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その街、到着につき

テントの外から漏れるうっすらとした光と、鳥たちの鳴き声に意識を呼び覚まされた俺はゆっくりと目を開ける。


深夜から朝方まで、寒いかと予想されたが、テントの中はそんなことはなく、とても温かく感じた。


もしかしたら、このテントには擬態だけでなく、保温や通気性にも優れているのかもしれない。



「観月・・・。」


「スー・・・スー・・・。」



隣を見れば毛布にくるまった観月が、眠っていた。


昨日は気を使わせてしまったな。


添い寝やキスで、俺の気持ちを少しでも楽になるようにという優しさを感じた俺は結局、単に彼女に抱きしめられる形で眠りに落ちてしまったんだ・・・。

そこには一切の破廉恥はなかった。


全くもって、ハレンチ王として不甲斐なし!


女の子に気を使わせたうえ、手も出さないとは。


まったく・・・穴があったら入れたいぜ・・・。

じゃなかった。入りたいぜ・・・。


ここは、お詫びに昨晩の分もたっぷりとハレンチして、復活したことをお伝えせねば!



「とは言っても、疲れて寝てる子に手を出すのもなー。」



いや、そういうプレイも好きですよ?でも、今朝に限っては、単に昨日は大変だったし、初の野営で寝付きも悪かったろうから、ゆっくり休んでもらいたかった。


野営に慣れた頃でも、夜這いすればいいだろう。



「少し、外の様子を確認するか・・・。ん?」


ー ズル・・・ストン・・・


毛布から抜け出し、立ち上がると、ズボンが緩いのか、ストンと落ちた・・・。


ベルトが、外れている・・・。



「・・・あ、あれ?昨日、ベルト外したっけ?」



不思議に思い、落ちたズボンを上げて、首を捻る・・・。

あれ?なんか、パンツ自体も、位置がズレてる気がする。

寝てる間に、ズレたか?


パンツの位置を直し、ベルトを締めたところで、モゾモゾと寝がりを打つ隣の観月を見ると、毛布に包まって背中を向けていた。しかし、見える耳やうなじは真っ赤になっている。


もしやと思い、反対を見ると、布団に丸まったシルクが同じく顔を隠して背中を向けていた・・・。


こちらも・・・耳とうなじは真っ赤だった。



「あ、あー・・・。そういうこと・・・。」



どうやら、昨夜、眠りに着いていたのは、俺だけだったようだ。



「二人とも、次は俺が意識があるうちに来てくれよ・・・。寝込みを襲われると、なんか、その・・・損した気分になる・・・。イチャイチャしたいのは、俺も一緒なんだからさ。」


「・・・・・・は、はい///」


「・・・・・・うー///」



二人の返事に俺は小さく笑うと、身なりを整え、テントの入口へと手をかけた。

ほんと、人目がないとこの二人は、好き放題だな。


まったく困った、むっつりさん♡




ーーー

ーー



テントを片付け、二人の準備も整ったところで、俺は地図を広げ、周りを観察する。

そろそろ、出発するとしよう。



▷おはようございます。皆さん。


「おはよう、リライア。」

「おはよう、リライアさん。」

「うー、うー!」



リライアの予想到着時刻は昼頃だそうだ。


街に到着したら、まずは魔法屋に行って、魔石を買い取ってもらう。


そして、ギルドで登録だ。

昼食挟んで、依頼に向かう。


帰ってきたら、お金を貰って、宿を探しだな。



「観月、お腹は持つか?」


「失礼なー・・・。私を腹ぺこキャラに位置づけしようったって、そうはいかないからね?」



全然、大丈夫だよ!と、観月はお腹を撫でると、お腹も気合いが入った返事を「ぐ~!」と返した・・・。


どっちだよ・・・。



「バックのご飯も食べていいからな?腹ぺこじゃ、力も出ないぞ。」


「う、うぅー・・・。もうちょっと、我慢する。」


「う!うー!」



シルクを背負うと、俺たちは街道を歩き出した。

そういえば、シルクは腹が減らないのか?

食べてる姿は、村の屋台を最後に見ていない気がする。



▶︎シルクさんはスライムなので、雑食です。それはもう、【悪食】レベルの雑食です。いざとなれば、モンスターも食べてしまいます。恐らく、よくよく観察してみれば、ところどころでご飯を食べていたと思いますよ。



「え?マジ?」


「う?」



魅玖の補足説明に驚き、肩越しに振り返ると、背中にしがみつい着いたシルクが、首を傾げて見ていた。


俺、このまま、バクりとされないよな?


