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その城、魔王の戯れにつき③

「ラファ!半分近くの天使たちが着いてきてないぞ!?」


「なんだって?あの部屋から出てきてないのか!?なにやってんだ、アイツら!」



先頭を進む勇者ミラウェイド。

その後を隊列を組んで進む教会騎士、三十名。


そして、最後尾を大天使と三十名になった天使たちが付かず離れずで歩いていた。


後ろを確認したガブリエルが異変に気付き、ラファに声をかけると、着いてきていた下級天使たちに確認の視線を送る。



「ボクたちも出てくる時に声をかけたんです。でも、一向に動こうとしなくて……。」


「大体、残ったあいつらは信仰心が足らない奴らでしたから。自分が大好きっていうか?恐れ多くも、大天使様たちを超えるとかフカしてた外れ者でしたし。」


「中には、まだ“祝福”を与えてない奴らもいたよね?」


「うんうん。着いてきてたとしても、大した戦力になりませんって。祝福してないから、魔力低いでしょうし……。」



ねぇ?と顔を見合わせる下級天使たち。

それを見て、頭を抱えたラファは深く息を吐く。

そのまま、ジロリとミカエルを睨みつけると、肩を引っ捕まえて影に連れ込んだ。



「(どういうことだ?ミカエル。なんで、“祝福”と魔力が関係するなんて話になってるんだ?たしか、アイツらはお前のブロックの天使たちだよな?何を吹き込んだ?)」


「(い、いや~。あはは……。だって、オレたちもノルマがあるじゃん?オレたちはもちろん、下級天使の配った“祝福”の数も教会にチェックされてるの知ってるだろ?だから、大天使のように強い魔力や戦闘力を身に付けるためには、たくさん祝福をして、人間から感謝の印で信仰心を集めると強くなれるよ~って教育しておいたんだよね~。)」


「(こんの……バカエルが!いくら祝福しようが、強さには比例しないのはお前がよく分かってるだろ!?オレたちの強さの秘密は……誰も知っちゃいけない。それどころか、考えさせないようにしていたのに……!)」


「いや~だってさ~。」


「だっても、あさってもない!ったく!この話題は、今後一切触れるなよ!」


「いだっ!?」



ゴツン!と音がなるほど、強くミカエルの頭に拳骨を落とすと、肩を怒らせてラファは先を行く集団の元に歩き出した。



「いっつつ……。ラファ、バカヂカラだなぁ~もう……。」


「だ、大丈夫ですか?ミカエル様?」


「あはは!大丈夫、大丈夫。オレは強いからね~!それよりも、後ろの天使たちも心配だな。どうしようか~。」



痛む頭を擦りながら、ミカエルは自分たちの進んできた道を振り返る。

長いレンガの廊下は不気味に静まり返っていた。

戻るにしても、自分を慕ってくれている天使たちがこの場には多い。

おそらく、来た道を戻ると言えば、皆も着いてくるに違いないだろう。

そうなると、もしもこの先で戦闘になった時に少しでも役に立つ者が居ないと困ることになるかもしれない……。



「ん〜。」


「それじゃあ、オレが戻って見てくるよ。ミカエルとラファは、先に進んでてくれ。」


「そう?じゃあ、お願いするよ。気をつけてね?ガブリエル。」



どうしようかと悩んでいると、肩を叩いてガブリエルが自分が戻ると名乗り出てくれる。

今はそれが最善なのだろうと判断したミカエルは迷いなくお願いすることにした。

一応、身を案ずるも実はそこまで心配はしていない。

それだけ、ガブリエルの実力は確かなものだとミカエル自身がよく知っているからだ。



「ふふ!大丈夫さ。オレは“大司教の懐刀”だよ?」


「そうでした、そうでした。懐刀であり、大司教の“鞘”でもあるカブリエルちゃんなら、安心だね♡」


「ちょっ!?おまっ!お前っ!それ言うなよな!みんなに聞かれたらどうすんだ!」


「え?なにが?隠してたの?ガブリエルと大司教が説教大会してる『だ、だまらっしゃー!!』ぶっ!?」



バチーン!と音がなるほど強烈なビンタを食らったミカエルは、グルグルとその場で回転して倒れ込んだ。

ガブリエルはつい先日も大司教と励んだ激しい夜を思い出し、耳まで真っ赤になっていた。



「うわあぁ~ん!また、打たれたぁ〜!」


「二度と言うなよ!?誰にも言うなよ!?大司教のためにも!オレのためにも!」


「うぅ……いいじゃん、いいじゃん。それだけ、大司教に信頼されてるってことでしょ~?それに、カブリエルも大司教のこと大好きなんだし~?ラブラブだし、お似合いだと思うけど?」


