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その男、痴れ者につき

いざ、遺跡の外を目指すとなると、簡単なもので、気が付けば、俺たちは遺跡の入り口まで来ていた。



「シルクの案内もあったおかげか、随分と早く来れたな。」


「シルクちゃん、この遺跡の女王様だもん。家の中を案内するようなもんだね。しかも、部屋を出てから戦闘もなかったし。」



出会ったスライムたち、みんな、シルクの顔を見たら道開けてたもんな。


しかも・・・。



ー ぷるん!ぷー!

ー ぷるる!ぷんぷん!

ー ぷぷぷ!ぷるんぷる!



ワイワイガヤガヤと、スライムたちが、俺たちの後ろをぞろぞろと着いてきていた。



「うー!」


シルクを先頭に、まるで観光団体かのような行列で、あとをついて行くスライムたち。


どちらかといえば、観光団体の中に、俺たちが迷い込んだような感覚だ。



「まさかとは、思うが・・・着いてくる気じゃないよな?」


「はは・・・まさかー。」



俺と観月は同行するスライムたちに、苦笑する。



『うっ!』



シルクが立ち止まり、こちらを振り返る。

指さす先には、遺跡の入り口があった。


あの入り口から出れば、いよいよ、外の世界だ。



『うー。』



シルクはくるりと、後ろに着いてきていたスライムたちに振り返る。


その中から、一体のスライムを選ぶと、高々と掲げて、強く叫んだ!



『うぅー・・・!!』



スライムたちは、シルクの手の中のスライムに火がつきそうなほどの視線を送る。


これはもしかして・・・世にも珍しい、女王の交代の瞬間を目の当たりにしているんじゃないだろうか?



『ぷるん!』



ー “ プルルルゥゥゥー!!”

ー “ププルルルゥゥゥー!!”



シルクの手の上のスライムが、一言、何か告げると、周りのスライムたちは、まるで新しい女王の誕生を祝うように、大合唱をしながら、飛んだり跳ねたりしていた。


え!?『ぷるん!』で、そんな盛り上がるの!?

あのスライム、なんて言ったんだよ!?

すっごく、気になるんですけど!!


「・・・あれ?でも、ここの子たちって結局、シルクから分裂した存在なんだよな?

てことは、あそこで跳ねてるのも、寝てるのも、飯を食べてるのも、当然、シルクの手の上にいる新しい女王も、シルクなんだよな・・・。」


「うん・・・。そう、なるね。不思議だねー。モンスターって。」



しばらく、スライムたちは、どんちゃん騒ぎをしていたが、シルクから新女王を受け取ると、気持ち深々と頭を下げる。



『うっ。』


『ぷるん・・・。』



最後に、女王の頭をシルクが撫でると、新女王の号令でスライムたちは遺跡の奥へと帰っていくのだった。



「継承の儀式は終わったかい?それじゃあ、シルク。新たな仲間として、改めてよろしくな!」


『う!』



いつまでも、見送っていたシルクの頭に手を置くと、俺はシルクに微笑みかける。


シルクは強く頷くと、俺の腰に抱きついた。



「さあ!始めよう!俺たちの冒険を!!」


「うん!!」


『うぅー!!』



俺たちは、せーのっで、遺跡の外へと、踏み出した!!


ー ザッ!! ー

「いやぁー!緑!どこ見ても、緑!思いっきり、緑!ここ、完璧に森の中だわ!あーっははは!空気が美味いなー!どこだココは!!」


「ほんとだねー。澄んだ空気が美味しい。でも、こんな森の中に村なんて本当にあるのかな?」


『うー。』



遺跡から飛び出した俺たちは、ぐるりとまわりを見渡すと、鬱蒼とした森の中に、遺跡があることを知る。


この森のどこかに、村があるのだろうが、それがどれくらいの規模で、そもそも、どちらの方向にあるのかも分からない俺たちは、少しでも情報を得ようと周りを見渡した。



「何も・・・ないね?」


「だな。」



仕方ないので、適当に付近を散策しようと、一歩踏み出した時だった。


前方の木の影で、何かが反射したことにいち早く気付いた俺は、観月を庇うように抱き寄せる。



「観月、こっち!」


「えっ?きゃ!」



シュッ!



