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【完結済】ぜったいハーレム世代の男子校生  作者: 馬頭鬼
第十六章「復活の日」
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~ コンサート ~


 都市の資材調達に目途が立った日から数日後。

 相変わらず暇をしていた俺は、VRを利用したクラシック音楽を聴くなんていう高尚な趣味を試みていた。


「……すっげぇ」


 基本、音楽なんて適当にCD買うか、もしくはネット上のデータでしか聞いたことなかった人間なので知らなかったのだが……生演奏というものは音が身体中に響き渡る。

 そしてそれを家に居ながら待ち時間もなく自分一人で感じられるというのが、このVRというシステムの凄まじさだろう。

 勿論、理屈では分かる。

 音なんて所詮は空気の振動であり、発生源と音量、そしてこの音楽ホールの壁面に反射するエコーを計算すれば、身体に感じる振動なんて簡単に再現できるだろうことは。

 だけど、それを再現した音楽鑑賞が、ここまで凄まじいモノだとは思わなかった。


 ──生演奏とほぼ変わらないだろう、これ。


 ちなみにではあるが、今聞いている音楽……曲名も知らないが運動会で流れてた覚えのある曲はあくまでもVR上のデータで再現されたものであり、実際に(・・・)奏者がいる(・・・・・)訳ではない(・・・・・)

 それでも、俺の眼前ではしっかりと奏者である幾人もの女性が楽器を演奏していて……指の動き身体のリズム、呼吸まで全てが耳に聞こえる音と繋がっていて、本当に生身の人間が演奏しているようにしか見えないし、彼女たちが実際に奏でている楽器の音にしか聞こえない。

 尤も、彼女たちは所詮偽物であり……あの一番前の列に立っている、ロングスカートのドレスを着てバイオリンか何かを演奏している女性のスカートを唐突にめくり上げたとしても、奏者は何一つ動揺することなく演奏が続くのだろうけれども。

 そういう意味では、女性が演奏する意味もない気はする……俺自身の感覚的に、バイオリンやらピアノは女性が演奏するもの、という先入観はあるにしろ。

 と、そんなことを考えた所為だろうか?


 ──男性を奏者にした場合の問題点?

 

 突如としてB(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)がそんな訳の分からないレポートを届けてきた。

 驚いた俺は一瞬だけ硬直してしまったが、音楽を聴きながらそのファイルに目を通し……正確にはB(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)経由で知識をインストールしただけではあるが、21世紀人の俺としては「目を通す」という表現以外がまだ馴染まない。

 兎も角、そのファイルには、ある種の音楽は人間の野生を呼び起こす影響力があり、音楽鑑賞プログラムの幾つかに男性奏者を出演させた場合、利用者が男性奏者に襲い掛かる不慮の事故が多発したため、幾つかの音楽鑑賞VRがアダルトコンテンツ扱いする事案が発生……それ以降、男性奏者の出演を禁止したとある。


 ──不慮の事故?

 ──野生を呼び起こす?


 そのレポートを確認し終えた俺はそう首を傾げる。

 そもそもではあるが、コンサートの最中に奏者に悪戯するのは別に不慮の事故ではなく、ただの性欲の発露である。

 そして音楽が野生を呼び起こした訳ではなく、奏者の緻密な指使いや演奏に夢中になっている姿が魅力的に映り、性欲を喚起しただけだろう。

 ぶっちゃけた話、今さっきの俺もバイオリン奏者のロングスカートをめくりたい衝動に一瞬だけ駆られたことは否めず……しかもVRだと悪戯した時のリスクが全くないゲーム空間なのだ。

 悪戯したところで何のリスクもないと分かっていれば……誰だろうと一度は試みるのではないだろうか?


 ──何か、じわじわと性欲出て来てる気がするな?


 そこでふと冷静に返った俺は、自分の言動というか衝動的な感覚に性欲が混じってきているのを実感する。

 実のところ、十日ほど前に勃起祭りなんてクソみたいなお祭りを開催したものの、俺自身の男性機能が復活したとはまだ言えない状況にあった。

 刺激を与えれば勃ちはするけれども、『それ以上がない』のである。

 これは実際に色々と実験してみたので間違いないのだが……まだ復活した俺の生殖器は、精通するまでには至っていないのだろう。

 だからこそ、痛くなるまでナニしても精子の放出は見られないし、そもそも幼児化している俺のナニは触ると痛くてあまり頑張れない実情があったり。

 閑話休題。

 

「……って、このレポートは180年も前のモノか。

 そりゃまだ不慮の事故扱いするかもなぁ」


 確か俺が警護官を雇う時に聞かされた痛ましい事件……希少になり始めた男性が女性によってバラバラにされてしまった殺人事件が150年ほど前だったから、それより少し前のレポートということになる。

 まだ女性が性欲を持て余す事態を軽く見ていた……男女の価値観が変遷し始めた頃だから、性欲で暴走するのは基本的に男性だけ、という感覚が抜けていない時代なのかもしれない。

 まぁ、細かい理屈は置いておくとしても、音楽奏者の魅力に取りつかれ女性たちが暴走した結果として、こうして音楽奏者は女性ばかりとなり果てた訳だ。


 ──勿論、そういう性的なVRもあるし……

 ──楽器を実演したいなら、そういう用のVRもあるみたいだけど。


 そう思考した瞬間、B(脳内)Q(量子)C(通信)O(器官)が性的なあれこれと共に、楽器演奏学習プログラムや、VRではあるものの奏者として観客の前で演奏するプログラム、それどころか文字通り現実の女性たちを動員してのVRコンサートまでもを紹介してくれたのだが……

 生憎と俺は人前に出るのなんてそう好きではないし、楽器を一から覚えようとするほどの情熱がある訳でもない。

 実のところ、この未来社会の男性たちも同じ感想を抱いているのか、この手のプログラムに触れることはなく……少なくともこの18年間、この手のプログラムは男性によって実行されていないようだった。


「……そりゃそうだ」


 この時代の男性は、女性たちのことなんてただの性犯罪者程度にしか思っていないのだから、性犯罪者に餌をあげる真似なんてする筈もないだろう。

 そもそも注目されることすら気持ち悪いと拒絶するに違いない。


 ──実演奏がどんなものか、入ってみようかな?


 せっかく時間を持て余しているのだし、こういう生演奏風のVRもなかなか凄まじいと実感できたのだから、実際に誰かがちゃんと演奏しているのを聞いてみたくなるのは人情というものだろう。

 俺はふとそう考えると……生演奏の視聴を明日以降の「やりたいことリスト」に入れることにした。


 ──取りあえず……


 思い立ったが吉日と言うよりは、復調に伴って性欲がじわじわと暴走している所為だろうか。

 俺は演奏中のコンサート舞台に上がると十数人の女性奏者の中から、最も気になった金髪碧眼の美少女バイオリニストのスカートをめくり、下着の色を確認すると……そのまま音楽プログラムを終了したのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 性欲がかわいい というかこのままいくとこの世界の救世主になりそう だけど滅亡するの確定なんだよねこれ
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