表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】ぜったいハーレム世代の男子校生  作者: 馬頭鬼
第十一章「戦前交渉」
80/188

~ 戦前交渉その3 ~



「……『戦場選択』」

「……『戦場選択』で」


 二枚目に両正妻(ウィーフェ)が選んだのは、またしても同じカードだった。


「海上都市『クリオネ』を選択します」

「地上都市『ファッカー』を選択します」


 そして、お互いにお互いの都市を口にする。

 これも考えてみれば当たり前の話であり……戦場で必要とされる三要素は天の時・地の利・人の和……正確には少し違うとB(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)が告げてくれていたが、兎にも角にも地の利が大きな要素であることに違いはない。

 だからこそ、我が未来の正妻(ウィーフェ)様は隅から隅まで知り尽くしている我が都市を選択したのだし、そしてそれは相手側も同じだったのだろう。


 ──裏技もあるみたいだしなぁ。


 自分の都市で戦争をする側だけが使える裏技……それは、現実世界側で(・・・・・・)都市を支える床板に細工をしておいて、敵軍が通行した際に道路の一部などを崩落させる地形トラップを設置すること、である。

 もしくは、何故か爆発物や可燃物などが隠して置かれており、敵軍が近づいた時に事故が発生するパターンで……仮想現実があまりにも現実そのままであることから出来る、文字通りの裏ワザだろう。

 実のところ、その仕込みをしたことが原因……要するに撤去を忘れたことにより崩落が発生、一般労働者だった数名の女性が死亡する事故が起こったこともあるらしい。

 幸いにして男性が死んだ訳じゃないので、この手の戦争前工作は禁じ手にはなることはなく……所謂一つの『裏ワザ』として残されているとか。


 ──犠牲者が出ているってのに、ただのスパイスとして流されてるのも、酷い話だが……

 ──二人とも、そのことは知っている、っぽいな。


 だからこそ、両正妻(ウィーフェ)はお互いの『裏ワザ』を防ぐため、一手を費やしてでも自分側の都市を選ぶことにした……いや、「相手側の都市を選ばせない」ことを選んだのだろう。


「では、両者の意見が衝突したことで、戦場は乱数によって決定させて貰う。

 戦場は……海中都市『イポコンプ』とする」

 

 俺が頭の中で「何だそりゃ?」と考えた瞬間に、B(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)が作動……フランス系古語のタツノオトシゴと判明する。


 ──オスが子供を産むんだったか。

 ──一度に2000匹くらい。


 造られたのは100年ちょいと昔の大きな都市で、取り合えず俺もファッカーの野郎も、そして両正妻(ウィーフェ)恋人(ラーヴェ)にも血縁のない……要するに完全に中立の都市のようだった。

 いや、むしろその辺りのコネがある都市が選ばれてしまうと、こちらとしてはやり辛いことこの上なかった筈で……何しろこの俺は、まともな正妻(ウィーフェ)はおろか、恋人(ラーヴェ)すらも設けていない有様なのだ。

 だからこそ、アレム先生は「乱数で選んだ」などと口にしていたが……恐らくは気を配って、双方のコネのない中立都市からランダムで選んでくれたのだと思われる。


 ──そもそも、正妻(ウィーフェ)すらまだ婚約段階なんだよなぁ。


 流石に「そろそろ何とかしないとダメだなぁ」などと思って未来の正妻(ウィーフェ)様へと視線を移すものの、眼前の敵正妻(ウィーフェ)……イヴリアさんとの睨み合いに忙しく、こちらの視線に気付く様子はない。

 と、そんな時だった。


「なぁ、おい。

 こんな茶番、辞めにしないか?」


 正妻(ウィーフェ)同士の睨み合いを一切無視して、厭らしい笑みを浮かべながら喧嘩の本人……ファッカーの野郎がそんな言葉をぶちまけやがった。


「な、何を……」


「女は黙ってろ。

 男同士の話だ」


 当たり前の話であるが、女同士でお互いの出方を読み合っていた向こうの正妻(ウィーフェ)であるイヴリアさんは抗議の声を上げようとするものの、クソ野郎の一喝によって口を噤んでしまう。

 男の発言力が強すぎるが故の欠陥とも言える。

 我が正妻(ウィーフェ)からは(どうしましょうか?)という質問がB(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)経由で飛んでくるものの……俺は一つ頷いて相手側の要求を呑むこととする。

 俺としても正妻(ウィーフェ)同士の読み合いなんかより、こういう馬鹿を相手にして、ただ感情のままぶつかる方が、頭を使わなくて良い分、楽ではあるのだ。

 そうして俺とクソ野郎とは睨み合い……無言の内に、お互いに選んだカードへと手の伸ばすものの、ファッカーの野郎の方が一拍早くカードを突き出してきやがった。


「俺は、『痛覚設定』を選ばせてもらうぜ。

 当然、50%……最悪の設定にさせてもらう」


 ファッカーの野郎が上から目線の厭らしそうな顔で出してきたのはそのカードだった。

 その表情を見る限り、数の多い自分が負けるとは欠片も思っておらず……一方的に俺を痛めつけてやろうと考えているのが明白である。

 しかしながら……


 ──最大で50%?


 都市間戦争でコレなら、100%なんて無茶な設定のゲームは一体どういう立ち位置だったのだろうと、脳の片隅に疑問が浮かんでくるものの……その答えはすぐに脳裏に浮かんでくる。


 ──プレイを推奨しない、VR過渡期の危険なゲーム、か。


 タイトルに何となく見覚えがあったからと、そんな危険なゲームを延々とやっていた自分に少しばかり疑問を覚えてしまったものの……まぁ、深く考えるだけ無駄だろう。

 ゲームなんてそもそもやる意義を考えるようなものじゃなく……楽しかったか楽しくなかったかだけが全てなのだから。

 しかしながら……


 ──この状況を、有利に運ぶ方法はないものか……


 細かいことは兎も角として……目の前で俺をいたぶってやろうと厭らしい笑みを浮かべているクソ野郎に一泡吹かせる方法を考える。

 俺にあるのは幾つかのVRゲームをプレイした経験値くらいであり、そのお陰で多少痛みには慣れている自信はあるものの、あくまでも痛みに慣れている程度である。

 戦争である以上、頭を狙撃されれば一発で殺されて終わるし、俺が大将である以上、俺が殺されると勝負そのものが終わってしまう。

 嫌がらせとして、俺も『痛覚設定』を出してやれば、厭らしくも得気な笑みを浮かべているコイツの思惑を挫くことは出来るだろうが……そんなんじゃあまりにも面白くない。


 ──だったら……

 ──コイツの性格を逆手に取ってやれば……


 そう考えた俺は、残されている交渉カードを二枚(・・)手に取ると、テーブルの上へと叩きつけたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 特殊ルール 男性のみとかもいけるのか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