1、紫陽花の丘
初めまして今泉せつなと申します。はじめて小説を書いてみました。最後まで読んでいただくと幸いです。
僕の人生は終わった。坂上湊としての。それは突然な物で、予想にもできないものだった。これも運命というものだろうか。
僕のことを彼女は気づいてくれるのだろうか。また好きになって貰えるのだろうか。
母「湊!はやく起きなさい!」
目を覚ますとそこには母がいつものように僕の布団を取り、立っていた。
母「また凛ちゃんを待たせて、はやく準備しなさい、」
湊「はーい」
僕は状況を把握し、すぐさまベットから降り、寝起きとは思えないくらいの動きで制服に着替え、颯爽と階段を降りる。
湊「ごめん凛、待たせた!」
凛「早く行くよ」
かかとのつぶれたローファーを履き、学校へと向かった。
凛とは昔からの幼なじみで付き合っている彼女だ。しかも家は隣同士というまさに典型的な幼なじみのだ。
凛「準備が早いからまだ良いものの、彼女を待たせるって彼氏としてどうなのよ?時間は有限なのよ?」
と僕を獲物かのように睨みつけてくる。
湊「けど、デートは遅刻したことないだろ?」
凛「そういう問題じゃありません!乙女心っていうのを知らないのね」
湊「乙女心ねぇ、難しいな」(そんなのわかるわけないだろ男なんだから)
僕はクスッと笑う。それをみてさらに彼女は今にも襲いかかりそうな目つきに変わっていた。
二人の高校は家からも近く、あっという間に学校に到着した。
下駄箱に靴を入れ、上履きに履きかえる。
凛「また放課後ね!次は遅れないでね」妙な笑顔で言ってきた。
湊「かしこまりました!」なぜが自然と敬礼をしていた。
お互いは別の教室へと向かった。
教室のドアを開け、湊は席についた。スマホを確認すると、そこには沢山の不在着信の数。凛からだ。最近何かと凛は時間に厳しくなったのである。凛にはいつも救われてる。僕はとにかく時間にルーズであり、自分でわかっていてもなかなか直せない。ふとスマホの画面と睨めっこしていると、あることに気づく、
僕は一瞬にして背筋がピンとなった。今日は6月10日すなわち3年記念日ということを思い出した。凛は何かと記念日には敏感である。
何か用意をしないと、いや、ちょっと待てよ、凛と朝会った時には何も言ってこなかったし、あいつも忘れてるんじゃ、、、、それにしてもやけにちょっと朝不機嫌だったなぁ、、僕はあの獲物を狩る目つきは忘れられない。はやく何か用意しないとまた怒らせてしまう。だからといって何を用意しよう、、
考えることに集中しすぎ、外は綺麗な夕暮れに変わり、結局何も決まらず、とうとう帰宅の時間になってしまった。
太一「湊、どうした?もう帰る時間だぞ」と3年間クラスがなぜが一緒になった友達の太一が話しかけてきた。
湊「それがさ、、、、、」とひそひそ話かのような小さな声で話す。
太一「え!?プレゼントを用意してないって!?」と教室中に響きわたるくらいの大きな声で言う。クラスメイトはみなこちらを見てくる。
湊「声がデカイって」とまたほそぼそと言う
太一「悪りぃ悪りぃ、俺って声が大きいのが取り柄だからな」
そんな中、一つの輝いてるものが湊の目に入った。太一のカバンからぶら下がっている。キーホルダーからだ。
湊「なにその、やけに光ってるやつ?」
太一「今日の美術の授業でつくった鉄の玉だよ、男は何かと丸い物が好きだろ?」と鼻の下が伸ばしてこちらを見てくる。
それに対し細い目で見つめる湊。
太一「湊は何作ったんだよ?」
湊「これ」湊がバックの中から取り出す。
