その男、チカラを覚醒しにつき
「その“瞳”の色はなんだ!?何が起きている!?」
色など分からない・・・。ただ俺見えているのは、お前の情報だけだ。
さすがは665の魂のカタマリだ。
情報が交錯して文字化けだらけ。
それもまた、お前の強みか。
だが、そんなものは、俺には関係ない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Name / 魔王の亡霊
称号 / マモン《強欲の王》
状態 / 最終形態(露出複合体+核)
HP / ERROR
MP / ERROR
攻撃力 / ERROR
防御力 / ERROR
蜉?隴キ
螂ウ逾 繝槭Δ繝ウ
螂ウ逾 繝ォ繧キ繝輔ぃ繝シ
蠢?・ェ謚??域カ郁イサMP0?
笨怖蜃咲オ舌?骼悶?翫ヵ繝ェ繝シ繧コ縲具シ 螳壹a縺溷ッセ雎。繧呈鋸譚 ?
テ慾騾」邨舌?讌斐?翫ワ繝?け縲具シ 諡俶據縺励◆蟇セ雎。縺ョ隱崎ュ倥r螂ェ縺 ?
テ慾螂醍エ??險シ縲翫?繝ェ繝シ繧コ縲具シ 諡俶據縺苓ァヲ繧後◆蟇セ雎。縺ォ閾ェ蛻??諢剰ュ倥r荳頑嶌縺阪☆繧 ?
邇区ィゥ
繧ェ繝シ繝ォ繝輔か繝シ繝ッ繝ウ縲
性癖〘 なし 〙
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
唯一読み取れるのは名前と性癖だけだ。
『性癖なし。』
そりゃそうだ。なんたって、665人の命が混ざりあっているんだ。
そんなもの、とうの昔に、分からなくなっているだろう。
だからこそ、なんでも欲しくなるし、何が手に入っても満たされなくなる。
そんなお前を救ってやろう・・・。
俺が与えてやる・・・。
本当のお前を・・・。
お前があるべき姿を・・・。
「お前は可哀想なやつだな。」
「なに?我が可哀想だと?何をバカなことを。我は思うままに、全てを手にして来たのだ。我は今も、昔もとても満たされている。そんな我を・・・可哀想だと?見当違いも甚だしい!」
「じゃあ、なんで、お前はそこにいるんだ?満足したなら、安らかに眠ればいいだろう?」
「違う!違う違う違う!そうではない!そうはいかない!せっかく、手にした物を、死して手放すなど、あってはならない!あらるゆ地位名誉金女男家族、全て、我が物に、この手の中になくては意味が無い!最後に、“死”という不明な存在に全てを取り上げられるなど、あってはならないのだ!」
「なんだ?結局の所、死が怖いのか?それじゃあ、お前のバカにしてた人間と何も変わらないじゃないか。」
「ふははは!それこそ違う!情報体すらも取り込み、我も情報体となることで、永遠の命も手に入れた!病に悩まず、怪我に苦しまず、死すらも超越した!今の我に、死への恐怖などない!今も死を恐れる人間を眺めるのは実に、愉快な気持ちになる。これが、持つ者と持たざる者の絶対的な違いだと、心の底から安堵する。」
「そうか?俺にはそうは見えないな。お前は苦しんでいるように見える。わざと攻撃をくらい、痛みを受けて、わざわざ、生きていることを確認しているようにすら見える。」
「我は死を超越した。痛みもなければ、死への恐れもない。故に強欲に貪欲に、手を伸ばし続けられるのだ。」
そうだ。前からおかしいとは思っていた。
コイツは隙が多すぎる・・・。
まるで、自身の命など勘定に入っていないように、それよりも欲しいものに、手を伸ばし続ける傾向にある。
死を超越したから?
怖くない?そんなの、生きていると言えるのか?
死があるから、人は手にしたものを、精一杯に愛することができるんじゃないのか?
痛みがあるから、生を大切にしようと思えるんじゃないか?
