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勇者、悪夢にうなされた果てにつき・捌

M・M・Mみだりに・みだれて・みだれがみ


アスモデウスの悪夢と称される、その力は、人を快楽の渦に落とし精神を崩壊させる・・・。


悪夢にうなされた果てに彼が見たものは・・・ミラ自身も、術者であるサカエ本人も予想だにしない結末を迎えるのだった。



「ん、んん・・・。あれ?私・・・寝ちゃっ!?んっんん!?」



目を覚まし、ゆっくりと起き上がると、全身をゾワゾワとした感覚に思わず身が震える・・・。



「また、エッチな夢みた・・・。でも、すっごく・・・。」



気持ちよかった・・・と呟いたところで、ポフン!と布団に顔を埋める。


全身をサカエが撫で、揉みしだき、弾き、摘み、転がし、吸い付く・・・。

その全ての感覚をリアルに覚えていた。


そして、その優しげで、愛しげに見つめてくる表情も・・・。



「ん、んん!サカエくん・・・サカエくん・・・。私、気付いたよ。わかったよ。私、サカエくんのことが好き。一目惚れだったんだ。この身体が、サカエくんと繋がりたいと思うほどに、魂が重なり合いたいと思うほどに、キミが・・・好き・・・好き・・・大好きぃ・・・。」



自身の身体を抱きしめ、ミラは自身の心から湧き上がる感情をようやく素直に認めた。


男だから、勇者だからとか、そんなもの一切関係なく、迷いなく純粋に一人の男性として、サカエを意識していることを認めた。


そうなると、頭はスッキリとしたもので、まだ残る感触も、蕩けるような熱も、全てが愛おしく感じてしまう。


最初はあんなにも怖くて仕方がなかったのに・・・。


今では、むしろ、五度目の悪夢をいや、吉夢を期待している。



「あはは・・・。なんか、おかしくなってきちゃった。相手が男だから、なんだっていうんだろ。こんなに好きなのに、愛してるのに・・・。性別なんて些細なことだよね。サカエくん。」



ミラは小さく笑うと、布団からゆっくりと這い出て、机の上に投げやった紙袋を手に取る。



「私、頑張るよ。きっと、願いを叶えてみせる。キミの横に立ちたい。キミが好きだから、キミが望むように、どれだけでも変わって見せるよ。性別の問題すらも・・・超えてみせるからね。」



紙袋を手に強く頷くと、ミラは扉を開けて、リビングでお茶を飲んでいたリアに飛びついた。



ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー



「っと、まぁ・・・。ようやく、自分の想いを自覚して、向き合う覚悟を決めたのは、結構なことだけどさ。今更ながらに、男が胸が大きくなるって、どうなんだ?」


「んー・・・。サカエくんと出会って、寝る度に変な夢を見るようになったんだよね。それから、身体や気持ちに変化がではじめて、どんどんこんな風に・・・。」



鏡の前で、ミラはブラジャーの付け方をレクチャーされる。

気恥しさは多大にあったが、これも、サカエを思えば、何とか耐えられた。



「でも、結局のところ・・・ねぇ?女の子、ではないんだよね?」


「・・・あはは!そうだね、今はソーセージを付けた女の子だね!名付けるなら、男であり、娘。男の娘だね!」


「すっごく、お下品だから!ソーセージ食べれなくなったら、どうしてくれんの!?」


「やーん!いたーい!」



ペチン!とミラの背中を叩くと、すぐに白い肌が赤くなる。



「急に吹っ切れたな。ガッツリ女の子に寄せてくるじゃないか。見た目だけなら、完全に女の子なのに、そこにパオパオ*がついてるなんて、本当、信じられないわ。」



*パオパオ

象に似た草食系モンスター。

最近、ペット用に改良されたプチモンスター。

見た目が可愛く、女性ハンターに人気。

鼻先から吹き出す水魔法は、なぜかイカ臭い。



「ちゃんと、あるよー。ほら。」


ー パオォォォォーン!!



