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その日、新たな魔王登場につき

そもそもなぜ、急に勉強会を開くことになったのか、それは少し前に話は遡る。


愛する人、観月に強姦紛いの行いを働いた天使と名乗る子供を倒した後の話だ。


周りを見渡せば、泊まっていた宿は半壊。

夜中だったこともあり、周囲は混乱に満ちていた。



ー おい!宿が半壊してるぞ!?

ー 怪我人はいないか!?



騒然となる周囲に、俺たちは物陰に隠れながら、どうしようかと話し合う。



「あー・・・大混乱だね。」


リライア(サカエの完璧秘書)▷ まぁ・・・。泊まっていた宿がいきなり、崩壊したら誰でもそうなりますよね。でも、どうします?これ、かなりまずい状況ですよ?


「素直に、強姦されそうになったって、私が伝えたらダメなのかな?犯人もそこに倒れてるし・・・。」


魅玖(元魔王マモン)▶︎・・・やめた方がいいですよ。強姦魔のあの自信。恐らく、あの反吐が出る天使の行いを、この世界は認めているんです。それか、全く知らないのか・・・。どちらにせよ、私たちの言葉を素直に信じる人の方が少ないのは予想できます。



「魅玖は前魔王のマモンなんだよな?百年前から、こんな状態だったのか?」


▶︎いえ、百年前は普通に人々は営みを重ねていましたよ?私が遺跡で討伐されてから百年、情報が遮断されている間に何かあったとしか思えません・・・。


▷ここ百年の歴史を調べなくては、相手の正体も分かりませんね。迂闊にここで天使を討伐したとされれば、重罪人扱い・・・。



「めでたく、俺たちの旅はここで終焉ってわけか・・・。まぁ、そうはさせない。このハーレムは俺が護る!」


「ユーちゃん・・・。」



というか、俺のハレンチ物語をこんなところで、終わらせたまるかっての。

絶対、女神を見つけ出して、ハレンチしてやるんだ。


だって、女神はアスモデウスのお姉ちゃんだぞ?(✱一巻読了推奨)


絶対、美人に決まってるじゃないか。


そんなの・・・ハレンチするしかないっしょ!!



「よし!ヤルぞ!!」



俺は小さく息を漏らすと、決意を固め、腕のブレスレット型の武器箱から黒い鎧を呼び出し装着する。



「どうするの?」


『観月は俺の荷物を見といてくれ。あと、宿屋さんには、天使の話は伏せて、寝てたら崩壊に巻き込まれたと告げるんだ。サカエは、ギルドに行ってたとか、適当に誤魔化しといて。俺はこの鎧で皆の目を惹き付けて、一旦、ここから離脱する。・・・そうだな。メイさんの魔法店に集合で。』


「うん・・・分かった・・・。つまり、この場から逃げるってことだね!」


『あはは!せぇーかぁーい♪』



グッ!と二人で親指を立てると、俺は踵を返して、物陰から出る。

絶命した天使を引っ捕まえると、崩壊した瓦礫の山から、外に退避していた群衆の前に、ゆっくりと歩み出す。


ーな、なんだ!?あの黒い鎧の男は!?

ーなんて、恐ろしい姿・・・怖い・・・。


ーあの握ってるのは・・・天使様じゃないのか!?

ーなんて、不敬なことを!

ー捕まえろ!

ーそうよ!きっと、アイツがこの崩壊の原因よ!


等々、色んな叫びが木霊する。


天使を引きずる俺を見て、批難する声も少なからず見られることから、リライアと魅玖の予想は、概ね正解と言えるだろう・・・。


あ、でも、全員が全員、天使を信じてる様子があるわけではなさそうだな?

半分くらいか?



『あ・・・あー。ねぇねぇ、魅玖ちゃん・・・。』


▶︎え?あ、はい。・・・ちゃん?・・・ちゃん?


『この鎧に、声を変える機能とかついてないよね?』


▶︎変声ですか?そうですね、私が魔王だった頃は、譲渡して貰った特別威圧感の高い声を、使用してましたから。


▷では、音魔法をこの鎧に付与しましょう。

兜の口の部分に付与して・・・拡声機能もつけましょう。あとは・・・そうですね。無駄に威圧スキルをはね上げてー・・・。ふふ!黒いスモークなんて、どうでしょう?