病があるから、健康を大切にできるのだと、俺は考える・・・。
その考えからすれば、この蜘蛛は矛盾しまくっているのだ・・・。
それはきっと、誤算だったのだろう。
だが、ようやく手にした、貴重な物を手放すのは惜しい。だからこそ、コイツは気付かないフリをしている。
死を超越した瞬間、もう何を手に入れても、何も感じなくなったことに、気付かないフリをしている・・・。
本当に欲していたものが、なんなのかも忘れて、ただ、集めることに固執する化け物になってしまったのだ・・・。
本当・・・お前ってさ・・・
「やっぱり、お前は可哀想なヤツだな。なんだか、泣けてくるよ。」
「貴様あぁぁああ!!」
「教えてやるよ、お前が本当に欲するべき物。それがなんなのか・・・!興味あるだろ?」
ビシッと!指をさして向けると、蜘蛛は意表を突かれたのか、思わず仰け反る。
「ぐううぅっ!?お前に我のなにが分かる!?お前なんかに、人間なんぞに、何が分かる!?」
「おあいにくさま。人間だからこそ、分かるものもあるってことだ。今のお前に必要なのは、地位でも名誉でも、力でも、ましてや、俺やリライアでもない。お前に本当に必要なのは【捨てること】だ。」
「捨てる・・・こと?バカな!!強欲の王たる我が・・・そんなものを望むわけがないだろう!?」
「いいや。断言しよう。|お前は喉から手が出るほど欲するようになる。《×スケッチ×》【自分以外の全てを捨てたくなーる】!!」
「なっ!?」
ー ドクン・・・! ー
▷条件を達成しました。
対象はフェーズ2に移行。
性癖が書き換えられました。
対象:魔王 マモン
性癖:露出
「露出か。確かに、お前は“服”を着込み過ぎてるもんな。全部脱がせて・・・今から、お前を丸裸にする!」
「はんっ!何をするつもりか知らんが、近付かせなければ、どうということは無い!」
「いやいや、もう手遅れだよ、マモン。」
「うるさい!黙って、潰れてろ!!」
蜘蛛は大ぶりに爪を振りあげると、俺を推し潰そうと鞭のように、前脚を振り下ろす。
あまりに大胆で大雑把な動きだ。
俺は軽く身を捻り、攻撃を避けると、目の前の腕に手を置いた。。
▷条件を達成しました。
対象はフェーズ3に移行します。
「分かった。これはいらないんだな?」
ザンッ!!
「あ?・・・な、にを?」
まるで、巨大な刃物が通り過ぎたように、綺麗に前脚は切断された。
▷状態報告 複合体(655/665)+核
▷ 快感増加開始。
やはり、集めた魂や物体で身体を作っているのか。
「(核にマーキングできないかな・・・?誤って、消したくない。)」
▷『核にマーキングを希望』。
マーキングを実行します。
天の声と共に、蜘蛛の頭の中央部分に紅く点滅する場所が見えた。
蜘蛛の目でも、心臓でも無い場所。
あえて、分かりずらい場所にしているようだ。
「我の腕・・・腕が・・・貴様!貴様ァァァァー!!」
切られた断面を見て、蜘蛛はさぞ驚いたのだろう。何が起きたのか理解できないのか、混乱した頭で、更にもう一方の前脚で俺を串刺しにしようと振り下ろす。
「これもいらないんだな?分かった。」
ザシュ!