風を切る音と共に、観月の前に矢が刺さっていた。



「な、なにこれ!?」


「《Appraise(鑑定)!》・・・毒矢、ではなさそうだな。」



すかさず、刺さる矢を分析すると、矢には特別な加工がされている様子はなかった。


矢から明らかな敵意は感じないので、脅しかなにかであればいいんだけど。



「そこの三人、動くな!!そんな所で何をしている!その遺跡に、何の用だ!?」



俺たちと変わらない年齢の女の子が、弓を引き絞り、こちらに向けて警戒を向けていた。


女の子!?女の子だ!


黒い髪に、幼さも残る綺麗な顔だち。

軽い銀甲冑を身つけた女の子が、そこには立っていた。



「あ、すみません、観月さん。これ持ってて貰えます?」


「え?なに?何する気?」



俺は武器と盾を、観月に預けると、髪型と身なりを整え、クルクルと回りながら女の子に振り返る。



「あぁ・・・!なんと美しいお嬢さんだ!その黒く艶やかな髪!その強い眼差し!その引き締まった四肢・・・全てが、美しい!」


「え?な、なにを・・・言って・・・。あ、こ、こら!動くなと言っているだろう!?」



急に振り返ったと思えば、全くの無警戒で近づいていく俺に、女の子は戸惑いを隠せないのか、引き絞られた矢が緩む。



「いや、失礼!あまりに君が綺麗な瞳をしていたから、見惚れてしまってたよ。まるで、澄んだ夜空のように美しい瞳している。だが、それだけじゃない。その中にも、自然の厳しさも知る眼ヂカラに、俺は胸を射抜かれてしまったよ・・・。あぁ、なんて、美しいんだ、君は!!」


「え?見惚れ・・・ってなに?何言ってるんだ?美しい・・・って、ば、バカにしてるのか、お前は!?」


「バカにしている?なんだ、君は知らないのか?これはね・・・。」



俺は飛ぶように地面を蹴ると、一足で女性の前に降り立つ。



「なんて、身軽な動きだ!お前、何者だ!?まさか、魔物か!?」


「人間さ。君と変わりない、人間だ。だけど、一つ違うことがある。」


「ち、違うこと・・・?」



不意をつかれ、間合いに入られたことに動揺したのだろう。


女の子は慌てて、弓を構えるが、俺はやんわりと、弓を掴む手を押しのけるように、一歩前へ出た。



「俺は男で、キミは女の子ってことだ。そして、男である俺は、女の子であるキミを口説いているんだよ。」


「口説・・・!?あ・・・!」



思わぬ言葉に肩の力が抜けたのか、女の子は矢を取り落としてしまう。


これを好機と見た俺は、女の子の肩を抱き寄せ、その耳元に囁きかける。



「俺は怪しい者じゃない。ただの男・・・。そして君は美しい女だ・・・。」


「あ、あぁ・・・う、うぅ・・・。」



抱き寄せられた女の子は、顔を真っ赤にしてその場にふにゃふにゃと崩れ落ちる。



「大丈夫かい・・・?腰が抜けたのかい?」


「し、痴れ者が・・・。私を誰だと思っている・・・。これくらい、なんともない・・・。」



俺の手を払うと、女の子は弓を手に立ち上がる。



「はぁ・・・もう!なんなんだよ、お前は・・・!」



落とした弓を拾い、弓筒にしまうと、小さく息を吐いて俺の胸を軽くどついて来たが、こちとら、身体強化済み。


観月ちゃんのダンプカーパンチ(皮肉)でも、ビクともしません。


「俺か?俺は栄咲遊助!君のように、可愛い女の子たちと仲良くなるために、旅をしているただの男だ!」


「うぅ・・・調子狂うな、もう!こいつ、なんなんだよー・・・!」



ドーン!と胸を張って、女の子に笑いかける。


全力のスマイルだ。オトせる!

きっと、オトせる!