▶︎うわー・・・楽しそう、リライアさん。それだと、主様の嫌がってた魔王に近付いちゃいますけど・・・。



『いいーねー・・・。』


▶︎あ、いいんだ・・・。


▷ふふ!やったー♪



キランと、甲冑の奥で目を光らせ、俺はほくそ笑む。確かに、言われてみて気付いた。


そうだ。この際だから、魔王に全部、罪を着てもらうのはどうだ?


魔王といえば、世界の理から逸脱した存在だ。批難ゴーゴーされたとしても、ある程度、人の理は無視できるはず・・・。


何かと都合が悪いことは、これから魔王アスモデウスで行い、普通の生活は、栄咲遊助で行う・・・。


イイじゃん、イイじゃん!!それイイネ!



『リライア案、採用で。思いっきり、派手に、おどろおどろしく、一発で魔王が来たと分かるような演出で、皆をビビらせて逃げよう!』


▷分かりました!お任せください!では、変声から~ふふ!楽しくなってきましたね!


▶︎リライアさん、そんな、お茶目さんキャラでしたっけ?



ーザワザワ!

ーなんだ?動かないぞ?


ーこの人数だ、ビビって動けねぇんじゃねーか?

ーよし!ならば、今のうちに捕まえよう!


ー捕まえろ!捕まえろ!

ーあの男を!天使を殺した大罪人を!



群衆の目に、“罪人の捕獲”が浮かび始めた頃だった・・・。


ぐるりと、半壊した宿から俺は集まる群衆を見回し、小さく笑った。


さぁ、始めよう・・・。

魔王アスモデウス登場の一幕を。


この天使の盲信者(バカども)どもに見せてやろう・・・。自身の信じたモノがどれだけ非道な行いをしてきたのか。


そして、突如現れた俺はどういった存在なのか・・・今知らしめてやる!!


絶命した天使をズルズルと引きずり、俺は群衆の前に歩み出す。



『我を捕らえる?戯けたことを言うな、人間風情が。我が誰か知らぬのか?』



ーズドン!!


喋ると同時に、威圧スキルを解放し、一気に放出する。



ー っ!?

ー あ、あぁ・・・!



目の前にいた群衆の数人はこれだけで立って居られず、ヘナヘナと腰が抜けたように、その場に崩れ落ちた。



『知らぬというのなら、教えてやろう・・・。我が名はアスモデウス。この地を統べ、この世界を終わらせに来た。地獄の王が一人。魔王アスモデウスだ。』


ー 魔王だと!?バカな!?そんなの聞いてないぞ!?

ー 魔王が二人もいるのか!?

ーうそよ!こんなところに魔王が居るはずないわ!!



『喚くな、鬱陶しい。此度の戦いは少し違うぞ、人間。我はお前たち人間に一切の興味などない・・・。我が望みは一つ。この世界の歪んだ秩序の粛清だ。』


ー歪んだ・・・秩序?

ー歪めてるのは、お前たち魔族じゃないか!

ーふざけるな!天使様を返せ!



『ふざけているのは、どっちだ?お前たちは理解していない。この世界の真実を知らぬお前たちに、我は心底、幻滅したぞ。・・・粛清だぁ。お前ら、全員、粛清してやる。』



ー真実?

ー知らない?

ー粛清?

ー何を言って・・・。



『この羽根の生えたモノを“天使”と呼び、お前たちは迎え入れている。祝福を与えてくれると盲信している・・・。だが、こいつをしっかりと見た者はどれだけいる?この場にどれだけいる?こいつが、裏で何をしていたか、知っている者は?』



掴んでいた天使を、見せつけるように、皆の前に突きつけた。



ー天使様だ!やっぱり!あいつは天使様を殺した!

ー大罪人だ!捕まえろ!

ーいや!捕まえるだけじゃ、生ぬるい!殺せ!天使様の仇を摂るんだ!

ーその者に正義の鉄槌を!



『・・・五月蝿い。話しているのは我だ・・・。』



武器持ち、駆け出そうとする一人を睨みつけると手を掲げ、風魔法を凝縮した気弾をぶつけて吹っ飛ばした。



ー ドシャッ!!

ーきゃああぁー!!?

ー ひぃっ!?



あー・・・牽制のつもりだったけど、思いの外、吹っ飛んだな。大丈夫か?


