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美神教《カリテス》の大天使につき②

「ふぁ~!ただいま~シモン……。少し、眠らせて~……。」


「おや……。おかえりなさい、ガブリエル。」



戻ってきた大天使ガブリエルは、さすがに疲れてしまったのか、司教の布団に潜り込むとそのままスヤスヤと眠ってしまった。



「ふふ……。余程、疲れたようですね……。いつも、苦労をかけてすみません。」



机で各地の報告書を眺めていたシモンは、大天使にそっと布団をかけ直すと、その頭を撫でて席へと戻った。


報告書は各地に設置された教会に所属する司教たちから逐一報告があがる。


報告書に目を通していると、何やら気になる内容に目が止まった。



「ふむ……。(……教会を訪れる天使の数が減っているようですね?)」



各地に設置された美神教(カリテス)は布教を行うと同時に、天使のフォローも行っている。


フォローも多岐に渡り、天使が安定して数を増やすことができるよう、信者の精神と知識をコントロールし、“苗床”を整える。その見返りとして、たくさんの奇跡を起こし、美神教(カリテス)の力を増幅することで資金を流れるようにする。


互いの利益が上手く噛み合うことで、成り立った関係だ。


現代的に言えば、WINーWINの関係といえるだろう。


そのため、互いの利益のために、互いに最大限の努力を行うこと惜しまない。


天使が路頭に迷わないように、食事や寝床の提供なども勿論行っている。


中には、縄張り争いに負けて追い出される天使もいるが、そうした者も次の街に設置された教会でフォローを受けやすいようになっていたはずなのだが……。



教会を訪れる天使の数が目に見えて減っている。


これは明らかな異常だった。



「(縄張り争いに負けた天使が、消えている?野良の天使は三十人以上は居たはずですが……。もしや、モンスターに襲われている?そういえば、ディケーナの近くで正体不明のモンスターが現れていると噂もありましたね。)ふむ……。」



さらに教会に訪れた数だけに注目すると、明確に現れた異変に気付き思わず顔をしかめる。



「ふむ……。(ディケーナの街までは、三十以上の天使が来ている。ここまでは、標準的な数……。だけど、それより先になると急に数が一桁になっている。これはきっと、ディケーナの近くで何か起きていると見ていいでしょう。)ふむ……。」


「“ふむふむ!”うるさーい!」


「った!?」



報告書を眺めて考えに没頭していると、突如、ベッドで寝ていたガブリエルが起き上がり枕を投げつけてくる。


飛んできた枕は見事にシモンの顔面にぶち当たり、衝撃に思わず苦悶した。



「ふむふむふむふむ……!ふむふむふむふむ……!うるさくて寝れないよ!」


「そんな、ふむふむ言ってませんよ。」


「言ってたよ!ふむふむふむふむふむふむふむふむふ!言ってた!」


「なんですか、むふむふって、変態ですか?」


「言ってたよ!うるさくて寝れないでしょ!?オレ、疲れてるんだけど!?」


「はぁー……。うるさいのは貴方の方ですよ。こちらは、大切なことを考えているんです、少し静かにしてもらえませんか?」


「あー、そういうこと言うんだー……。きらいー、シモン、きらいー。」


「子供ですか、まったく。」


「子供扱いすんな。オレは大人ですー!べー!」



シモンは頭を抱えて深く息を吐くと落ちた枕を拾って、ガブリエルに投げ返した。

投げ返された枕を抱きしめると、ベッドの上で胡座をかいて頬を膨らませた。


青年の見た目にそぐわない子供ような仕草に、思わず苦笑を浮かべるとシモンは再び報告書に目を落とす。


ディケーナの周辺で起きている異常。

当面必要なのは情報だ。


シモンは報告書をまとめると、脇に抱えて立ち上がる。



「すごく難しい顔してるね。どうかした?」


「少し出てきます。あなたはゆっくりと休んでいてください。」


「……オレも行こうか?」


「力を使って疲れているんでしょう?今はゆっくりお休みなさい。こっちは、まだ調べている段階ですから。何かあれば、その時はお願いしますよ。……それでは。」


「あ……。」



部屋の電気は消しておきますね……とシモンは言い残し、ガブリエルをベッドに残して部屋を後にする。



「…………むぅー!」



後に残されたガブリエルは、しばらく無言のまま閉ざされた扉を見つめていたが、ぷっくりと頬を膨らませたかと思うと布団に大の字で寝転ぶ。



「シモンのバカぁっ!」



枕元のランプだけが照らす広い部屋に、ガブリエルの声だけが虚しく響くのだった……。




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