太一「すごい、綺麗な鉄の花だな、、ちなみに何の花だ?」それはとても鉄から作ったと思えないくらい繊細で素晴らしい造形だ。何故か僕の美術の成績だけはいつも5なのである。
湊「これは紫陽花だよ。何かと6月には縁があるから好きなんだよ」
太一「てか、、これ渡せばいんじゃね!?」
湊「ナイス!そうするわ」喜びの束の間、スマホの着信が鳴り出した、それと同時にあることを悟った。
湊「やばい!じゃまた明日な太一!」
急いで教室を出て、正門に向かっていった。
正門には鬼の形相の凛が立っていた。
湊「ごめん、遅れた」
凛「遅い、早く帰るよ」
二人はいつものように手を繋いで歩いていく。
凛「湊、今日なんの日か知ってる?」
湊「知ってるよ!3年記念日だろ?」(今日思い出したなんて言えない、、)と引きつりながら言う。湊はバックから鉄の紫陽花を手に取り、凛に渡す。
凛「すごい、綺麗!ありがとう!乙女心わかってるじゃん?」
乙女心とはいったいなんだと再び疑問に思う。
凛「でも、なんで紫陽花なの?」
湊「俺ら付き合ったのも中学3年のとき、綺麗な紫陽花が咲いてた丘で告白しただろ?何かと縁があるかなって思って」それを聞いて頬を赤くする彼女。凛はバックに手を伸ばし、あるものを渡してきた。
凛「これあげる!」手紙と何か梱包されている箱を渡された。
湊「箱開けてみていい?」凛はすぐさまうなずいた。箱を開けてみると、そこには紫陽花のキーホルダーが入っていた。思わず笑みが溢れた。
湊「凛も紫陽花かよ」と笑う
凛「何かと縁があるじゃん?」
もう一つ貰った手紙を読もうとすると、凛が手を払う
凛「手紙は家で読んで下さいーー!」と頬をフグのように膨らませて言った。条件反射なのだろうか素早く湊は頷いた。
凛「紫陽花の丘久しぶりに行ってみない?」
湊「ナイスアイデア!行こう!」
二人は先ほどよりも強く手を繋ぎ、向かっていった。
凛「着いたー!!」
そこには一面に広がる紫陽花。素晴らしい絶景である。紫陽花を見ると全ての思い出が蘇る。
湊「来年も再来年もここで会おうよ!毎年行って一年を振り返ろうのはどう?」
凛の表情を見ると、なぜが泣いていた。とにかく号泣していたのだ。
湊「え、ちょっ、どうした??」焦りを隠せない。
凛「ごめん、嬉しくてつい」彼女の今までみた中での1番の笑顔だった。僕も自然と笑顔を浮かべていた。
その後二人は紫陽花の丘で1年の全てを振り返った。
外はすっかり夜になり。涼しくなってきた。
湊「そろそろ帰るか」
それに対し笑顔で頷く彼女。
手を繋ぎ暗い夜道を二人は歩いていった。
いきなり聞いたことのない大きな音が鳴り響いた。それと同時に体に猛烈な痛みが襲ってきた。それもまた一瞬のもので、何も感じ無くなっていった。
あれ、体が動かない。何も聞こえない。なんでこうなったんだ。あたりには今までみたことのない血の量。体が徐々に鉄の鉛かのように固まっていく。
かろうじて目に映るのは泣く凛と横転しているトラック。
凛は助かったのか。良かった。
凛「---------しっかりして」
何かを話しかけているがしっかりと聞こえない。意識朦朧としながら力を振り絞り、湊は声を出した。
湊「いつもごめん、本当に大好きだったよ」
凛「、、、、、、だったのに、、」
最後の最後まで凛の声まで聞こえないのか。
湊「凛、、、死んでもまた会いに行くから」
声ももう出ない。力がなくなっていく。嫌だ死にたくない。まだ死にたくない。
意識がなくなっていく。静かに。
最後に目に映るのは泣いている最愛の彼女だけであった。