その絆、スキルの影響につき
「観月さん、それくらいで・・・。」
「むー・・・。もう、悪いことしちゃダメだよ?あと、人のこと、悪く言っちゃダメ!」
「あい・・・すみませんでした・・・。」
腰に手を当て、ぷっくりと頬を膨らませる観月に、俺は頷くと、ようやくお仕置きから解放される。
リライアの仲裁がなかったら、延々とぶら下げられてたろうな。
恐ろしい・・・。
「お二人をお呼びしたのは他でもありません。顔合わせも大切なのですが、皆さんで、共有しておきたい情報がありまして・・・。」
「情報?」
ロープから脱出した俺は、ゴキゴキと全身を鳴らして、状態を確認すると、首を傾げる観月とシルクに、近付いて肩に手を置く。
「俺に関する話だ。」
「ユーちゃんに?」
『うー?』
俺は頷くと、リライアに視線を移し、話を進めるように促した。
「マスターのスターテスを表示します。まずはこれを見てください。」
リライアが、手を空に指し示すと、スターテスウインドが表示される。
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Name / 栄咲 遊助
称号 / アスモデウス
状態 / 健康 + 漢の自信
HP / 650(+165)
MP / 850(+165)
攻撃力 / 425
防御力 / 525
スキル
アスモデウスの力 / 心眼 / 隠匿隠蔽 / 威厳圧力 / 限界突破/幸運体質 / 滋養強壮 / 精力増強 / 超絶倫 / 隷属契約 / ハーレム勧誘 /
特殊スキル
ハレンチの達人 / 体術の達人 / 武術の達人 / 体技の達人 / にゃんにゃん無双 / マギアメモリの使用権
加護
神 エヴァグリア
女神 アスモデウス
女神 マモン
■■■■■■■■■
魔法
ファイ Lv2/アクア Lv2/エア Lv2/アースLv2
必艶技(消費MP0)
♡性癖暴露( 見た対象の性癖を覗き見る )
♡本能覚醒( 話した対象の性癖を書き換える )
♡相思相愛( 素手で触れた対象を快楽に堕とす )
☆M・M・M(五日間、対象に淫らな夢を魅せることで、精神を崩壊させる。発動条件あり。)
必殺技
〇ハレンチパニック(常時発動可能。属性をエンチャット可能。消費MP0)
〇必中(弓装備時、発動可能。消費MP100)
〇|アスモデウスの盾《汝、我が物に触れるなかれ》(盾装備時、発動可能。消費MP200)
王権
■ |◤◢◤◢ WARNING ◤◢◤◢《危険!取り扱い注意!》( 現在使用不可 )
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「相変わらず、馬鹿げたスキルのオンパレード。」
「だねー。少し、基本値が上がってるのは?」
「魔王である私を倒したことによる影響です。私が抱えていた665の魂が相手になったんです。莫大な経験により、能力が向上しても仕方ありません。」
観月の問に、魅玖が少し申し訳なさそうに、答える。
665の魂を抱えていた・・・とはつまり、魅玖がそれだけの命と能力を奪ってきたことに他ならないのだから。
心を入れ替えて前に進もうとする彼女には、とてもツラい現実だが、それはこれから彼女が償っていくべきことなので、俺たちが責めることも、口出しするつもりも、毛頭ない。
「あ、誤解なきように伝えておきますが、魅玖さんは、誰かの命を奪ったことはありませんよ?一応、ハーレムに迎える上で、魅玖さんを解析させてもらいましたが、自ら手にかけた人間や亜人はいません。相手が何かを得るために、対価として差し出した能力と魂で、魔王マモンは構築されていました。」
「・・・・・・ん?どういうこと?」
てっきり、気に入った能力を持った人間を吸収して、その力を増やしていったのだと思ったが、どうやら違うらしい・・・?
「えっと、分かりやすくいうと・・・お金が欲しい人間に契約させて、お金を渡す。対価として、死後、魂と能力を貰うってことをしてました。」
「・・・・・・え?あんな、恐ろしい姿してて、そんな金貸しみたいなことしてただけなの?」
「はい・・・。すみません。」
「え?じゃあ、マモンは悪いやつじゃなかったってこと!?」
「いえ、悪人という認識で構いませんよ。対価として魂と技術を、差し出させるなんて、悪事以外のなにものでもありませんから・・・。」
本当は死後に、あの世に向かうはずの魂をいつまでも、自身を守るために縛り付けていたのだから悪人で間違いないのだと、魅玖は俯いていた。
いやでも・・・それってどうなんだ?
