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勇者、悪夢にうなされた果てにつき・貮

ー ナガミ村・双子庵 ー


「いらっしゃいませ、勇者様。今日はご宿泊ですか?」


「はい!あ、あの!ここに、先日泊まった三人が居たと思うんですけど・・・。」


「三名様・・・あ、あぁ!変わった衣をお召しの三名様ですね?確か、お名前はサカエ様でしたか。」


「そ、そうです!良ければ、同じ部屋に泊めて貰えませんか!?」


「え?あ、はぁ・・・。ですが、そのお部屋は三名様以上のお部屋で・・・。」


「お金は三名分出します!食事は私一人分で、結構ですから!」


「は、はぁ・・・。え?あ、いや、一名様分で大丈夫ですけど、何分、部屋は広いですよ?広すぎると逆に居心地を悪く感じてしまうことも・・・。」


「構いません。広ければ、素振りできますから!」


「あー、なるほど。それは是非とも、御遠慮ください。」



リアにオススメの宿を聞くと、まず出てきたのはギルド傘下の宿だった。


格安な上、食事も美味しい〈双子庵〉の噂は、遠方でも耳にしていたので、是非伺いたいと思っていたら・・・なんと、サカエたちにも勧めたというではないか。

サカエが泊まったと聞いた瞬間、ミラの中では即決だった。


宿の場所を教えてもらうと、ミラは足早く、長い坂道を駆け上がっていく。



「はぁ・・・。やはり、惚れてたか・・・。」とは、その駆けていく背中を見ていたリアの独り言であった。



「こちらです・・・。」


「・・・こ、ここが、サカエくんの泊まった部屋。」



仲居さんに部屋を通されたミラは目を輝かせると、部屋の中を見回した・・・。


他の宿とは一風変わった部屋だ。


い草の床を踏みしめると、和室特有の香りが鼻腔をくすぐる・・・。



「う、うぅ~!!サカエくんの香りが微かにする気がする!」


「え?いや、換気はしているので、そんなはずは・・・。」


「ここかな!?ここに座っていたのかな!?」


「いえ、そこには御相手の方で、反対側に座られて『なるほど!こっちか!ふむふむ!サカエくんは、上座は嫌いなのかな?』・・・あ、もう聞こえてませんね・・・。で、では、ごゆっくり。お食事の時間になりましたら、お声かけさせて頂きます。」


「ふむふむ!んん~!いい部屋だ!サカエくん!ナイスチョイスだね!」


「(本当に聞いてないよ、この人・・・。)」



仲居さんはぺこりと頭を下げると、足早に部屋を退出していく。

勇者ミラウェイドは、この時ばかりははたから見ても、あまりに怪しい行動をとっていた。


あまりに、噂と違う姿に絶句した仲居さんだったが、旅の疲れもあるのだろうと、一人無理くりに納得するように思考を停止して静かに戸を閉める。



「んー・・・。サカエくんの私物はさすがにないか・・・。あったら、持って帰ろう・・・じゃなくて、届けようと思ってたのに・・・。」



はい。この人、勇者じゃなくて、ストーカーでしたね・・・。



「こっちは、風呂場かな?おお!大きいなぁ!この風呂に、サカエくんが入ったのか・・・。ふふ・・・ふふ・・・。楽しみはあとに取っておいて・・・。水筒もあるし・・・。」


お風呂は後にするようですね・・・・・・って、え?

待って?水筒で何する気なのこの人?



「あとで、お湯も持って帰ろうっと・・・。」



あのー!すみませんが、どなたか通報してくださいませんか!?ここに変質者がいるんですけど!



「ふふ・・・!いい宿だなー。サカエくんが泊まったってだけで、さらに泊が付いたよ。」



泊が付いたかは知りませんが、確実にアナタの格は落ちましたよ・・・勇者さん。



「さて、遊びはここまでにして・・・。」



いや、目は本気でしたけどね?