「キラキラ・・・!」


「うぅ・・・うう・・・!(なんだ・・・?胸が・・・熱い・・・。こんなこと、今までなかったのに・・・。)」



目に力を込め、赤面する女の子に熱い視線を送っていると・・・。



「もちろん、ただの変態Death()!!」


「うおぉー!?」



殺意の篭った声と共に突如、天から観月が降ってきた。

それと同時に、背中に衝撃を受けた俺は軽々と数メートルぶっ飛ばされ、森の木へと激突する。


ズルズルと、木から落ちるとそのまま俺の背中に蹴りをぶちかました観月を見る。


まるで、アメコミのヒーローが高所から着地したような体勢で、女の子を後ろ手に庇い、地面に着地する女子高生。


うわー・・・かっけー・・・。

俺もやってみてー。



「ガフッ!?【|観月が変わってお仕置よ!《みつきっく》】・・・完成していたのか・・・!?」


「なに、“みつきっく”って・・・。変な、名前付けないで。ただの飛び蹴りだよ。」


「小さい頃によく、美少女戦隊の真似してたじゃん。その時に、自分も必殺技が欲しいとか言って練習に付き合わされたのを思い出したわ。なんでか、最後は覆面ライダー系の飛び蹴りになってたけど・・・。」


「そ、それは、ユーちゃんがこっちがかっこいいとか言ってたじゃん!」


「・・・言ってたっけ?」



ととぼけてみるが、本当の話だ。


観月にこの技を覚えさせた最大の理由。

それは、もちろん、ハレンチに関する裏話があった。



子供の観月に付き合って、美少女戦隊の必殺技を練習するが、なにぶん、セクシーさが足りない。


故に、俺も本気では負けた振りなどできない。


『なんとか~かんとか~☆(魔法の呪文は、もう忘れたや。)』


『やーらーれーたー。』


これを延々と繰り返すのだ。

気が狂いそうになる。


そこで多感な少年は考えた。


なんとか、楽しさをアップできないか?

この遊びには、何が足りない?

そうだ、セクシーだ!

なんとか、セクシーさをアップできないか?と思案した俺はついに究極の結論に至る。


あ、向こうが見せてくればいいんだと。


だが、俺に日々、ハレンチされている観月ちゃん(当時六歳)は、もうこの頃になると恥ずかしさもあったようで、なかなか、隙がなかった。


そこで、さらに思案。


必殺技+パンチラ→俺、本気でぶっ倒れる

→観月よろこぶ(観月得)→またしてくれる(俺得)


となると、自然とパンチラできる必殺技・・・もっとアクティブな必殺技・・・。


そうだ!ライダーだ!

これなら、合法的?にパンチラが見れる!


向こうが、見せてきてる(つもりはない!)わけだから、合法!

ギブアンドテイク!

ウィン・ウィンの関係だ!


俺は、観月を強引な言葉で言いくるめると、当時見ていた、ライダー系のキックを観月に全力で叩き込んだ。



『みつきっく!』


『はぁ・・・ピンク~!きゃっわいい!ぶはっ!?』


『やったーできたよ!ブイ!』


『くっ!これぐらいで(一回くらいで)、終わるもんか・・・。俺はまだまだやれるんだよ!(見たいんだよ!)』


『むー!いいよ!付き合ってあげる!【みつき~~っく】!!』


『うわあぁお~!ふぅ!セクシー!?』



そうして、拝んた彼女のパンチラは、俺を子供ながらにぶっ飛ばすほど威力があがった。


実際には、子供にそんなキック力はない。


あったのは、パンチラの攻撃力補正だ。


女の子のパンチラには、それだけの破壊力があった。


女の子のパンチラ好きが、目覚めた瞬間でもあった・・・。


懐かしい記憶だ・・・。




「言ってたよ!私の服が風になびく姿が、より、格好よく見えるって!」


「・・・言ったっけ?」



言いました。正確には、服=スカートですね。



「もう!覚えててよ!子供の時の思い出だって、私には大切な思い出なんだから!」


「覚えてることももちろんあるさ(パンツとか)。そうか、そんなこともあったな。これからは覚えとくよ。(パンツとか。)」



うん、本当はもちろん全部覚えてるよ。

君のパンチラ含め全部、覚えてる。


スカートめくりを覚えてからは、そんな技に頼らなくても完璧に見てきたけどね。


俺は懐かしむように、目を閉じると俺の心のアルバム写真を一枚一枚、確認する。


いやー、子供パンツから、大人ショーツに変わった時は興奮したな・・・。


あの衝撃は忘れないよ、本当・・・。


俺はむくれる観月に笑いかけると、ホコリを払って立ち上がった。


さて、身内話はここまでにして、観月の後ろで困惑している女の子に話しかけるとしよう。


もちろん、君のパンチラは、衝撃的なんだろう・・・?