「うっ!?あ、ああぁー・・・!?なんだ!なんなんだ!?なんで、武器も持ってないヤツが、鎧と同じ硬度の外皮を破れるんだ!?」
▷状態報告 複合体(645/665)+核
▷快感を増加
「鎧と同じ硬度?ははは!何を言ってるんだ。ここは、頭の中だぞ?物体が持ち込めるもんか。結局はイメージの勝負!お前は俺に破れる。負ける。敗北する。切れた腕は戻らず、これから、俺に外皮を剥ぎ取られ、削がれ、削られ、毟られ、抉られ、余分な物は打ち捨てられる。お前の核が丸見えになるまで、何度も・・・何度も・・・何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!繰り返してやる!!覚悟しろおおおぉー!マモン!!」
「ひいぃ・・・!?」
「ふ・・・ふふ・・・。怯えたな?後ずさったな?悲鳴を上げたな?終わりだ・・・。今ので、お前の絶望は決定した・・・!獲物を前に後ずさるなど、逃げる姿勢を見せるなど、強欲の魔王が笑わせてくれるじゃないか!!」
「っ!?く、うぐっ・・・うあああああああああああああああああーー!!!」
半狂乱になった蜘蛛は、目の前で不敵に笑う俺に向けて、最後の足掻きを見せる・・・。
全てを手にしたと豪語した【強欲の魔王】。
彼の最後の足掻きはなんてことは無い、自身の身体をぶつけてくる、ただの《《想いの乗った体当たり》》・・・。
それだけだった・・・。
「あぁ、それでいい・・・。それでいいんだ、マモン。」
「っ!?」
俺はそれを真正面から受け止める。
逃げなどしない。避けなどしない。
己の全てを出し切り、全力で挑んできた目の前のやっと、ド畜生から這い上がってきたヤツの本気の気持ちを打ち捨てなんてしやしない。
煌めく想いを秘めた核を、少しずつ露出させていくように、余分な部位をカットして究極の美しさを表す宝石を生み出していくように俺はお前を大切に、大切に削っていこう。
「ここはいらない。」
「ぐっ!貴様ァァァ!許さない!許さない!許さない!許さない!」
▷状態報告 複合体(625/665)+核
▷快感値増加
「ここも。ここも。」
「許さない!許さない!許さない!」
▷状態報告 複合体(505/665)+核
▷快感値増加
「ここも、ここも、ここも、ここも。」
「許さない・・・許さない・・・」
▷状態報告 複合体(401/665)+核
▷快感値増加
「ここ、ここ、ここ、ここここここ・・・!!」
「・・・・・・さない・・・ない」
▷状態報告 複合体(265/665)+核
▷快感値増加
「いらないいらないいらないいらないいらない」
「めて・・・やめ・・・やめて・・・もう・・・」
▷状態報告 複合体(99/665)+核
▷快感値増加
「ふー・・・。だいぶ、スッキリしたんじゃないか?って・・・えぇ!!?その姿は・・・」
「ぅう・・・!見ないれくらさい・・・見ないれ・・・」
▷状態報告 複合体(3/665)+核
▷快感値増加
俺の前には、ローブを身につけたマモンが、息も絶え絶えに、肌を上気させ、地面に横たわっていた。
ローブに手をかけ、俺は驚く・・・。
「お前・・・女だったのか・・・。」
「やめ・・・もう・・・やめて・・・。見ないで・・・お願い・・・お願いします・・・。これ以上は・・・いやあぁ・・・。」
もじもじと細く長い素足をすり合わせ、身に纏うローブで必死に身体を隠す女の子は俺を上目遣いに懇願してくる。
端整な顔立ちの黒髪の美しい女だった。
悪魔と言うより、般若のような角を額から生やした女の子は、必要にローブを頭から被り身を隠そうとする。
「・・・ふふ。そうか、キミが強欲の王、マモンの核、マモンそのものなのか。」
「え?え?」
突如、名前を呼ばれ驚嘆した女の子はジリジリと後ずさり、俺の手から逃れようとする。
「ふふ・・・ふふ・・・ふへ・・・ふへへへへへ!!」
「っ!?いや!来ないでえぇー!!」
「よいではないか!よいではないか!俺が教えてやると言っているのだ!俺が与えてやると言っているのだぁ!お前は黙って頷き、俺にその身を委ねればよい!それでよい!その邪魔なローブを引き剥がすぞ!そーれ!」
「いやああぁー!!」
ローブを引いて、マモンをひん剥くと、さっさとローブを消滅させてしまう。
▷状態報告 複合体(2/665)+核
▷快感値増加
後には、胸元と下半身を隠した黒髪の鬼ツノ女子が顔を真っ赤にして、肩で息をするほど荒い息をあげ、俺を見上げていた。
「あ、あぁ・・・そんな・・・ローブが・・・。そんなことって・・・。ひどい・・・ひどい・・・。」
「くふふふ・・・!ふふふのふー!やっぱりそうだ、キミは・・・。」
「醜いでしょう!?酷く醜悪で、皆から恐れられる見た目をしている!分かってる!自分でもわかってる!身体も細く、胸もさほどない!いくら女好きの貴方とて、とても、見られたものではないでしょう!?分かってる!だから、私は・・・!」
多くの人や物を奪って、己に肉漬けし見た目を偽っていたのだと、その時、初めて、女の子は独白した。
つまりは彼女の自身へのコンプレックスが、全ての元凶だったのだ・・・。
「残りは二つ。」
「あっ!?や、やめ!やめれ!んん!あん!来ないで!ぁ・・・ああん!これだけは・・・!これだけは!!あっ・・・やら・・・やめて・・・!」
「無駄な抵抗はやめて、全てを!さらけ出せよおぉ!マモン!」
「やら・・・!見ないれ・・・見ないれ!はんんっ・・・♡あっ・・・んんんん・・・♡」
一気に剥ぎ取っていったことで、性癖が反映され、一気に快感が押し寄せてきていたのだろう。
ビクン!ビクン!と痙攣を起こし、何度も気を失いそうになりながらも、マモンは必死の抵抗を見せていたが、俺が最後に残る下着に手をかけたことで、ついに、ついについに!