「あ、アイツは、そんなんじゃないってば!ただの“アソビ相手”だ!バカ!バカエル!死ね!バカエル死ね!」


「うわあぁ~ん!ひどいよぉ~!死ねとか!天使にあるまじき暴言だぁ~!」


「ふんッ!知るか!オレはもう行く!お前は黙って、ラファを追いかけろ!」



顔を真っ赤に怒り心頭のカブリエルは最後に、ミカエルに「バカァ!」と叫ぶとそのままズンズンと元来た道を戻り始める。


後には頬を抑えてしくしくと泣くミカエルと、それを唖然と眺める天使たちだけが取り残されるのだった……。


「まったく、ミカエルのやつ!今度、変なこと言ってきたら許さないから!って……あれ?」



肩を怒らせて早足で出発地点への一本道を歩き続けるガブリエル。


しばらく歩いて、そろそろ着く頃だろうかと思った時だった。


何本目かの曲がり角を曲がってすぐに目に飛び込んできた光景に、ガブリエルは思わず言葉を失うほど目を丸める。


今し方別れたはずのミカエルの背中が見えたからだ。



「あ、あれ?ミカエル?」


「ん?あれ、早かったね〜?忘れ物?」


「……んん?いや、なんでもない。行ってくる!」


「うん~?」



ガブリエルは踵を返すと、今し方戻ってきた道を再び駆け出す。

目指すは、このダンジョンのスタート地点。


天使たちが残っているだろう、あの真っ暗な部屋だ。



「どこかで間違えたのか?いや、来た道は一本道だったはず。」



再び駆け出したガブリエルは先程よりも幾分か早いスピードで、脇道がないか確認しながら駆けていく。



「んん~?なにしてんの~?ガブリエル。」


「っ!?おーい、ウソでしょ……?」


「え?なにが?」



そして、無事に辿り着いたのだ、ミカエルの元に。


どうやら、道が元いた場所に戻ってきてしまうように繋がってしまっているようだった。


転送系かとも思ったが、魔法の感覚はなかったので恐らくは、ダンジョン自体の形が変化しているのだろう。



「どうしたの~?難しい顔して。」


「ミカエル。どうやら、このダンジョンは変化するようだぞ?」


「え?どういうこと?」



ミカエルに事の経緯を話すと、青ざめた顔で通ってきた道を眺めた。



「仕方ない。戻っても道がないなら、進むしかないな。早くこんなところ抜け出そう。気味が悪い。」


「うん。じゃあ、ラファの所に行こうか~。」



進む先でループがあってはまずいと、二人は目印を壁に染料で塗り付けてから動き始めた。



ー ズズー……ズズッ……!



少し進むと、背後から石塊を引きずるような音が聞こえた気がした。


もしかしたら道がまた変わって、先頭の誰かが後ろに回されたのかと思い、よく注視していると突然、廊下の先に“巨大な顔”が現れた。

廊下にピッタリと嵌った巨大な顔が、目をギョロつかせながらガブリエルたちを見ている。



ー ズズ……!ズドン!


『 オ゛オ゛オ゛オ…………。』


「何あれ!?怖っっ!!」


「巨大な顔!?いや、石の壁か!?って、段々、近付いてきてるぞ!?」



ー ズズズ…………!!


気付けば、人面壁は人が歩くくらいの速度でゆっくりこちらに向かって距離を詰めていていた。


ただ道を塞いでいるだけかと思ったが、人面壁はガブリエルたちが後退っていることに気付くとその表情を“怒り顔”に変え、大声で叫び声をあげる。



『 オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ー……!! 』


「ひぃぃっ!?こわいこわいこわいこわいーー!!」


「い、一旦、退くぞ!」


『 オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ー……!!』



巨大な顔面が、叫びをあげて追いかけ始める。

大天使たちと下級天使は恐れおののき、たまらず全力で駆け出した!





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