何の詠唱もなく、吹っ飛ばされた人を見て、周りの者たちは混乱に満ちた表情で俺を呆然と眺めていた。



『我は問うているのだ。このモノの正体を知っている者はいるのかと。』



ー知っているもなにも、天使様だ・・・。それ以外のなんだっていうんだ・・・。


皆、困惑した表情で、掲げられた天使を見つめていた。



『はぁ・・・。ならば、教えてやろう。』



俺は天使の亡骸を目の前に打ち捨てると、最大火力で、炎魔法を放った。


フレア(火葬)!!』



三メートル程になる、濃密な火柱が天使の亡骸を包む。


ー熱っ!?こんなに離れているのに!?

ーなんて熱量だ!?

ー大魔法使い級の魔力なのか!?


やがて、一分もしないうちに、天使の亡骸は灰に返ってしまう。


その灰を軽く足でさらうと、その中から黒く煤けた石を取り出した・・・。


それを唖然とみていた女性へと、投げ渡す。



『これが何か、分かるか人間。』


「これは・・・石?」


『そうだ。石だ。だが、ただの石ではない。天使の中にあったもの。それは“魔石”だ。』


「魔石!?」


ーザワッ!?


驚きに目を丸める女性同様、周りの連中も驚きの表情を隠せないようだった。



「うそ・・・うそよ・・・。」


『その手にあるもの。それが真実だ。お前たちが目を逸らし続けてきた真実だよ。お前たちの崇める天使とやらは・・・“モンスター”の仲間だ。そこいらのゴブリンやオークと変わりない。知性のあるモンスターなんだよ。』



ーザワザワ!!?



認めたくない、認める訳にはいかない・・・。

そんな、あまりにも酷い事実を、あえて口に出され、更に皆の中に動揺が広がる。


『それを知らず、のうのうと生きて、お前たち人間は・・・祝福、祝福と。バカどもが!!!』


ーズドン!!!


俺は怒りを燃やし、目に見える程の魔力を全身に纏って、目の前の群衆たちを一喝する!


上乗せされた威圧に、更に何人もの人間たちが腰を抜かして、その場に倒れる。


ーウソだぁ・・・!

ーう、うぅ、うわあぁーん!!

ー天使様が、モンスターだと?

ーあの、野蛮なゴブリンと変わらない存在?

ー嘘だあぁー!!



『信じることは決して、悪いことではない・・・。だが、それが本当に真実なのか、嘘なのか。それを見極めることができるのは、お前たち人間だけだ!お前たちには、知性があり、それを元にして、多くの文化を築いてきた過去がある。そして、これからの未来を創るのも、お前たち人間なのだ!それが、どうだ。自分たちの手の届かない・・・神々しいまでの存在が現れた瞬間、考えることを放棄した・・・。どうだぁ~?よくも分からぬモンスターに身を委て過ごす日々は、楽だったろう?だが、今、気付いたはずだ。お前たちは、ただのバカどもに成り下がってしまったのだと。・・・故に・・・!!』



俺は手を天に掲げると、ポッ!っと火を灯す。


ーヒュー・・・オオォ・・・ゴオオオォォーー!!!



それは次第に大きくなり、渦を巻いて、一帯を覆うほどの巨大な火球へと変貌した。



『お前たちは、今から粛清だぁ・・・。考えることを放棄し、モンスターなどを盲信し、奴らの胞子を受取り続けた苗床など、我が求める世界には不要!!全員、焼き尽くしてくれようぞおぉー!!!』



▷え?焼き尽・・・えぇ!!?ちょ!?ま、待ってください、マスター!?なんか、流れがおかしい方向になってませんか!?

▶︎あ、あれ?なーんか、もしかして、役に入りすぎるタイプでした?


『ふははははー!!ほぅら!逃げろ!逃げろ!焼き尽くされてしまうぞおぉー!?』


ーに、逃げろおぉー!!

ーきゃあぁぁー!!


「逃げよう!エメラルダ!ここは危険だ!!」

「あぁ・・・ポール!私、こわい・・・!!」



・・・お!?ポールとエメラルダだ!

お前ら、本当どこにでも居るな!?


逃げ惑う群衆の中に、ポールとエメラルダを見つけ、甲冑の中でほくそ笑む。


ちょうどいい・・・リア充なんぞ、俺様の手で焼き尽くしてやるわ!!



俺は火球を振りかぶると、リア充めがけて投げつけた!



▷この人、マジで投げましたけどぉー!!?

▶︎うわわわぁー!!!?町が吹っ飛ぶ!?