▷状態報告 複合体は消滅(0/665)+核のみ
▷快感値最大値達成
「らめ・・・いっちゃ・・・イク・・・いっ~~~~~っ♡♡♡」
くたりと・・・横たわるマモンは完全に産まれた時のままの姿になっていた。
身体を両手で隠しながらも、呂律の回らないうわ言をつぶやき、その濡れた舌を出しながら、恍惚な表情を浮かべ、マモンは視点の定まらない虚ろな目で俺を見上げていた。
「なんて、綺麗なんだろう・・・。」
「あ!や!んん!あ・・・あぁ・・・!」
俺が見ているせいだろう。
マモンは俺を見つめ返しながらも、快感に身体を支配され続けていた。
「・・・マモン。」
「見ないれ・・・。やぁ。」
ダメだ。会話にならん。
ついでに言うと、想像以上の色香に、俺も本能を抑えるのに必死だ。
「サポート。すまないが、服が欲しい。何でもいい。頭の中だし、作れるだろう?」
▷要求を確認。服をマスターに着用します。
「いや、俺は服は着てるつもりだったけどね。キミから見たら、全裸なんですか?全裸の人に着せてください。」
▷要求を確認。コートをマスターに着用します。
「ねぇ。話、聞いてる?」
天の声が聞こえた瞬間、コートがそっと俺の身に着せられる。
え?なに?俺、本当に全裸に見えてるの?
▷失礼。服は着ていますが、本能がむき出しなので、猿のように。
「ウッキャアー!誰が猿だ、誰が!」
本体サーバーはリライアより、辛辣そうだ。
俺はブツブツと文句を垂れながら、目の前で、未だに快楽に苦悶する女の子に服を着せる・・・。
「これ、やるよ。断捨離達成祝い。俺からのプレゼントだ。」
「んん・・・ん・・・!奪っておいて、プレゼントって!本当、イヤな人ですね、あなた!」
何とか、服を着せると、少し落ち着いたのか、ペタリと床に座り込み鬼の女の子は俺を見上げていた。
キリリとした顔だちが何とも、美しい。
「綺麗なものを見せてもらったからな、お礼だ。」
「どこが!こんな醜い見た目、どんなにされても、綺麗になんてなるわけない!」
「キミ、自分の姿見たことあるか?」
「見てるに決まってるでしょう!?こんな、醜い姿、私は嫌いよ・・・。二度と見たくない。」
「ふーん。キミって、変なヤツだな。」
「あなたに言われたくない!」
ギュッと、コートの襟を握りしめて、目を細めて女の子は俺を睨む。
警戒心むき出しだなー。
今にも噛みつかれそう。
「キミはマモンでいいのか?」
「マモンは、私の能力でより集められた集合体の総称。」
「名前は?」
「ないわ。」
スン!と女の子は答えると、そっぽを向いた。
「もう、私のことはいいでしょ?さっさと、煮るなり焼くなり、好きにしたらいいわ。」
「・・・・・・好きしていいのか?」
「えぇ。ここから追い出すなり、消するなり、好きにしなさい。」
コートに身をくるんで、背中を見せる女の子。
その背中はあまりに小さく、寂しげだった・・・。
小さな蜘蛛のように・・・少し可愛らしくも思えた・・・。
目の前の少女の行いは、まぁ、許しはできない内容だ。
人の頭に入り込んで、相手を乗っ取るなんて、正直、やり過ぎな面も多々ある。