▶︎あ、主様は朝方、パクリとされてましたね。主様の“アレ”もシルクさんにとっては大切な養分ですから。



「あ、あー・・・。“アレ”ね。」



スッキリした感覚で目を覚ましたのは、そのせいでしたか・・・。



「シルク、勝手にパックんちょしちゃダメ。お兄さんが、起きてる時にしなさい。」


「う・・・。う。スー・・・ちゅ!ちゅ!」


「うひっ!?ちょ、シルク!今じゃない!今だめ!く、くすぐった!」



上手く伝わらなかったのか、シルクは背中におんぶされたまま、俺の首に顔を埋めると、大きく深呼吸をして、チューチュー吸い始める。


それが、まぁ、くすぐったいのなんの。


俺はシルクを抱えたまま、バタバタと暴れ回る。

まるで、暴れ馬だ。



「暴れ馬というか、ハレンチ種馬だよね・・・。」


「急な悪口!」


「浮気性なのが、悪いんだよ。もっと、自重するべきだね!」


「人の股ぐらをまさぐる痴女が、正論言うな!むっつり娘!」


「むっつ・・・!さ、先行くから!」



観月は、荷物を抱えると、真っ赤になった顔を伏せて一目散に駆け出した。


▷でも、それも仕方ないんですよ?マスター。マスターは今、アスモデウスの力も加わって、魅了の効果も常時発動しています。

近しい人で、さらに、肌を合わせた感覚がある人ほど、その影響はモロに受けてしまいます。「惚れ直す」が常時、起きるんですよ。

観月さんも、マスターのこと、どんどんどんどん、好きになってるんです。

歯止めも、効きづらくなってきてるんでしょう。



「そうなんだ・・・。それって・・・。」



▷観月さん自身、すごくつらいと思いますよ?たまには、じっくりとスキンシップなどして、解消してあげないと、フラストレーションが大爆発する日も来るかもしれません。



「なるほどな。」



一人、駆けていく観月を眺めて、俺は小さく息を吐くと、その背中を追い掛けるため、力を込めて駆け出した。



「ぅ・・・うぅ〜!!」



当然、背中のシルクが、急な加速で泣きべそをかいたのは言うまでもない・・・。


「あ、ユーちゃん、アレ。」


「ん?あ、街だな。」



休憩を挟み、たまにハレンチしながら、街道をひた走ること、五時間。

モンスターとも、結局、それほど遭遇することなく、俺たちは進んで来れた。



「もしかしたら、お婆さんがくれた、御守りのおかげかもしれないね。」


「あぁ、そういえば、これもあったな。」



俺は首から下げていた、ペンダントを見てみる。盾の形を象った、ペンダントだ。

女神の加護があるって言ってたな・・・。

この世界の女神って、創造の女神のことかな?