「ふふ・・・。」


「な、なに・・・?何なんだよ、お前ら。(凄い威圧感。コイツら、かなりの手練じゃないのか!?)」


「私は羽衣観月。観月って呼んで。この変態の監視役をしてるの。」


「と同時に、俺の女だ!君も俺のハーレムに入らないかい!?俺のことはご主人様と呼んでくれていいんだよ!」



自己紹介を始めた観月に便乗するように、女の子に駆け出したが、首根っこを捕まれ、引き戻される。



「何がご主人様だ、変態。こんな風に、女の子を見ると、すぐに飛びついて困らせるからね。私が手網を握ってるの。」


「くぅ~~ん!」



俺を軽々と抱えて、観月は振り回すと、俺が大人しくなったことを確認して、女の子に見せる。


俺は怯えた子犬のように、目の前の女の子に向き直った。ご主人様・・・怖いワン・・・。

見た目すら、子犬になってたと思う・・・。



「あなたは?」


「私は、ギルドよりこの遺跡の警邏を任されている〖リア = フレイム〗 。この近くの村に駐在している。」


「リアさん?よろしくお願いします!」


「ところで、君たちは何をしてたんだ?雰囲気から、魔物狩りや盗掘者ではないのは分かったが。」


「私たちは・・・なんだろ?」


「とりあえず、ここに来たなんて感もあるからなー。」



ようやく、観月の手から解放され、俺は観月の隣に立つと、なんて答えようか考える。

転生者?神の遣い?愛の伝道師?どれも、やばい転生人生になりそう。

冒険者とか言ってもいいが、ライセンス確認とかされたら面倒だし、もっと、適当な・・・一般人的な奴はないかな?



「なんだそれ?君ら旅人か?たしかに、観光目的で旅してる奴が、よくここに迷い込むことがあるが・・・。本当、ギルドも危険視してるなら、立ち入り禁止の看板でも、立てればいいのに。」



困ったもんだよ、とリアさんは首を竦めると、遺跡に目を向ける。


あ、普通に旅人でいいんだ。

まぁ、冒険者じゃない爺さん婆さんだって、余生を過ごすために旅くらいするよね。



「腕に自信があるなら、遺跡も手前までなら探索できるだろうが、一般人には無理だ。中には有象無象のスライムがいるし、最深部には、魔王の残滓から生まれた強大な魔物が住んでいるということだ。有象無象の骸の真ん中に座る漆黒の鎧。ウチのギルドの手練たちも挑んだが、その威圧感に推され、逃げ帰ったと聞いている。」


「漆黒の鎧・・・・・・あ、それって『へぇー!そんな魔物がいるんですねー、怖いなー!すぐ、ここを離れないと!』むごっ!?むごご!?」



何かを言おうとする観月(おバカさん)の口を塞ぎ、俺はリアさんの話に驚きの声をあげた。



「ぷは!え?ユーちゃん、何言ってるの?居たじゃん、一番奥に漆黒の『スーッ!フッ!貼山靠(テンザンコウ)!!』っえ!?きゃあぁーー!!?」


「なっ!?ぶっ飛んだ!?」



俺はまだ喋ろうとする観月の横から、息を吸い、思いっきり体当たりをぶちかます!


八極拳を教えてくれたシャオ先輩!ありがとう!

