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ギルマス大爆発!!につき

「バカヤロおぉぉーー!!!このヤロおぉー!!サカエのアホンダラー!」


「え?ゴフッ!?いだだだだた・・・!」



報告しようと、ギルドに戻ると、目ジリを釣りあげたギルマスが、二階から駆け下りてくる。


そのまま、俺の首に腕をかけると引き倒し、四の字固めをキメてきた。


強制的に伸ばされるスジに、俺は床を叩いて絶叫をあげる。



「いだだだ!!」


「サカエ、コノヤロー!!ありえない程の小麦粉を買っただろ!?ギルド払いで、高額請求が来てるぞ!!?依頼にも行かないで、お前は何する気だ!?パンでも焼いて販売する気か!?」


「あー、それは考えてなかった!ちょっと、今から買ってきます!」


「行くな!行くな!頭おかしいのか、お前は!!」


「いだだだ!!」



体勢を変えての、エビ固め。

これがもう、涙が出るほど痛い。

どこでこんな技、身につけてきたんだよ、この人!!



「早いところ、依頼達成してこい!次の依頼がつかえてんだよー!!」


「いだだだ!おわ、おわったー!おわったー!依頼おわたよぉー!」


「虚偽の申告は了解だ!ギルドマスター舐めんな、コルァァ〜!!その性根を、叩き直してやる!!」



さらに体勢を変えたギルマスは、十字固めに移行する。



「あ、あの・・・ギルマスさん。」


「なんだ、ムツキ!?お前も、性根を叩き直してやろうか!?」


「ミツキです!じゃなくて、依頼なら本当に達成してきました。ゴブリンの巣、壊滅してきましたよ。」


「はぁ!?ギルドを出立してから、まだ半日だろうが!いくら、お前らがリアのお気に入りだとしても、それは無理があるだろ!?ギルマス、舐めんなよ!?」


「ほ、本当ですって、ほら!」



観月は俺のバックを漁ると、中から、アンティークな首飾りを取り出し、ギルマスに見せる。



「首飾り?なんだ、くれるのか?つっても、このデザインは趣味じゃねーが。」



俺を解放すると、首飾りを手にして、ギルマスは苦笑を浮かべる。

観月は真剣な表情で首を振ると首飾りを指さして、その正体を明かした。



「鑑定してみてください。それ、ゴブリンキングの首にかかってた、首飾りです。」


「はぁ!?ゴブリンキングの首飾りだって!?」


「ふふふのふー!そしてこれが、今回、手に入った魔石でーす。」


「はぁ!?」



俺は受付から、籠を受け取ると、鞄をひっくり返して中にある六十五個(洞窟警備二体も含む。)の魔石を全て放り込んでいく。



「そしてそして、これが、ゴブリンキングから出た、特大の魔石でーす。」



観月の顔ほどある魔石を、観月もバックから取り出すとギルマスに見せつける。



「バッチリ!依頼完了です☆」


「なー!?」


「「なんだってえぇぇーー!!?」」



周りで聞いていた皆も、ギルマスと共に目を丸め、叫びをあげる。



「たった三人で、ゴブリンの巣を壊滅・・・。しかも、進化種のゴブリンキングまで討伐してきたのか・・・?しかも、半日で?んな、バカな・・・。」


「はい!」


「冗談だろぉ・・・。」



驚くギルマスに、観月は元気に答えると、ずしりと重たい魔石を手渡した。


感嘆の声をあげ、ギルマスは答えると魔石を受け取り、手近のパーティへ振り返る。



「悪いがゴブリンの巣を確認してきてくれ。駄賃はやるからよ。」


「は、はい!」



ギルマスに答え、ワンパが慌てて装備を整え、ギルドを飛び出していく。


帰ってくるのは、随分と後になることだろう。


とりあえず~・・・うん。



「ナターシャさーん?買い取り、お願いしますねぇー・・・?量、あるけど!」


「お願いしますね!量、あるけど!」


「ぴえん・・・。」



受付でガクガクと震えるナターシャさんに、俺たちは振り返ると、魔石を手に黒い笑みを浮かべた・・・。


確認を終えて帰ってくるまでの間、好きに待機して良いと言われたので、とりあえず、ギルドを後にした。


待っててもよかったが・・・。



「サカエ!どうだ!オレェの筋肉は!」


「半日で、仕上がるかよ。筋肉は一日にしてならず、だろ?」


「うむぅ!?そのとおぉぉーり!!」



暑苦しくて、たまらないからな。

すっかり、彼はボディビルディングにハマってしまっていた。


まさか、スキルで変な性癖でもつけたか?とヒヤヒヤしたが、そういうわけではなく、今回はたまたま、天性の才能が開花したらしい。


