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【完結済】ぜったいハーレム世代の男子校生  作者: 馬頭鬼
第十二章「都市間戦争」
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~ 大規模戦闘訓練 ~


 傭兵雇用の方針が決定してから行われた、未来の正妻(ウィーフェ)様による宣伝・勧誘……要するに俺がファッカーの野郎の顔面をぶん殴った経緯を周囲に知らしめ、「女を馬鹿にされたことで怒る男の存在をアピールする」という作戦は一定の効果を上げたと言える。

 いや、もしかすると男と一緒に……訓練という名目とは言え、VRのゲームを一緒に遊べるという殺し文句が効いたのかもしれない。

 何しろ、あれからたったの3日しか経っていないというのに、既に300名の戦闘参加者が応募してきたのだ。

 その内、100名ほどは移住を申し込んできており、この時代の女性が如何に男性との接触に飢えていたかが窺える。

 だけど……順調なのは頭数だけ(・・・・)の話だった。


「……訓練にすらならないぞ、コイツら」


 ある程度の頭数が揃ったことを見越し、3日目に初めて行われた全員参加型の、200対200の大規模訓練は、その最中に俺が呟いたとおりのお粗末なモノで……何しろ集まってきたレイヴンたちは全くもって訓練を行う以前に、命令を聞く気すらなかったのである。

 まず、味方側(・・・)となったヤツらの一部が突如として俺に飛びかかって来て、仲間である筈の警護官に上空から撃ち殺される。

 アーマーを脱ぎ捨てて下着姿になり、俺へと性的アピールを始めたところで俺の隣にいた正妻(ウィーフェ)様に撃ち殺される。

 正直、リリス嬢の提言を受け入れて『下着は脱げないルール』にしていなければ、恐らく全員が全裸になっていたことだろう。

 挙句、どこでどういう情報を得て来たのか、全員がミニスカ姿でフライトユニットを使ってあちこち飛び回り、そのお陰でちらちら下着が見えるのは眼福で実にありがたいのだが……明らかに慣れていない飛行は数々の空中衝突を発生させ、墜落事故が多発する始末。

 と言うか、空に飛んでいる連中は僅か5分を経過しないまま、警護官(ほんしょく)であるトリー・ヒヨ・タマを含めてほぼ完全に沈黙してしまったのだ。


 ──敵側も敵側だった。


 俺目掛けて下着姿で……仮想障壁も捨て防具も捨て、ただゾンビのように真っ直ぐ突っ込んで来るだけだから、もう本当にただ歩く的を撃ち抜くだけの作業しかない。

 何しろ連中ときたら、俺に撃たれて痛がるのを恐れるどころか……いや、その痛みにすら悦び、殺されに来る始末なのだ。

 戦うどころか。俺に撃たれようと、確実に当たる距離まで接近していながら銃を構えることもなく、下着姿でぴょんぴょんとアピールするのだから、もう本当に救いようがない。

 敵側の指揮をしていたアルノーとユーミカさんが全く手綱を取れない無軌道っぷりなのだから、本当にもうどうしようもなかったのだろう。


「……本日の訓練課程は修了する。

 警護官は俺の部屋前に集合すること」


 結局。

 俺のその一言によって、第一回目の大規模訓練は完全に時間の無駄だったとしか言えない成果を残し、終わりを告げてしまったのだった。




「私は悪くありませんっ!」


 反省会の一言目に口を開いたのはトリーだった。

 第一声がそれかと思いつつも、「何か心当たりがあるんだろうなぁ」と疑いの目で見てしまうのは仕方のないことだろう。


「……巻き込まれて墜落以外の失態に心当たりが?」


 当たり前の話であるが、俺でも気付けてしまったそんな疑惑に、我が優秀なる婚約者様がお気付きになられない筈もなく。

 リリス嬢は、俺自身が向けられたらその手の性癖に目覚めてしまいそうな、非常に冷たい視線を三人娘に向けていた。


「い、いえ、ただ、訓練開始前に、少しばかりレイヴンたち(アイツら)に自慢をしただけ、なのです」


「私たちが雇われたのは、この脚線美とミニスカートのお陰です、と」


「……いつも市長の視線は絶対領域に釘付けだと、少々、その、誇張気味に」


 三人娘の自供を聞くところによると、彼女たちがやらかしたのはただ自慢話をしただけ、だったらしい。

 大規模訓練が始まる前のブリーフィングタイム……生憎と俺は特定の誰かと接触することはしていなかったのだが、彼女たち警護官はレイヴンたちと色々とやりとりをしていたらしく。

 そこで、雇用の経緯を聞かされ……自分たちが何故選ばれたか分からない彼女たち三姉妹は、願書のアピール欄に書いていた理由で採用されたのだと自信満々で語った訳だ。

 そこで発生したのは、味方陣営の一斉衣替えである。

 実体を伴わない仮想現実だからこそ出来る荒業ではあるが、全員がミニスカートに、全員が慣れない飛行ユニットを着込み……揃いも揃って全員が所謂「二匹のドジョウ」を得ようと頑張ったのだろう。

 そして起こったのがあの空中の大渋滞……ろくに飛行訓練も受けてないヤツらが空を舞い、必然として起こった大規模接触事故の発生である。


「……ぐぅ」


 事情を聞かされた俺の口は、その一言を吐き出すのが精一杯だった。

 何しろ、彼女たち三姉妹が口にしたことはほぼ全て事実……応募の添付画像でつい下着を覗き込んだ罪悪感から雇ってしまったのは紛れもない事実であり、彼女たちの言い分に嘘偽りは何一つなかったからだ。

 だけど、この未来社会では、あまり男性の性癖を大っぴらに口にするのはかなり下品な……今で言うところの思春期の少女の眼前で猥談を大声で叫ぶに等しい、酷く品のない行為なのだろう。


「口をっ、慎みっ!

 場所をっ、弁えなさいっ!」

 

 事実、彼女たちの発言は、正妻(ウィーフェ)様が顔を真っ赤にして怒鳴るほどに卑猥極まりない……とてつもなく道義的に許せない行為だったらしい。

 そして何となくの直感ではあるが……我が婚約者様も、明日からミニスカートを着こなして訓練するだろうと、何故か俺の中で確信が芽生えてしまったのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] >何しろ連中ときたら、俺に撃たれて痛がるのを恐れるどころか……いや、その痛みにすら悦び、殺されに来る始末なのだ。 www それ何てSM?
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