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【完結済】ぜったいハーレム世代の男子校生  作者: 馬頭鬼
第二十一章「鬼の居ぬ間の」
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~ 奇襲攻撃 ~


「……下手なゲームより遥かに疲れたぞ……」


 某ゲームのオフ会……『お茶会』と呼ばれる仮想現実空間から感覚を取り戻した俺は、溜息を一つ吐き出しながらそう呟く。

 事実、瞬時の判断力と身体操作が求められるゲームと、人と話して機嫌を損なわないよう注意しながら相手の要求を断らなければならないという話術は、全く疲労感のベクトルが違っている。

 まぁ、結局のところ「正妻(ウィーフェ)の指示で追加移民の許可が出ていない」「自分では移民局に知り合いはいない」「基本情報漏洩しないよう指示が出ている」という絶妙に嘘にならない三点セットで乗り切った訳ではあるが。


 ──実際の話、丸っきりの嘘、ではないんだよな。


 今休暇中……恐らく睡眠中だろう正妻(ウィーフェ)のリリス嬢は「新規移民は既定のプログラムに沿って受け入れる」と公言していて、あれ以降何かが追加で許可された様子はないし、俺自身にも移民を統括する1~2階辺りの職員に知り合いは居らず、そして情報漏洩しないよう正妻(ウィーフェ)が気を使っているのも単なる事実でしかない。

 肝心要の、「俺自身が市長であり、最終決定権を持っている」ということを明かしていないだけであって、俺は嘘など何一つ口にしていないのだ。

 そんな嘘も言わず本当のことも口にしないなんて面倒なことをした動機としては、「1ゲーマーとして彼女たちとは対等に殴り合いたかった」というだけの話だったりするが。


 ──男だと知られると、殴り合いなんて出来そうにないからなぁ。


 いくら俺自身が「ゲームはゲーム、現実は現実」と割り切っていたとしても、この時代の……男尊女卑が人生観レベルで刷り込まれている女性たちに「男性の顔面をぶん殴れるか」と問われると非常に怪しいものがある。


「……さて、と」


 とは言え、取りあえずは彼女たちも納得していったん矛を収めてくれたのだ。

 今はこの気疲れとかいう久々の感覚を癒すべく、適当に何か楽しいことをしてストレス解消しなければならないだろう。

 尤も、この未来社会においては男性なんてただの種馬でしかなく……暇を持て余すのと精子を撒き散らす以外、何か意味のある事なんて出来やしないのだけど。


「……ん?」


 そうしてふと視線を上げて空を眺めてみると……何となく遠くの空が光ったような、気がする。

 ただの見間違いであれば問題はないのだが、この市庁舎を兼ねている我が家の頂上……仮想障壁の上に、相変わらず三姉妹警護官が突っ立っていて……今日は全員が面積が極小の、お揃いの水色パンツを穿いているようだが、それは兎も角として三人共が武器を手にしているのが妙に気になった。


「……検索っと」


 気になった時点で俺は半ば無意識の内に、B(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)を通じて現在の都市の状況を確認していた。

 コンマ数秒後には、「事前プログラムによる正妻(ウィーフェ)権限の第一種警報」などという、物々しい指示が現在進行形で出ていることを突き止めることが出来たのだが……


 ──第一種警報?


 何やら聞き慣れないその言葉に、俺は首を傾げ……すぐさまB(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)を起動して海上都市『クリオネ』を上空から眺めることとする。

 今現在進行形で何が起こっているかなんて、上空からの画像一つですぐさま理解出来た。


「……テロリスト、か」


 海上都市『クリオネ』の東北部数キロ付近に、3機ほどの大型の輸送機がこちらへと迫ってきているのが見える。

 戦闘履歴を見てみると、15キロ圏内に入った時点で警告を発し、それでもこちらへの進路を変えようとしないため、10キロ圏内で第一種警報へと切り替わったようだった。

 要するに第一種警報とは……テロリストの襲撃に備えた戦闘開始の合図である。


「第二都市警護隊は迎撃に回れっ!

