その祝福、不要につき
「…………。」
シルクくらいの大きさの男の子が、観月たちのいる部屋にまたしても現れた。
ー スー……トン……。
部屋へと入ってきた子供は部屋の中を見回すと、寝ている三人を確認し観月の元へと足を進めた。
「さて……。前回は見送ったけど……今回は……?」
観月を見下ろした子供は、前と同じように腰につけていた布袋から透明な水晶を取り出すと、観月の頭にそっと付ける。
ひし形の透明な水晶はやがて、鮮やな青から緑、黄色、橙色へと変わった。
「っ!?二十回以上だって……?前回から二日しか経ってなのに、見た目によらず、破廉恥な女だな……。しかも、これで聖女の称号付き?信じられないよ……。まったく、世も末だな。」
心底、呆れた声を漏らすと、子供は水晶を袋にしまい、観月の布団を静かに剥ぎ取った……。
「しかし、どんなにボヤこうが、これもボクの使命。どんなふしだらな女だろうが、祝福を与えるのが、ボクの……【 天使 】の役目だ。」
子供は皆を起こさぬように観月に跨ると、小さく呪文を唱え始める。
「天に居わします我らが女神に変わり、この者に最高位の祝福を与えましょう……。大いなる光の加護とともに、新たなる生命を授けます。受け入れよ、我が祝福を。この身は女神の代弁者。受け入れよ、我が祝福を。その身に祝福されし御霊を宿し、約束されし地に至る御子を増やせ……。《 |Annunciation《受胎告知》 》。」
ー シン……
呪文を終えた瞬間、部屋の空気がガラリと変わる。
聞こえていた微かな息遣いも掻き消え、夜闇から覗いていた蠢く気配もない……。
静寂に満たされた部屋の中には、まるで天使と名乗る子供と、観月だけが切り取られたようだった……。
「……さぁ、始めよう。真の祝福を……!」
天使が手を広げた瞬間。
ずるり!!と音を立てて、天使の背中から二本の触手が生えてきた。
否、天使の羽が変形したのだ。
天使の羽は無数の小さな触手が、集まった繊維の塊であり、それが自在に形を変えているようだった。
クチャ……クチャ……グチャ……と音を立てながら、ぬらぬらと濡れた触手が、ゆっくりと観月の四肢に絡みついていく。
まるで、長い舌を何本も這わさせるように、触手は観月の浴衣の中へと潜り込んでいく。
「ん……んん……。」
「おや……。これくらいの刺激で、意識が覚醒しそうになるか。感覚が鋭いのか?……万が一に備えて、眠りを深くしておこう。《〈|天使の涙《Hypnotic drug》 》。」
触手の一本が観月の口に近づくと、ポタリと雫を落とす。
観月の口に入った雫は、甘ったるい香りを辺りに撒き散らすと、ゆっくりと観月の呼吸ともに、肺の中へと入っていった。
「これでしばらくは、何をしても目覚めることは無い。どんな刺激も感じれなくなるのが、欠点だけどね。まぁ、ふしだらな女の喘ぐ姿を見ても、別段嬉しくはないし。やはり、キスも数えるほどしかしたことのない生娘にこそ、ボクの祝福は猛り爆ぜる。はぁー……これが終わったら、この街の小娘に祝福を与えよう。最高の祝福を贈ろう。時間をかけて、ねっとりと……。ボクの熱い“祝福”を、たっぷりとその穢れのない美しい身体に注ぎ込んであげるからね。ふふ……フフフフ……!」
くつくつと、この後のことを思い浮かべ笑みを浮かべると、その狂ったような笑みを浮かべたまま、観月に目を下ろす。
「まぁ、とりあえずはこの使命を果たしてからだ。いやらしい女と言っても、造形は悪くないし。むしろ可愛いらしい。十分に猛り爆ぜるほどの魅力はある。」
「ん……はぁ……はぁ……んん……あ……あぁ……。」
触手を浴衣の中に這わせ、全身をくまなく愛撫していく。
僅かにはだけた浴衣から、観月の美しい肌色と天使の触手が這い回る様子が見て取れる。
浴衣の下では、触手が乳房を絡め取り、先っぽを吸い上げながら刺激を送り続ける……。
さわさわと内腿を撫で、やがて秘所にたどり着いた触手は、ショーツの上からなぞるように少し強めになぞりあげる……。
「ん……ふぅ……ふぅ……んん……!」
「ん?体勢を変えるのか?まさか……。中型モンスターも昏倒させる麻酔でも動けるのか?ばかな……。急がなければ……。」
触手の刺激から逃れるように、コロンと体勢変える観月……。
それを逃がしまいと、触手を再度伸ばし直し、刺激の強い場所を周到に責め立てる。
「ふっ!うぅ……!ん!んん!あ、あぁ……!」
