~ 序章 ~
書いている内にどっかのジャンプ漫画のパクリって言われる気がし始めたので、まず言い訳を。
この作品は、softhouse-seal GRANDEE様の『ぜったい遵守☆強制子作り許可証!!(エロゲ)』をDLsiteの500円セールで買って感銘を受けたアホ作者が「この男女比ならこんな普通の社会にならないだろう」と勝手に思い立ち、社会そのものの変貌を書いて見たくなったものです。
ついでに冒頭辺りの設定は長谷川裕一大先生の「マーメイド・ヘヴン」をパク……リスペクトしております。好きだったのに、何で続巻出なかったんだ、あの漫画。。。
2025/04/26 元ネタゲームタイトルが「絶対」じゃなくて「ぜったい」だったのでそちらに修正……この前書きでも書いてるのに何故気付かなかったんだ……
「よし、死のう」
一時間前まで遊んでいたみよちゃん(仮)にメッセージを返した俺は、脳内のやりたいことリストを思い返してようやく悔いがなくなったことを確認した後……肺胞に入った煙を大きく吐き出し、そう告げた。
眼前のテーブルには30年もののスコッチウィスキーと同レベルのブランデー、高級なことで有名で今までなら買おうとも思わなかった純米大吟醸の日本酒一升……そして山のように積み上げられた睡眠薬がある。
これから、人生で最大のお気に入りだった血糊量史上最大というスプラッターコメディ映画を見ながら、この睡眠薬をつまみに酒を飲み続け……人生の最期を迎えるのだ。
──余命、一年。
遺伝子異常の何たらで、正式な病名は分からない……というか面倒な名前で知ろうとも思わなかった病に侵された俺は数ヵ月前、医者にそう告げられた。
そうして死の宣告を受けた俺は即日、二十年弱勤めた職場に即日退職届を提出し数百万円あった貯金と、雀の涙の退職金を全額下し、目一杯遊ぶことにしたのだ。
通販で各地の名物を喰い漁り、高額の酒を頼み、キャバクラ、ソープにおっぱぶとヤりたい放題やらかし……ついでとばかりに援助交際を試してみて、先ほど自称女子高生のみよちゃん(仮)と一晩楽しみ、残った金である諭吉さん十五枚ほどを渡して、俺の個人資産と共にこの世の未練はなくなったところである。
「……あ~、有終の美、ってヤツだな」
安物のカーペットに腰かけた俺は、数万円はしたブランデーの封を開き、二万弱のバカラのショットグラスに注ぎながら、一本が三万円はする葉巻を吹かしてそう呟く。
特に楽しみもなかった底辺を三十九年流離っただけの俺の人生だったが……余命が尽きる前に出来る限りの贅沢は楽しんだと思う。
両親は健在だが、弟が優秀なので俺一人死んでもそう問題なく、妻や子供どころか彼女も長いこといやしない。
強いて言えば、高校時代から読んでいた漫画がまだ未完のままなのが心残りではあるが……作者が亡くなったのでもう完結されることもなく、この世の未練は完全に断ち斬れている。
「じゃあ、来世に乾杯だ」
俺はそう告げながら、ブランデーを口に含み、お気に入りの映画の再生するべくリモコンに手を伸ばした……その時だった。
仕事以外では全く通話を使うことのなかったスマホが、突如として鳴り響き始めたのだ。
「……何だよ、このタイミングで」
しかも相手はかかりつけの医師である。
今さら病気が間違いですと言われても貯金全て吐き出した今となっては取り返しがつかない訳だが……それでも変な未練を残したままくたばっても来世で悔やみそうだと考えた俺は、仕方なく手元のブランデーを飲み干すと、スマホを取る。
「……はい、ええ。
はい、はぁ、分かりました」
あまり酒に強い訳でもない俺が、景気づけとは言えショットグラスいっぱいのブランデーをストレートで飲み干したものだから、頭がくらくらして先生の話はよく分からなかった。
分からなかったが……何やら生き延びる術が見つかるかもしれない、とのことである。
「……今更、生き延びる、ねぇ」
名前すら忘れた先生の話を要約すると、現在の医療技術で俺の身体は治せない。
だからこそ、俺の身体をカプセルに入れ、低温保存したまま北極の海底深くに沈め、数年後から十数年後の未来に治療法が見つかった頃、解凍して治そう……という未承認治験を行いたいらしい。
まだ始まったばかりの治療法であり、成功例すらない一種の賭けではあるが、医学の発展のために貢献して欲しい……要するに実験体になってくれ、という話である。
金もなくなったし、遊べるだけ遊んだ今、この世の未練など欠片もない。
だけど……
「まぁ、金も出るならやってみるか」
この世に未練どころかやりたいことももう残されておらず、そもそも将来に展望すら抱けない底辺の身とは言え、別に死にたい訳じゃないのだ。
生き延びる術があるなら……賭けてみるのも面白いかもしれない。
何せ……死ぬのはいつでもできるのだから。
「じゃ、ちょいと行ってみますか」
俺はそう呟くと、手持ちの財布を開き……行きの電車賃が残っていることに安堵しつつ、アパートを飛び出したのだった。