単に、悪魔との契約で、魂を差し出させるのと同じことだろ?
それは、契約した本人の責任で、縛り付けられ続けたのも、本人の意思によるものなら、仕方ないのでないだろか。
だが、そこで俺はひとつの疑問が浮かんだ。
俺は契約なのではなく、“乗っ取られようとした”のだ。
それは、彼女の説明と矛盾する。
「俺を乗っ取ろうとした理由は?」
「・・・分かりません。」
「分からないの?」
「えぇ・・・本当に分からないんです。ただ、契約を取るつもりで、鎧から頭の中にお邪魔したのに・・・どんどんどんどん、頭がぼーっとしてきて、気がつけば、本能のままに、主様を手に入れようとしてました。しかも、暴力的な手段で。」
本当に分からないのだろう、頭を抱えて、自身の失態を心から悔やむように深く、魅玖は息を吐いた。
「いつもなら、こんなことしないんです。死後、この体と魂を頂く代償に好きな物を与える。それで、契約は終わりのはずでした・・・。なのに、頭に入った瞬間、“この存在を手に入れろ!手に入れろ!”って、言葉が頭にひしめいて。こんなの初めてで。本当に怖かった・・・。」
「そのことについてですが、マモンの暴走は、マスターの中にある【 アスモデウスの力 】のせいではないかと推測します。」
リライアは、スキル欄にある【 アスモデウスの力 】をタップして、その内容を表示した。
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【 アスモデウスの力 】
激怒と情欲を司る王。
あらゆる者を虜にし、その膝元に招き入れる。常時、魅了の効果が発動。
王権を持つ者には、取り分け、魅了の効果が出る。
また、気に入った者には、様々な恩恵を授けるが、その代わりに、その者は全てをさらけ出すことになるだろう・・・。
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「王権を持った者は、魅了の対象にされる・・・。私は魔王だから当然、王権は持ってる。はぁ・・・。だから、暴走したのか~。納得・・・。」
頭を抑えて、魅玖は深くため息を吐くと、俺を見て苦笑を浮かべる。
知らぬ間にスキルが発動して、魅玖を魅了してしまっていたらしい。
「・・・すまない。魅玖。結局の所、俺のスキルのせいで、キミを引き込んだ形になってしまった。いや、王権なら、シルクもそうだな・・・。二人ともスキルで惑わしてハーレムに勧誘したようなものだ。本当にすまない。」
「・・・・・・。」
『・・・・・・。』
王権を持つ、シルクと魅玖は顔を見合わせると、俺を見て、呆れたような顔を浮かべる。
そりゃ、そうだ。そんな顔もしたくなるだろう。
好きになったからと思えば、実はスキル魅了で《《騙されていた》》なんて、二人からしたら、怒りを通り越して呆れがでてきてもおかしくない。
「今なら、まだ考え直せるよ、二人とも。こんなスキルで作るような詐欺まがいなハーレムなんて、早々に脱退すべきだ。」
俺は二人に頭を下げると、二人は少し目を丸めてすぐに微笑みを浮かべた。
そのままスクリと椅子から立ち上がると、
俺に向かって駆け寄ってくるので、別れの挨拶が始まるのかと思い、二人を迎えるように俺も立ち上がった。
「ふ・・・ふふふ・・・!!」
『うー!!』
二人は俺の前で立ち止まる・・・ことはなかった。
そのまま背後に回り込んで俺の腹部に左腕を回す魅玖。
「こっの・・・!」
「え?ええ?」
左手で右腕を俺の掴むと、勢いよく引っ張り自身の方に振り向かせた。
「バカっ・・・。」
「魅玖・・・。」
目の前には、真っ赤になって目尻に涙を溜めた魅玖が立っていた。
「バカ主様ああぁー!!」
「へっ?ぐえぇー!?」
ー ドカッ!ズザー・・・!
