第3話
エドワード達はで何処に行こうか話をしながら校門へと歩く。
すると、エドワード達と同じく帰ろうとしている生徒達がエドワード達を見て小声で話し合う。
「おい。見ろよ」
「ああ、『英勇の子供達』だな」
本人達は聞かれない様に話しているつもりだろうが、余程耳が悪い者でなければ聞こえる声量であった。
魔王軍を率いていた『魔神王』を討ち取った『二十四英勇』の内アルカディア皇国に居るのは八人。
その内の『魔神殺し』と『万能』をエドワードの両親。
『雷公』はアルティナの父。
『槍剣』はオスカーの父。
『焦熱』はシモンファルトの母。
『不動要塞』はランドルフの父であった。
他にもエドワード達よりも学年が一つ上の学生で『絶影』『殲滅の魔女』の子供達が三人が居る。
その子供達を総じて『英勇の子供達』と呼ばれている。
「良いよな~。皆『二十四英勇』の子供でよ」
「やっぱり『英勇』の血を引いているから優秀なのかもな」
「それで皆顔も良いよな」
「だな。ああ、俺も『二十四英勇』の親に持ちたかったぜ」
校門近く居た生徒達はエドワード達を見ながら僻んでいるような妬んでいるいる様な事を話していた。
(知らぬが何とやらだ。何処に行っても『二十四英勇』の子としか見られないのが苦痛に感じる事も知らないのだからな)
エドワード達は『二十四英勇』の子供達という事で大人たちから重い期待を掛けられていた。
―――あの『二十四英勇』の子なのだから、素晴らしい才能を持っているだろう。
―――その才能で魔族の脅威から人々を守ってくれるだろう。
―――将来が楽しみだ。
と勝手に高望みの期待を掛けられていた。
親が偉大であれば子もそうとは限らないと考えない大人達。
親達も子供の才能を信じて、学院に入る前に一通りの教育は行っていた。
その為「普通」という枠に収まる事はなかったエドワード達。
だが、エドワードは知っていた。
自分は「普通」の枠にこそ収まらなかったが、けして「天才」や「鬼才」の枠に入らない事を。
他の幼馴染達は学院に入る前から親譲りの才能を開花していた。
しかし、エドワードだけは違った。
その為口さがない者達からは「出涸らし」「本当に血を引いているのか?」「とてもあの両親の子供とは思えない」と陰で言われていた。
そんな陰口に負けず奮起するエドワードであったが、才能は一向に開花しなかった。
唯一学業だけは学年で一位か二位から落ちた事が無かった。
しかし、それでも。
―――『英勇』の子供が学業だけ優れているとは。
―――これでは『英勇』の子供とは言えんな。
―――他の英雄の子供に比べても頼りない。
と言われる様になった。
これでは自分が何をしても『英勇』の子供と言われるだけだと察したエドワードは学業への意欲が削がれていった。
だからと言って夜遊びなどはしなかった。そんな事をしてもむなしいと分かっているからだ。
(こいつらは、俺の事をどう思っているんだろうな?)
エドワードは自分の前で談笑している四人を見た。
本人達は言わないが、エドワードが自分達よりも劣っている事は察している。
それでも疎遠にならないでいてくれるのは、ありがたい半面腹立たしさ半面であった。
自分の事を放っておいてほしいという気持ちと友達でいてくれてありがとうという気持ちがあった。
相反する気持ちにエドワードは葛藤した。
そんな葛藤をしていたからか、前方不注意であった。
エドワードが歩いているとランドルフの背中に自分の顔をぶつけてしまった。
「わりぃ、不注意だった」
「…………」
エドワードが謝るとランドルフは気にするなと首を振る。
「ところで、どうしたんだ? 足を止めて」
エドワードが訊ねるとランドルフは無言で視線をやった。
その視線を辿ると、ある人達を見つけた。その三人を見てエドワードは納得した。
三人で横並びになる様に歩きながら話をしていた
校門近くの学生達は男女問わずその三人に目を奪われていた。
三人の内左右に居る女性達は同じ玲瓏とした顔立ちであった。
二人共女性にしては身長が高く、乳牛を思わせる連想させる大きさの胸。ほっそりと引き締まった腰。大きく安産型の尻をしていた。
右の方はポニーテールにしており、左の方は後ろで一つに結んでいた。
右の方はルイーズ=アズナヴァール。左の方はアンリ=アズナヴァールという。
二人は『絶影』を父親に持つ双子の姉妹であった。
そして、三人の真ん中に居る女子は紫色の髪を腰まで伸ばし、燃える様に赤い瞳。完璧に整った顔立ち。身長も女性にしては高い方であった。
女性の象徴と言えるものは西瓜を半分に切った様に大きく制服越しに見える腰は細く引き締まっていた。尻も柔らかく肉付いていた。
左右に居る二人と楽しく会話している女子はアイギナ=アルカディアと言い、アルカディア皇国の第一皇女にして次期王位継承権第一位でもあった。
ちなみに母親は『二十四英勇』の一人で『殲滅の魔女』だ。
三人ともエドワード達とは幼馴染ではあるが、学年が一つ上なので交流があまりなかった。
エドワードはその女性の一人アイギナをジッと見ていた。
『おいおい。今日は運が良いな。兄弟の思い人が居るぜ~。へへへ』
エドワードの気持ちを知っているテッドは軽薄な笑みを浮かべながら話しかけて来た。
エドワードはそれに答えないで、無言でアイギナを見ていた
「エド?」
「……」
「エドっ⁉」
「……」
「エドってば⁉」
「お、おう、どうした? ティナ」
「何ぼーっとしているのよ。ほら、行くわよっ」
「あ、ああ、そうだな」
エドワードはアルティナに引っ張られ、アイギナ達から視線を外した。
そのまま五人は遊戯場へと向かった。