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映画館

作者: リトルムギ

 これでもないあれでもないと試行錯誤の末決めた服を着て、鏡の前にたっては、前、後ろ、横、あらゆる角度から髪型を確認していく。最後の確認が終わり、よしっと思って靴を履いた後には、玄関にある全身鏡を覗いて、再度足から順に自分の姿を確認していき、頭に差し掛かったところでもまた、すぐにくずれるであろう前髪を細かく細かく揃えていく。

 やがて五分程遅れて集合場所に現れては、申し訳ない顔を少し見せることで相手を満足させて、何もなかったかのように二人揃って電車に揺られる。相手の容姿に気がいくならまだしも、自分の前髪が気になっては会話に集中できず、いつのまにか揺れが止まり、改札口へと向かう。

 街を歩けば、彼女でないにしろ、女と歩いているということに少しばかり胸を張って歩く自分に気がついても、なお気持ちの良いふうになる。いつもよりカラフルに見える街並みに感動を覚えては、やがて目的の映画館につく。

 映画が終わればご飯を食べる。普通に話せば良いものを、映画によって生まれた満足感を僕と女の間に生まれた充実感だと勘違いしては、威勢よく長話をする。ただあまりの冷めように、まだこの間柄には大きな壁があることを学び、ちびちびとご飯を食べ始める。

 そうやって何もしないうちにまた揺られている。それでも、人はどれだけ相性が悪くても長い時間横にいれば一つは話が合うもので、ここでようやく盛り上がる。そして学ばないもので、気持ちよく改札口を抜けてはさようならを告げ、家に帰ればわずかな盛り上がりを永遠に感じ、次はいつ会えるのかと楽しみにしている。

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