うつ伏せになって、抵抗していた観月も堪らず腰を浮かしてしまうほどの刺激。
触手はその隙を逃すことなく、全身を縛り上げると観月の身体を引き寄せ、その丸いお尻を天使に向けて晒させた……。
「はは!丸見えだ……よく濡れているな……。やはり、感度がいいんだな、この娘は。ふふ……なんて、やらしい身体つきだ。見れば見るほど、どんどんと惹き付けられる。褒めてあげるよ、少女よ。偉大なる天使をこれ程、興奮させた人間は今までにそういなかった。」
「ん、んん!」
目の前に晒された濡れそぼり、恥部に張り付いたショーツを触手でなぞりあげると、ゾクゾクと観月は身体を振るわせる。
「さぁ……。これだけ濡らせば、大丈夫だろう……。一番奥に、ボクの祝福を授けてあげるからね!」
突き出された観月の腰を掴み、子供は触手の一本を自身の股を通して前に突き出すと、秘所と思しき場所に当てがった……。
まるで、男性のそれのように、雄々しく反り立ったそれはビクビクと脈打ち、ようやく目の前の濡れそぼった花弁に入り込めると喜び勇んでいた。
「ん、んん……っ…ゆー……ちゃん……。」
「さぁ……。全身を悦びに打ち震わせ、歓喜せよ。これが……女神の……祝福だ!」
一度腰を引いた天使は、一気に腰を突き出す。
「ユー……ちゃん……。」
観月の小さくも、彼女ができる最大の抵抗を示すように、その名を呼ぶ……。
ー ズンッ!!!
そんな小さな抵抗は、己の使命に興奮している天使の耳には届くことなどない。
突き出された触手は、なんの抵抗もなく、すんなりと蜜壷に入り込んでいく。麻酔の回った観月は抵抗することもできない。その濡れそぼった穴を、触手は己が欲望を吐き出すために蹂躙していく……!
なんと悲惨な光景か……。
愛する者の前で、愛する者ではないモノが、その身を己が欲望を解き放つためだけに蹂躙しているのだ……。
しかもそれは、犯されている当人も、そしてその愛する者も知らない……。この部外者だけが知る真実となって、ひた隠された真実として、知らないままに激しく一方的に行われていくのだ……。
これが……この世界の隠された真実。
天使が祝福を語り、一定の基準を満たした民を慰めの道具として使い、己が子を産ませる。
それこそがこの世界の壊れた一面だった……。
ズン!!ズン!!ズン!!
触手の力も借りて、持ち上げられた観月の身体は、ズンズンと下から突き上げられる触手の衝撃を受けて、ガクン!ガクン!とまるで糸の切れた人形のように揺さぶられる。
「あはははは!!祝福を!祝福をぉぉぉぉー!!」
ズン!!ズン!!ズン!!
ーーーーーズドン!!!
「っ!?なんだ?この揺れは……地震か?ちっ!いいところで……。」
天使が行為に勤しみ、もう間もなく絶頂を迎えるという瞬間だった。部屋に大きな揺れが起きる……!
周りを見渡し、舌打ちをした天使は収まった頃に再開しようと、静かに地震が収まるのを待つ。
そんな、天使の耳に……微かだが何者かの声が聞こえてきた。
地震の揺れに紛れて、微かな声が耳に届く。
声?唸り声?獣ような、人のような?いや、龍や鬼のような?そんな低く、殺気のこもった声が聞こえる。
ー オオォォォー……!!
ー 汝……!!
「な、なんだ、このただならぬ殺気は……!?一体、どこから……。」
狼狽えた天使は触手を解いて、観月をベッドに投げ捨てると触手をさらに変形させて一本の槍に変化させる。
鋭く尖った槍を四方に向けて、殺意ので何処を探るように振り回す。
ー 汝、我が物に触れるなかれ……!
ー ゾクッ!?
「誰だ!?」
凄まじい悪寒と共に、すぐ耳元で聞こえた声に振り返る。
その瞬間、囲っていた結界を砕くように打ち破り、闇ほどに黒い甲冑の男が切り取られた空間へと侵入してきた……!!
「なっ……!?お前は……その姿……その魔力……は……!!!?」
『 汝、我が物に触れるなかれ! 』
◤◢◤◢WARNING!◤◢◤◢WARNING!◤◢◤◢
〈 ビー!ビー!ビー! 〉
〈 警告!警告!警告! 〉
◤◢◤◢WARNING!◤◢◤◢WARNING!◤◢◤◢
〈 スキルが発動が発動しました!〉
〈 ハーレム防衛プログラムが作動!〉
〈【アスモデウスの盾】が発動しました!〉
◤◢◤◢WARNING!◤◢◤◢WARNING!◤◢◤◢
▷ シルクさん!シルフィさん!今すぐ、その場を離れて!!早く逃げてください!
