脇道逸れても気にせずにつき
メイさんの魔法屋さんを目指し、街を歩く・・・。
まだ結構、騒いでいる人が多かったが夜中ということもあり、徐々に静けさを取り戻しているようだった。
「お、夜中だってのに、灯りが着いてるな。」
『あはは・・・。夜中に叩き起したの、間違いじゃないかな~?』
「あ、やっぱ、普通は寝てるよね?」
『だと思うよ?メイちゃん、すごく怒ってたりして・・・。』
「・・・え、なにそれ。素敵じゃん。怒った顔のメイさん、見れるの?」
『前向きなダーリン、素敵だぞっと♡バカ言ってないで、行こう。風の便りだと、観月ちゃんもシルクちゃんも、着いてるみたいだよ~。』
「風の便りとか、便利な上に、素敵な名前。センスあるね、奥さん。俺の奥さんにならないか?」
『もう、あなたの奥さんですよ~。ほらほら、行こう?本当に怒られちゃうよ!』
「ん、了解しましたしたしたごころ~。」
『見え見えすぎて、忐、失敗しそうだね~。』
「“気をつける”*よ~。」
*中国語で、気をつけることを“上心”という。
二人で言葉遊びをしながら、店の扉をくぐると中では、お茶をしている三人がいた。
当然ながら、中に居たのは、メイさん、観月、シルクだね。
だけど・・・お・・・おおぉ・・・!!?
メイさんが・・・メイさんが・・・!?
「メイさん・・・かわいい・・・。」
「え、えぇ・・・?開口一番、ソレ?ま、まぁ、悪い気はしないけど・・・。にしし・・・///」
入り口で驚愕していた俺に、メイは照れた笑みを浮かべて、中へと招く。
その姿は、昼間の魔女っ娘の格好ではなく、少し子供っぽさも残る、ピンクと白のボーダー色のボア生地の寝巻きに身を包んだ可愛らしい姿だった。
・・・昼間の下着からは、想像もつかない格好だな。剥くと、真っ赤な情熱の赤い下着なのか・・・。
なんだそれ、なんだそれ・・・!!!
ギャップに萌え死にそうなんですけど!
「にしし・・・。ミツキちゃん、あれって、絶対、ハレンチなこと考えてるよね。」
「ふふ・・・。ちょっと、待ってくださいね?今、こっちの世界に呼び戻しますから・・・(ニコー。)」
観月はおもむろに立ち上がると、想像に悶える俺に向けて、熱湯をぶっかける。しかも、俺の下半身に!!
ーバチャ!!
「うわちゃ!?アチアチチ・・・!何すんじゃい!?急にいぃー!!」
「熱い?じゃあ、冷ましてあげるよ。〈アイス・バーン〉」
ーピキーン!!
このまま、能面のような笑顔を貼り付けたまま、観月は銃を撃つような真似をして、俺に向けて魔法を放つ。
何かが足に着弾したと思った瞬間、次は下半身を氷が覆い尽くした。
「さぶっ!さぶっ!!さぶーっ!!!ガタガタ・・・!!本当、急に何すんの!?とうとう、頭おかしなったんか!?」
「えー、だってー。ギャップがええんやろー?せやから、ほら、“熱いの”とー、“寒いの”でーギャプ萌え死にさしたろうかなー?おもてん?」
どないやろ?萌えた?とくりくりとした目で、俺を見上げるドアホ。
ホンマ、どついたろうか、コイツ・・・。
「おもてん?じゃないわ!ドアホ!ギャップちゃうねん!それは単なる暴力や!これで死んだら、萌え死やのーて、ショック死やからなぁ!あと、なんで、関西弁!?ちょくちょく方言変えるのやめませんかね?貴方、九州の人でしょ!?」
「えー、だって、かわいいじゃん。方言って。」
プーと頬を膨らませて、観月は俺を不満げに見る。可愛く思わないの?と訴えるような視線に、俺は眉寄せると息を吐く。
「それには、激しさ三割増しで同意だが・・・。観月の九州弁も可愛いぞ?」
「本当?じゃー・・・。コホン・・・。(博多弁)⇒キミのこと・・・ばり好いとー!今日・・・家に親おらんと。部屋にあがってかん?」