ミラは荷を解くと、サカエの座ったと思われる場所に腰を下ろし、少しモジモジとその男とは思えぬほど少し丸いみを帯びた色っぽいお尻で、座椅子の感触を確認する。



「・・・んん!お尻同士が触れ合ったみたいで、少し・・・えっちだね。」



はい、変態勇者(おとこの娘)爆誕の瞬間でした。



「さ、さて!逐一、連絡取らないと、仲間から怒られちゃうからねー。あ、しまった。勢いで来たから、マタイさんにも連絡しとかないと。」



通信用のマジックアイテム【MagiPad】をバックから取り出すと、机の上に置き、指先で前髪を少し直して、気合いを入れた。


水晶の額縁にあるボタンらしきものに手を触れて、魔力を通すと、透明な水晶の板はどこかの映像を映し出す。


映っている場所は、天井とスタンドの傘ようだ。

通信相手も、宿にいるようである。



「あ、二人とも、宿に入ったんだね。よかった。」


『・・・あ、あぁ!大変!ミラから連絡だわ!』

『ふぅ。もう、そんな時間か。時間が経つのは早いなー。』



写っている映像に、仲間の声だけが聞こえるが、姿が見える様子はない。



「あれ?二人ともどうしたの?姿が見えないけど。」


『あ!えーっと、ごめんなさい。今ちょっと、手が離せなくて・・・。』



聞こえるのは、エルフの里からパーティにやってきた勇者パーティ唯一の華、大魔法使いのゼーンの声だ。


映像の影で何か作業をしているのか、ゴソゴソと布の擦れる音と共に荒い息遣いが聞こえる。



「大丈夫?アークスくんの姿も見えないけど?」


『え?あ、僕かい!?すまない、今、二人揃って手が離せないんだよ。』



竜族の国からパーティに加入した勇者パーティのイケメン担当、竜騎士(ドラゴンライダー)の槍遣い、アークスもまた、少し慌てた様子で答えた。



「なんか、大変そうだね?大丈夫?報告はまた後にしようか?」


『え?あ、うん、そうしようかしら。こっちも落ち着いてからの方が助かるわ。』


『そうだね。今、この状態ではさすがに顔は出せないし。』


「この状態?」


『ちょっと、アークス!?な、なんでもないの。さっきまで、その少し激しいセック・・・戦闘としてて!』


『ゼ、ゼーン・・・。』


『な、何よ!だいたい、アンタが!』


『あー、はいはい。悪かった、悪かった。というわけで、二人とも戦闘の疲れもあるし、ボロボロだから、宿の風呂に行ってくるよ。ミラはいつ戻れる?』


「目的の村には着いたから、聖剣の調整をしてもらって、ついでに何か便利な魔道具を見つけたら帰るよ。明後日には、戻れると思う。」


『そうか。帰りは気をつけて。僕たちは、女王広場の宿で待ってるよ。』


「うん。ごめんね。二人とも、私の用事で足止めさせちゃって。」


『うんん、大丈夫よ。たまには休息も必要だし。アークスも・・・その・・・色々と溜まってたみたいだし。』


『僕・・・だけじゃ・・・くっ!・・・ないだろ?・・・ゼーンだって・・・うっ。』


『ふふ・・・。せっかくだし、リフレッシュさせてもらうわ、よ。』


『ん!すごっ・・・さっきより、ゼーン、熱くなってる・・・。』


「二人とも、疲れが溜まってたんだね・・・。ごめんね、気づかなくて・・・。」


『ん!んん!そ、それじゃ、また、夜でも、詳しい報告は・・・あん!』


『くっ!またね、ミラ!』


「う、うん。二人ともつらそうだね。今日の報告はいいよ。ゆっくり休んで。」


『え?わ、分かったわ。それじゃ、また。』


『あ、僕もう・・・やば・・・くっ!』


『わ、私も・・・ん!んん!』



ぴちゃぴちゃと水音が部屋に響き、二人の苦悶する声も聞こえ始める・・・。

どうやら、二人とも疲れが溜まりすぎて、フラフラのようだ。



「うん、二人ともお大事に・・・。」


『うん!また、ね!』

『気をつけてね!ミラ!』


「うん、それじゃ。」



ピッ!とボタンを押して、通信を切ると、大きく息を吐いて、ミラは頭を抱える・・・。



「・・・・・・また、やっちゃった。どうしてこう、私は周りが見えてないんだろ・・・。二人の疲れに気づかないなんて。はぁ・・・・・・なんか、私も少し、疲れたな。」



ふぅ・・・と再び、息を吐くと、マタイに手紙を書いて、お風呂に向かった・・・。


ここは、オフレコだから、あえて言っておこう・・・ミラウェイド。


君は悪くない、と・・・。



ーー・・・



洗面用具と着替えを手に、風呂場へ向かうと、ミラは脱衣所で服を脱ぎ始める。


ー シュル・・・パサ・・・


男とは思えない白い肌と、緩やかにカールしたセミロングの金糸のコントラストは見る者全てを魅了し、数多の男女を虜にする美貌があった。


ー パンパン・・・たたみ・・・たたみ・・・


何故か、その体つきも、どこか女の子のそれと同じように、少しの丸みがあるように見える。胸はさすがにないが、そのクビレと丸みのあるお尻は、一見すると女の子と何ら変わりない見た目をしていた。


