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全面戦争勃発につき①

その知らせが届いたのは、俺たちが美神教(カリテス)の教会の一つを落としてから僅か四日後のことだった。



「ディケーナ近くに点在していた教会が避難を始めているそうだ。美神教(カリテス)の騎士団が王都を出発したとの話も聞いている。恐らくは……ふむ。このディケーナで、戦をするつもりなのだろうな。」



手元の報告書を眺めていたハロルド様が、小さく息を吐き頭を抱える。

早朝、ハロルド様の呼び出しで屋敷に来た俺とハヤーはそれを眺めながら思慮に耽る。


教会を襲われた腹癒せに全面戦争に打って出るとは。てっきり、偵察を送ってくる程度で終わると思っていたので、こんなに早く本体が出てくるとは思っていなかった。


それだけ、相手も威信を傷付けられたことにご立腹なのだろうが、怒っているのはこちらも同じことだ。


女性を悲しませるような行いをここ数年、平然とやっているヤツらなど、返り討ちにしてやろう。



「それでどうするんだ?美神教(カリテス)は、隠していた真実を知り、教会を攻め落とした君と仲間を探しにくるぞ?首でも差し出さん限り、止まるつもりはないだろう。だがまぁ幸いなことに、捕まえた者の素性は向こうも分かっていないようだがね。」



一つの手紙を見せてきたハロルド様は苦笑を浮かべる。


手紙はどうやら、ディケーナの領主であるハロルド様宛に美神教(カリテス)から直々に送られて来たものらしく、美神教(カリテス)の教会で不祥事(人身売買について“のみ”)が起きたことへの謝罪と同時に、教会内で厳しく厳罰に処すために司祭の身柄を引き渡してくれるように願うような内容だった。


それともう1つ。



「〈 魔族と思われる正体不明の存在をソッチで見つけたって報告があったから神託を元に、討伐に向かうな。 あと、邪魔したら女神様に刃向かったってことで、処罰するんでヨロシコ。〉って……。」



実際には堅い文章だったが、だいたいそんな内容だった。



「無茶苦茶だろ?恐らくは、魔族の企てた作り話として、今回、漏れ出た情報をもみ消すつもりなのだろうが。まったく、美神教(カリテス)の長は何を考えているのやら。」



ちなみに、ハロルド様は俺が魔王であることは伏せてある。もしも、知っていて協力したら、迷惑をかけてしまうからだ。


知らぬ存ぜぬで、突き通してもらった方が幾分か安全だろう。


もしも、ハロルド様にまで迷惑がかかるようなら、あえて奴らの前で正体を明かし、『人間を利用してやっただけだ。』と公言しよう。


これで、ハロルド様も“被害者”として、皆の目には映るはずだ。


「ふむ……。過激派な一面があるって話は本当だったんですねー。」


「あぁ、まったくだ。しかし、どうしたものかな。このまま放置すれば、街の皆にも迷惑がかかる。更には、預かっている天使たちにも危害が及ぶかもしれない。預かると決めた以上、それだけは何としても避けたいところだ……。」


「ふむ……。当人である天使たちはどうしたい?」



背後で何やらムッスリ顔の天使に振り返ると意見を聞いてみる。



「その前にさー。まお……サカエくん。なんで、ボクに縄をかけてるか聞いていい?」


「よく似合ってる……ぞ?」


「わ、笑ってる!だいたい、なんだよこの縛り方!変な縛り方しないでよ!ボク、天使だよ!?」



なにが不満なのかと思ったら“亀甲縛り”がお気に召さなかったのか。

なんだ。それならそうと早く言って欲しかったぜ。



「なんだ?亀甲縛り知らないのか?俺たちの地域では由緒正しい縛り方なんだぞ?」


「由緒正しい縛り方ってなに!?どんな、地域に住んでたら、これが由緒正しくなるわけ!?」



ーー ここでシルクの横路(ロード) ーー


久々の登場シルクです!

観測者の皆様お元気ですか?

お風邪など引かれてませんか?

どうかお身体に気をつけて、頑張ってくださいね?

ちなみに、シルは今日も元気です!


さて、今回の話はこちら!

『亀甲縛り』です!


亀甲縛りは、女性を拘束する縄ではなく、女性の裸体を美しくかつ猥褻に縛る女縄のひとつです。


曲線で構成される女体のくびれや膨らみにあわせて亀甲縄や菱縄を作っていくと、縄が女性の柔肉に喰い込みながら、女体の特徴である胸、腰周り、腹、尻などを強調しデフォルメする縄掛けができるのです。


ちなみに、縛るにはすごく時間がかかるため、現実に捕縛に使用することはまずもって不可能といえるでしょう。


普通に拘束するなら手足を縛った方が、有用性が高いので本気で拘束するつもりはないことがこの時点で分かると思います。


単に、ご主人様の趣味……ということになりますね。もぅ……ご主人様、ハレンチさん♡


ちなみに、ご主人様が天使ウリエスさんを縛る時間に要した時間は“三秒”でした。


『 やぁ!よく来たな!ウリエス!ちょっと、俺とお出かけしようぜ!』


『え?あ、うん。(うん?これって、デート……?)ねぇ?これって、デー……って、何これぇッッ!!?』


という会話の間に起きた一瞬の出来事でした。


『慣れだよ。』とご主人様は言ってましたが、それはウソだとさすがのシルも理解しています……。...( = =) おしまい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふむ……。確かに、この縛り方は美しさを感じるな。このシンメトリーが実に美しい。今度、教えてくれるかい?」



ハロルド様は興味津々で、緊縛されたウリエスを眺めていた。

教えるのは構わないが、いったい誰に使うんだろう?

