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その城、魔王の戯れにつき⑦

そうして出来上がったのが、この【サカエ特製☆人生変わっちゃうかも悪夢装置】だった。



この装置にはどんな効果があるのか。


それが分かるのは、この戦に決着がついた時だろう。




「さて……。そろそろ、大天使チームが部屋に着く頃だな。残りのヤツらも、アスモデウスの悪夢へとご案内だ!気合い入れてくぞ!」



『おー!!』




映像に写し出された天使一行を見て、再度気合いを入れ直すために俺たちは拳を突き上げる。



残り下級天使三十、精鋭騎士十二名をふるい落とす時が来たのだ。




「さぁ、美神教に染った性悪天使ども。粛清の時間だ。たっぷりと恐怖を味わい、身も心も絶望に堕ちるがいい!その方が、〈夢〉は〈悪夢〉に染まりやすくなるんだからな。」




薄暗い廊下を歩く大天使たちに、向けて俺はニヤリと黒い笑みを浮かべてほくそ笑んだ。




~ ガブリエルチーム(大天使二名+天使三十名) ~




「どうした?急に立ち止まって。」



「いや、なんだか嫌な視線を感じたんだ~。」




急に立ち止まったミカエルを案じ、声をかけるガブリエル。


後ろを着いてきていた天使たちは、ミカエルの言葉に周りを警戒を始める。




「視線?たぶん、あれじゃないか?」



「ん~?うわ、何あれ~。」




ガブリエルが指差す方向に皆が目を向けると、そこには拳大の蝸牛が天井に張り付いていた。



蝸牛はノロノロと天井を徘徊している。




「あんな、カタツムリは見たことないな。このダンジョン特有の生き物かな?珍しい~。」



「魔王が用意したんだろ。」




何を隠そう、このカタツムリこそ、魔王が用意したカメラの正体だ。


殻の中央部分にレンズとなる目がある。


角がアンテナとなり、情報を発信していた。



そんなこととは露とも知らず、ガブリエルたちは気にすることをやめて歩き出す。



目の前には次の部屋に続く扉。



そしてその扉の前には……ー



「部屋の中に……橋?」




幅五メートル、長さ十余り程の大きな橋が架かっていた……。



橋を眺めて、皆が動きを止める。


次の部屋に行くためには橋を渡らなければならないのだが、その手前には看板があった。




~魔王の戯れ②~



【 汝、このはしわたるべからず。】




皆一様に、首を捻ると部屋の中を見回した。床のない部屋の中に大きな橋が架かっているようで、調光の弱い部屋では底が見えないほど真っ暗な闇が広がっていた。



ミカエルが深さを確かめようと、足元にあった小石を闇の広がる底へと落とす。


かなりの時間が経った後に、カツン……と小石が落ちる音が聞こえた。




「かなり深いな~。」



「まぁ、深さは天使であるオレたちには関係ないさ。」




落ちても大丈夫だという自信が、この場の全員にはあった。


言わずもがな、この場の全員の背中には羽がある。



落ちても、翔べばなんてことはないのだ。




「あとは、この文言だな……。さっきの石の壁のバケモノも問題を出してきたんだ。きっと意味があるはずだ。この魔王は、どうもそういうのが好きみたいだし。」



「“このはしわたるべからず”って……?」



「橋を渡らずに向こう岸に行けばいいってことか?そんな方法あるのか?」




真剣にミカエルとガブリエルが、文言の書かれた看板に注視していると、天使の一人が羽を広げて橋の前に立った。




「いっそ、飛んでみましょうか?」



「やめときなさい。部屋をよく見てごらん?薄暗いから気付きにくいけど、狙われてるぞ?」



「え?」




壁を指差すと、ブロックの抜かれた場所が四方に点在していた。



下手に飛べば、あそこから矢が飛んで来るかもしれない。




「もう埒が明かない!さっさと渡って、魔王のところに行きましょう!」



「お、おい!」




天使の一人が我慢ができず、橋を渡っていく。



何かあるのではと、警戒していた大天使だったが、橋の中程まできたところで天使が振り返って大きく手招きをしていた。




「ほら!見てください!ここまで来ても何もありませんよ!」



「本当だ……。オレたちの考えすぎだったのかもしれないな~?」



「ただ、時間稼ぎのために置いていただけかもしれないな。」




ミカエルとガブリエルは、天使の様子に胸を撫で下ろすと少し苦笑を浮かべた。その表情をみた天使たちがこぞって橋を渡り始めた。



大天使たちも、天使に続いて橋に足をかけた瞬間だった。