呆気にとられ、無防備になった俺の胸板目掛けて、そのまま右腕でラリアットを打ち込み、俺はなぎ倒されてしまった。
「がはっ・・・!?うぅ・・・これ、プロレス技だろ?なんで、キミが【 レインメーカー 】を使えるんだ・・・。」
「お待ちしてる間、主様の記憶を見て、学びました・・・。沢山、見ました。主様の記憶・・・。どれこれも、楽しくワクワクして、温かく優しくて、ハレンチも沢山あったけど、そこには、たくさんの笑顔もあった・・・。私はそんな主様に出会えて、仕えることができて、本当に幸せに感じてます。」
拳を胸に、魅玖は泣き笑いの顔を浮かべると、
「だから、そんな悲しいこと言わないで、くださいっ・・・!」
と、最後は声にならない声で、俺に訴えかけてきた。
「すまない・・・。でも、君たちが魅了の被害にあったもの事実で・・・。」
「被害なんかじゃありません!主様は魅了スキルを誤解してます!」
魅玖は倒れる俺に馬乗りになると、俺の両腕を抑えて唇を奪う。
「ちゅ・・・あむ・・・ん・・・れろ・・・んん!」
深く・・・深く唇を奪う。
舌を絡め、熱い吐息も混じり合うほどに深く。深く、混じり合う。
「ちゅ・・・!はぁ・・・。魅了くらいで、これほどのことはできません。したいとも思えません。私がしたいから、キスをしたんです。私がお側にいたいと思ったから、今ここにいるんです。分かりました!?」
「んん・・・。は、はい・・・。」
唇を離すと、馬乗りになった俺を“キッ!”と怒った様子で、見下ろす魅玖に呆然とした頭で頷き返す。
トトト・・・。
『う・・・。』
シルクは俺の横にペタリと座り込むと、スターテスウインドを開いて、状態のところを指さした。
そこには“健康”の文字。
「健康・・・。」
俺はシルクが伝えたいことが、分からず首を捻っていると、観月が歩みより、シルクの横に座る。
「ユーちゃん、覚えてる?シルクちゃんが、仲間になりたそうに見てた時、確かにここには“健康+魅了”って書いてあったんだよ?でも、今は違う。シルクちゃんも、魅玖ちゃんと同じ。自分の意思でここにいるんだよ。」
「魅了は決して、無差別に相手を惹き付けることなんてできません。言うなれば、フロアの真ん中で、パン!と手を叩くようなものです。興味は惹けますが、それから先に相手を引き留める魅力がなければ、すぐに、興味は失われてしまいます。あなたに興味が湧いたから、あなたに魅力を感じたから、私たちはここにいるんですよ?その事を忘れないで、“主様”!!」
魅玖は強く念を押すように最後の言葉を締めくくると、跨っていた俺から降りて、真っ赤になって駆け出す。
そのまま、リライアの後ろに隠れると・・・消え入りそうな声で、『大変失礼しました・・・』と何度も頭を下げた。
「ふ・・・ははは!そうか!ありがとう!自信が戻ってきたよ。」
俺は座ったまま大声で笑うと、皆を見回し強く頷く。
確かにスキルは、きっかけをくれるかもしれない。でも、この子達が側にいてくれるのは、俺を信頼し必要としてくれたからだ。
なら、俺も不安がってたら、失礼になるな。
あぁ、信じよう・・・。
この出会いも、絆も、スキルなんか関係なく、互いの心が産んだ結果なのだと。
俺はもう一度、強く頷くと、観月とシルクの手を借りて立ち上がる。
「お話がまとまったところで申し訳ないのですが・・・私が話したいことはまだ、全然、話せていないので、続けても?」
眼鏡をかけ直すと、話を折られたことに少しご立腹のリライアさんはスターテスウインドを見上げて、腕を組んで笑う。
目は笑ってない・・・。
なんか、今日の俺、怒られてばっかだなー・・・。
ホロりと涙を零し、席に着くと、リライア先輩の話に耳を傾けることにした。
「こほん・・・。では、改めて、私からお話させて頂きますね。」
凶暴な内容のスターテス画面を、指揮棒で指しながら、リライアパイセンは話を始めるが・・・。
「んー・・・。」
ん〜。なんとも、気が乗らない。乗ってこない。
「マスターのスターテスにある、【 アスモデウスの力 】は先程もお伝えした通り・・・」
そこで俺は考えた・・・。きっと、この状況が良くないのだと。
「んー・・・。」
真剣に話を聞く体勢になれてない自分がいけないのだと。
「マスター・・・?」
こんな時、どうするべきか・・・。
その答えはもう、目の前のリライアさんが、教えてくれてたはずだ。
「んー・・・。」
リライアが、この姿になったのは、そう!俺のやる気を出させるため!