「追い出したら、その能力を使わない自信は?」
「ないわね。」
ハッキリと、キッパリと、潔良いほど彼女は、再犯確定を口にした。
冗談でもなく、ここで逃がせば、本当にまた同じことを繰り返すだろう。
それは、さすがに見逃がすことはできないな。
だからといって、女の子を手にかけるのも、気が引ける。
全ては目の前の女の子のコンプレックスが原因なんだから、可能なら更生の道を作ってあげたい。
コンプレックスさえ取り除ければ、女の子はこれからも、一人で立ち、何かに過剰に固執することもなく歩んで行けるはずだと、俺は“ 信じている”。
「ふむ。仕方ない。袖触れ合うも他生の縁。ここで、出会ったのも、何かの縁。キミと俺は赤い糸だったてわけだね。キミのそのコンプレックス、俺が少しだけでも、解消してあげるよ。」
「・・・え?どういうこと?」
「俺のモノになれ。」
「っ!?」
「好きにしていいんだろ?じゃあ、好きにするさ。俺はキミを好きになる。だから、キミも俺を好きになれ。」
「な、ななな・・・!?」
俺は女の子に近付くと、その角生えた頭に手を置いて、微笑む・・・。
優しく撫でて、顔を覗き込むと、その顔は真っ赤になって俺を見つめ返していた。
「俺のハーレムに来い。キミみたいに苦しむ女の子は放っておくなんて、俺の矜恃に反する。」
「あ、あなた、強欲なのね。こんな醜い私を誘うなんて。やっぱり、変な人・・・。」
「女の子に関しては、強欲さ。変なのは・・・お互い様だな。」
俺は笑うと、女の子も小さく笑って、俺の差し出す手を取った。
▷互いの共鳴を確認。
隷属契約を結びますか?
天の声が二人に届く。
「れ、隷属契約まで持ってるのね・・・。凄い人だとは思ってたけど、ここまでの力があるなんて・・・。」
「いろいろあるんだ、俺は。これからも、色々あるだろう。俺と一緒にいれば、キミの価値観も変わる。きっと、キミの自信にも繋がるはずだ。」
「そう・・・。なら、お願いしようかしら。私を奪ってください。もう、二度と強欲の王にならないように、私から全てを奪って・・・。」
「あぁ・・・。お前を貰う・・・。」
少女は力を込めて頷くと、俺の手に紋様が浮かび、少女の身体が光輝く。
「あ・・・暖かい・・・これが・・・あなたの熱・・・。」
「大丈夫か?」
「えぇ。とても・・・優しく・・・暖かい。」
やがて、光が収まると、少女は目を開けにっこりと微笑む。
「・・・・・・うーむ。やっぱ、可愛いな。」
「え!?薮から棒になにを・・・言ってるんですか・・・?」
あら、敬語なんて慎ましくなっちゃって。
まぁ、主従関係を結んだなら、それも仕方ないのかな?
「いや、可愛いなって。」
「や、やめてください、こんな醜い私に・・・。ほ、ほら、角もあるし、目つき悪いし、胸だってないし、細いし、手!ほら、手だって、他の女の子みたいに綺麗な丸い手じゃなくて鋭い爪だし!」
間近で見つめられ、容姿を可愛いと言われたことに大慌ての少女は、ワタワタと自身の特徴を指し示しながら、自身が如何に醜い化け物かを力説し始める。
え?だって、いわば鬼っ子ちゃんでしょ?