これは一度、詳しい人に見てもらった方がいいかもしれない。


そうこうしていると・・・。


気がつけば、林はどんどんなくなり、視界が広がっていく。目前に目を凝らすと、遠くに街並みが見えてきた。


地図を確認すると、ポインターもソコを指している。目指している街だ。



「と、遠かった・・・。五時間、移動しっ放しだったな。」


「もう・・・。ユーちゃんが途中でスカートめくりとか、胸触ってきたりしてこなければ、もっと早く着けたんだよ。無駄に疲れたんだから。」


「んー・・・たしかにな。じゃあ、今度からやめるよ。」


「え?・・・・・・やめちゃうの?」


「うん、やめるわ。シルクだけに、ハレンチする。な、シルク~♡」


「うぅ!?う、うぅ・・・///」



おんぶしているシルクのお尻をモミモミと揉みしだくと、ふにゃふにゃとシルクは脱力して俺の首に顔を埋めた。



「う、うぅん!・・・う、うぅ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」



切なげな声をあげるが、拒絶する様子はない。

なすがままに揉みしだかれながら、シルクはぴくん、ぴくんと身体を震わせる。

くすぐったい・・・って様子じゃないな・・・。

もしかして、感じているのだろうか・・・。



「う、う、うぅーっ!!」


「だ、ダメだよ!こんな、幼い子にハレンチなんて!するなら、私でいいでしょ!?ユーちゃんのハレンチは、私が引き受けるよ!」



自身の大きな胸を叩いて、触るならこっちにしろと、真っ赤になって、抗議してくる観月。



「そう?じゃ、これからも、よろしくね、観月。ふふ~♪」


「うん!任せて!どんどん、ハレンチしていいよ!・・・・・・って、しまった!?つい、勢いで・・・!」


「ふふ・・・。撤回するか?それなら、シルクが・・・」


「ぅう!?うん!うぅ!う~///」


「代わりに頑張ってくれるだけだよ?」


「ぐっ!?っ~~!鬼!悪魔!外道!ハレンチ魔王!」


「ふはははは・・・!全部、俺にとっては褒め言葉だよ、観月たん!」


「はぁ・・・なんで、こんな幼なじみになっちゃったんだろ・・・。昔は・・・いや、昔からこうか・・・。」


「はは!そうだな、昔からこうだ。俺も、お前もな。ほら、遊んでないで、行こうぜ。早いところ、昼食に入りたいだろ?」


「ちょ、そこに私も並べないでよ、なんか、私までハレンチみたいじゃん!」



観月の背中を押して、俺は足を進める。

魔法屋とギルドにも顔を出さなきゃ行けないし、依頼も受けないと。

そして、宿探し。

やること、いっぱいだよ、ほんと。



「う、ううー。」


「あはは、悪かったよ、シルク。お預けした感じだよな?」


「う・・・///」



シルクは答えるように、首に顔を埋めると、ちゅっ!ちゅっ!と、キスの雨を降らせる。


くすぐったさも、あったが、シルクの気持ちを代弁するようで、愛しさも感じていた。


なるほど、これがシルクのOKサインってわけか。


「(わかったよ、シルク。今夜は続きしような。)」


「・・・///」



俺の念話に応えるように、ギュッと強く抱きつくと、シルクはスリスリと頬を擦り付けてくる。



「・・・ほんと、シルクちゃんはユーちゃんのこと大好きだね。」


「う!」



観月の言葉に、シルクは満面の笑みを浮かべて、強く頷いた・・・。


街に到着すると、シルクを一旦降ろし、三人で手を繋ぐ。


傍から見たら、親子のようだが、はぐれない為にも、手は繋いだ方が無難だろうという結論で、三人は納得した。


なんたって、この街は・・・【 ディケイナ(でけーな) 】だから。

領主は、ダジャレ好きなのか・・・?



「はあぁぁー・・・。洒落ぬきで、でけーな・・・。」


「わあぁー・・・。大きいなー・・・。はぐれないようにしないと。」


「うー・・・。うう。」



俺たちは、街に入るための門を眺め、息を呑む。



門の前では憲兵らしき人達が、入ってくる人々を監視していた。



「ふーん。結構、厳しそうだな。もしかして、身分証がないと入れないとか?」


「え?私たち、身分証とかないよね?戸籍もないし。」


「まぁ、行ってみるだけ行ってみよう。ダメなら・・・ふふ。奥の手だ。」


「え?何する気!?」


「さぁ!行こう!」


「え、ちょ、ちょっと!?ダメな時、何する気!?」



観月とシルクの手を引いて、俺は門をくぐる為に並ぶ人々の列に並ぶ。


よくよく、観察していると、特に何かを見せているような様子はなかった。


単に、街へ立ち入る理由を聞いているようだった。


これなら、難なく入れそうだと思っていると、自分たちの番になる。


形ばかりの制止をかけると、憲兵は俺たちに話しかけてきた。


とても優しそうな雰囲気の人で、正直、憲兵というものとは対極にいるような人だ。

まぁ、印象をよくするために、あえて、優顔の人を配置しているのだろな。


だって、もう一人の人は、明らかに強面のオッサンだ。

人一人は殺してるような顔で、街に向かう人々を凝視していたからな・・・。

怖すぎだろ・・・。



「〈ディケイナ〉へようこそ。長旅、お疲れ様でした。こちらへは、御家族で旅行に?」


「いえ。リアさんの紹介で、ギルドにお伺いして、冒険者の登録をしたいと思ってまして。よければ、簡単でいいので、場所をお伺いできますか?」


「なるほど、ギルメンからの紹介で、冒険者の登録ですか。頑張ってください。ギルドは、門を入って右の通りをまっすぐ行くと、見えてきます。入口に、ギルド長が討伐した水龍の骨が飾ってあるので、一目で分かると思いますよ。」


