表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/177

そのオババ、不思議な雰囲気がありにつき

ギルドに登録して、軍資金稼ぎ。

情報収集して、女神さんをハーレム勧誘~♪

そのためにも、まず目指すは、街道を道なりに行った先にあるという街【ディケイナ】。

さーて、ディケイナはどっちかな~・・・。



「はっ!あー・・・あ~ぁ~・・・やらかした・・・。」


「え?どうしたの?」


「忘れてたわ・・・。地図ないじゃん。あと、テント。」


「あ、そうだったね。どうしよう、戻る?」



街道に続く道に出たところで、ハタと思い当たったが、今更戻るのも気が引ける。


さすがに、出戻りはカッコ悪くないかな?と思うが、二人の安全を考えると草の上で野宿もなかなかに恐ろしい。


せめて、テントは必要だ。



「はぁ・・・ハーレムの安全のため、戻るしかないか。あと、観月のご飯も買わないと。」


「・・・しゅ、しゅみましぇん。」



細いお腹を押さえて、観月は真っ赤になり小さく丸まった。

本当、その細いお腹のどこに、飯が入るのか、お兄さん謎過ぎて仕方ないよ?



「もし・・・よかったら、うちの商品を買ってくかえ?」



いざ、村に戻ろうとした時だった。


振り返った俺たちの後ろに、大きな鞄を背負ったヨボヨボのお婆さんが立っていた。

すごく、プルプルしてる・・・。

わざとじゃないかと思うくらい、プルプルしてる・・・。



「湯治に来たが、長居しすぎてねぇ。帰りの駄賃が心許ないだよ。良ければ、ウチの物を買わんかえ?」


「ほう・・・。何があります?」


「聞こえてきたけども、必要なのは、テントと地図だったねぇ?それなら、ちょうど仕入れたばかりのもんがあるよぉ。」



お婆さんは鞄をゆっくりと下ろすと、中から三本の柱とロープ、そして、大きな布を取り出した。


テントの骨組みと、カバーだろうか。



「このテントは“スライムの擬態糸”を使用して作られてんだぁ。入り口を閉めると、風景に溶け込んで、周りの獣に気付かれない優れ物さね。お買い得だよ。300Gでどうだろうね?」



1200(売却益) - 450(宿代金) - 100(観月の食事代) = 手持ち650G だったよな。



「あとそうだねー。夜は冷えるから、毛布もいるねぇ。三枚で150Gで、どうだろうね?」


「ふむふむ・・・。」


「あと地図だねぇ。これは100Gでいいよ。」


「ふむふむ・・・。」


「コンパスは必要なさね。50Gだね。」


「ふむふむ・・・。」


「あとは、女神の加護を乗せたペンダントだ。これをつけてれば、悪い気を払うことができるよ。無駄な戦いは避けた方が、効率的に動けるだよ。値段は25Gだね。」


「ふむふむ・・・。」


「あとは、お嬢ちゃん。おやつ程度にしかならんが、温泉饅頭だ。25Gであげるよ。」


「ふむふ・・・む!?」


「わーい!ありがとうございまーす!」



お婆さんの手から、観月は紙袋を受け取ると、ウキウキと嬉しそうに、紙袋の中を覗いた・・・。


「わぁ!五個も入ってるよぉー!ありがとう!」


「ふふ・・・!いいんだよ。どちらにせよ、私には重いからね。」



と、お婆さんはお腹を撫でて顔をしかめた。

確かに、饅頭五個は胃に来そうだ。


でも、あと一時間もしないうちになくなります、たぶん・・・。



「じゃあ、全部買います・・・。おいくらですか?」


「650Gだねぇ。」


「・・・くっ!村を出て早くも無一文じゃないか!」



俺は涙を飲んで、お金がピッタリ入った袋を差し出すと、お婆さんは中身を確認して頷いた。


「いずれは、必要になるもんだからねぇ。今のうちに買えといてよかったよ。賢い買い物だった。」



お婆さんは何度も頷くと、俺たちを見送るように、近くの岩に腰を下ろす。



「どれ、私はまた、足湯でもして帰ろうかねぇ。二人は街に向かう途中かえ?なら、気を付けなさい。特に、この先に現れる中型モンスターにはね。」


「中型モンスター?」


「あぁ、オオカミ型のモンスターさ。群れで狩りをすることが多いだぁ。子犬一匹でも、油断しないようにねぇ。」


「はぁ・・・。強いですか?」


「・・・あんた達なら、大した敵にならんさ。ただ、二人とも戦い慣れしてないんだ、油断しないに越したことはない。奇襲されても、返り討ちにできるくらいの警戒はしておくといいだよ。」



プルプルと震えながら、お婆さんは杖を街道に向けて頷いた。


ん・・・?この婆さん、なんで俺たちの強さや、戦闘経験が分かってるんだ・・・?