やはり、天職に転職する日も近いと思う。

まぁ、男はどうなっても知らんけどね。

好きに生きればいいと、思うよ、うん。



「あ、あ、あ、あー!!ようやく見つけたぁー!」


「え?」

「ん?」



ギルドから出て、大通りに戻っている時、突如、前から走ってきた男性に声をかけられた。

ずっと、走っていたのか、肩で息をしながら呼吸を整えている。



「えーっと、たしか、門の所にいた人だよね?」


「うん・・・。そういえば、誰かを探してるようだったな。あの様子から察するに、探してたのは、俺たちだったみたいだな。」



俺たちは、呼吸が整うのを待ちながら、男の様子を観察する。


それなりに重量のありそうな鎧と、腰には帯刀。


見るからにいい装備だし、階級が上の人なのだろう。もしかしたら、隊長さんかな?



「あ、あの、何か御用ですか?」


「取り込み中の、ところ、し、失礼・・・する。はぁ、はぁ・・・。わ、私は・・・はぁ、マ、はぁ、マタ・・・はぁはぁ。」


「こ、呼吸が整ってからでいいですから・・・。」


「観月、ちょっと、飲み物買ってくるわ。」


「あ、うん。兵隊さんは、こちらのベンチにどぞ。」


「す、すまない・・・。」



俺たちのことを相当、探し回ったんだろうな・・・。少し申し訳なくなったので、俺たちはクタクタの兵隊さんに苦笑を浮かべると、ベンチに座らせ、飲み物を手渡して、話を聞くことにした。



「ごくごく・・・!ぷはぁ〜〜!生き返る・・・。すまない、二人とも。」


「う!」


「あぁ、お嬢ちゃんも、ありがとう。」



水を飲んで回復した兵隊は、仰いでいたシルクに礼を述べると姿勢を正した。



「それで、俺たちを探していたようですけど、どうしたんです?」


「単刀直入に聞くが、君たちはリア=フレイムのところから来たのか?」


「えぇ。昨日の昼に見送られ、今朝、こっちに来ました。」


「っ・・・!ナガミ村から普通なら、二日以上かかるところだが、彼女の紹介で来た君たちだ。余程、能力が高いのだろうから、今更、そこには突っ込まん。」



少し驚いた顔をした兵隊さんだったが、そこは問題視するところではないというように、小さく息を吐いて、すぐに話を戻す。


・・・あ、しまった。ずっと、到着までの行程は、自分たちのペース配分で駆け抜けてきたから当たり前に話してしまってたけど、そもそも、身体能力Lv3のチートボディでは、ベースが違うんだ。

驚かれても無理はないか。


でも、目の前の兵隊さんは、分かっていたことだと言うように、黙認してくれている。

それだけ、一緒に出てきた名前の方がインパクトがデカいというわけか。



「君たちに聞きたいのは、リアのところから、この街に来るまでの間で、誰かを見かけなかったか、という話だ。」


「誰か?行商人さんたちかな?」


「いや、行商人ではなく、こう、明らかに他とオーラの違う人物で、背中に大きな剣を背負った線の細い人物だ。」


「・・・あ、それって、ミラウェイドさんじゃない?」


「ミラくん・・・?」


「ミラ“くん”!?え!?え!?」


「え!?え!?」



兵隊さんは目を丸めると、僅かに飛び上がり、俺の肩に手を置いた。

やめてー・・・蕁麻疹でちゃうー・・・。


俺はやんわりと、おっさんの手から逃れると、観月に抱きつき、聖女の癒し(ただのハグ)を受ける。



「観月〜。急におじさんにグッと距離を詰められた〜。ハグしてー。なでなでしてー。」


「あはは・・・はいはい。」


「な!?お、俺はオジサンって歳じゃない!これでもまだ、二十代だ!」


「二十代後半はオジサンだよぉ。最近、ギルマスやら筋肉ダルマやら絡まれて、女の子成分が不足してんのに、勘弁してくれよー。」



詰め寄るオジサンに、俺はちらりと振り返ると、ぷっくりと頬を膨らませて、近寄らないように手で制する。



「はは・・・すみません。ユーちゃん、男性アレルギーなんです。男性と距離感が近くなると、蕁麻疹でちゃうんですよ。」


「アレルギーか。俺も、卵アレルギーだから気持ちは分かるが、それにしたって、オジサンは・・・。く、うぅ・・・まぁ、でも、俺も目の前に卵を置かれたら、罵詈雑言を投げつけ、火炎魔法で消し炭になるまで焼いているだろう・・・。それほどまでに、アレルギーの対象は憎く感じるものだから、分からなくもない・・・。ないが・・・オジサンはなぁ・・・オジサンかぁ・・・。」