ミラはおもむろにズボンを脱ぐと、自身のパオパオをリアに向けて見せつける。

腕を組んで、すごくドヤ顔を浮かべて、リアに見せつける。



「ちょ!?アホか!見せんな!」


「え?別にいいじゃない。こんなの、男と女を区別するためのもんでしょ?そう、習ったよ?」



チラリと見てしまったリアは、顔を真っ赤に染めると、シッシ!と手で払いながら、隠すように促す。



「あんたは・・・はぁ~・・・そういえば、そっちの宗派だったね。美神教(カリテス)か。」


「・・・え?」


「正直、私はアンタのとこの宗派は苦手だ。嫌いと言ってもいい。品行方正を旨としてるのは、重々承知してるけど、やり方が嫌だね。これを機に、ミラには改宗して欲しいくらいだよ。多分、同性愛も禁じてるでしょ?」


「禁じてはないかな?そもそも、そんな事例がないからね。」


「徹底された性教育は、時に歪みを生む。まさに、教育の闇だ。私は早々に、違和感を感じたから王都から抜け出したけど、まだ、あそこで過ごす沢山の人々は、その違和感に気付けてないんだよね。」


「どういうこと?」


「いつか、アンタとは腹を割って話すべきだと思ってた。友として大好きなアンタだから、これを機に言っておくよ。絶対に、“天使” なんて信じるな。あんなことを、平然と行う奴ら、みんな異常だよ。」


「・・・そうなの?私には普通すぎて分からない。」


「だって、おかしいでしょ!あんなことが、許されるわけ・・・!」


「私からしたら、最近、街中で堂々とキスしている人達の方が異常だよ?王都はもちろん、周辺の町や村なら、処罰対象になるよ。最悪、その場で処刑だってありえる。」



処刑。その言葉を口にした瞬間、ピリリ!と場の空気が張り詰める。



「・・・アンタ、分かってる?アンタが好きになった男は・・・そういうことを許さない人なんだよ?」


「・・・分かってるよ。きっと、最終的には、サカエくんと私は対峙することになるんだ。私の護るべきものを壊しに来る人。この世界の規律や常識を壊しにくる人。その強力な力と、それに伴う行動力、意志の篭った発言は大きな風を起こして、周りを巻き込んでいくだろうね・・・。」


「アンタそこまで分かってるのに・・・なんで・・・。」


「・・・好きになっちゃったら、仕方ないよ。ふふ・・・///」



ミラは照れた笑みを浮かべると、鏡の中の自分を眺めて身なりを確認する。


鏡の中のミラはとても、本当に恋する女の子のように微笑んだ。

自身の選んだ道に後悔はない。そう断言するように、強い意志をそこに感じていた。



「(あぁ・・・。きっとこの子は、死をも覚悟でサカエの前に立つことを選んだんだ。これは・・・止められない。それほどまでに、彼を好きになってしまったんだな。)」



リアは少し切ない気持ちになると、少し潤む瞳を隠すように静かにミラの背中に回る。


後ろから、その小さな背中を確認するとミラをそっと抱きしめた。



「アンタの気持ちは分かったよ。思うようにしなさい。でも、必ず、後悔のないようにね。最後は絶対に自分の気持ちに、嘘はつかないで。」


「・・・あはは。」



リアの言葉に、ミラは困ったように笑うと後ろから回された手をキュッと握りしめる。


これから先、きっと、サカエとぶつかる瞬間は来るはずだ。


彼には彼の正義があり、ミラにはミラの正義がある。


己の意志と使命を全うしようとする二人ならいつかは武器を取り、命果てるまでぶつかる日が来るのは必然といえよう。


それほどまでに、ミラはサカエに惹かれてしまったのだ・・・。



「(サカエ・・・。ミラを頼む。私にはこの子を止める力も、止める言葉も見つからない。だけど、お前なら、きっとできるはずだ・・・!頼む・・・。頼む!サカエ!ミラをこの世界の歪みから解放してやってくれ!)」



祈りを込めて、ミラの頭に小さくキスをすると、最後に下着のズレを調整して自身のクローゼットに向かう。



「私からの贈り物だ。茨の道に挑むという親友を手ぶらでは送り出せない。」



リアはクローゼットにかけられた白いドレスを手に取ると、ミラに手渡す。



「え?これ・・・。」


「私が旅の商人を助けた時に、贈られた物だ。可愛らしいドレスだが、私の趣味ではなくてな・・・。贈って貰って悪いが、ずっと、クローゼットにしまってあったものだ。定期的に手入れはしていたが、何分、着るには勇気が必要だった。お前なら可憐に着こなしてくれるだろう・・・。」