「水龍の骨・・・そりゃすごいな。ありがとうございます。」


「お気をつけて。何かあれば、私たち、〈マタイ隊〉にいつでも、お声掛けくださいね。」



この国の敬礼だろうか?胸に拳を当てて、マタイ隊のお兄さんは、元気な笑顔を向けて「良い滞在を!」と胸を張った。



「ありがとうございます。」


「ユーちゃん!ギルドもそうだけど、リアさんのお友達の所にも行かないと!」


「あ、魔法屋か。しまったな・・・。登録料とかあるよなー、やっぱ。まずは、資金調達か。」


「じゃ、誰か聞いてみよう!あ、すみませーん。」



微笑ましげに、三人を見送ったマタイ部隊の隊員は次の人を迎え入れる。


その隣では腕を組んで、厳つい顔の隊員が首を捻っていた・・・。



「んー・・・。」


「それでは、良い滞在を!って・・・隊長?そんな、険しい顔してたら、街に入る人達が怖がっちゃいますよ?」


「いや、あの青年の言っていた名前が、どうにも気になってな。」


「名前ですか?言ってましたね。なんでしたっけ、イアさん、だったか、リナさんだったか・・・。」



実は流れ作業で皆の話を聞いている隊員は、いちいち話の内容まではハッキリと覚えていなかった・・・。


こうして、見張りをしているのも、怪しい人物を炙り出すためのものではなく、対外的なアピールに過ぎなかったのだ。


こうして、見張りを置いておけば、身にやましいことがある人間は近付くことすらしないので、実は効果はあったりするから不思議なものだが・・・。



「イア・・・?リナ・・・?違うな。イナ・・・イリナ?」


「二文字だったと思いますよ。」


「なるほど、イリアだな?」


「隊員、疲れてます?二文字って、言ってるじゃないですか。たぶん、イナ、イリ、イア、リナ、リアのどれかだと・・・え?」



「「リア!?リア=フレイム!?」」



記憶を探り、答え合わせをしていた二人は突如、素っ頓狂な声を上げて、顔を見合わせると、急いで街の中に目を向ける。


そこには、街を訪れた多くの人々が行き交っており、今更、中に入った三人を見つけることなどできなかった・・・。


二人は今一度、顔を見合わせると、頭を抱えて、深く深く息を吐く・・・。



「くぅ、うう・・・。すまん、副長。あの三人を探してくる。あとで他の者を寄越すから、ここは任せた・・・。」


「あ、あぁ、はい・・・。お気をつけて・・・。」



隊長と呼ばれた男、マタイは、勇者に振り回された昨日に続き、今日も胃が痛そうだった・・・。

「広すぎる。マダムに話を聞いて、秒で分かんなくなるとか・・・。広すぎだろ、この街。いい加減、地図が欲しい・・・。リライアマップを・・・リライアマップを見せてくれ・・・。」


▷あ、あはは・・・。すみません。地図があれば、ポインタを打てるんですけど・・・。



俺の呻きを聞いていたのか、はたまた、キョロキョロとしている俺たちを気にかけてくれたのか、近くの露店の店主が声をかけてくれ、街の地図を見せてくれた。


▷ありがとうございます。マップを作成できました。いつでも、ご案内できますよ。


頭の中に、リライアマップが表示される・・・。



「この街は広いからね。迷わないように気をつけてね。」


「ありがとうございます!」


「はは!お安い御用さ!お金が出来たら、ウチにも寄ってくれよ!」


「はい!ぜひ、その串焼き、食べに来ます!」


「観月さん、ヨダレ・・・。」


「ハッ!」



なんか、最近、観月のキャラが崩壊してる気が・・・いや、それこそ昔からか。

コイツは昔からよく食べる奴だもんな。


まぁ・・・それが・・・


「ん~・・・!どれも・・・!これも・・・!美味しそうだね・・・!」


ー ポヨン!ポヨン!


