表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/60

第44話 発展「ハッテン」

第44話です。是非よろしくお願いします。

 


「唯斗先輩、話があるので少し寄って行きたいとこ行ってもいいですか? 」


「ん? いいけど 」


「じゃ少しついて来てください 」


「うん 」



 そう言って結衣と唯斗は近くの公園まで向かった。


 公園に着くと、その公園にはもう遊んでいる子供もいなかった。夏が過ぎて9月も下旬。日が少しずつ早く沈み出したせいか、近所の子供たちも早く家に帰るようだ。


 ベンチに結衣が座って、唯斗も隣に座った。



「話ってなんだ? 」


「……先輩! 」


 

 何かを心に決心した様子の結衣に唯斗は少し驚く。



「どうした? 」


「もう私限界なんです…… 勝手なのは分かってます。それでも、どうしても伝えておきたいことがあるので聞いてください…… 」


「うん……? 」


「私は、先輩に初めて会ったあの日のことを今でも思い出します。ぶつかって服を汚してしまった私にあんなにも優しくしてくれた。その時から先輩ことがずっと気になって仕方なかったです。それから色んなことがあって日に日に好きになる気持ちが強くなってきて、もう伝えなきゃと思って今日呼び出しました 」


「うん…… 」


「でも、私は分かってますよ。先輩の気持ち。先輩は莉奈さんのことが好きなんですよね? 見てれば分かります。先輩は莉奈さんのことが好き、それでも私は先輩のことが好きです。勝手なのは分かってます。それでも先輩のこと諦めることができないんです。何回も何回も先輩のこと諦めようとしました。莉奈さんがいるからって……。それでも無理でした。だから私の気持ちには答えなくても分かってますから…… 」


「おれが莉奈を好き? そんなこと言ったか? 」


「もう先輩たちも、そうやって逃げるのやめましょうよ。私だって、できたら先輩と。でも私は先輩の相手じゃない。私はそんな先輩たちがもう見てられないから今日こうやって伝えようと思ったんです。伝わらないって分かっていても私は伝えました。もうこんな先輩たち見てられないんです 」


「結衣……。 ありがとうな 」


「だから、先輩たちはちゃんと幸せになってくださいね。私は勝手に先輩こと好きでいますから! 」


「ありがとうな結衣。本当におれは何をやってるんだろうな…… 」


「大丈夫ですよ! 先輩と莉奈さんなら、なーんにも問題ないです! 」


「ありがとうな…… 」


「いえいえ、大丈夫です 」


「しっかりと、おれも考えるよ 」


「暗くなって来ましたね 」


「そうだな、家まで送って行くよ 」


「いえ、大丈夫です! 1人で帰れます! 」


「そうか、じゃ気をつけてな 」


「じゃ、私帰りますね! また明日学校で! 」


「うん、また明日な 」



 そう言い残して結衣は公園から出て行った。


 家に向かって歩き出した結衣の顔には大粒の涙目が溢れ落ちていた。



「やっぱり、、辛いな……。私は先輩の1番じゃないし、私は結局、妹止まりなんだろうなー…… 」



 結衣は溢れて落ちる涙を袖で拭う。唯斗の前では涙を見せなかった。彼女の強さでもあり、弱さでもあるのだろう。それでも年下の女の子がここまでして想いを伝えて、唯斗の背中を押すきっかけになっただろう。



 結衣の涙が溢れる姿は、いつも可愛い結衣をもっと更に可愛くさせる。女の子の涙は美しい。特にこういった切ない形での涙は本当に……





 一方、唯斗は……



 公園のベンチに座り込んでいた。


 いつか結衣に想いを伝えられるような気はしていたのかもしれない。それでもこんな形で伝えられるとは思ってもいなかった。しかも年下の女の子にこんな思いをさせて、さらに背中を押された。唯斗は自分でもそろそろはっきりしないといけないと深く思い始めていた。



 それから時間が少し経っても唯斗は何かを深く考えるようでベンチに座ったままだった。



 唯斗が深く考えるのも無理はない。たしかに莉奈のことを唯斗は好きなのだろう。それでも莉奈の気持ちは唯斗にはわからない。だからこそ伝えても伝わらなかった時のことを考えてしまう。一緒に住んでいる以上、それほど気まずいことはない。それを考えれば伝えられない気持ちも分からないことはない。



 変わらずベンチに座り込んだ唯斗は突然話しかけられた。



「あれ〜? 唯斗くん? 」


「あ、美奈さん 」


「こんなところで何してるの〜? 」


「ちょっといろいろとあって 」


「そうなんだ〜、莉奈はもう帰ってきてたよ〜 」


「はい、てか美奈さんは何してるんですか? 」


「私は買い物に行く途中で、通ったら偶然見たことある横顔でまさかって思って近くに寄ったら、やっぱり唯斗くんだった〜 」


「そうなんですね… 」


「うん〜、それで唯斗くんに何があったのか聞いてもいいかな〜? 」



 そう言って美奈は唯斗の横に座った。


 そして、今日あった結衣のことを唯斗は美奈に話した。


 美奈は何も驚いた様子を見せなかった。


 驚く様子を見せない美奈へ、唯斗は聞いた。



「おれが莉奈のこと好きって聞いても、なんにも驚かないんですか? 」


「そんなこと、とっくにわかってるよ〜 」


「え!? 」


「当たり前でしよ〜 」



 美奈は微笑みながら、唯斗に言った。



「おれ、全然バレてないと思いました… 」


「すぐに分かるよ〜 」


「そうなんですかー 」



 唯斗は美奈にバレていると思ってもいなくて、驚いた様子を見せていた。

 


 もちろん美奈は莉奈の気持ちにも気づいている。それでも莉奈の気持ちのことは一切言わなかった。それが正しいのだろう。美奈はそこら辺の気遣いや他人を考える気持ちを本当に察するのが早く、他人を思いやることができる。



 ここで美奈が莉奈の気持ちを言うのは簡単だ。それでも言ってしまったら、それを聞いてから唯斗が動くのは違うと美奈は判断できた。




 こういったところが美奈は快斗を変えることができたのかもしれない……




 薄暗い闇が唯斗たちを包み込む。また大きな一歩をしっかりと踏み出した。この恋をしっかりと実らせることができるのだろうか。その時、唯斗は今日というこの日のことを必ず思い出すだろう……


 



第44話ありがとうございました。是非次回もお楽しみに〜。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