ーコト・・・


こんな少女が・・・あ、少年が同じ脱衣所に現れたとしたら、周りの男たちは目を丸めるに違いない。それほどまでに、ミラの容姿は男とは呼べない美しさを放っているのだ。


ーキュ・・・!



「よし!準備オッケー!」



とはいえ、男、ミラウェイドはそんなこと気にすることなく、バスタオルを胸から巻いて、小脇にお風呂セットを持って浴場へと入って行く。



「個室とはいえ・・・なんか、緊張する・・・。誰かに見られてたら、恥ずかしいし。」



※何度も言いますが、ミラウェイド=アクタシアは男です。胸にバスタオルを巻いていても男です。



「身体、洗おう。」



外に出たミラはぐるりと周りを見渡すと、何者の気配もないことを確認して、ゆっくりとシャワーの前に腰を下ろした。

いちいち、所作が女の子・・・。



「それにしても、昼の戦闘は緊張したなぁ。まさか、光の鎧にダメージが入るなんて思わなかったよ。少し冷や汗かいちゃった・・・。」



椅子に腰掛け、シャワーで軽く身体を流すと、髪にシャンプーをつけて丹念に洗う。

しっかりと流して、トリートメントもすると、いよいよ、次に身体を洗っていくのだが、今日は趣旨を変えて、リアオススメのアイテムを使ってみることにした。



「うわ・・・おっきい。それに、かたいなぁ・・・。これ、そのまま使っていいのかな?え?どうやって使うの?そのまま・・・は、痛いよね?濡らして?あ、ソープを泡立ててつければいいんだ・・・。そしたら・・・そんなに、痛く・・・ないよね?」



ミラは、誰もが憧れる見本のようなモコモコの泡を作り、手に塗ると、泡を自身の身体を滑らせるように塗りつける。



「ふふ!私、泡を作るの、得意なんだー。きっと、勇者をしてなかったら、泡を作る仕事に就いてたと思う!・・・お風呂屋さんの、お仕事か。いいなぁ。モコモコの泡で、サカエくんを洗ってあげて・・・あと、マッサージとかもしてあげて・・・。あ・・・滑って、ピッタリ密着しちゃったりして・・・。あわあわモコモコで、ヌルヌルマッサージ頑張ったら・・・。ピッタリくっついたら・・・少しは私の事、好きになってくれるかな?」



泡だらけの身体を眺め、少し寂しそうな顔を見せると自分自身を抱き締めるように、小さく丸まる。



「う、うぅ・・・。あんなに、拒否しなくてもいいじゃない。初めてだよ。あんな冷たい目で人に見られたの。あんな低い声で罵られたの。あんな切れ味抜群の言葉で、すっぱりと拒絶されたの。初めてなんだよ、サカエくうぅーん・・・。うぅ・・・!」



サカエくん・・・

サカエくん・・・



サカエの名前を呼びながら、ミラはしくしくと涙を流して、リアのオススメのアイテムに手を伸ばす。



「これは・・・きっと、試練なんだ。この痛みも、この苦しみも、全部、サカエくんと絆を結ぶための試練だよ、ミラウェイド・・・。」



ミラはアイテムをその敏感な柔肌に押し当てると、ゴシゴシと擦りあげる。



ーゴシゴシ・・・



「う!い、いたぁ・・・。かたい・・・。」


ーゴシゴシ・・・


「うう!?あ、赤くなってる・・・。これ以上はダメだ。他のところを使って・・・。んん!ここ、くすぐったいけど・・・気持ちいい!」


ーゴシゴシ・・・


「はぁ!はぁ!んん!サカエくん!サカエくん!私、相応しい人になるから!もっと、アナタに魅力的に思ってもらえるように!いつか、この肌も触れ合える程に、魅力的になるから!んん!だから・・・ん!んん!」