「ユーちゃん。優しく、優しく。」


「むー・・・。」



余程ショックだったのか、ガックリと項垂れた兵隊さん。

さすがに可哀想だと、観月に言われ、俺は謝罪すると発言を撤回することにした。


まぁ、観月に言われて仕方なくだよ?

このいい香りと柔らかさがなかったら、俺の心は乱れまくって、むしろ俺の方が大暴れしてたからね?


街一個、逝っちゃうぞ、こら。



「えらいねぇ!できたね!いい子、いい子。」


「ん〜!観月、好き好き〜!」


「ふふ!私も好きだよー、ユーちゃん! 」



頭を撫でながら、甘えられて嬉しい観月が、にっこりと微笑む。

まじ聖女。超絶かわいい。

ずっとこうしてたい・・・本当。

もう、宿に行って、ハレンチしたいわ。



「うぉっほん!話を戻すが、二人・・・三人はミラウェイド殿に会ったんだな?」


「う!」



お。ちゃんと、シルクの存在を思い出して訂正してきたな。心做しかシルクも嬉しそう。


咳払いをした兵隊さんは、気を取り直して、話しの続きを始める。



「ミラウェイドさんなら、旅の途中で会いましたよ。えーっと・・・なんていうんだろう、モンスター?に襲われてましたね。」


「あぁ!やはり、あの後に、戦闘になってたのか・・・。ミラウェイド殿は、どうなった!?無事か!?」


「え?あ、はい。戦闘は結局、ユーちゃんが獲物を横取りした感じになりましたね。少し、ミラウェイドさんも危なかった様子でしたけど、ユーちゃんが撃退して、追い返しましたよ。」


「なるほど!君がミラウェイド殿を助けてくれたのか!?さすがは、リア=フレイムのお気に入りだ!本当、助かったよ!ありがとう!」


「やーめーてー。心理的にも物理的にも距離、縮めて来ないでぇー!蕁麻疹でちゃうからー!」



兵隊さんに、バシバシと背中を叩かれた俺は、半泣きで観月の腰に顔を埋める。

ダメだ!女の子成分が、オジサン成分に負けそう!

これは、もっと女の子成分を補給しないと!


ー さわさわ〜!モミモミ〜!



俺は、観月の腰に縋り付き、さらにお尻に手を回して、さわさわと撫でる、揉む。



「ひゃ!?ゆ、ユーちゃん!ダメだよ!ここでは、メッ!」


「観月!おじさんにメッ!して!これ以上、近寄られたら、蕁麻疹どころじゃなくなるよぉ。」


「オジサン、言うなぁ。そろそろ泣くぞ、俺は・・・。」



再びオジサン呼ばわりされたオジサンは、さっきよりもさらに肩を落として項垂れた。


「ミラウェイド殿がとりあえず、無事なのは分かった。ありがとう。恐らく、三人と別れた後に戻って来ないのは、そのまま、ナガミ村の知り合いところに向かったという

ことだろう。」


「う!うぅ・・・!男なんてみんな、野犬に食われればいい!この世が女の子で溢れればいいのに!」


「はは・・・。そりゃ、困るなー。人手不足になってしまうぞ。」



存外本気の心からの叫びに、おっさんは苦笑を浮かべると、立ち上がり胸に手を当て、敬礼の形をとる。



「三人ともありがとう。あぁ、自己紹介が遅れたな。俺はこの領主からこの街の安全を任されている〈マタイ〉というものだ。これからも、よろしく頼む。もしも、なにかあればいつでも相談してくれて構わない。ミラウェイド殿を助けてくれた礼だ。いつでも力を貸そう。」