チャイナ服のパンチラ(白)と照れる顔を思い出し、心で感謝の念を伝える。『も、もう!また、ハレンチして!集中するネ!』



観月は数メートルぶっ飛ばされ、近くの木に激突した。


※ここで、シルクの横路(ロード)


貼山靠(テンザンコウ)】とは別名鉄山靠。

八極拳の代表的な技として認知されています。

背中からぶつかる体当たりをしていれば貼山靠とみなされるのですが、正確には「並足を揃えて膝で軽くしゃがみ、踏み出して敵の足を引っ掛けて下方向に向かって背中で体当たりする」技。

そのため、物理打撃というよりは投げ技に近い性質をもつのです。


実はシルは今回のコレを見て、覚えました。たまに人をぶっ飛ばす時には、よくこれを使うことになります。おしまい。

( 「 ・ω・)「 アチョー



ズルズルと音を立てて、逆さになった観月が目を回してずり落ちていく。



「きゅ~~・・・。」


「きゅ、急にどうしたんだ!?」


「あ、大丈夫です。こういう修行も兼ねての旅なので。」


「人との話し中に、急に修行を始めるのか?変な連中だな。」


「隙があったので。魔物が蔓延るこの世界は、僅かな隙が命取り・・・でしょ?」


「いや、隙だらけのお前に言われても、説得力がないが・・・。」



苦笑を浮かべて、リアさんは肩を竦めるが、俺は気にせず、話を進める。

せっかく、ただの旅行者で落ち着こうというところだったのに、奥の魔物倒したなんて知れたらそれこそ、大騒ぎになる。

勘弁してくれ、観月さん。



「これも、パフォーマンスですよ。能ある鷹は爪を隠すってね。いつか、魔王を倒せるほどの力をつけて、世界に安寧を届けることを目的にしてるんで。」


「能ある鷹ってのは、知らないが、まぁ、言いたいことは分かる。しかし、魔王を・・・?キミが?無理だろう。魔王は最強最悪の化け物だぞ?一般人にどうこうできる相手じゃない。そんなのは、勇者に任せて、君たちは自分たちの身だけを案じなさい。」


「自分の身だけを案じて、女の子を救えるもんか。女の子一人や百人の笑顔も守れないようじゃあー、男じゃないんだよ。俺の中じゃね。」



弟を窘めるお姉さんのように、指を振って注意するリアさんに、俺は真面目な顔で答える。


俺の反応に、リアさんはキョトンとすると、口元に手を小さく笑った。

あ、可愛いー・・・。



「・・・は、はぁ。ふふ・・・変なやつだな、お前。」


「そうそう・・・。俺は変な奴さ。大した力がないのに、世界を渡り歩き、少しでも女の子を笑顔にできるように旅する変なやつ。」



ニッコリと笑うと、俺はぶっ飛ばした観月を回収しようと目を向ける。



ちょうど、シルクが観月を看病しているところだった。



「あの子供は?」


「あの子は・・・拾ったんだ。旅の途中で。」


「戦争孤児か。先の大戦は大変なものだったからな・・・。両親を失った子供たちが、昔は多かったと聞く。運良く生き残った子供も大人になり、育てられずに手放したり、親が犠牲になったりで、今も子供がスラムや地方を放浪しているそうだな。そうか、あの子もその一人なのか・・・。」


「紹介しよう。おいで!シルク!」


「シルクちゃん・・・。」


「う・・・?」



ととと・・・と、足音を響かせて、シルクは俺の腰に飛び込んできた。


クリクリとした目が期待に満ちた目で俺を見つめている。



「はは!遊びたいのか?」


「う!う!」



シルクはどこから拾ってきたのか、矢を手にして、俺に差し出してきた。



「あ、さっき、リアさんが放った矢か。持ってきてくれたんだな、えらい、えらい。それは、リアさんに返そうな。」


「う。」



シルクは頷くと、隣に立っていたリアさんに向き直り、矢を差し出した。



「っ~~!!きゃ・・・きゃわいい!」


「う?う?」



矢を受け取ると、リアさんは目を輝かせて、シルクに抱きつく・・・。



「はは・・・可愛いだろ?シルクは。」


「うん!うん!すっごく可愛い!なにこのふわふわのサラサラの髪!まるでスライムのようなプルプルもちもち肌!空のように澄んた穢れのない青い瞳!あぁー!可愛い!」


「う?う?うう?」



ギューっと急に抱きしめられされて、困惑するシルクは、俺に助けを求めるような眼差しを送ってくる。



「はは・・・。よかったな、シルク。可愛いって。」


「う・・・うー・・・。」



よしよしと、その小さな手で、シルクはリアさんの頭を撫でる。(お、おちつけ、人間よ・・・。)


それに気付いたリアさんは、目をさらに輝かせて、シルクにスリスリし始めた。

もう、もみくちゃだ。(逆に効果は抜群だった!)



