげれてよかった。私との思い出、大切にしてね!ゆー君!」
お姉さんは最後ににっこりと笑うと、手を振って俺を送り出す。
「ゆーうーちゃーん!?何してるの!?今、キスしてたよね!?してたよね!?」
「…頬だけどな。でも、彼女にとっても、俺にとっても大切なものだよ。大切な思い出だ。」
「あぁ…あぁ…。ユーちゃん…。もう、そんな顔で言われたら、なんも言えないじゃん。ずるいよ。」
俺の顔を見た観月は、最初、むくれてたものの、何かに気付いたのか、小さく息を吐いて黙ってしまった。
少し沈んだ彼女の肩を抱いて、俺は扉の前に立つ。
「…驚いた。まさか、あの娘がそんなことをするとはな。本当にユースケくん、君は幸運な男だな。彼女に、女神に祝福されるということは最高の幸運だぞ?」
「ふふ…。あぁ、俺は世界一、幸運な男だよ。綺麗で初心なお姉さんも、お茶目で面倒みのいい神様もついてるし、何より、可愛い幼なじみも隣に居てくれる。こんな頼りになる面子に支えられてる俺は、世界一幸運な男だ。どんな困難にも負ける気がしないね!」
「もう。調子いいんだから…。」
「ああ、本当にな。では、時間だ!儂らはいつも、お前たちを見守っている!二人とも儂らの名の元に、思うがまま存分に暴れて来い!!」
「「おう♪」」
俺と観月は神様に激励も込めて背中を叩かれると、その勢いも借りて扉へと飛び込んだ!
光の中に飛び込むまでの僅かな瞬間、隣を見ると観月の穏やかな笑みが俺を見つめていることに気付いた。
俺も小さく微笑むと、強く彼女手を握り直すと同時に光はより一層、その強さを増して俺たちを包み込んでいった。
さぁいくぞ、新世界レイナス!
お前の描く理想郷を、この力で、俺たちの色で塗りつぶしてやる!
そして、ついでに…旅の途中で女の子を集めて、ハーレム無双だー!!
「…ユーちゃん、心の声が口に出てるよ。」
「おっと!?」
「…向こうに着いたら、オイタができないように、チョン切るから。」
「ノオォォー!!?」
みなさんも転生した際には、色欲はほどほどにね!
さもないと…幼なじみにチョン切られるぞ!
栄咲 遊助 談