「私は羽衣観月です。こっちでブーたれてるのは、天性の女好きの栄咲遊助っていいます。それと、この子はシルクです。どうぞ、今後もよろしくお願いします。」


「さかえゆーすけです。よろしくおねがしますから、どうか、もう、そっとしておいてください・・・。おねかいします。いのちにかかわるから・・・。」


すっごい棒読みです、はい。


すみません。女の子成分がなくなって省エネモードになった僕に元気とか爽やかさとか、機敏な動きとか期待しないでください。


今なら、ナマケモノにすら負ける自信ありますよ、ボク。


早いところ、観月から女の子成分を頂かなくては、干からびる・・・。


そうだ。ハレンチ・・・ハレンチしないと・・・。

うぅ・・・身体に力が入らん・・・。



「ミツキ殿、ユースケ殿、シルク殿だな。うむ!よろしく頼む。」



マタイさんは手を差し出し、俺、観月、シルクと握手を交わしていった。



「う!」


「・・・この子は大きく見えるが、言葉は話さないのか?」


「旅の途中で、出会ったんですよ。名前も無くて、言葉もまだ・・・。」


「なるほど、拾い子か。先の大戦での生き残りかもしれんな。まぁ、言葉が話せなくても、問題はない・・・。想いを伝える手段はいくらでもあるのだからな。頑張れ、少女よ。ははは!」


「う!」


マタイオジサンは、シルクの頭をポンポンと撫でると、踵を返して歩きだす。


まるで、熟練の勇者みたいな人だったな。



「うぅ〜〜もうダメだぁ〜。やる気がでない。力、抜ける。倒れる・・・。」


「ちょ、大丈夫?どっかで、休む?」


「ハレンチが必要だ。観月とたくさん、ハレンチしないと、回復しない・・・。このままだと、死ぬ・・・。」


「またまた、大袈裟なー。」



ぐったりと、観月の腰に抱きつき呻く俺の頭を撫でながら、観月は苦笑を浮かべる。


▷大袈裟・・・でもないかもしれませんよ。



「え?どういうこと?リライアさん?」



突如、響いた声に観月は眉を寄せて、耳を傾ける。



▶︎主様はアスモデウスの力を所有している特別な存在です。

前にも話した通り、その力の根源は〈色欲と激怒〉です。

色欲は、主様に多大な恩恵を授けているんですよ。

だから、もしも、ハレンチをやめると・・・


「ハレンチをやめると・・・?」



▶︎主様は消滅する恐れがあります。



「消滅!?」



▷逆にいえば、色欲を満し続ければ、マスターは完全無敵の存在で、あり続けられるんですよ。つまり、一番近くにいる観月さんの存在が、本当の意味でマスターにとっての存在の要なんです。



「私が・・・ユーちゃんの存在の要・・・。」



観月はゴクリと喉を鳴らすと、俺をめいいっぱい抱きしめる。



「ユーちゃん・・・。キスしよう・・・。」


「・・・へ?観月。」


「ユーちゃん。好きだよ。」


「観月さん?」



とても、穏やかな、それでいて照れくさそうな笑みを浮かべて、観月は俺の頬に手を添える・・・。


観月に導かれるように、俺は目を閉じると静かに唇を重ねた・・・。



「ユーちゃん・・・ちゅ・・・ちゅ・・・。」


ーザァー!!!



ちょうどその時、まるで二人を皆の目から逸らすように広場の噴水が吹き上げる。



「ちゅ、ちゅ、んん・・・ちゅ・・・!」



その長いまつ毛が震え、ゆっくりと開かれると潤んだブラウンの瞳が俺を見つめ返した。


あ・・・観月の瞳に虹が見える・・・。

これなんていう現象だっけ・・・?



