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その城、魔王の戯れにつき⑤

ガブリエルが階段を降りると、入り口に瓦礫が流れこんでくる。


コツンコツンと足元を転がる小さなの残骸と共に階段を降りていくと、やがて部屋らしき広い空間に入った。



「本当に中は真っ暗だね。ミカエル、なんで明るくしないの?」


「…………。」


「ミカエル?……もう。〈 ライト 〉」



光魔法を使用し、辺りを照らすと狼狽える天使たちの真ん中にミカエルが目を回して倒れていた。


「はぁ……。何してんだよ、キミは。」


「階段を踏み外して、ゴロゴロ転がって行って……そのままフロアで頭をぶつけたみたいで。」


「本当、何してんの!?大天使ともあろうものが!ったく!おい!コラ!起きろバカエル!!」


ーパン!パン!パパン!スパーン!


「ぶっ!?うっ!?がっ!?がはっ!?」



ミカエルを引き起こすと、気付けのビンタを繰り出す。パンパン!と部屋に響くほど、何度か打ち当てると、目を覚ましたミカエルが両頬を押さえて飛び上がった。



「いったぁー!?全身痛いし、頭痛いし、何より、頬が痛いんだけど!?」


「あ、起きたね。気絶なんてするから、受け身を取り損なったみたいだよ?気をつけないと。」


「そ、そうなのかー……。かっこ悪いとこ見せちゃったなぁ。頬っぺまで痛いなんて、相当下手なコケ方したんだろうなー。」



自身の失態に苦笑を浮かべて頬を撫でるミカエル。『身体の痛みより、頬の痛みが酷いよ……。』という呟きに、その場の誰も答える者はいなかった。



「まったく、しっかりしてよね。」


「うん、ごめん……。」



ミカエルに説教するガブリエルを周りの天使たちは、信じられないものを見たように目を丸めて絶句していた。


加害者が被害者を説教しているのだ。

それはこんな顔になるのも仕方なかった……。



「それで、オレたちは助かったの?それとも、ただ閉じ込められただけ?」


「助かったとみていいんじゃない?不正解なら、オレたちは今頃、こうして会話すらできずにヤツの腹の中にいただろうし。」



周りを見渡すと、天使たちの様子を確認する。

特に怪我をしている様子もなく、人数も変化なかった。

ちゃんと全員、生き残っているようだ。



「でも、こうも真っ暗だと正解してる気がしないよね。そもそも、ガブリエルはなんでこっちが正解だって思ったの?すごく、自信満々だったみたいだけど。オレはアイツが嘘ついてるんじゃないかって、不安しかなかったのに……。」


「うん。簡単に解説するならこうだよ。」



地面に転がった石ころを手に取ったガブリエルは、地面にあの時の状況を分かりやすく書き出していく。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「う~♪」


~ ここでシルクの横路(ロード)


観測者の皆さま、おばこんばんわ!

久しぶりの登場、サカエハーレムで一番の万能妹嫁のシルクです!


ふふ!お待たせしました!


ではでは、気になるこの問題の答えに行きましょう。


問題はこんな感じでした。


問題:白い階段と黒い階段、どちらが正しい道?門番に二回だけ質問して、答えを導きだしましょう。門番はあなたの質問にYES/NOで答えますが、《《それが嘘か誠かは分かりません》》。


というような内容でした。


複雑にしているのはやはり、最後の部分。

答えを聞いても本当かどうか疑わしい点ですね。


ですが、物事の本質を捉えて、しっかりと整理すれば意外にも簡単なお話でした。


ガブリエルがやったことを思い出しながら整理してみましょう。


彼はこうしましたね?


『白い階段を指さし、彼は門番に問います。“この階段を昇れば、生き残れる”か?』と。


門番の答えは“NO”でした。


もしも、示した階段が“正解(アライブ)”の場合は【質問】に対する答えが、YESが(本当)の場合は“正解”になる。NO(ウソ)の場合は“正解”になる。


そう、どちらにしろ、白い階段が“正解”だった場合は“正解”になるんですね。


では、逆の場合(白が不正解の時)はどうでしょう?


示した階段が不正解の場合はNOが(本当)の場合は不正解になる。YESが(ウソ)の場合は不正解になる。


と、実はこちらも、白い階段が“不正解”だった場合は結果も“不正解”になるんですね。


んー!言葉って不思議!だからこそ、楽しい!


観測者の皆さまも『論理思考ゲーム』楽しんでくださいね!試しに、『正直者の村クイズ』で楽しんでみてください!


シルクでした~ (・ω・)ノシ おしまい



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「って、わけさ。」


「へー、なるほどね。考える過ぎると余計にわかんなくなるもんだわー。つまり、素直が一番ってことだね!」


ガブリエルの説明に、ウンウン!と頷いたミカエルは『素直は大事だなー。』と何度も呟いていた。


「(こいつ、本当は分かってないだろ……。)」というツッコミが喉元まででかかっていたガブリエルだったが、グッと飲み込むと部屋を見回した。


無事に試練は超えた、といっても別段、状況が大きく変わったわけではない。


魔王の元に着いたわけでも、勇者やラファと合流したわけでもない。


早く合流しなくては。



ガブリエルは部屋を見て回ると、自身から発せられる光を頼りに、周りをよく観察する。

長い廊下だ。随分先まで続いている。



「んー……。これは、まだまだ先も試練がありそうだね。」


「嫌な趣味してるわ、魔王ってー。」


「そう?オレは結構、好きだけどね?」


「そういえば、ガブリエルは大司教とよくゲームしてるよねー。オレはこういう、思考系はてんでダメなんだよ。考えるより、身体が先に動いちゃうっていうかさー。」



背中の槍を一つにまとめると、巨大な大剣を創りだす。

身の丈ほどあろうかというほどの大剣を手に不敵な笑みを浮かべたミカエルは、軽々とぶん回して天井に突き立てた。



「もう正直、こんなダンジョン、ぶち壊したい気分なんだよね!」


「君ならできるだろうね。でも、崩落の危険もあるからやめて欲しいなぁ。周りの子達も、絶対に巻き込まれるから、ここは大人しく魔王の掌で遊んであげようよ。」


「むー……。ぶち壊した方が楽なんだけど……まぁ、可愛い弟たちが怪我するのは嫌だし我慢しとくかぁー……。」


「ありがとう、ミカエル。」



ガブリエルの説得と共に、周りで不安そうな顔の天使たちの顔を見たミカエルは、渋々といった様子で大剣を下ろすと面白くなさそうに鼻を鳴らす。


ホッと内心、安堵のため息を吐いたガブリエルは暗い廊下の先を見つめる。


早く合流しないと、ミカエルが暴れ始めてしまう。


魔法の扱いなら自分の右に出る者は居ないと自負しているが、実際の戦闘力では、ミカエルの方が数段上だ。

近接武器を持たせれば、勇者と変わりないのではないかと思うほどに、その技は洗練されている上に一撃が強力なのだ。

キレたミカエルは現状、止めることができる者はいないだろう。



「(早く、この《《バクダン》》を魔王の元に届けないとな……。)」



自分たちが八つ当たりに巻き込まれる恐れを感じ、ガブリエルの足は思わず早くなるのだった……。





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