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その提案、魅力的につき

皆で食事を終え、最後のデザートを頂いていると、仲居さんが戻ってきた。


盆を下げる傍ら、やはり気になる原価の真実を聞いてみると、意外な答えがそこにはあった。



「食材は購入品ではなく、自前!?」


「えぇ・・・。私の旦那が店の管理を。旦那の双子の弟さんが、この辺りで、食材を調達しているんです。実は二人共、A級ハンターなんですよ。」


「あー。つまり、そこらで自生している植物や、徘徊している獣を採ってくるから、原価はあってないようなものだと。しかも、ギルドの支援で、討伐でもお金が入ると。更には、宿代で副収入も獲られると。はぁー・・・皆さん、すごい商売上手ですね。感服しました・・・。」


「ふふ・・・!そんなに褒めても、何も出ませんよ~。」



仲居さんは頬に手を当てると、本当に嬉しそうに、にへらと笑った。

きっと、旦那さんのこと、大好きなんだろうな。


いいな、こんな関係。


「ふふ・・・。あ、そうだわ!皆さん、お風呂は入られるでしょう?一応、大浴場もありますけど、このお部屋にも、お風呂があるのはお気づきでしょうか。こちらの庭先には併設して、露天風呂がついているんですよ。ご家族みなさんで入られてはいかがでしょうか。」


「へぇー・・・。」



仲居さんが障子を開けると、もう暗くなった外の景色が見えた。


頭より高い衝立があり、向こうは見えないが、空を見上げれば満点の星空と上弦の月が浮かんでいる。


世界は変われど、星空は変わらず・・・か。

相変わらずの美しさに、心が踊る。


視線を落とせば、そこには少し広めの露天風呂があった。

一人では広すぎるが、三人だとちょうどいい大きさかもしれない。


あー、でも、せっかくの露天風呂だが、一人で入ることになるだろうな。



「スー・・・スピー・・・スー・・・。」


一人はお腹いっぱいで寝てるし。



「っ~~///」


一人は家族で風呂と聞いて、顔を真っ赤にして俯いてるし、下手なことをいえば、部屋から飛び出していきそうだ。



「いいですね、露天風呂。満点の夜空が見えて最高でしょう。」


「えぇ・・・!ここは一番、星の見える人気のあるお部屋なんです。星を見ながら浸る湯船はロマンチックで・・・あ、そうそう・・・!奥様?」


「お、奥様って、え?・・・わ、私!?」



仲居さんは、すすーっと、観月に近付くと、小さな声で耳打ちしていた。なんだ?


あ、風呂の話だったから、効能とかかな?

美肌とか?なんにしても、男の俺には教えてくれないらしい・・・。


さみしいなー。



「まぁ、とりあえず、落ち着いたら入ろうかな。シルクも、風呂の入り方を教えなきゃいけないだろうけど・・・・・・寝てるし。」



俺は苦笑を浮かべると、布団の上で丸くなっているシルクを眺める。

寝てる間に、スライムに戻ったりしないんだな、よかった・・・。



「それでは・・・ごゆっくり・・・。」



最後の器を手にした仲居さんは、にっこりと笑うと、そのまま襖を閉めて出ていった。


後に残された俺と、観月は互いに顔を見合わせる。


「なんか、顔が赤くないか?大丈夫?」


「へっ!?あ、あぁ!うん!大丈夫!」


「朝から色々あって疲れてるのかもな、少しゆっくりした方がいいよ。」


「え・・・?あ、うん・・・。」



この後、予定はないし、少しゆっくりと・・・。


あ、違うわ。そういえば、リライアと約束があったな・・・。



「そういえば、観月。観月?あれ?」


「お風呂・・・ゆっくり・・・ユーちゃんと・・・シルクちゃん寝てる・・・うぅ・・・お隣さんはいない・・・んんんー・・・。」



ちょっと席を外そうかと、観月を見ると、露天風呂の前に座り込んで、観月は頭を抱えて唸っていた・・・。


どしたんだろう?せっかくの露天風呂だけど、入らないのかな?


あ、でも、俺が覗くかもしれないから、警戒してるのかも?


うーん・・・いいねぇ・・・。

確かにそれは魅力的だねぇ・・・。


転生したばかりの時に、ハレンチスターテスチェックをした時のことを思い出し、思わず胸がザワつく。


確かに、あの時の観月はいつもにも増して綺麗で、とても魅力的だった。


まぁ、いつも魅力的なのは変わりないけどね。


俺は、ぼーっとしている観月の背後に近付くと、その背中に抱きついた。



「みーつき!」


「わっわわわっ!?ユーちゃん!?どうしたの、急に!?」


「ふふ・・・!観月が、珍しくぼーっとしてるからね?どうしたのかと思ってね。」



観月を包み込むように、後ろから抱きしめつつ、その頭に顎を置いて、同じように露天風呂を眺める。


揺れる水面に空の月と星々が写り、少し幻想的な光景に感じた。


「ユーちゃん。お風呂、入る?」


「なんなら、一緒に入るかー?」


「そ、それは・・・・・・あ、あの。」


「なーんてな。俺は後でいいよ。観月は先にどうぞ。」


「え?・・・あ、うん。もしかして・・・覗くつもり・・・?」



ほんのりと赤い顔をした観月は、抱きつく俺の腕を握りしめると、オドオドと少し挙動不審な動きで俺を肩越しに振り返る。


伏し目がちな目が、少し恥ずかしさで濡れているような気がした。


考えれば、今日はずーっと、観月にハレンチしてたな・・・。


朝から家出て、迎えに来た観月のスカートをめくり、学園でもスカートめくり、胸を触り、体育で着替えを覗き、スカートめくり、胸を触り、放課後、雷に打たれて、神様の部屋でスカートめくり、転生してから、全裸にしてスターテスチェック、胸というか、全身をくまなく触り、キスをして、シルクにショーツの存在を教えるためにスカートめくり、村へ向かう道中でもスカートめくり。



あー、間違いなく・・・・・・・・・スカートめくりすぎだろ。



さすがの俺も、少し、ほんの少しだけ反省する。


これ以上は本当に嫌われそうだし、今日はここまでにしておこうかな・・・とも考える自分がいた・・・。


「んー、覗こうかな?」


「の、覗かないで・・・。」


「だよな。はは・・・。今回は冗談だよ。さすがに、今日だけでたくさん、観月にハレンチし過ぎた。嫌われるのも怖いし、今夜は大人しくしとくつもりだよ。」



俺は小さく笑うと、部屋の棚をさぐって、洗面用具を手に入れた。


なんと、同じ場所には浴衣もあるじゃないか・・・。


昔から思うけど・・・浴衣って、不思議とドキドキしてしまうんだよなー。


なんでだろ。



「ほい!ゆっくり、入っておいで。俺は図書館で勉強でもして時間潰してくるよ。」


「・・・・・・。」



浴衣と洗面用具を手渡し、観月にヒラヒラと手を振る。

俺の手から道具を受け取った観月は、俺の顔を見上げていた。


その目は何かを、俺に訴えてかけて来ているようにも見えた。


まさか、まだ、疑われてる?



「はは・・・安心しろって!大丈夫、覗かない。約束するよ。」


「違うの・・・。そうじゃなくてね?」


「ん?」



首を傾げる俺に観月は歩み寄ると、俺の服を掴み軽く引く。



「覗かないで・・・一緒に入ろ?」



観月にしては予想外な言葉に、俺の頭は真っ白になった。

その魅力的な提案に俺はただ、『あ、うん・・・。』と間の抜けた返事しかできなかったのである・・・。



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