「・・・え、えー。気持ちはありがたいけど・・・これ着たら、完全に女の子・・・。」


「上から、鎧をつけても華やかさは消えないぞ。」


「そ、そうだけど・・・あの・・・これ、横から胸見えそうなんだけど・・・。」


「女の武器は使うに越したことはない!!横乳くらいでなんだ!むしろ見せる気で行け!」


「え、えー・・・。お下品なのはどっちだよぉ・・・。」



手渡されたドレスを広げて観察して見ると、所々凄いことが判明した。



「横乳もさることながら、この背中はなに?丸見えなんだけど・・・。防御的にアウトじゃない?」


「男を誘う上では攻撃力はMAXに跳ね上がるぞ。ははは!」


「いやいや、そういう話ではなくて!戦闘において、この背中の開き具合はヤバいって!」


「もしや、敵に背中を見せるのか?“背中のキズは剣士の恥だ”と、伝説の剣豪も言っていたぞ。」


「それ、ダメなやつーーー!!」



ポコスカと、トンデモ発言を口走るリアを殴ると、次はロングドレスのスカート部分を指さした。



「あと、これ!スカートじゃない!?ダメだよ!中見えちゃうよ!ここはズボンにしよう?せめて下に履いていいよね?」


「・・・いや、そこは譲れない。ダメだ。絶対、ダメだ。スカートは履かないとダメだぞ?長さは関係ないが、中はむしろ見えるようにしないとダメだ。サカエを語る上で、絶対にそこは外しちゃいけない・・・。絶対だッ!!」


「なにその、絶対的なこだわり・・・コワイ・・・。」



目をカッ!っと見開き、腕を組んでリアは毅然とした態度で、ミラの要望を跳ね除ける。

ズボンなど、サカエの前では言語道断だと。

むしろ、そのスカート部分にこそ、そのドレスの価値があるとまで言い放つ始末。


ミラは頭を抱えると、ドレスを片手に深いため息を吐いた。



「私も見られたんだ。お前も見られてこい!HAHAHAー・・・!」


「いや、見られてこいって、親友に言うセリフ?むしろ、ドラゴンの前にソースかけた人間を送り出す勢いで、ドレスを手渡さないでよぉ。」



やんわりと断りながらドレスを突き返すと、リアはドレスを受け取り、口角を上げて微笑む。

あ、これは意地悪する時のリアさんだと、瞬時にミラは理解した。



「えぇー?すごく可愛いから、サカエ、気に入ると思うんだけどなー。キスしまくるんじゃないかなー?もっと、凄いことされちゃうんじゃないかなー?ミラの知らないようなこと、いっぱい、いっぱいされちゃうんじゃないかなー?それこそ、勇者のステータスでも追いつけないくらい、凄いことされちゃうんじゃないかなー?」



ニヤニヤと笑いながら、リアはドレスをミラの胸に当てて想像を駆り立てるような誘い文句を並べ始める・・・。


どんどんとイメージが膨らんだミラは顔を真っ赤にすると、ドレスを抱きしめて俯く。



「わ、分かった・・・。分かったよぉ・・・。変わるよぉ・・・。ここから私も腹を括っていくよぉ・・・。」


「ふふ・・・!手伝うよ♪最初は慣れないから大変だろうしね!」


「うぅ・・・!なんで、こんなことに・・・ぐすん・・・。」



リアの手を借り、野暮ったい冒険者の格好(一応、貴族から贈られた上等な服である。)を脱ぎ捨てたミラ。


綺麗な白いドレスに身を包むと、身も心も女の子になれた気がしたミラは鏡越しに自身の姿を眺めて、ほぅ・・・と息を吐く。

リアもまた、鏡越しにそれを眺めて、強く頷く・・・。



「(これは・・・ヤバい・・・。破壊力がありすぎる・・・。)」



思わず、女性の身でありながら、鼻血を吹き出しそうになるリアは、鼻を抑えて目をそらす。



「これ・・・。似合ってるの?」


「サカエ語で言うなら、ヤフー・・・だな。」


「やふー?」


「すごく、イイ・・・。サイコーって意味らしい。」



グッと親指を立てて、賞賛を送るリアに、ミラの首を傾げる。



「ヤフー・・・。ふふ!なんか、かわいい♡」


「くっ!(かわいいのは、お前だ!)」



満面の笑みで微笑むミラに、一発パンチKOをもらったリアは崩れ落ちると、その場に膝をついた。


ポタポタと、鮮血が床を濡らす・・・。

鼻血だ・・・。



「なんたる、破壊力・・・。圧倒的女子感・・・。強すぎる・・・コイツは恐ろしいモンスターを生み出してしまったかもしれない・・・。」



すみません、誰か医者呼んでくださーい!