「くぅ~~!!両親居なくて、家にあげて・・・なんばすっとですか!?このハレンチ娘は!」
「やーん!そげんこつ、女の子の口から言わせんでぇー///」
手を胸の前で組んで、観月は頬を染めてハニカミながら俺を誘ってくる。
「すんません!メイさん!ちょっと野暮用ば、思い出したけん、帰ります!どぉし!なら行こうか、観月ちゃん!」
「うん♡」
ー ギュ♡
「チョイチョイチョイ・・・!待て待て・・・!待てコラ、サカエ。あと、ミツキ。来い。戻って来い。私を置いて話を進めるな。戻れ。席に付け、バカチンが。」
メイさんに軽く手を振り、観月の肩を抱いて、部屋を出ようとすると、メイさんは手を招いて怒り顔で自身のテーブルを指さした。
あ、結構、お怒りの様子ですね。
あと、キャラ変わってるし。
ここは大人しく戻るとしよう・・・。
「はー・・・まったく、キミたちって、普通に話を始めれないの?」
「普通に始めたら、負けかな・・・って、思ってる。やっぱり、人生は人を笑わせて、なんぼだと思うんだ。」
「うん、そうだね。笑えなくなった人生は、そこで終わりだと思うよ。」
「「ねー♡」」
二人で顔を見合わせると、にっこりと笑い合う。
俺たち、結構、こういうところ似てるんだよな。
「はは・・・。本当、楽しそうだね、君たち。」
目の前で見ていたメイさんは苦笑を浮かべると、ラベンダーの紅茶を俺たちの前に置いていく。
ラベンダー・・・か。メイさん、あの騒動から、なんともなかったのかな?
「それで、どうしたの?急に外が騒がしくなったかと思えば、店の窓を叩く音がするじゃない?ミツキちゃんが、二人分の荷物抱えて、シルクちゃんの手を引いて来たから、何事かと思ったよ。見た目だけなら、実家に夜逃げしてきた嫁さんみたいな疲れた顔してたし。」
当時の状況を振り返り、メイさんは本当に驚いたことを告げると苦笑を浮かべる。
「あははー!ごめんなさい。慌ててたもんで、避難先がここしか思いつかなかったもんだから。」
俺は頬を搔くと、メイさんに改めてこの経緯を説明することにした。
「外が騒がしかったのは、街に魔王が出たからだよ。」
「あー、そりゃ、外も騒がしくなるよねー。魔王かー・・・ふーん。」
お茶を飲んで、思考を巡らせながら、メイさんは頷いている。
魔王と耳にしても、別段、驚く様子もない。
さすがは、ギルマスの娘リアさんの友人だ。
肝が座ってらっしゃる。
これなら、話を進めても大丈夫だと、判断し、さらに言葉を続けた。
「魔王が出てきた理由は、この世界のおかしくなった場所、おかしくなった文化を壊すことが目的なんだ。」
「へぇー。そうなんだ・・・。まぁ、魔王の目的はそれぞれだからね。過去の魔王も色んな思惑を持って、現れてたし・・。」
「自分の信念に反する行いをする者を見つけた魔王は相手を倒した。それが、天使だったんだ。天使が討伐されたことを知ったみんなは、魔王が許せなくて断罪しようと動き出した。」
「まぁ、そうなるよね。天使はこの世界では、神聖な存在だからさ。誰が呼んだか、女神様の遣いと言われてるくらいだから、討伐なんてしたら、信者から相当、反感を買うと思うよ。まぁ、私はそこら辺、関係ないけど。」
紅茶を一口飲み一息つくと、そのまま、身を乗り出して俺の顔を覗き込んだ。
「大体の流れは分かった。でも、私が知りたいのは、みんなが、こんな時間に慌てて来た理由だよ。だって、町は今、静寂を取り戻してきてる。それは、魔王がこの地を去ったことを意味しているんでしょうね。なのに、二人は宿に戻ってない。それはなんで?宿で何かあったんでしょ?魔王と天使が現れて暴れたのは・・・もしかして、サカエくんたちの宿だったんじゃない?」