これも、商人の勘というやつだろうか。



「・・・気をつけるよ。行こうか、二人とも。」


「お婆さん!ありがとう!」


『うぅー!』



俺は頷くと、観月とシルクの背中を押して、道を進むことにした。



「あぁ・・・気をつけてなぁ。運が良ければ、女神の導きで、また巡り会えるさね。」


「・・・ふむ?」



俺は岩に腰掛け手を振る婆さんに、何度か振り返ると、軽く頭を下げて先を急いだ。


気にはなったが、隣の街まで、どれくらいかも分からないし、今は先を急ぐべきだろう。


テントはあるけど、まだ慣れない世界での野宿は、怖さもある。


できるだけ、安全は確保しておきたかった。


特に、俺の大切な女の子達だけは、絶対に危険な目に合わせるわけにはいかないからな。



「運が良かったね!ちょうど、欲しかった物も手に入れられて良かったよー。これも、ユーちゃんの幸運体質のお陰かな?」


「・・・ふむ。」



俺はもう姿の見えなくなった婆さんに今一度振り返る。



「都合が良すぎる・・・。あの婆さんは、なんか、普通とは違う気がする。」


「違う・・・?」


「まぁ、予想だけど、これからも何度も出会うだろう。それが、女神の導きなのかは知らないないけど、あの婆さんには、何かあるのは感じ取れた。」


「ふーん。なら、またお饅頭が買えるね!やったー!」


「・・・呑気なやっちゃなぁ~。あんまり食べてばかりだと、自分がお饅頭になるぞ?」


「・・・・・・だ、大丈夫だよ。私、我慢できるし。」



と、自身のバックの中に伸びていた右手を、何事も無かったように引き抜くと、大手を振って歩き出す。


からかい半分のつもりだったが、まさか、本当に饅頭に手を伸ばそうとしてたとはな。


恐ろしい“腹ぺこミツキちゃん”だこと。



「さぁ!ユーちゃん!隣町まで、駆け足で行こう!少しでも、早く着かないと!」


「おいおい・・・急に動きが活発になり始めたな。もしかして、体重のこと気になりだしたか?」


「べ、別に!?そんなことないよ!?」



突然、走り始めた観月に、俺は苦笑を浮かべると観月に倣って駆け足で街道を走り始めた。



『う!うぅ・・・う・・・う~~!』



トテトテと、シルクも頑張って走ってくるが、そこまで早くない。せいぜい、子供の足では一生懸命に走っても、限界はあるだろう。



「観月!シルクを代わる代わる、おんぶして街に行こうぜ。」


「ふふーん!いいよー?んじゃ、私が先に、シルクちゃん、おんぶしてあげるー!」


『うー!!』



ぽすん!と、軽いシルクを背中に乗せて、観月はかけ出す。


すげー。そんな普通と変わらない速度でよく走れるな。

身体強化のおかげか?



「こらこら、あんまり飛ばすと、すぐバテるぞー?」


「大丈夫~!ほらほら、ユーちゃん!置いてくよー!」


『ぅ、う~~!!?』



ビューン!と、風が起きそうな程の速度で、観月が街道を駆けていく。

背中のシルクは必死に捕まっているが、あまりの速さに半泣きだ。


俺は苦笑しつつ、ペースを守り、二人の後に着いて行く。


日はまだ登り始めたばかりだった・・・。


ーーー

ーー



二人を見送ったお婆さんは、岩からゆっくりと立ち上がると、懐にしまったお金を取り出す。



「うふふ・・・本当、慌てん坊さんなんだから。まさか、テントと地図を忘れるなんてね。RPGなら、絶対に必要な物なのに。でも、さすがにあからさま過ぎたかな?すごく、気にしてたもんね・・・。気をつけないと。」



先程とは打って変わって、急に流暢に喋り出したお婆さんは、にっこりと微笑むと、遊助達が駆けていった街道を眺める。


しっかりとした足取りで歩きながら、荷物を背負ったお婆さんは、まるで、先程とは別人のような雰囲気を漂わせていた。



「さーてと、私もまた隠れようっと。あんまり、姿を見せてると、お姉ちゃんにバレちゃうわ。」



急に、お婆さんは着ていたローブを翻して、大きく踵を返すと、街道とは反対の方角へと踏み出した。


その姿は老人の姿ではなく、美しくも妖しい女性の姿になっていた。


始まりの白い部屋で、栄咲遊助と観月にチカラを渡した女神アスモデウス だ。



「さぁ、これからだよ。私は制約で直接的に手は出せないけど、手助けはできるから。君だけに辛い想いはさせないからね。ゆー君。」



声だけを残し、女神アスモデウスは姿を消す。

後には何も無かったように、草木を揺らすそよ風だけが吹いていた・・・。


彼女はどこに行ったのか・・・それは誰にも分からない。

気配も痕跡も何も、そこには残っていないのだ。


歴史書にも、彼女の登場は一文も記載されていないことから、彼女の存在はそれほど重要視されていなかった・・・もしくは、巧妙に隠されていたと思われる・・・。


それが誰の手によるものなのか、それもまた、誰にも分からない・・・。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