ーゴシゴシ・・・


「私とお話・・・してくださいぃ~~!んんッ~~ー!!」



ミラは全身を磨き終えると、くったりと力尽き、風呂場に倒れ込む・・・。

肩で息をするミラの目の前には、リアのオススメアイテムがその手から転がり落ちていた。


ミラをいじめ抜いたアイテムは、別にヤラシイアイテムでもなんでもなく・・・ただの“ヘチマ”だ・・・。なんて、紛らわしい・・・。



「これ・・・痛い・・・。もう、使いたくない・・・。」



ミラは起き上がると、手にしたヘチマを丹念に洗い、桶に放り込む。



「気合い入れすぎたなぁ・・・。全身、真っ赤だよ・・・。」



ひりつき熱を持った肌を、ぬるま湯で流すと、敏感になった肌が水の流れすら過敏に反応しているのを感じる・・・。



「うぅ・・・。お湯も染みそう・・・。」



シャワーを終えいよいよ、お風呂に入ろうとした時だった。

先程まで感じなかった気配を感じる。

本当に微かに、風で吹き飛びそうなほど、薄い気配だが、この風呂場・・・いや、部屋全体から感じる。



「あ・・・これ、魔力だ。すごく、薄くなってるけど、確かに感じたことがあるやつだ。・・・誰のだろ?」



不思議に思いながらも、お風呂のお湯をかけ、ゆっくりとその小さな足先からお湯に入る・・・。

いちいち、所作が女の子なんですよね・・・。



「うぅー・・・肌がピリつくよぉー・・・。あー・・・でも・・・うん・・・きもちいぃ・・・。」



しばらく、お湯に浸かっていると、ようやく感覚に慣れてきたミラは空を見上げる。


夕方には宿に到着できたおかげで、薄暗くなりはじめた夕空に一番星が見えた。



「星・・・綺麗だろうなー。あとでもう一回、入ろう。」



そう一息着いた時だった。



ー ぶるん・・・


「ん?何か聞こえたような・・・。」



何か分からないが、声のような、音のようなものがすぐ近くで聞こえた気がした・・・。


見渡してみるが、薄暗くなり始めた外の景色では分かりずらい・・・。


戸惑う彼に、ゆっくりとじっとりと、ぬるりと忍び寄る影があった・・・。



ー ぷるん・・・?


「えっと・・・サカエくん?」



困ったことに、とりあえず、口に出るのは、“サカエくん”になり始めているストーカー予備軍の勇者。


サカエのために尽くしたい欲が、時間と共に、大きくなっていくため、こうして、つい、口から漏れ出てしまう。


今、彼の中ではサカエの存在は、魔王討伐に次いで重要な要素になりかけていた。


・・・いつか優先順位を抜いてしまうのも時間の問題ではないだろうか。


それほどまでに、勇者が誰かに護られるという衝撃体験はミラの心に深く残っているのだ。


大きくなっていく気持ちと共に、彼に触れられた頭、頬と唇、全てが彼を求め始めている・・・。


再び触れて欲しいと、心が、身体が求めている・・・。


どうして・・・。どうしてこんなに、彼を求めるのか・・・それは自分自身にも分からない。


その答えはきっと、もう一度、彼に会わなくては、確かめようがない・・・。



「なんだ・・・気のせいか・・・。」



ほっとしたような声を出しているが、その顔に浮かんでいるのは、少しの寂しさか。

むしろ、求める人の幻影でもいい。

逢いたい・・・。そう思うと、どうしても、胸が苦しくなる・・・。



「ぷるん!」


ー ヌルル~・・・!


「ひゃっ!?」



完全に油断していたミラの背中を、ヌルりとした感触が触れる。


声にならない声をあげ、思わず立ち上がったミラは背後を振り返ると、風呂の中から丸いゼリー状の何かがこちらを見つめていることに気がついた。



「・・・え?何?もしかして・・・え?スライム?」


「ぷるん・・・。」



スライムは、すぃー・・・っと、風呂の中を気持ちよそうに泳ぐと、そのまま風呂の縁に上がって、ミラを見つめる。

手のひらに乗るくらいの小さな白いスライムだ。

新種だろうか?ミラは見た事のないスライムに首を捻る。



「スライムが風呂に入るなんて、珍しい・・・。特殊なスライムかな?ちょっと見てみていいかい?」


「ぷるん?」



こちらを見つめ返すスライムに、勇者は目を凝らすと指をさしてステータスを覗き見る。



「〈 |Eyes of Truth《真実の眼》〉」


※魔法は使用者によって、詠唱が異なる。また、その発動結果も、使用者のイメージに依存するため変わる場合が多い。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


