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【完結済】ぜったいハーレム世代の男子校生  作者: 馬頭鬼
第十三章「木星戦記」
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~ 学習の成果 ~


 ──全く参考にならなかった。


 級友三人の意見をそれぞれ聞いた俺の感想は、そんな身も蓋もない代物だった。

 まず最初の、黒い肌の睾丸(コロダニ)君が提案したのはぶっちゃけて言うならば戦争賭博以外の何物でもなく、21世紀を生きた俺の感覚からしてみると、人の生死が懸かった戦争に金を賭けて楽しむような、邪悪外道クズの所業である。


 ──あ~、でもあの頃でも話は同じか。


 とは言え、俺が暮らしていた21世紀の日本ではあまり見かけなかったが、海外ではボクシングやムエタイなどの格闘技での賭けが盛り上がっているという話を聞いたことがある。

 そうでなくても、日本で行われている競馬での賭博でもたまに競走馬が事故を起こして安楽死させられていたのを考えると、命が懸かっている程度では賭博を忌避する理由にはならないだろう。

 いや、株価や原油の先物価格などは海外の戦争の動向と連動して上下していた訳だから、そういう意味では直接間接の差異はあれど戦争博打なんて普通のことだったのかもしれない。


 ──とは言え、他の二人のもなぁ。


 彫の深い陰茎(カッツォ)君が語ったのは採掘権に入り込むという話であり、知らずに飛びつくと国家利権に自分と正妻(ウィーフェ)のみならず、自分の都市までもを巻き込んでしまう、あからさまに厄介な気配が漂っていて……インド系の男根(リンガ)君の話は、ホストになって金を貢いで来る女の必死さを愉しむような、邪悪極まりないお遊戯としか思えない。

 俺としては、それら全てが遊びで行うような代物じゃない……人の道から外れた、まさに論ずるに値せずという認識になる。


 ──そもそも、金に困ってないんだよな。


 基本的に我が海上都市『クリオネ』は資金繰りにもそこまで苦労しては……正確には、優秀な正妻(ウィーフェ)様が一手に引き受けてくれているお陰で、俺はまだ資金難の話を耳にしたことがない。

 中央政府の補助金を云々とは耳にしたので、実はそれなりに困っているのかもしれないけれど、俺にその実感をさせない時点でリリス嬢は非常に優秀なのだろう。

 だから俺が彼らが言うような儲け話に飛びつくことなどあり得ず……いや、そもそもの話だが、俺と彼らとでは「ゲームに求めるもの」そのものが違うのだからどうしようもない。

 俺は、ゲームで金を儲けたいのではなく、単純に巨大ロボを操縦したいのだから。


「……あ~。済まない。

 聞いてはみたけど、俺には合いそうにないな」

 

 だからこそ、手間を取らせた分、三名の男子たちにそのことを素直に告げる。

 尤も……


「はっ。

 だろうなぁ」


「……お前、絶対に前線出るだろ」


「男子としてはあまり推奨できないんですけどね。

 それも好みなのでしょうけれど」


 幸いにして級友たちは前の都市間戦争の観戦で()()()()を理解したようで、先ほどの説明をばっさりと切り捨てた形になったにもかかわらず、そう気分を害した様子はなかった。

 いや、それ以前に最前線で銃を撃ちまくり、戦争ゲームに没頭するような行動は、この時代の男性的には野蛮極まりない、品のない行動としか思われない筈なのだが。

 俺の感覚で言うならば、昭和の時代の……女性が社会に出るのがそこまで一般的ではなかった時代で、少女がセーラー服を着て機関銃をぶっ放すようなもの、になるだろうか。

 何となく全く違う気がしないでもないものの、その辺りの常識が気になった俺は、素直にそのことを訊ねてはみたのだが……


「別に、そういう個性ってだけだろ?」


「けっ、本人の趣味は否定できねぇだろぉが」


「そうそう、多様な趣味を容認するのも男性の嗜みというものですよ、クリオネ君」


 級友の三名は、そんな……意外と趣味に寛容な態度を見せてくれている。


「……けっ。

 実際のところ、ホモ先生だってそういう趣味ってだけだろうがよぉ」


「そうそう、個人的な趣味には踏み込まない。

 学校で真っ先に習うことですよ」


「だな、下手に踏み込めば都市間戦争だろ?

 面倒なんだよ、アレは」


 彼らと言葉を交わして分かったのは、このアホみたいな男子校の授業……『折り紙』や『お茶会』などが()()()()()()()()()()()という信じがたい事実だった。

 少なくとも彼らはこうして言葉を交わすことで、他の男性との間に摩擦が生じた場合、手間がかかる・痛い思いをする・割に合わないという事実を学び、他人を尊重することを覚えているのだ。

 問題はそれが男子同士の間でしか機能せず、女性を一切尊重しない風潮が芽生えていることなのだが……まぁ、それは男尊女卑が極まったこの時代の感性としては普通であり、21世紀人だった俺の感性の方がおかしいのが現実のようだが。

 何はともあれ、そうして俺たちはお茶会を続け……その日の授業時間が終わる頃には、話題は都市間戦争へと再び舞い戻り、この時代の男子が行うべき有名な戦術論へと発展していったのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます! >少女がセーラー服を着て機関銃をぶっ放す  ああ、懐い。w [一言] 続きも超楽しみにしています!
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