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勇者、悪夢にうなされた果てにつき・参

スライムを手に部屋に戻ると、仲居さんがちょうど戻ってきた。



「あ、勇者様。ちょうど、お食事の準備を始めようと思ってました。よろしいでしょうか?」


「えぇ、ありがとうございます。」


「・・・あら、可愛らしい。ふふ・・・。スライムを手なずけてらっしゃるんですね。」



手の乗りスライムを見た仲居さんは面白そうに眺めると、つんつんとつついて、可愛らしいとべた褒めする。


それに気をよくしたスライムは、目の前で小さなシルクに擬態すると、可愛らしく踊って見せ、最後に手を振った。



「まぁ!ふふ!上手!上手!すごいわぁ!きっと、大きくなったら、素敵な踊り子さんになれるわね!」


「うー///・・・(てれてれ)」


指先でプチシルクの頭を撫でると、仲居さんは上機嫌に食事の準備を始める。



「スライムちゃんの取り皿も準備しましょうねー。」


「何から何まで、すみません。」


「いえ、珍しいモノを見せていただきましたから。モンスターを手なずけて、仲間にする調教師(テイマー)さんもいらっしゃいますが、こんなにのびのびとしたモンスターは珍しいですよね。テイマーさんは、言っては悪いですが、その仕事上厳しすぎる故に、隷属したモンスターもぞんざいに扱われる場合もあると聞いていましたから・・・。」


「確かに。私も、旅先でテイマーにあったことはありますが、どのモンスターも怯えや苦しさが垣間見えましたね。」



テイマーという職上、仕方ないとはいえ、少し気を許した相手を、魔力の拘束力で無理やりに従わせ、自由を奪うのは、とても見ていて悲しいものがあった・・・。


その点、この手の上のスライムも、サカエと共に行動していたシルクという少女も本当に心から相手を信頼してそばに居ることは十二分に伝わってきた。



「この子、私のスライムじゃないんです。」


「まぁ!?じゃあ、野良のスライムなんですか?」


「いえ、確認してみたら、前に泊まったサカエくんのスライムでした。恐らく、はぐれてしまったんでしょう。」


「あら・・・。そういえば、皆さん、慌てて出ていかれましたものね・・・。可哀想に・・・。」



その時の光景を思い出したのか、仲居さんは眉を寄せて頬に手を当てる。


ちなみに、慌てて出ていく羽目になったのは、目の前の仲居さんが、二人の愛の時間を茶化したからに他ならない・・・。



「無事見つかりましたし、私が責任を持って、主人に届けますよ。私も会いたいと思ってましたから。ね!」


「うぅー!!」



ミラの呼びかけに、嬉しそうに答えると、プチシルクはミラの手にスリスリと頬を寄せて甘える。



「ふふ・・・。可愛らしいこと。本当の親子のようだわ。まるで、サカエ様とその白い娘さんのよう・・・。」


「ふふ・・・。だといいですが。たぶん、本当の親には敵いません。」


「そんなことありませんよ。他人だとしても、真に信頼を築いていけば、血よりも濃い絆だってきっと結べますわ♪さぁ!準備できました!たーんと、召し上がってくださいね!」


「ありがとうございます。キミも食べよう、スライムちゃん。」


「うー♪」



ミラは席に着くと、プチをテーブルに乗せて、手を合わせる。


モノマネ大好きプチも、手を合わせると、取り分けられたご飯に飛びつくのだった・・・。



「(血よりも濃い絆か・・・。私も築きたいよ・・・サカエくん・・・。)」



目の前で、エビフライにかぶり着くプチを眺めながら、小さく微笑むと、ミラも空きっ腹を埋めるため、豪勢な食事に舌鼓を打つのだった。



「うん!美味しい・・・」


「うぅ!うぅー・・・。」



彼はまだ知らない・・・。


食事を終え・・・床に入ったその晩から・・・いよいよ、勇者ミラウェイドにとって、今後の人生揺るがす大事件が起こることを・・・。


そして、その事件がサカエハーレムに多大な影響を及ぼすことになることなど、誰も知る由もなかった。



そう・・・



《 勇者・・・ミラウェイドオォォーー!!お前の首は我、嫉妬の魔王 リヴァイアが必ず貰い受ける!必ずや、この世界を手中に収め、我が思いどおりの世界に作り変えてやろうぞ!フフ・・・フフハハハ・・・!!ッゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ! 》



今代の魔王すらも知る由もなかった。



「ウマー・・・!」


「うぅー・・・!」



呑気なやっちゃな、この人たち・・・。



ー 鳥も就寝し始めたころ・・・



シュルリと音を立て、ふかふかの布団の中に入ると、ミラウェイドは今日の思い出を振り返る。


やはり一番の思い出は、理想の相手に巡り会えたことだろう・・・。



「サカエくん・・・。どうやったらお話してくれるかな?会っても、お話もできないんじゃ、つらいだけだよ・・・。」



ミラウェイドは布団に潜り、モジモジと足先を擦り合わせる。


寒いわけではない・・・。むしろ、部屋は暖かいくらいだ。


その証拠に、ミラの顔は僅かに紅葉している。潤んだ瞳で、月明かりの指す部屋を眺めていた。


「昨日、ここにサカエくんが居たんだよね。・・・どんなこと、話したんだろ。どんなこと・・・したんだろう・・・。」



ムズムズとした感覚が身体を駆け巡る・・・。

どうしたんだろうか。サカエのことを考えると、どんどん身体が熱く火照ってくる。

胸が苦しくて、切なくなる・・・。


触れたい・・・。触れて欲しい・・・。

そんな感覚に胸が押し潰されそうになる。



「っ!?んん!?なに?なんか、変・・・。身体が変だ・・・。頭もぼーっとして・・・。」



今まで感じたこともない感覚に、思わず身を固くして布団に丸まる。



「変・・・。なんだろ。お腹の奥がキュンキュン締め付けてくる・・・。ダメ・・・知らない・・・なに?・・・なんなの・・・この・・・感覚・・・。」


「うぅー・・・?」


「スライムちゃん・・・?ごめん・・・大丈夫・・・だから・・・。」



次第に意識が朦朧とし始めたミラは、最後にプチが顔を心配そうに覗き込んできたところで意識が途絶えた・・・。



ー ピコン!


▷アスモデウススキル【 淫夢(3M) 】が発動しました。


▷Lv1を達成。〈 対象の深層心理に術者の存在を刷り込ませる 〉


▷Lv2へ移行します。


ミラウェイドの永い悪夢が始まる・・・ー








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