「ふふ・・・。なるほどそこまで、先読みしてたか。」
俺はここまで、あえて、表層だけを説明していた。
見方によっては、見ていただけの内容に聞こえるように。
正直、迷っていたのだ。
もしも、目の前のメイさんも、街にいた少数の人達と同じ反応を見せたらと、不安で仕方なかった。
信者たちからすれば、受け入れ難い真実を突きつけられ、更には、信仰対象を討伐された。
どう考えても、信者達からすれば魔王は平和を脅かした大罪人にしかならないのだ。
「試すような真似はやめて?私これでも、一途なの。信じると決めた人はとことん信じるし、助けてあげたい。だから、ね?サカエくん。私の前で、真実を隠そうとしなくてもいいよ。確かに人間誰しも、秘密はあるけど、あんまり、隠されてばかりだと、私も寂しいからさ・・・。特に、キミはね。私にとって特別な人だから・・・。」
話している内に、もの悲しそうにトーンが落ちたメイさんは、視線を自身のカップに落とすと、その口を指先で撫でる。
少し、拗ねているようにも見え、俺は思わず笑みを零してしまった。
あぁー。ここで何も知らないって、しらばっくれることもできたけど、そんな顔を見せられちゃーな。
嘘はつけないよな・・・。
「ごめんね、メイさん。今から話すことはできれば、誰にも言わないで欲しい。」
「誰にも?リアにも?」
「リアさんには、まだ言ってないことなんだ。だけど、彼女も感がいいから、いつかはバレると思う。それまでは、黙ってて欲しいかな。」
「・・・たぶん、次会った時には、伝えといた方がいいよ?リアなら、どんな事でも、協力してくれると思う。彼女にとって、キミはそれだけの存在なんだから。私がそうであるように、ね。」
メイさんは小さく微笑むと、指を振ってみせる。
その瞬間、玄関の鍵がひとりでに締まり、窓のブラインドも全て降りる。
不思議なことに、僅かに感じていた外の気配も全くといっていいほど、感じ取れなくなった。
▷防音の魔法の重ねがけですね。さらに魔術遮断も感知。完全に、この店の中だけ、切り取って、別空間に置いたような・・・結界に近い状態になりましたね。素晴らしい。
▶︎かなり高度な魔法ですよ?王宮で使われるレベルです。これなら、外部に情報が盛れる心配はありませんね。
「防音魔法か。いいなー。俺も覚えたいな。」
「へぇ・・・。これだけで、分かるんだね?さすが、アスミさん(女神 アスモデウスの別名)の秘蔵っ子。普通は気付かないんだけどなぁ。余程、魔力感知能力が高いんだろうね。それなら、A級の魔法使いと変わりないよ。」
口元に指を添え、クスクスと笑うと、手を差し出した。
「さぁ、これで、誰にも気を使わず、話せるよ。サカエくんの秘密・・・お姉さんに教えて?」
「俺の秘密を教えるので、代わりに、パンツ見せてもらえますか?」
「え、えー・・・?それは・・・その・・・あの・・・え?本当に?」
「本気です。あなたのパンティを、見せて頂いてもよろしいですか?マドマゼル?」
「え・・・?えー・・・///」
戸惑うメイさんに、俺は真剣な表情で頷き返す。
「おい、エロスケ。交換条件が露骨に変態がかってるぞ?なんだ、パンツって。昼に散々私の見ただろ?」
しばらく傍観していた観月が、俺の肩に手を置いて、横から覗き込んでくる。
怒りがMAXまで跳ね上がったせいで、目が完全にイッテらっしゃる。こわい・・・!!
だが!ここで折れるわけにはいかないな!
なんとしても、メイさんのおパンティを見たいんだ!
前回は、シルクが頑張ってくれたが、今回は俺が頑張る番。
この世界のおパンティ研究家の第一人者として、俺は折れるわけにいかない!!
この手で!この手で、拝まなきゃいけないんだ!!