さすがに、仲直りしたばかりの奥様に使うなんてことはないよな?



「いいですよ。今度、緊縛教室開きましょう。もちろん、コイツが題材ですが。」


ーペチン!


「ひゃん!?急になにするのさ、バカァッ!」



突如、お尻を叩かれた天使は噛みつかんばかりに俺を睨みつけると羽根を広げて威嚇してくる。



「ところで、いつまでその格好してるんだ?確かにがっちりと縛ってはいるけど羽を槍に変えれば縄を切っていつでも抜け出せるだろ?それとも、クセになったか?それなら、SMプレーを教え込んでやろうか?」


「“えすえむ?”っていうのは、分かんないけど、何となく不埒な行為なのは予想できるからいい!ったく!何かまた聴取かと思って、抵抗しなかっただけなのに!こんなことなら、さっさと外しとけばよかった。」



ブツブツとボヤきながらウリエスは槍で縄を切って抜け出すと、切れた縄を俺に投げつけて腕を組む。

ぷっくりと頬を膨らませてそっぽを向いたウリエスに俺は苦笑すると、縄をしまって向き直った。



「悪かったって。それより、ウリエスの意見を聞かせてくれないか?」


「っ……。べ、別にいいけど?」



頭をポンポンと撫でられ、少し機嫌が戻ったウリエスは徐ろにハロルド様の手にした手紙を奪い取ると、中を読んで小さく鼻を鳴らす。



「目論見どおり、あの教会は司教に切り捨てられたね。恐らくは情報を漏らしたってことで、教会本部で処分するつもりかな。司教もそれはわかってるだろうから、それを脅しの材料にして情報を引き出した方が得策だよ。王都貴族との繋がりを辿れば、少しは美神教(カリテス)の隠したい情報も探れるんじゃない?あと、この街自体に手出しはしてこないよ。あくまで、教会に楯突いたやつを炙り出したいだけだから、標的がハッキリすればこの街には一切関わるつもりはないでしょ。美神教(カリテス)は重ねて情報を漏らすリスクを避けたいはずだからね。」


「それなら、我々ディケーナの兵は警戒と防衛に徹するように指示をしておこう。彼らが来ている間だけ、ディケーナの門は全て閉鎖する。」


「うん、それがいいよ。こちらから手を出さない限り、騎士団が手を出してくることはないからね。」



ペラペラと、天使としての立場からの見解を述べる。概ね、俺たちの意見と同じだと告げつつも、住民の安全は保証すると告げた。


てことは、俺が魔王としてアイツらの前に現れれば、目をこちらに引きつけることで、とりあえず街への被害はないってことだな。


いいだろう。俺もここ数ヶ月で、冒険者としても、“魔王”としても、能力は向上している。


相手の数は分からないが、百程の兵なら何とか抑え込むことは可能だ。


問題は……。



「問題は大天使たちだよな。絶対に出てくるよな。」


「うん。だろうね。大天使ラファだけなら、サカエくんでも抑え込めるだろうけど、他の二人も現れた場合はかなり苦しい戦いになるんじゃないかな?」



正直、下級天使は大した問題ではない。

問題は魔力やパワーも大幅に増大した大天使の方だ。


前回、相手を追い詰められたのも慢心を利用して隙を突いた奇襲を行うことで冷静な判断を奪うことができたからだ。


今回のように、しっかりと対策された上で戦闘に挑まれたらかなり苦戦するだろう。



「対策が必要だな。相手の意表を突くような作戦を立てないと。せめて、大天使は抑えたいところだな。」


「……ボクも戦うよ。今の美神教(カリテス)はボクの考えていた誇りある姿とは逸脱したものだから。美神教(カリテス)は変わらなきゃいけない。明らかな間違いを許すような宗教が人を導くなんてあっちゃいけないんだ!これ以上……間違いを起こさないように美神教(カリテス)を壊滅させなきゃ……。」


「……壊滅させる必要は無いよ。間違いを認めさせ、新たな生き方を示す。在り方を変化させることができれば、それは壊滅以上の大きな成果となるはずだ。真っ当になった天使たちと人間が共に手を取り合う未来を創る。それが、俺たちとお前に課せられた使命だ。」



ウリエスは強い口調で、自身の決意を示すように拳を胸の前で握りしめた。

僅かに震える肩に俺は手を置くと、ほほ笑みかける。



「新たな生き方か……。」


「あぁ。闇の中ではなく、天使たちが陽の光の元で堂々と飛べる世界だ。」


「うん!みんなで……青空を飛べる未来に!」



窓の外に目を向け、俺は微笑む。

ウリエスもまた、窓の外に目を向けるとその輝かしい空を瞳を写して強く頷くのだった……。



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