今日はおやすみにつき
目を覚ます俺と観月・・・。
隣では、シルクがまだ夢の中だ・・・。
少し二人で見つめ合っていたが、観月はスッと立ち上がって、卓の上の湯呑みを取り出した。
「飲む?」
「あぁ・・・。ありがとう。」
その背中を眺めながら、まるで熟年夫婦のようだなと、勝手ながらに思っていた。
「ふふ・・・。今のユーちゃんの気持ち、ちょっと、分かったかも。この雰囲気、熟年夫婦みたいだったね・・・。」
「あ、バレた?」
二人で苦笑し合うと、席について観月の用意してくれた湯呑みを手に取る。
緑茶かー・・・。
なんで、この世界はこんなにも、元の世界と近いのか、甚だ疑問である。
「料理も日本食だったし、緑茶もあるなんて、変な世界だよね。魔法を発展させた世界でも、機械技術を選んでも、人間の進歩なんて、意外と変わらないのかもしれないね。」
「だな。特に食に関しては、違いを感じないよ。とりあえず、故郷の味が恋しくなる心配は無さそうだ。」
食はモチベーションの維持には欠かせない要素の一つなだけに、この世界の料理には、実は心から安堵していた。
値段の面では、ハラハラドキドキさせられたけどね。
「私も料理したいなー。」
「観月の料理といえば、味噌汁と“ネギだれ”は外せないな。あれは本当に美味い。」
「あれは、意外と簡単にできるから・・・。ふふ・・・でも、そんなに褒めてもらえるとすごく嬉しいなぁ。ありがとう。」
「いや、あれは賞賛に値するよ。是非、また、食べたいな。」
俺は観月の得意料理である“ネギだれの鶏モモソテー”を思い出し、思わず溢れる涎を拭う。
ゴマ油の風味香るネギだれと、醤油と砂糖で味付けされた鶏モモのマッチングは本当に美味しくて、何杯でもご飯がいける最強のおかずだ。
観測者の皆にも是非、食べて欲しいな・・・。
「なぁ、観月。もしも、材料が揃ったら・・・。」
「うん。また、作るよ。ユーちゃんが喜んでくれるなら。何回でも作るよ。」
「ありがとう!すっげー楽しみにしてる!観月の料理は、この世界で一番のご馳走だもん!」
「そんな、大袈裟なー。あはは・・・。」
湯呑みを手ににこりと微笑む観月に、まるで神頼みをするように俺は深々と頭を下げた。
本当にそれくらいの価値はあると、心から思っているから、自然とそれができるのだ。
決して、大袈裟ではない。
「明日は、街に向かうの?」
「そうだな、近くの街に行って、ギルドに登録しよう。たぶん、一番下のランクだろうから、そこから地道にランクを上げて、ある程度、お金が溜まったら、武器と防具を揃えていく流れだな。」
「ユーちゃんは防具あるけど・・・。」
「あれは、いざって時用に取っとくよ。いい効果はあるけど、なにぶん、その見た目がやばい・・・。着けるのも、周りにバレないようにしないと、魔王と同じ扱いされちゃうからな。」
スターテス二倍の効果は嬉しいが、あの見た目がなぁー。
事情を知らない者からしたら、禍々しい見た目に、魔王が現れたと思われてしまうかもしれない。
ヘタな混乱は避けたい。
討伐対象にされても適わないからな。
「あれ、怖くないよ?むしろ、カッコイイのに・・・。」
「・・・・・・頼むから、勝手に着けるようなことしないでよ?」
「・・・・・・・・・。うん!もちろんだよ!」
おい、その間はなんだね?
まさか、本当に装着させようとしてたのか?
「こんな序盤で使っていいもんじゃないだろ。それこそ、魔王の侵略みたいになっていく・・・。」
「ハーレム作りって、侵略みたいなもんだよ?」
「人聞きの悪いこと言わない!俺は女の子みんなを幸せにしたいの。幸せなら、それを壊すようなことは、したくない。リアさんみたいに、あんな笑顔ができる人が、一人でも増えるような世界にしたいだけだ。」
「たしかに、リアさんの笑顔は素敵だったねー。でも、この世界って、実際、どうなんだろね?今のところ、変なとこはないと思うけど。むしろ、性にオープンな気もするよ?」
初めて村を訪れた時のことを言ってるのかな?
たしかに、風呂場の女の子たちは、照れはあったものの、とりだてて騒いだ様子もなかった。
「たしかにな・・・。まぁ、それもこれから分かるだろ。特に、王都に近付くごとに違和感に気付けるようになっていけるだろうね。」
「うー・・・。王都って、この世界の中心なんだよね・・・。その意識を変えるって、本当に大変そう・・・。」
「俺たちなら、きっとできるさ。」
「うん・・・。みんなもいるしね!」
俺たちは互いに見つめ合うと、強く頷き微笑みあった・・・。
あぁ、きっと大丈夫だ。
二人なら、みんなとなら、どんな苦難も乗り越えられるはずだ。
観月、シルク、リライア、魅玖。
みんなの笑顔を思い浮かべ、俺は小さく微笑むと、湯のみのお茶を一気に飲み干した・・・。