「もしもしー・・・?マスター・・・?」
ならば、リライアの格好は俺がやる気になるために、変更がきくはず!
ならば、こうする!
こうするべきだし、こうするしかない!
聞け!本体よ!俺の願いを聞きたまえ!
リライアを【 お着替え 】してくださーい!
「マスター・・・?聞いてますか?」
▷マスターの要求を確認。リライアの衣装を変更します。
「へ?え?あ、ええぇー!?」
天から承認の声が聞こえると、リライアさんの服が、あらあら、不思議なことに一瞬で早変わり。
まとめられた髪型に、白の清潔なブラウスとスリット入りのタイトスカート。ストッキングにヒール。
そして、もはや、アイデンティティとなりつつあるフチなしメガネ。
まさに、厳しい女教師のような格好に、周囲はザワつく。
何より驚いたのは、突如、着替えさせられたリライアだろう。
うん・・・なんだ・・・すごく似合ってる・・・。
怖いくらい・・・。
「っ!?マ、マスター!?なんですか、急に!?」
「俺は形から入る主義だからねー。なんか、せっかく、教えてくれるっていうのなら、やっぱりこう、ねぇ?色気がありませんと・・・? 」
「い、色気ぇ・・・?」
と、隣を見ると、観月も苦笑を浮かべて頷いた。
「うん。なんか、先生と生徒って感じで、急に引き締まった感じがするから不思議だよ。あはは・・・。いいんじゃないかな?とっても、似合ってるし。リライア先生♪」
「み、観月さんまでぇー。」
まさか、観月まで同調するとは思ってなかったのか、リライア・・・先生はガックリと項垂れて、俺を睨む・・・。
おぉ・・・なんだろう。この美人教師に、目をつけられたような感覚は。
あらぬ妄想が、頭を駆け巡るじゃないか・・・。
放課後呼び出しとか?密室で進路相談とか?
あわよくば、大人の課外授業とかやっちゃう感じですか!?
あぁー!もう!素敵すぎるぅ!
燃え滾るぅ~!
「はい!先生!今日のパンツは何色ですか!?」
「いきなり、なんですか!?真面目に聞いてください!私は真剣に、話してるですよ!?」
顔を真っ赤にしながら、スカートを抑えて、リライア先生は俺を睨む。凄みが増してる気がする。
おぉ・・・怖い・・・けど、好きぃ・・・。
この、子供の戯言ですらも、真面目に受け止め叱ってくれる優しい熱血感と初々しさ・・・。
実に、美しいいぃぃー!!
「先生!好きです!付き合ってください!」
「なっ!?何を言ってるですか!マスター!?私たち、もう付き合ってるでしょう!?私、ハーレムの一員なんですよね!?」
「リライア先輩に話してるんじゃない!先生に話してるんだ・・・!!」
「え、えぇー?み、観月さーん。マスター、どうしちゃったんですか?とうとう、壊れちゃったんですか?」
「ユーちゃんは、壊れて平常なので、これが普通ですよ、リライア先生。・・・あ、やばい。これ、つられちゃうなぁ・・・。もう、こいつは気にしなくていいから、先に進めていいよ。うん。むしろ、この状態なら、よく話を聞くと思う・・・。シチュにハマってる証拠だから・・・。」
「いいもんか!まだ、先生の答えを・・・もぐっ!?『ほら、ユーちゃん、シィー・・・。授業、始まるよ?ふふ・・・。』もぐもぐ・・・・・・うん///」
観月は、口に手を当てると苦笑を浮かべて、手を振ると、口を開いた俺の口にお菓子を放り込んだ。
放り込んだ口に、チョン!と人差し指を当て、優しげに微笑む観月さん。
少し、色っぽく感じるのは、きっと気のせいではない・・・。
やっぱり、“隣の席の幼なじみ最強説”は実在するようだった。
「はぁ、分かりました。では、このまま行きますよ?その代わり、ちゃんと聞いてくださいね?」
リライア先生は、小さく息を吐くと、気を取り直して、指し棒を手に取った。
「はーい!」
「返事は短く!」
「はい!」
ピシャン!と、指揮棒でウインドを叩く先生。
その姿に、俺たちは背筋を伸ばして話を聞く姿勢に入る。
なんだかんだノリのいいリライア先生でした。




