忍び寄る影ありにつき
観月とシルク、そして遊助が眠っている部屋を月明かりが照らしていた・・・。
三人とも疲れがあったのか、よく眠っているようで、部屋の中には三人の静かな寝息だけが響いていた。
ー バサ・・・!バサ・・・!
換気のために僅かに開けられた窓の外から、野鳥だろうか?鳥の羽ばたきの音が聞こえる。
普通の鳥というほど、パタパタと小さい羽ばたきの音ではなく、もっと大きな、鷹や鷲よりもさらに大きな羽音だ。
その音は次第に大きくなり、やがて部屋のすぐ近くに聞こえる。
ふと、羽ばたきが止んだ・・・。
少しの静寂の後、ザッ!ザッ!と、砂利を踏む音と共に、月明かりが射し込んでいた窓にふと・・・何者かの影が映り込む。
「・・・・・・。」
子供だ。シルクくらいの大きさの子供が、観月たちのいる部屋を覗き込んでいた。
スー・・・。トン・・・。
何を思ったか、子供は部屋を覗いていた窓をゆっくりと、音で起こさぬように開けると、部屋の中へと静かに入ってくる。
部屋へと入ってきた子供は、部屋の中を見回すと、寝ている三人を確認し、観月の元へと足を進めた。
「・・・・・・。」
観月を見下ろしていた子供は、おもむろに、腰につけていた袋から透明な水晶を取り出すと、観月の頭にそっと付ける。
ひし形の水晶は、やがて、鮮やかな緑色に変わった。
「11回以上・・・。様子見。」
心底、呆れた声を漏らし、子供は水晶をしまうと、袋から羽根を一枚取り出し、観月の枕元に置く。
「こちらの子は。」
同じように、水晶を取り出し、シルクの当てると色は透明なままだった。
「なし・・・。」
シルクの枕元には何も置かず、そのまま遊助に向き直る。
「蛮族が・・・。」
そう、呟くと子供は窓へと向かい、再び外へと出て、窓を閉める。
月明かりに映し出された子供のシルエットは、その背に羽根を広げると、再び闇の中へと飛んで行った・・・。
「ん、んん・・・?」
何かの気配を感じた遊助は、うっすらと目を開け、部屋を確認する・・・。
何も変わらない風景。
隣のシルクと、シルクを挟んで向こうの観月はよく眠っている・・・。
「ん・・・んんー・・・。スー・・・スー・・・。」
気のせいだと判断した遊助はそのまま寝返りをうつと、夢の中へと戻って行った・・・。
僅かに空いた窓から夜の風が、フワリと部屋の中にそよぐ。
風は観月の枕元にある羽根を、僅かに揺らしていた。
この羽根が何を意味するのか、その意味を知るのは、まだ少し先の話・・・。