「うー……?ううぅっ!!?」
『え、えぇ!!?なに!?なにこれ!?ダーリン!?どうしたの!?』
▶︎観月さん!観月さん!!起きてください!!このままじゃ、“アスモデウスの激昂”に巻き込まれますよ!!
「っ……ごめん。起きては……いるんだ……。だけど……身体が動かな……くて……。」
▷まさか、毒ですか!?いや、異常状態は無効のはず。ということは、麻酔ですか……!?なんて、厄介な!このクソ天使!!
▶︎シルクさん!王権を使って、皆さんで脱出してください!!
「う、うぅ!!〈 うーーー! 〉”」
魅玖の声にシルクは頷くと、〈クイーンの大号令〉を発動した。
あらゆる場所からスライムが現れると、シルクの指示に従って、動けない観月を窓から運び出した。
「宿のみんなや、この辺りの人達は……?」
▷大丈夫です。皆にも警報が耳に届いた時点で、逃げるように暗示がかけられますから……。
▶︎観月さんは大丈夫ですか!?乱暴されませんでしたか!?
「うん……。うっすらと意識は残ってたの……。変な薬飲ませれてからも、かろうじて手先だけは動いたから、必死にアイツのだけは入れさせないようにしたよ……。」
▶︎さっすがー!無事に主様のモノは守ったわけですね!
「ふふ……!うん!あと、入れてないのがバレないように、手で逸らした先にこの子を準備しておいた。」
「プルン!」
▷え?スライムじゃないですか!
観月の差し出した手の上には、小さなスライムが乗っかっていた。
始まりの遺跡で、観月のフィギュアに擬態していたあのスライムだ。
あれから妙に観月に懐いており、いつも観月と共に行動していたのだ。
今回も観月のそばで寝ていたため、いち早く危険を察知したスライムは、観月を助けるために進んで触手を包み込んだのだった。
よくやった!スライムオ○ホール万歳!!
▶︎え?てことは、あのクソ天使は……この普通のスライムによがってたんですか?ぷふ……!!とんだ、勘違い野郎じゃないですか!あはははー!!
▷ぶふっ!魅玖さん……ダメですよ……笑ったら……ふ、ふふふ!
「咄嗟に縋っちゃったのが、この子だったんだ。ごめんね?嫌な思いさせたよね……。」
「ぷるん?……むしゃむしゃ……。」
▷▶︎『「……え?」』
キョトンとするスライムの口には、あの天使の触手が一本、ウネウネと動いたいた。
暴れて逃げ出そうとする触手を、スライムはじっくりと、まるでタコの活き造りを食べるようにしっかりと咀嚼しながら、最後には……
「ゴックン……!ぷー……!」
『あ、あー……。あーらら……。』
しっかりと最後まで食べ切ると、満足気な表情を浮かべてスライムは腹と思しき場所を撫でていた。
この時点で、触手が一本消えていることには天使は気付いていなかった……。
いや、それどころではなかったといえるだろう……。
「あ、あぁぁ……!!?お前は……マモン……。バカな……!お前は前勇者に倒されたはずだ……。なのに、なんでお前がこんなところに……!?」
◤◢◤◢WARNING!◤◢◤◢WARNING!◤◢◤◢
〈 ビー!ビー!ビー! 〉
〈 警告!警告!警告! 〉
◤◢◤◢WARNING!◤◢◤◢WARNING!◤◢◤◢
『汝、我が物に……!』
どこから響いているのかも分からないほど大きな音が、辺りに響き渡る。
その無機質な音は不思議と焦燥感と恐怖心を煽り、喋りかけることすら躊躇させる……。
逃げなくては……!逃げなくては!逃げなくては!
すぐにでも撤退をするべきだと頭では分かっているが、竦んだ足は一向に進まない……。
『触れるナアァァァーー!!!』
「く、来るなあぁー!!」
駆け出した魔王に怯んだ天使は、堪らず尻もちを着いてしまうが……
激昴した魔王にはそんなこと関係ない。
『ウオオォォーー!!!!』
「ひいぃっ!?」
胸ぐらを掴むと思いっきり振りかぶり
ただ渾身の一撃を持って ーーー
ー ズドンッ!! ー
ーーーー 相手の顔面を殴りつけた!!
「ぐぼあぁああぁぁっ!?がはっッッ!!?」
強く!鋭く!そして何よりも重い激昴の一撃!
全身が震えるほどの怒りを込めて、愛する者が受けた辱めと悲しみを込めて、ただ一撃だけ殴りつけた。
魔王でも、アスモデウスでも、マモンでもなく、ただ一人の男として……。
“栄咲遊助”として、激昴したその一撃は天使と名乗る悪漢の顔面を見事に捉え、壁を何枚もぶち破るほどの威力で吹っ飛ばす!!