ガコン!と何かが外れる音と共にさっきまで橋の中腹で手を振っていた天使が姿を消したのだ。




「ひっ!?うわああぁー……!!」




姿を消した天使の立っていた場所に慌てて駆け寄る天使と大天使たち。



橋の端に立ち、皆を待っていたのだろう天使の姿はどこにもなく、彼の叫び声だけが聞こえていた。


天使の立っていた場所には、正方形の穴が空いており、そこから落ちたのは明白だった。



どうやら、橋に落とし穴があったらしい。




「うわぁ!うわぁあぁー!?」




まだ、穴から天使の叫び声が聞こえる。


飛べば助かるはずなのに一向に羽を広げる様子はなかった。



そのままやがて、声は聞こえなくなる。




「どういうこと~?下に落ちたら、羽で飛べば済む話じゃないの?」



「わからない。とりあえず、渡りきろう!こんな場所、早く抜けないと!」




ガブリエルの言葉で、皆走り始める。


すると、どうだ。



橋のあちこちで、底の抜ける音がしたかと思えば、次々に天使たちが悲鳴と共に落ちていくではないか。




「うわあああっ!?」



「た、助けてぇーー!」



「な、何が起こってるんだ!?」




一人、また一人と落ちていく。


堪らず立ち止まり、辺りを見渡せば半数程まで数が激減していた。




「うぅあぁ!オレの兄弟たちがっ!」




ミカエルが涙を流して落ちた穴を覗き込む。


そこには天使たちの絶叫が木霊する暗闇が広がるだけだった。




「ミカエル!残った者たちだけでも、無事に向こう岸へ連れていこう!」



「ぐっ!兄弟たち!オレの兄弟たちぃ!」



「ミカエル!」




泣き崩れるミカエルを引き起こすと、ガブリエルは橋の上を引きずるように渡っていく。



その間も何人もの天使たちが、突如抜けた穴へと落ちていった。



床が消える恐怖に耐えきれず飛び上がった天使も何人もいたが、すぐにコントロールを失い壁や橋の欄干に激突して奈落の底へと墜落していった。




「部屋の中だっていうのに、橋の下も上も強風が吹き荒れているのか……。こうなったら、歩いてこの橋を渡りきるしかないじゃないか。」



「うぅ!ぐすんっ!兄弟が!兄弟がぁ~!」




フラフラとした足取りのミカエルを何とか支えながら、奇襲に備えて中央を歩くガブリエル。




ミカエルの後を追うように何人もの天使が着いて歩くが、一歩踏み出す度に誰かが落ちていった。



その光景を目の前で見せ続けられたミカエルは、うわ言のように天使たちのことを呼ぶだけになっていた。




「ミカエル!気をしっかり保て!まだ、お前を慕う天使たちが残っているんだ!諦めず!突き進むんだよ!」



「うぅ!兄弟よぉ!オレの兄弟ぃ~……!」




ようやくたどり着いた向こう岸。


ミカエルを引きずることに気を取られていたガブリエルは、ふと目の前を見て絶句した……。



誰もいなかった……。


誰一人、残っていなかった。



向こう岸に着いたのはガブリエルと引きずられていたミカエルだけ。



後には無数の穴が空いた橋があるだけだった。



唖然とした表情で穴だらけの橋を見ていたガブリエルはその時、ようやく、看板の意味を理解した。




「あぁ……。“このはしわたるべからず”って、そういう事だったのか……。」




真っ直ぐに、ただひたすらに綺麗に伸びた一本の細い道が橋の真ん中に架かっていた。


人一人が両手を広げて通れる程の道だ。



その橋の両側、つまり《《両端》》は無数の穴が何個も空いていたのだ。




「真ん中を真っ直ぐ歩いてくれば、通れたってことだったんだ。」




気付いた時には、もう全てが遅かった。


その場に、運良く残ったのはガブリエルと泣き崩れて、戦意を喪失したミカエルだけ。



あとに続く者は……ただ誰一人としていなかった……。



「行こう、ミカエル。みんなの仇を摂るんだ。」



「うぅ…魔王め……許さない…許さないからな…。」




ブツブツと何かを言っているミカエルに肩を貸すと、ガブリエルはゆっくりと立ち上がり、部屋の扉に手をかけた……。



一方勇者一向の方はというと。




「天使くん、どうする?この状況は限りなく最悪に近いと思うんだけど。」



「あぁ……最悪だ。」




頭を抱えて、ラファとミラは目の前を見る。



そこには……




「さぁーて、始めようか?」




ブンブンと風の唸る音を響かせて、身の丈以上はあるだろう偃月刀を軽々と振り回す“鬼娘”が立っていた。







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