現代における最下級管理者(神)の手違い増加についての報告書
近年、最下級管理者が誤って生命体を殺害してしまうという異常が起こっています。その件数は1000件程と未だ少ないながら着々と増加しており、今後も増加していくと推定されます。
―らの手違いを起こしたときの状況や数年間の行動などを調査してみても、目立った共通点が無いことから、原因となる様な環境的要因、主体的要因は未だ不明です。また、ほとんどの事例において―らは殺害された生命体(以下被害生命と呼称)に満足する程度の能力を与え、被害生命を別世界に送るなど、被害生命に対して何らかの報償を行っているため、世界管理の基礎思想にも反しておらず、―らに対して罰則の必要もないものと思われます。
今後も現場に軽い混乱をもたらす可能性があることから世界管理規定に新しく記載していただきたいです。
仮説ではありますが、この事態は管理者が己の行動に『誤り』の可能性を考えてしまうことが原因かもしれません。詳しい情報は後に記載しておきます。
補遺
―らが被害生命に与えた能力などは、非常に微弱なものであり世界の均衡を揺るがすほどではありません。
今のところ管理に支障が出る程の手違いは報告されていません。
以下は『誤り』の歴史についてを調査し、纏めたものです。この事態の解決に役立てば幸いです。
管理者の『誤り』はd10−7+1c32s56372572535の誕生暦13831163941年に初めて観測されました。その『誤り』の内容は、知恵の実を最下級管理者であった「蛇の神」が管理界に住んでいた「人間」に食べさせたというものです。この知恵の実は言い伝えにより食べることが禁止されていました。「蛇の神」は「人間」を最下級管理者から自由にさせるために知恵の実を使用したそうですが、言い伝えに背いたという行為は明らかな『誤り』であったと言えるでしょう。この件以降暫くの間は管理者の『誤り』はありませんでした。この後の『誤り』は今から16年前まですべて「人間」が引き起こしており、そのせいで人間史初期の文明化は他の生命体に比べ圧倒的に遅くなっています。今から16年前に二度目の管理者の『誤り』がd10−7+1c32s56372572535で観測されました。『誤り』の内容は生命体の意図せぬ殺害です。この件による世界の変化は特にありませんでした。この件以降ありとあらゆる世界において『誤り』が観測されるようになりました。上述したような仮説を立てたのは『誤り』を知らない管理者の誤る割合が、『誤り』を知る管理者よりも低いからです。ですが、『誤り』を知らない管理者にも誤りが少なからず起こっていることから、仮説は完全ではないと考えたほうが良いでしょう。ですが『誤り』を知る管理者の方が誤る割合が高いというのは事実です。
引き続き調査を続け、適宜報告します。
補遺
「蛇の神」は最下級管理者を解雇され、その後すぐに復職しています。
この知恵の実には、危険性などが確認されておらず、なぜ食べてはいけないのかを理解していた最下級管理者がいなかったためこの言い伝えの根拠は不明です。
「人間」の『誤り』を引き起こす可能性は、人間史初期の「人間」と人間史現在の「人間」や男女、地域で変わりがないことから『誤り』は「人間」の持つ不偏的性質であると思われます。
「人間」の文化水準は3です。
直属の報告者の報告書を読んで最高級管理者は独り言葉をこぼした。
「はぁ また世界管理規定への記載か 規定具体的にしすぎるのも嫌なんだよな どうしよう」
そこまで言ったところでふと何かに気付いたように首を傾げた。
「あれ? 不偏的性質って普遍的性質じゃないか?...
処ッ女ッ作ッです!
いかがだったでしょうか。
一様予防線を張っておくと報告書の部分にルビがないのは仕様です。最高級管理者は全部読めるかなって。
さてさて結局誤りの原因は何だったんですかね?謎は深まるばかりです。
今までは最下級管理者が誤っていたおかげで生命体の殺害に留まっていますが、最高級管理者が誤るとどんなことが起こるのでしょう?
そういえば報告書に他の間違いもあった気が...
それではまた逢う日まで
感想ください