『はぁ!はぁ!はぁ!』
ユースケが殴りつけた先には、崩れた瓦礫に横たわるように天使が怒りに燃えた瞳で睨みつけていた。
「がはっ……!お前……ボクが誰か……分かってるのか?……ボクは天使だぞ?……ゴフ!……こんなことして、ただで済むと思うなよ……。たとえお前が、最強最悪の魔王だとしても……、女神様の意志の代弁者たるボクに……天使に背いたんだ……。この先に……お前たちに……未来はない……。がはっ!かはっ!ヒ、ヒヒヒハハハハ……!終わりだ!お前は終わりぃー!あの女も……その仲間も……ぜーんぶ、終わりぃー……!この世界は敵に回った……!女神様もきっと、お怒りになる……!」
「……それでも私たちは、ユーちゃんの味方だよ。」
「お前っ!?起きたのか……!?あの麻酔の量で、目醒めたっていうのか?」
突如、側から聞こえた声に目を向けると、そこに立っていた少女の姿に驚愕の表情を浮かべた。
「世界の敵?上等だよ。私は、それでもユーちゃんの味方だもん。どんなに辛いことがあっても、どんなに苦しい状況でも、私はユーちゃんと歩んでいくの。死が二人を分かつまでね。」
「ふっ、そんなの戯言だ……。ボクは信じない……。いつか、そんな関係は破綻する。誰にも祝福されていない関係なんて、いつかは消え去る運命なんだよ。ボクの背中には羽根があるんだ。ボクは女神様の代弁者だ。大人しくボクの祝福を受けていれば、二人はもっと幸せな人生を歩めたのになぁ……。はは!馬鹿げたことをしたもんだ……!まったく……!」
「祝福、祝福……うるさい。そんなものいらないよ……。私はユーちゃんさえいればいい。ユーちゃんが私にとって、唯一無二の信じられる相手であり、愛する人なの。姿も見せない、どこの誰とも知らない人の祝福なんていらない。私は私の目の前で、私を見て愛してくれる人を信じてる……。」
「愛など……バカなことを。」
ふらりと、天使は立ち上がると、翼を広げて目の前を見る。
そこには、剛弓を構えた魔王が天使に向けて立っていた。
『…………お前は、俺の愛する者を傷付けた。絶対に許さないし、逃がすつもりもない……。最後に何か言うことはあるか?』
「……あははー!!。お前たち、大バカ野郎どもに女神様の祝福を……。」
まるで、周りに立つ人物たちを嘲笑するように、両手を広げて笑い声をあげた天使は最後に天を仰いで、小さく呪いの言葉を吐き捨てた……。
『……シッ!』
ー グオオォオォー!!
ーシュッ…………ドス!!
弓の咆号と共に放たれた矢は寸分の狂いなく、天使の胸に深々と刺さる。
天使は最後に、ニヤリと笑うと白目を向いてそのまま膝から崩れ落ちた。
『…………バカで結構。世界なんてものは、テメーらにくれてやるよ。だけど……目の前の女の子くらいは俺が護ってやる。必ず、な。』
俺は既にこと切れた天使に答えると、武装を解除し小さく息を吐く。
「ユーちゃん!!」
「観月……。すまない……。俺がそばにいながら……嫌な想いをさせてしまった。本当に、本当にすまない……。」
駆け寄ってきた観月を抱きとめると、俺はしかと強く抱きしめなおして、懺悔の言葉を繰り返す。
観月は抱きしめ返すと、腕の中で何度も首を振り涙に濡れた顔をあげた。
「大丈夫だよ。ユーちゃんの大切なモノは守ったよ。私の一番大切にしてるものは、何も奪われてないよ。この心も、この身体も、全部、ちゃんとユーちゃんのモノだよ。」
「……観月。」
「ふふ!大丈夫だよ!だから、そんな辛そうな顔しないで。これからも、私はユーちゃんと一緒に居るから。ユーちゃんは一緒に居てくれる?」
「当たり前じゃないか……。死がふたりを分かつまで。ずっと、そばにいるよ。同年同月同日の奇跡に誓って。」
「うん!同年同月同日の奇跡に誓って。私もずっと一緒にいるよ。ユーちゃん。」
俺たちそれからヒシと強く抱きしめ合うと、互いの心を重ねるように、ゆっくりと唇を重ねた……。
二人は温もりを確かめ合うと、互いの無事を心から喜び、再び強く抱き締め合う。
しかし、安堵するのはまだ早かった。
これはまだ序章に過ぎなかったのだ……。
これから巻き起こる大陸全土を巻き込んだ波乱の一部であり、また、栄咲遊助と羽衣観月が二人で歩んだ軌跡の一部でしかなかったと観測者諸君は知ることになるだろう……。
第一章 その者たち転生者につき ~完~