「俺のパンツ欲が、満たされることは絶対に無い。いつだって、鑑賞できるなら鑑賞したいし、鑑賞し続けたい。なんなら、額に入れて飾りたいくらいだ。そうだ・・・それがいいな。ハーレムが大きくなったら、1枚づつパンティを皆からもらって、額に飾ろう・・・。そして、パンティ美術館を作ろう!ハレンチの夢が沢山詰まった美術館を作ろう!」
「額って・・・美術館って・・・。ハレンチの夢って・・・何言ってんだコイツ。あぁ・・・ダメだ。とうとう、ここまで変態を拗らせいたなんて・・・。ここら辺で、始末しておこうかな・・・この世界のために・・・。」
「なんだよー!俺の夢は男の夢だぞー?パンティ美術館。いいじゃないか。絶対、男は立ち寄るって。毎日、満員だ!!密密だよ!男の夢と希望に、みんな、ぎゅうぎゅうのぎゅーだ!きっと、何周もする男もでるぞ!間違いなく!!」
「一日で潰れてしまえ、そんなハレンチ美術館・・・。はぁ・・・。」
何かに耐えるように、観月は深いため息を吐くと、頭を抑えて目を閉じる。
「さすがに、美術館に下着の寄付はできないけど、サカエくんが望むなら、その・・・見せてもいいよ?できれば、その・・・いきなりとかじゃなくて、準備できてる時とかにしてもらえると嬉しいかな・・・?」
モジモジと指を絡めて、恥ずかしさいっぱいの表情でメイさんは俺を見上げると、その潤んだ瞳を向けて、了承の意志を示してくれる。
つまり!?これって・・・つまりいぃーー!?
「ヤッフウゥーーー!!お約束、頂きましたあぁーー!!メイさんのパンティ特別鑑賞会のチケットゲットしたよぉーー!やったぜえぇー!」
「えっ!?あ、え!?特別・・・鑑賞会!?え!?なにそれ!?何するの!?」
「あーあ。メイさん、やっちゃったー。知らないからねー?どんなハレンチなことされるか、分からないよぉ?」
「えぇー!?あわわ・・・キャ、キャンセル!」
「できませーん!」
ー ブブーーーーーーウ!!
「あわあわわわわ・・・どうしたらぁ・・・!」
あまりの喜びに立ち上がり諸手をあげて小躍りする俺を見上げて、席に座った観月は呆れてため息つき、メイさんは真っ赤になって、どうしようかと狼狽していた。
あぁ・・・幸せだぁ・・・。いい夢、見れそう。
俺は胸の手を当てると、ホゥと息を吐いて席に戻った。
席に着いた俺を見て、話が戻ると察したメイさんと観月は俺に向き直る。
「まぁ、冗談は置いておいて・・・。それで、サカエくんの秘密って?」
「冗談ではないので。本気なので。メイさんは後でハレンチします。たっぷり、ヌッポリ、ハレンチします。」
「う、うぅ・・・!?リア・・・ごめん・・・。先に食べられるかもしれない・・・。旦那様の押しが思いの外強すぎるよぉ・・・。」
真面目な顔でキッパリと告げられ、メイさんは真っ赤になって俯くと、友人のリアさんに向けて謝罪の声を漏らす。
むしろ、リアさんなら、『やっちゃえ♡』って、親指立てて満面の笑みで、言いそうだけどね・・・。
まぁ、二人の誓いを邪魔するわけにはいかんか。ここは、ソフトハレンチで我慢しておこう・・・。
亀甲縛りで、言葉責めだな。
うん、ソフト・・・。ソフト・・・?
「ほら、ユーちゃん、話戻さないと、メイさんも明日があるんだから。」
「あ、そうだな。えっと・・・。俺が、その新しい魔王アスモデウス本人です。おしまい。」
「・・・・・・へ?」
「よし!やっと伝えられたね!よかった!よかった!」
「うん!満足!満足!」
さぁー!終わったー!っと、俺は伸びをすると、観月と握手を交わし、席を立ち上がる。
新しい宿見つけないとなー。
「そういうわけなので、秘密を知ったメイさんは、もう、強制的に俺たちの仲間です。これから、よろしくお願いします!」
「ふえぇーーーっ!!?」
目を丸めて固まっていたメイさんは、ガタガタと震え始めると、俺を指さして、もう一回・・・
「ふえぇーーーっ!!?」
目をさらに丸めて、叫びをあげた。
とりあえず、落ち着かせよう。
ーーーー五分後。
「ふえぇーーーっ!!?」
全然、落ち着かねーwww
俺たちの説明会は、結局、朝まで続くのだった・・・。