Name:はぐれシルク

主人:栄咲遊助

状態:健康

種族:ハイレア・ホワイトスライム

クラス:QUEEN

性別:女


HP 150/ 150

MP 90 / 90



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「・・・・・・待って待って。色々、待って。」

「ぷるん?」



ミラは動揺を隠せず、深く息を吐いて頭を抱える。

はぐれシルクは、ぷるんと首を傾げると大人しく、ミラの指示に従うように待っている。



「キミのステータスは、異常だ。見たことものないものだらけで、正直、どうしたらいいか分からない・・・。でも、これだけは分かった・・・。」


「ぷるん。」


「キミは!サカエくんのスライムなんだね!?」



叫ぶように駆け寄ると、縁に鎮座していたスライムを抱き締める。



「あぁ!キミはサカエくんと契約したのかー!いいなー!いいなー!羨ましいなぁ!だって、サカエくんと共に居ることを許された存在なんでしょ?すごく素敵じゃないか・・・!羨ましい!」


「ぷるん・・・プルプル・・・。」



スライムは最初逃げようともがいていたが、サカエの名前を聞いて、ふと動きを止めると、ミラを見つめてプルプルと震え始める。


そのまま、つぶらな瞳からポロポロと水を流すと、『うぅー・・・!』と小さな女の子のような泣き声をあげて泣き始めた。



「もしかして、泣いているのかい?そういえば、キミはなぜここに?はぐれシルクと書いてあるけど・・・もしかして、サカエくんとはぐれちゃったのか?」


「ぷるん・・・うぅ・・・。」



スライムはこくりと頷くように、ミラの手の中で頭を垂れて、俯いてしまった・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


※ここでプチシルクの横路(ロード)

このスライムは、正確には、シルクと分離した小さなスライムです。サカエの遺伝子情報と観月の遺伝子情報を獲得したことにより、シルクは〈生殖機能〉を獲得しました。

朝方、シルクはご主人様の寝込みを襲ったのですが、弾みで生まれたのが、この子でした。


そう・・・言わずもがな。この子こそ、シルクとご主人様の子供なのです。


いつの間に生まれていたことも知らず、シルクとご主人様は移動してしまっていたのでした。


実は、このことに気付くのは、ずっとあとのお話です。


おしまい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「そうか、はぐれちゃったか。幸い、私はサカエくんの居場所を知っている。連れて行ってあげようか?」


「ぷるん!?」


「はは・・・。本当に凄いな。キミは私の言っていることが分かるのか・・・。本当、スライムとは思えない、知能の高さだね。」


「・・・ぷるん!」



褒められたことに嬉しくなったのか、ミラの手の中でスライムは気持ちだけ胸を張ると、心を許したのか、スリスリと頬を寄せる。



「はは!可愛いなぁ、キミは・・・。それじゃあ、キミを見つけた責任を取って、私がサカエくんの所まで連れていこう。」


「ぷるん!!」



プル!プル!と嬉しそうにプチシルクは手の中ではね回ると、再び、風呂に戻り、スイスイー・・・と泳ぎ始める。



「はぐれシルクちゃんか・・・。・・・ん?シルク?たしか、サカエくんの仲間にシルクという女の子が居たような・・・。あ、そうだ、純白の少女だ。」


「ぷるん?」


「ま、まさかと思うが、シルクちゃんは、スライムなのかい?」


「・・・ぷるん?」



何を言っているのか、ワカリマセーン?というジェスチャーで、プチシルクはミラの言葉に首を振る。


「そ、そうだよね。あんな可憐な少女が、スライムなわけ・・・。」


「うー・・・。」



と、苦笑を浮かべて視線を戻すと、件の少女に擬態したスライムが立っていた・・・。


大きさは白い少女の10分の1程度。

ユースケたちの世界では、フィギアと同じくらいのサイズの女の子が、立っている。



「えー・・・。マジじゃん。」


「うー・・・?」



プチシルクは首を傾げると、元の姿に戻り、スイスイー・・・と風呂を泳ぎ回る・・・。


その光景を眺めて、ミラの再び頭を抱えるのだった・・・。



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