 戦術はAIに委任、自分が電磁加速砲を担当するっ!」


「了解しました、アルノー隊長っ!」


 直後、B(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)が警護官同士の通信を傍受し、俺の耳にそんな会話が入って来る。

 すぐさま都市の略図を使ったリアルタイムレーダーに目を移すと、傍受した通信が実際に使われていることを証明するかのように第二都市警護官……要するに都市防衛のための警護官だが、彼女たちが飛行ユニットを装着して一斉に東北湾岸部へと向かっていくのが見える。

 そうしてアルノーが宣言した通り、B(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)を経由して、湾岸部に配備されている電磁誘導砲を操作……直後、7基の電磁加速砲が一斉に火を噴き、敵影の内の1機が傾いだかと思うと、そのまま爆散して果てた。


「……すっげ」


 何が凄まじいって、アルノーの火器管制である。

 B(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)経由の戦術解説によると、7基にも渡る電磁加速砲を同時に操り……当然AIによる補助があるにしろ、6基の砲火を一点に集中することでテロリストの輸送機に積んであった仮想障壁を飽和させ、そのコンマ2秒遅れで放った一発の砲火で主翼を大破させたのだ。

 未だに仮想現実内であっても四肢を操るのが限界の俺としては、それぞれが全く違う位置にあった電磁加速砲を操作し、狙い違わず1機を狙う……ビットによる一斉射のような、曲芸じみた処理能力を必要とされるあんな動作なんて、さっぱり出来る気がしない。


 ──っと、乗組員が脱出して……ああ~。


 爆散した輸送機と運命を共にする気はなかったのだろう、テロリストたちはタッチ差で飛行ユニットを用い、脱出に成功していたらしく……俺のB(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)のレーダーに10ほどの小さなマーカーが映し出される。

 尤も、アルノーからしてみれば当然のようにその脱出劇も予測の範疇だったらしく、脱出した瞬間を電磁加速砲の3基の算段で狙い撃ち……彼女たちが飛び立った僅か3秒後には、マーカーの残数は2つにまで減っていたが。

 その間にも残り4基の電磁加速砲は残り2機の輸送機を散発的に狙うことで、牽制しつつエネルギー残量を削るつもりらしい。


「……散弾は、ずるいなぁ」


 飛び立つことすら叶わなかったテロリストたちの姿を見て、羽化失敗したアブラゼミの姿を思い出した俺は、何となく物悲しくなってそう呟いてしまう。

 当然のことながら、彼女たちも飛行ユニットの他に仮想障壁発生装置を身についてはいた筈なのだ。

 とは言え、それらは所詮個人装備、しかも携行用である。

 いくら散弾とは言え、都市沿岸部に設置されてあった、都市の核融合炉からエネルギーを融通されてある最新鋭の電磁加速砲のエネルギーを受け止め切れる筈もない。

 しかも飛び立った直後、さほど散開していない状況を見事に狙い撃たれたものだから、テロリストたちはひとたまりもなかっただろう。


 ──だったら、飛び立たなければ……その場合、あのまま落とされるだけか。


 尤も、これについてはただテロリストたちよりもうちの警護官が……リーダーであるアルノーが優秀過ぎるってだけの話なのだろうけれども。

 ちなみにではあるが、木星戦記のような人型ロボットもしくは航空機だと、身体が大き過ぎる所為で電磁誘導砲の通常弾を食らい、仮想障壁で防げたとしてもエネルギーをごっそり奪われてしまう。

 基本、科学技術が発展し攻撃力が増加したこの未来社会においては、「当たらない」ことが何よりも優先され……だからこそ飛行ユニットを個人が身に付けただけの、飛行兵種なんて自殺行為としか思えない連中が存在することになっているのだ。


 ──三姉妹も、まぁ、それみたいなものか。


 そんな彼女たちは本日、最後の砦……この市庁舎を護る最終防衛線扱いとして、この場で待機しているようだったが。


「おお、早くも撃沈っ!

 やっぱアルノー隊長、すっげぇなぁ」

「この場合、正妻(ウィーフェ)が導入した兵器が凄いんじゃね?

 いや、確かに狙いと判断は凄まじい、か」

「……伊達に全身機械化してない」


 恐らくは待機しているのだろう。

 俺の視点から見ると、相変わらず都市庁舎の仮想障壁の上に立ってパンツを見せびらかしながら、駄弁っているだけにしか見えないのだが……彼女たちがこの場所にいる戦略的・戦術的な意味が必ずある、筈である。

 ……間違っても役に立たないどころか足を引っ張るだけだから、戦闘にならない場所に置いている訳ではない、筈だ。


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三姉妹はパンチラで市長をムラムラさせるのがお仕事 だから問題なし! ヨシ!
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