ー カッ!!・・・ドカアアァーーン!!



ポールとエメラルダが居た場所から少し手前に着弾した火球は、その膨大なエネルギーを放出し、衝撃と共に、辺り一帯を爆発と火炎で包み込んでいく・・・!!



「くっ・・・うぅ!エメラルダ・・・に、逃げろ・・・。君だけでも・・・逃げるんだ・・・。」


「ポール!ポール!嫌っ!嫌よ!ずっと、一緒だって言ったじゃない!!」



うまく外したつもりだったのだが、運悪く、飛んできた瓦礫が当たってしまったらしく、ポールは道の真ん中でうずくまっていた。


その傍らにはエメラルダが寄り添い、必死に助け起こそうとしている。



『・・・ふっ、ふははははー!!』



逃げ出した群衆たちが、遠巻きで見守るなか、二人の前に降り立った俺は、両手を広げ二人を見下ろした・・・。


地面にうずくまるポールと、それを庇うように覆いかぶさっているエメラルダ。


俺は二人の前に歩み寄ると、手を向けて、大きく笑い声をあげる。



『どうした?逃げられないのか?無様な。人間は脆くて困るなぁ。瓦礫が当たったくらいで、動けなくなるとは・・・。』


「くっ・・・行け!エメラルダ!僕を置いて、行くんだ!!」


「嫌っ!嫌よ!私も残る!ここで貴方が死ぬというのなら、私もまた、ここで死ぬわ!・・・貴方のことを心から愛しているもの・・・。どこでだって、あの世だって、貴方と共に歩んで行きたいの・・・。」


「あぁ・・・!エメラルダ・・・!なんてことだ・・・ありがとう・・・愛しているよ!」


「ポール・・・!愛しているわ!」



ーヒシ!



二人は死を覚悟したのか、潤んだ瞳で見つめ合うと、しっかりと抱きしめ合う。


笑い合うのも一緒。泣くのも一緒。

怒るのも、楽しむのも、そして、死ぬことすらも・・・全て一緒だと、二人の様子からヒシヒシ伝わって来た・・・。



「さぁ!魔王アスモデウス!!やるなら、一思いにやりなさい!たとえ、この身が滅んでも、私たちの魂は未来永劫、共にいるでしょう!たとえ魔王であろうが、固く愛で結ばれた魂までは、従わせることも、奪うことも、陵辱することも決してできはしないのよ!!」


「たとえ、離れ離れにされても、僕はきっとまた出会う!必ず!何度でも出会ってみせる!愛し合う魂の前に、国境も種族も、生死すらも関係ない!愛ある魂は、どんな苦難をも退ける力があるんだ!!」



互いが互いを庇い合い、寄り添い合う。

まるで“人”という字を示すように、二人は寄り添いながら、強い眼差しを持って俺を見つめ続けていた。



『・・・ふっ。(ただイチャつきあってるだけの、リア充かと思ったが、なかなかどうして、見所があるじゃないか。この二人。もう少し・・・見守ってみたくなるな。)』



俺は小さく笑うと、二人の前にしゃがみこみ、その肩に手を置く。



『・・・それでこそ、人だ。』


「「えっ!?」」


『さっきも言ったが、何も、信じることを悪いとは言わない。ただ、本当に信じるべきは何か、それを自身の頭で考え、自身の未来に活かして欲しい、それだけだ。君たちの姿こそ理想だよ。互いを想い、互いを信じ、その愛を信じる。それが、如何に難しいか、人の歴史が示している通りだ。だが、それでも、お前たちがその想いを貫くというのなら・・・我は・・・それを見届けよう。』



「えっ?」


「貴方は・・・。」



ふっ・・・。と俺は笑みの零すと、二人から離れる。マントを翻すその影で指輪をなぞり、風の精霊シルフィを呼び出した。



『シルフィ・・・行こう。もう、ここに用はない。』



俺の呼び出しに応えるように、目の前にシルフィは現れると、パタパタと羽を羽ばたかせて、フワリフワリと俺の周りを飛び回る。


それと共に、風が僅かに起き始めた。



『いいの?』


『あぁ!ド派手に、頼む!』


『はーい♪』


『愛を貫きし二人よ、さらばだ。永遠にその愛が続くことを願っている。だが、もしも約束を違えた時は・・・二人とも粛清だぁ・・・。ふふ・・・!』


「・・・え、え?」


『ダーリン!いっくよ~!しっかり、歯を食いしばりなさーい!』


『おう!』



ービョオオオォーー・・・!!!