ちゃんと、この豊満な美乳に繋がっているから、一概にダメだと言えないんだよな・・・。



「うん。美味しそう。(本当・・・美味しそうな、身体してるわ。)」


「ん、んん・・・?ユーちゃん、その、胸ばかり見ないでよぉ・・・。」



俺の視線に気付いた観月が、恥ずかしそうに身をよじる。

胸ばかりじゃない、全身を見ているんだよ、観月・・・。



「ふふ・・・。もっと食べて、大きくなれよ・・・。」


「ちょっと!胸に語りかけないでよ!変態!」


「なんなら、私、栄咲遊助。羽衣観月さんのお胸様の成長のお手伝いしますが?」


「手!手を下ろしなさい!ニギニギしないで!ちょっと、待ってよ!触るにしても、もっと人目のない所にして!」


「ほほう?人目ないところなら、いいのか・・・。ほうか、ほうか・・・。ふふ・・・カシコマッ☆」



観月の下知を取った俺は、グッと親指を立てると、スキップ混じりに、シルクと大通りから脇道をチラリチラリと覗いて歩く・・・。



「ここは人いないかな・・・?」


「あぁ!エメラルダ!」

「あぁ!ポール!」


ーんちゅ~♡ちゅ~~♡


ちっ、バカップルめ・・・昼からイチャイチャしやがって・・・。



「あっ!?ち、違っ・・・。そうじゃなくてね

!?ま、待って・・・人目のない所を露骨に探すの、やめてよ~!恥ずかしいから~!」


「うふふ・・・!こっちよ、観月さぁ~ん!ほらほら、捕まえてごらーん?」


「こんの!逃げんな~!」



脇道を覗きまわる俺とシルクを、観月は半泣きで捕まえようとする。

俺たちは、それをヒラリヒラリと躱しながら、街を駆けて行った。



「ふふ・・・仲睦まじいねぇ・・・。」

「楽しそう・・・。羨ましいなぁ、あんな関係・・・。」



楽しそうにはしゃぐユースケたちを、横目に眺めていた街の人々の顔には、少し笑顔が零れていた。


聖剣通りと言われたこの道のシンボルである、聖剣のオブジェを三周ほど追いかけっこした後、ユースケたちは魔法屋へとようやく、足を向けるのだった。


マップを確認すると、目の前にある店舗が魔法屋であることは、間違いないようだった。


確かに木彫りの看板には杖のようなマークが描かれており、魔法関連の店であることは分かる。


しかし、具体的に店舗の名前を示す物はなく、本当に魔法屋であるかどうかを確認することはできなかった。



「これ、マップがなかったら、見つけられないよな。」


「うん。武器屋さんと防具屋さんも途中にあったけど、みんな同じ外観してたよね。看板だけ違ってるから、よく見ないと、間違えそう。」



景観を損ねないためか、この街の建物は大体同じ形をしているため、危うく見逃しそうになった。


リライアマップ様々だな。


▷えっへん♪



「ご褒美に、リライアは後でハレンチな。」


▷えぇ!?あ、あの、私、頭を撫でてくれるとか、軽いスキンシップでも嬉しいんですけど?観月さんやシルクさんじゃないので・・・。



「な、なんで、そこで私の名前が出るのかな!?」


「うぅ!?」


「ほら、リライアにも、むっつり娘って言われちゃったな。そろそろ、自覚してきたんじゃないか?」


「う~ぅ・・・!だ、だってぇ、ユーちゃんの寝顔を見てると、ドキドキするんだもん・・・。」



モジモジと、指を絡めて観月は自身の痴態を恥じていた。

でも、俺はむしろ、それを嬉しくも、誇らしくも思っている。

相手に触れたくなる・・・それは、とても大切な気持ちだと思うから。



「それは、俺も同じだよ。観月の寝顔も可愛いからね。観月が寝てる間に、キスしたこともあるぞ?」


「え!?気づかなかったなぁ・・・。なんか、もったいないことした気分・・・。起きれば、よかったね。」



俯きながら、自身の唇を撫でて、観月は切なげな吐息を漏らす。



「ふふ。あぁ、今度は起きてる時にするよ。」


「うん・・・待ってる///」


「本当は・・・今したいくらいだけどな?」


「い、今は・・・人目あるから・・・。でも、気持ちだけでも嬉しいよ。」



ニコリと照れた笑みを浮かべて、踵を返した観月は、腕を後ろ手に組んで魔法屋の扉に向かった。


その後ろ姿は少し機嫌が良さげに見える。



▷よかったですね、マスター。気持ちが伝わるだけでも、女性は嬉しいものですよ。



「あぁ。俺も、嬉しいよ。まぁ、それでもリライアのハレンチは決定だけどな。もう、トロトロドロドロになるまで、ハレンチするから。」


▷ふぇ!?この流れは、私のハレンチ解除の流れではなんですか!?


▶︎あはは・・・。リライアさん、計算ミスりましたね。



「魅玖もな。露出イキグルイだ。」


▶︎にゃーッ!?