それくらい、見ればわかる。
それにそれくらい気にならないくらい、俺は『女の子』が大好きなのだ。
「うむー・・・俺は可愛いと思うけどなぁー。キミの価値観がわからん。」
「主様の趣味の方が分かりません・・・。」
二人で首を捻り腕を組んで、うむうむと唸っていると、後ろで身動ぎする音が聞こえる・・・。
「・・・っつ!」
「お、お目覚めか!大図書館のお姫様!」
俺は目覚めたリライアに駆け寄ると、無理をしないようにゆっくりと上半身を支える。
「マスター・・・?私・・・。」
「気を失ってただけだ。大丈夫、全て終わったよ。」
「そうですよ!情報体が!」
「それがコチラ!なんと、女の子でした!」
「あ・・・どうも。その情報体です。」
じじゃーん!と後ろでスマした顔の女の子を手で指し示す。
え?なんか、素っ気なくなってない?
「は、はぁ・・・どうも。あの、何がなにやら・・・。」
「端的に言えば、甲冑から可愛い女の子が出てきた。」
「嫌味ですか。醜いの、間違いでしょう・・・。」
俺の言葉に深く息を吐いて、少女は軽く舌打ちした。舌打ち!?オマケまでついてきたぞ!?
あるぇー!?なんか、別人なんですけど!?
「本当に何がなにやら・・・。マスターは大丈夫ですか?お怪我は?」
「ないよ。リライアは?」
「私は大丈夫です。侵食もされてません。」
自身の身体を見回し、リライアは大丈夫だと頷く。
俺はホッと胸を撫で下ろすと、立ち上がろうとするリライアを支えて共に寄り添う。
「侵食しようとしたところで、邪魔されましたからね。何もしてませんよ。」
「もう、いらないんだろ?」
「えぇ・・・。よく考えれば、同じ情報体ですし、永劫の命を手にした時点で、取り込む必要はありません。この本の管理のために置かれた情報体なのだとしたら・・・取り込めば、膨大な容量を食うことになる。ふふ・・・。むしろ、手にしていたらと思うとゾッとします。」
周りの本棚や床に散らばった本を見て、少女は首を苦笑混じりに振った。
「なんだか、そう言われると、腹が立ちますね。まるで、私が容量食いの使えないファイルのように聞こえます。速やかな訂正を、要求します。」
「それは、棄却します。」
「なぁっ!?あなた、自分の立場、分かってます!?」
「今や私も主様の従者です。それ以上でも、それ以下でも・・・ましてや、主様のただでさえ少ない容量を圧迫する無駄な容量を持った肉塊では、ございません。」
メガネの位置を調整しながら、リライアは不満そうな顔で、少女に詰め寄る。
対して、少女は同じく不服そうに、リライアの豊満な胸を指でつついた。
圧迫する無駄な容量って、リライアの大きな胸のこと?
むしろ、俺からすれば、それは容量を割くべき、重要なデータですがなにか?
つまるところ、少女はリライアの豊満な胸が羨ましいのだろう。同じ情報体での個体差に、不満が見え隠れしていた。
というか、今、流れるように主の俺もバカにしただろ!?
誰が、メガ頭だ!!ギガくらいあるわ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※ここでシルクの横路
~ 語・リライア ~
過去には、人の脳の記憶量は1.25TBと言われていました。フム( ˘ω˘ )フム
ちなみに1TBは1024GBで、1GBは1024MB、1MBは1024KB、1KBは1024Bとなります。最近の音楽プレーヤーでもよく聞く『ギガバイト』の上の単位ですので、結構な量です。
脳の記憶量を他の身近な物に例えると、
『脳一つ』=『ハードディスク 約6台』=『DVD 約240枚』=『メモ用紙 約5億2,800万枚』になります。Σ(;゜д゜ノ)ノ
時代変わって、直近の研究では、人間の脳はこれまでの定説より10倍もの情報を記憶できることが発表されています。
平均的なシナプスは4.7ビット(0.5875バイト)の記憶容量があるということで、脳全体では約1ペタバイト(1,024テラバイト)の情報の記憶が可能であるということになります。
『HD品質の映像ならなんと13年余り分のデータ量』なのです。スゴッ(๑°ㅁ°๑)✧
記憶力、暗記力が低いとお嘆きの皆さん、どうか、自身の持つ脳の潜在力を決して過小評価しないでください。
そんなこと言われると、あなたの中のリライアが、悲しむかも知れませんよ?(><)
脳の容量をもってすれば、円周率10万桁も朝飯前ということなんですから。
では、試しに覚えて見ましょう!