「はぁ・・・はぁ・・・ちょっと、激しすぎだって・・・観月さん・・・。」


「あはは・・・!元気出た?」


「・・・・・・あぁ。愛してる人とのキスだ。とっても、元気が出たよ。」


「ふふ・・・!大好きな人に、愛されてるって・・・いいね!」



観月は満面の笑みで微笑むと、ゆっくりと立ち上がり、呆気に取られていた俺に手を差し出した。


俺も微笑み、その手を掴むとぐっと引き寄せる。そのまま抱きしめると、今度はこちらから唇を奪った。



「まったくだな・・・ちゅっ!」


「ん!ん・・・んん!ユーひゃん!? ん!ちゅ!」



強く、深く、熱く・・・彼女に愛を示すように・・・。


ーーーー

ーーー



「TPOオオォーだ!バカヤロオォー!このヤロー!ウチのイメージを考えろよ、サカエ!ミツキ!!ハレンチギルドだと思われるだろうがぁ!!」


「す、すみません・・・。」


「ぶー・・・。」



ギルドに戻ると、俺と観月は、また二階から駆け下りて来たギルマスにゲンコツを貰う。


俺たちが、噴水広場のど真ん中で、キスをしていたのを、目撃した冒険者ワイスナーどもが、チクったらしい。


よし、後で折檻してやる。


特別やばい性癖を付与してやるからな、ワイスナー。

覚悟しといてねん♪︎



「反省の色無しは、了解だ!罰として、お前らに、俺から追加の依頼を言い渡す!有難く思えー?」



ギラギラと怒りに燃える目で、俺を睨みつけると、次の丸めた依頼書を俺の目前に突きつける。



「ツーン!やだ!俺、今から観月に女の子成分を補給してもらわないといけないんだもーん。」


「ギルマスの依頼だっつてんだろうが!!黙って、受け取れやぁー!!」


ーパコーン!!



「いってぇー!?暴力反対!暴力反対ー!!」



丸めた依頼書を俺の頭に思いっきり振り下ろすと、ギルマスは目をさらに吊り上げて怒鳴り散らす。



「分かったら、さっさといけ!」


「いてて・・・。その前に、ゴブリンの巣壊滅の報酬くださいよー。」



緊急で呼び戻され、依頼達成の確認は取れたものの、ギルマスからの特別報酬は未だ貰えていなかった。



「オメー・・・。許可なく買った小麦粉代、いくらしたと思ってんだ?」


「・・・・・・テヘペロ(ノ≧ڡ≦)☆」


「すっとぼけんなぁー!俺の今月の酒代、返しやがれ、テメェー!!」


「うぇーい♪そんじゃ、行ってきまーす!」


「あッッ!?ゴルァ!!待て!!一発殴らせろコラ!」


「イヤです〜!これ以上、女の子成分を奪われてたまるかっての!」


「ギルマスさん、す、すみません!後で、きつく私の方から言っときますから!」


「う〜!う〜!」



振り下ろされる鉄拳制裁をヒラリと躱すと、俺は観月とシルクの手を引いてギルドを飛び出す。



「待あぁーてー!!折檻だ!サカエ!ミツキ!シルクゥゥ!」


「あばよ〜!おっさ〜ん!」



ヒラヒラと手を振って、俺はギルマスの前から、走って逃げる。


後には、カンカンに怒ったギルマスが、拳を振り上げ怒鳴っていた。


まんまと逃げられたギルマスに、ギルドの仲間たちは声をかけることもできず、飛び火が飛んでこないことを切に願いながら、目も合わせず、ちまちまとテーブルで酒を飲む。



「ふー・・・ふー・・・。ったく!アイツら!帰ってきたら、ただじゃおかないからな・・・。」



拳を下ろし、小さく息を吐くと、自身の手を見つめ小さく笑う。



「それにしても・・・ゲンコツを逃げられたのは久しぶりだな。リアとミラウェイドが小さい頃におちょくってきた時以来か・・・。」



昔を思い出し、少しおかしく感じてしまったギルマスは踵を返すと、近くで酒を飲んでいたギルメンの酒を奪い、一気に飲み干す。



「ちょっ!マスター!?オレの酒!?」


「いいだろ?たまにゃ、奢れよ。カハハ・・・!」



バシバシ!と、ギルメンの背中を叩き、再び別のジョッキを奪い飲み干す。



「ぷはぁー!!飲んだ!飲んだ!ごっそーさん!!」


「う、うぅ〜!俺の酒・・・!」



結局、その場にいた全員の酒を飲み干すと、上機嫌に二階の事務室へと戻って行った。


後に残された空のジョッキを振って、皆は深くため息を吐くと、泣く泣く、次の酒を継ぎに行くのだった。



ー ※ここでシルクの横路(ロード)


あとからで聞いた話ですが、この街にも、恋愛に関するジンクスがあるそうです。


大通りの聖剣のオブジェ、魔法屋の黄金の矢、ギルドの玄関にある水神の骨。


この三ヶ所を回って、最後に中央広場の噴水前で、皆に見守られながらキスをすると、永遠に結ばれるそうです。

是非、お試しください。


・・・あれ?どれもこれも、どこかで聞いたことがあるような?


気の所為かな?



おしまい。


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