俺はサポート二人に、ご褒美(ハレンチ)を確約すると、観月の後に続いて、魔法屋の扉に向かった・・・。


扉に手をかけ、中に入ると、まず感じたのはお香のような香りだった。


白檀だったか、とてもいい香りが、部屋に満ちている。


カウンターには、魔法屋らしい魔女のような大きなつばの帽子を被った女性が座っていた。


何やら熱心に、魔石をレンズで眺めている。


入店してきた俺たちに、目を向けると、すぐに視線を魔石に戻した。



「いらっしゃい。ゆっくり、見ていってね~。」


「あ・・・はい。」



魔石を売りに来たことを伝えようと思ったが、店主の真剣な表情に声をかけ損なった俺たちは、言われるまま、店の中を散策することにする。



「・・・魔法屋さんって、魔法を売ってるの?」


▶︎そうですね。簡単にいえば、観月さんや主様の頭に入ってる本を、簡略化してまとめた物を販売しています。一般的に、スクロールと呼ばれるものですね。

このスクロールは魔力を流すことで、中に収められた魔法が発動するいわば、簡易の魔法を販売しているんですよ。


「これって、覚えれるわけではないんだろ?インスタント魔法みたいに、使い捨てになるんだよな?」


▶︎そうですね。多くの物は、一度使えば、不使用になります。その代わり、強力な魔法ほど、非常に長い詠唱を必要としますので、スクロールに収めることで瞬時に発動するという利点があります。


「あ、そうか。事前に、詠唱を記しておいて、魔力を流すだけにするから、短縮できるってわけか。」



俺は棚に置かれているスクロールに手を伸ばし、その表題を見る。


【爆裂魔法~エクスプロージョン~】と書いてあった。


・・・なんか、ヤバそうなので、そっと棚に戻す。



「長い詠唱を必要とする魔法か。今のところ、俺たちは持ってないよな?」


「そうだね。名前とイメージで、やっちゃう感じだよね。」


▶︎・・・あの、それ、誰も突っ込まないから、私が今更ながらにツッコミますけど、普通じゃないですからね。お二人が普通にしているのは、俗に言う、超難易度の無詠唱魔法ですよ。この世界でも、勇者パーティと賢者クラスの人しか使えない技ですから、簡単に使わないでくださいね。

特に主様のは、【アスモデウス】の影響で規格外におかしい威力になりますから。

周りにバレたら、一気にバケモノか、魔族扱いされますよ?



「・・・あー。ここにも、チート能力が隠れてたか。」


「あはは・・・。言われないと分からないもんだね。」



俺たちは苦笑を浮かべると、スクロールはやはり不要と言うことで、話に区切りを付ける。



「名前とイメージで魔法を使っちゃうのかー。なーるほどね~。つまり、君たちが、リアっちの言ってた、バケモノ級の二人ってわけか。」


「ん?」


「え?」



突如、声がしたかと思えば、がっちりと背後から覆い被さるように肩を組まれる。


振り返ると、先程までカウンターで魔石を見ていた魔女っ娘が俺たちに向けてニシシ・・・と歯を見せて笑っていた。


なんともまぁ・・・天真爛漫な無邪気さが滲み出ている素敵な笑顔だこと・・・。


俺は笑顔を返すと、魔女っ娘さんに向き直り、自己紹介をする。



「俺は栄咲遊助!世界中の女の子を幸せにするために旅をしているんだ!キミも、俺のハーレムに入らないか?」


「おい、ゆうすけ。お前、マジか?出会って三秒でハーレム勧誘とか、頭、壊れてんのか、お前は。しかも、この人は彼氏が居るって、リアさんが言ってただろう?それともなんだ?人の女でも、お構い無しか?本気で全人類の半分を手に入れようとしてんのか?あぁ!?」



闇観月さん、こわ、こわいよぉ・・・。


観月さんに、胸ぐらを掴まれて、俺はドスの効いた声で脅される。


あれ?観月の家って、ヤクザでしたっけ?


さっきまでの、「待ってる・・・///」とか、しおらしい反応の可愛い彼女はどこに行ったんだよ!?



「ゆうすけの・・・スカポンタン!!」


「ガフッ!?」



いつの間にか手にしていたスクロールを観月は、俺の脳天目掛けて振り下ろす・・・。


脳天に衝撃を受けた俺は、ガックリと膝から崩れ落ちると、そのままぐったりと魔法屋の床に倒れ込むのだった。





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