(`・ω・´)フンスッ!
せーの!
『10万は普通に無理!』
・・・ですよね~( ̄∀ ̄)
ーーーーー
ーーー
ー
「っ~~~!!?マスター!この人、ハーレムから解雇してください!」
「してもいいですけど・・・そうしたら、このぽっかりと空いた胸はどうしてくれるんですか?私・・・また、強欲するかもしれませんよ?」
コートを少し開けて、前かがみになると、そのわずかな膨らみでできた、緩やかな谷間をじっくりと見せつけてくる。
チロりと舌を出し、小悪魔のように微笑む少女に少しドキリ・・・とした。
「不思議だな。谷間といえば、観月やリライアの谷間が一番だと思っていたが、なかなかどうして、緩やかな谷間も素敵に見えるな。」
「ふふ・・・こんな醜い身体でも、興奮するなんて、変な人・・・。」
「マスターの変態・・・。結局、女の子なら、誰でもいいんですね!」
「もちろん!女の子はみんな、大歓迎だ!!ウェルカム・女の子!」
「そこは、『違う!女の子だからって、誰でもいいわけじゃない!心が大切なんだ!』とか、弁明するところでしょう!!?威張らないでください!」
「誤魔化してなんになる!男はみんな、女の子が好き!これゲノムレベルの絶対の真理!女の子は美しき花!男はそれに群がる蝶であるべし!それが繁栄への道!生めよ!増やせよ!地に満ちよ!荒れた大地を、華と蝶で満たすべし!うおぉー!世界に届け!この想い!!」
天に向かって叫ぶ、もはや狂人レベルのド変態がそこにはいた。
その背中を見つめ、二人の情報体は、苦笑を浮かべる。
「あー。本当、やばいなー、このマスター・・・。」
「色々とやばいですね。本当。」
「あなた、本当に隷属契約したんですね。いいんですか?強欲の王と言われた貴方が、人の下につくなんて。」
「奪ってこその、強欲の王ですから。奪われてしまっては、もう、王とは言えません。それに、正直、私は疲れていたのかも知れません。集めることに・・・。満たされない気持ちを抱え続けることに・・・。」
奪い尽くされ、手元に何も無くなった少女は、胸を抑えて小さく笑う。
「だから、次は“与える”ことをしてみたいんです。今は何も持ってない私ですけど、何か協力することはできると思いますから。そうしていく中で、変わることも沢山あると思うから・・・。」
「そうですか・・・。それはとても良い案ですね。では、ともに支えましょう。マスターを。」
「えぇ・・・協力しましょう。主様のために。」
主の後ろで、敵だった情報体同士頷き合う。
「ふふ・・・いいねぇ。あぁ、まずは手に入れるべきは、それだよ、マモン。それでいい。」
叫んでいた主は、肩越しに振り返ると二人の繋ぎ合う手を見てほくそ笑む。
二人は姿形は違えども、微笑ましいほどの仲の良い姉妹に見えた。
同じ志を持つ仲間と使命。
それがマモンに与えられた主からの、最初の贈り物だった・・・。
その者、強欲につき、全てを手にしようと手を伸ばすも、より強欲な者に全てを奪われた・・・。
奪われて初めて、その身のありがたさに気付くだろう。
手を取り合う手があり、何処までもかけていける脚がある。
人の温かさを知った今の彼女なら、苦しむ人々に駆け寄り、手を差し伸べる優しき道を選べるはずだ。
これからは、きっと。
「あ、協力はします。でも・・・主様は渡しません。主様は、私がお婿に貰います。」
「ほんと、あなたという人は・・・強欲な・・・。はぁ・・・。」
だが、やはり、そんな彼女は温もりを教えてくれた主だけには、強欲でい続けるのだろう・・・強欲の化身として。
「ふふ・・・主様♪これから、よろしくお願い致します!」
「はは・・・!いい笑顔だぞ!うん!」