「う!?うぅ!!う!」



逃げようとするが、がっちり腰を捕まれ、逃げられないシルク。


助けを求めるように、俺に手を伸ばすが、俺は首を振って答える。



「う、うぅー!ぷ、ぷる・・・。」



スライムになって脱出しようとするシルク。

俺はニッコリと笑って、待て!の姿勢でシルクの前に立つ。


「う・・・?」


『(その姿をやめたら、首が飛ぶぞ?俺も、お前も、観月も。)』


「うぅ!!!?」



▷念話(主従用)を修得しました。



俺は試しに、黙ったまま頭で、シルクに語りかける。声が聞こえたシルクは目を丸めて、俺と観月を見た。



お、ちゃんと機能してるじゃん。便利ー。



「うぅー・・・。」


「しばらく、遊んでもらってろ、シルク。」


「うぅ!!?」


「きゃわいいいい~~!!」



もみくちゃにされるシルクに、軽く別れを告げ、リアさんの絶叫に目を覚ました観月に近付く。



「痛たた・・・。なんなの、急に八極拳って・・・。私、何かした?」


「急だったから、手荒になったな。」


「にしても、女の子にする技じゃないよね?」


「それぐらい、緊急だったの。いいか?俺たちの目的は、この世界を救うこと。なるべく、強くなるまで、あと、世界を知るまで、目立つことはやめよう。世界を作った女神のお姉さんに会うまでは、なるべく正体を隠していかないと。」


「それは、分かったけど・・・。でも、貼山靠は・・・やりすぎじゃない?・・・背中痛いんだけど。」



起き上がった観月は、背中に痛みを覚えたのか、顔を引きつらせて俺を見上げる。



「あと、シルクだ。ちょうど、大戦があったらしくて、この世界にも孤児がいるらしい。シルクは孤児ってことで、旅の途中で、拾ったことにしたからな。」


「う、うん。分かった・・・。で、私、背中痛いんだけど・・・。言うことあるでしょ?女の子に拳法技を使って、ダメージ与えたんだから、言うことあるよね?」



立ち上がろうとして、ふらついた観月は俺にもたれ掛かると、恨めしげに見上げてくる。



「てわけで、よろしくな!観月!お前、養母役。俺、養父な。」


「うん。・・・・・・え?終わり?嘘でしょ!?」


「さ!さっさと立て、お母さん!娘が、リアさんに襲われてるぞ!」


「はぁ!?おい、待て、遊助!!お前、それでも私の彼氏か!?未来の旦那か!?女の子、吹っ飛ばして、謝罪のひとつもないのか!?せ、せめて、背中をさするくらいの優しさは・・・あってもいいと思う・・・。うぅ・・・。」


「悪かったよ、ほら。背中に乗れ。」



背中を庇って、フラフラと歩く観月。

俺は少し申し訳ない気持ちになり、観月の前に腰を下ろして、おんぶの姿勢を取る。



「ふ・・・!隙あり!!【みつきーーーっく】!!」


「ごふぉ!!?」


ー ズサアァァーー!!


観月は俺の背中に容赦なく飛び蹴りをお見舞すると、派手に飛んで行った俺に向けてニッコリと笑った。



「あー!スッキリした!今度やったら、月までぶっ飛ばすからね!」


「御意・・・。」



天に向かって指を指すと、俺に向けて拳を打ち出しながら笑う観月さん。


拳から放たれた風圧が倒れている俺のところまで、ビュンビュンやってきた。


全然、元気じゃねーか!こいつ!


あぁ、そうか。こいつも身体強化Lv3だった。

あれくらいじゃ、大したダメージにもならんよな。



「君のご両親は、バケモノのような強さだな・・・やっぱり・・・。」


「うー・・・。(それな。)」



顔を引きつらせて、シルクを抱っこしたリアが、二人の喧嘩を眺めていた。


この二人・・・隠す気があるのか、まったくないのか・・・。


腕の中のシルクは呆れた顔で、二人の痴れ者たちを見つめていた。




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