シルフィの号令で、身構えると、町中の至る所から、俺めがけて突風が、押し寄せる。


俺は風に押し上げられるようにフワリと宙を舞うと、そのまま、天高く舞い上がった・・・!!



ーと、飛んだ!?

ーば、バケモノだ!

ー空を飛ぶなんて、そんなの、人間にできるのか!?

ー魔王だ!本当に魔王が目覚めたんだ!!



『そうだ!その目で見た事を忘れるな!我はアスモデウス!この世界を終わらせるために地獄より来た、“色欲と激怒”の魔王だ!!』



ー魔王!

ー魔王だ!

ー魔王が現れた!

ー新たな魔王が現れたぞ!


群衆の声を背に、俺は満面の笑みを浮かべると、更に高く飛び上がり、そのまま街の外へと、飛んで行く・・・。



『飛んで行く・・・。ていうか、飛ばされてんだよなー、これ。』


『ふふ・・・!風に乗るって気持ちいいよねぇー!』


『まぁ、否定はしないな!すごく、月が近いや!』


『うん!今日は満月!空を飛ぶなら、すごく素敵な夜だよ!』



月明かりを眺めながら、目の前を飛ぶ精霊が微笑みを浮かべる。


月明かりにキラキラと光るその姿は、まるで、物語に出てくるティンカーベルのようだった・・・。


さながら自分は、ピーターパン?


ふふ・・・えらく、無骨なピーターパンもいたもんだな。


なんて、苦笑していると、俺の笑みにシルフィも嬉しそうに微笑みを返し、俺の目の前で手を広げる。



『ふふ・・・。二人きりだね、ダーリン♪』


『あぁ・・・。二人きりだ。シルフィ。』


『あ、あのね?私、まだ言われてないんだけど・・・。言葉にして、ハッキリ言ってくれないの?』


『ん?・・・あぁ、あれ?まさか、え?言ってない?』


『うん・・・まだ。』


『そ、そうか・・・。それは悪かった・・・。』


『うんん!大丈夫!』


『それじゃあ、言うぞ・・・。』



俺は鎧を解除すると、月明かりを浴びながら、目の前の女の子を手の平に乗せ見つめる。



「シルフィ、愛しているよ・・・。」


『っ~~!!私も!愛しているよ!ダーリン♡』



ー ちゅっ♡



俺の顔に飛びついたシルフィは頬にキスをする。少しくすぐったさを感じたが、確かに彼女の温もりを感じられたので、お返しにと、彼女の頭にキスを返した。



『っ~!!幸せ~!!ふふ♪』


「ふふ・・・!・・・って、うおぉー!!?制御忘れてない!?」


『ふふふ~♪ん・・・?え?あ・・・。』



ー ビョオオオォー・・・!!!



シルフィは嬉しそうに俺の周りを飛び回る。

嬉しそうで何より・・・だけど・・・。


集中力が乱れたのか、制御を失った風は勢力を増して、俺を近くの森へと吹っ飛ばすのだった・・・。



魔王の消えた街では、人々がまだ混乱に包まれていた。


あるものは叫ぶ。

新たな脅威が現れた、と。


おるものは嘆く。

人に敵うものか、と。


あるものは悲しむ。

信じるものを失った、と。


あるものは憤る。

否、全ては虚言である、と。



そして、あるものは・・・。


「・・・実はいい・・・魔王?」

「なのかしら?」


手を置かれた肩の温もりを思い出し、少し笑みを浮かべて、どう判断すべきかと首を捻るのだった。



その時、二人が感じた温もりは微かなものだった。

だが、その温もりは大きな熱を帯びて、やがて多くの人々を包むことになる。


世界を浮かせるほどの熱となった時、魔王アスモデウスを中心とした大きな熱は新たな世界を開く鍵となっていくのだった・・・。



これが、魔王アスモデウスが初めて歴史書に登場した一幕である。


後の人の世に、大きな影響を及ぼした人物として、その名は広く広まり、永く語り継がれていくことを、この時はまだ誰も知らない・・・。



「う~ん・・・。」


『調子乗りすぎたぁ~・・・。』



当然、林に不時着して目を回すユースケとシルフィは、知る由もなかったわけだ・・・。



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