「あはは・・・。やっぱり、似合わないよね?ごめん、着替えるよ。」


「はぁ?お前、アホか?アホ認定されたいのか?女の私が、こんなにダメージ受けてるんだぞ?サカエが、歓喜しないわけないだろ?むしろ、世界中の全サカエが歓喜して嫁に迎え入れるぞ?」


「あはは・・・。迎えてくれるのは、世界でただ一人のサカエくんだけでいいよ。あのサカエくんがいい。私、サカエくんだけのお嫁さんになりたい・・・。」


「・・・ブハッ!」


「え!?ちょ、やだ!大丈夫!?しっかりして、リア!リア!?」




こうして、リアはミラの腕の中で静かに息を引き取った・・・。

享年16歳。死因・・・萌死。


空も青く澄んだ春の先の出来事だった・・・ー。



「いやー、死ぬかと思った。」


「大袈裟なー。ちょっと、鼻血出たくらいじゃ、人は死なないよ。私なんて、腕や足が飛んでも死ななかったのに。」


「いや、アンタのハチャメチャな冒険譚と比べられても、こっちが返答に困るわ。だいたい、腕が飛んでくっつけられる程の治癒魔法を使える魔法使いなんて、ミラのパーティの人か、王都の魔法使いくらいでしょ。」


「ゼーンは凄い大魔法使いだからね。魔法使いの中の魔法使いって言われてるだけあって、凄い魔法を沢山知ってるよ。」


「まぁ、アンタの覚えてる魔法も無茶苦茶だけどね。召喚魔法なんて、普通は誰も出来ないよ。しかも、召喚獣が龍王でしょ?かつて、世界を崩壊に導いた邪龍の子だっけ。」


「うん。今は、お父さんの跡を継いで、自由奔放に世界を駆け巡りながら、ドラゴン界の秩序を維持してるんだ。私に協力してくれてるのも、人間と共闘関係を結べば、ドラゴン族の未来の安寧に繋がると考えてくれてるからなんだよ。」


「あ、戦って力を示してから、従わせた感じじゃないんだね。」


「あはは!ないない。簡単にいえば、仕事のパートナーみたいなもんだよ。」


「・・・なら、度々、間違いで呼んじゃダメじゃない?契約切られるよ?」


「う・・・。それは反省してる。」



間違いで呼んだことは一度ではない。

過去には、何回もやらかしている。

最初は何も言わずに帰ってくれていたが、回を重ねる事に、ついにブチ切れ始めた。


そして最近は、あの悪態である。



「ホーリー、怒るとめっちゃくちゃ怖いんだ。容赦なく火球打ってくるし。一度、服を掴まれて、空高く舞い上がって落とされた時には、本当に死を覚悟したよ。」


「まぁ、普通なら死んでるな 。それくらい、腹が立ったんだろ。実際、何回くらい間違えたの?」


「えっとー・・・さっきのでー・・・にー・・・。」


「二回?えらく、怒りっぽいドラゴンだね?まぁ、たしかに王様なら忙しいのは理解できるけど、それにしたって・・・二回じゃ、あまりに心が狭いというか、なんというか。」


「二十九回かな?」


「むしろ、心が広かった!!?本当、良く契約切られないね!?普通、人間でも三回くらい同じ間違いをしたら愛想つかされるよ!?」


「本当、怒りっぽいけど優しいよねー、ホーリー。そんなとこ好きーー♪」


「いや、可哀想だから、もう本当にやめてあげて?王様、過労死しちゃう。それか、頭の血管切れて、事切れるよ。」


「あはは・・・。ドラゴンの血管は太いから大丈夫だよ。」


「そうじゃないから!言いたいのそういうことじゃないから!」



あっけらかんとしたミラの態度にガックリと項垂れると、リアは何かを思い出したように顔を上げて、腰を下ろしていたベッドから立ち上がる。



「普通に話してて忘れてた。ミラ、体調悪いんだよね。ごめんね、ゆっくり休んで。私は今日はリビングで寝るから。何かあったら、声掛けて。」


「あ、もう夜なんだね。」



窓の外を見れば、夕方を過ぎて、星空が顔を覗かせていた。

時間が経つのは、本当に早いものだと、つくづく感じながら目の前に目を移すと、リアが扉に手をかけて振り返っていた。



「明日は、良くなってるといいね。飛びっきり美味しいご飯を作るから、早く治しなさいね。」


「うん。ありがとう。」



リアは小さく笑みを残し、リビングへと戻っていった。



「さて・・・と。そろそろ、時間だね。」


「ぷるん。」


「プチ・・・。私を支えてね。」


「ぷるん!」



隠れていたプチシルクが、脇に這い寄ってくる。

まるで、誘うように、布団を捲るとポスポスと、枕を叩く。



「うん。行こう。最後の悪夢に。」


「ぷるん!」



強く頷いて答えると、ミラは布団に入り、ゆっくりと目を閉じた。



ーピコン!


▷アスモデウススキル【 淫夢(3M) 】が発動しました。


Lv4を達成。最終ステージへ移行します。




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