第2話
「だいたい、あんたは」
「そういうお前は」
アルティナとエドワードはまだ口喧嘩をしていた。
口喧嘩を始めてから、三十分ほど経っていたが二人の勢いは止まらなかった。
最初面白そうに見ていた生徒達も自分達の予定を思い出して、一人また一人と教室から出て行った。
テッドも飽きたのか宙に浮かんで眠っていた。
なので、今教室に居るのはエドワードとアルティナの二人だけであった。
そんな事など認識外と言わんばかりに、二人は口喧嘩を続けていたが。
「はいはい。二人共。仲が良いのは良いけど、それぐらいにしようね」
口喧嘩をする二人に仲裁する者が現れた。
その者は二人と同じ制服を纏い中性的な顔立ちで、女性にも男性にも見えた。
右目に泣き黒子があったので余計に女性の印章を抱かせた。
身長もエドワードよりも少し低いが男性からしたら平均的な身長でしていた。
青緑色の瞳で切れ長の目をしていた。
この者の名はオスカー=フェイダートリーと言い、エドワード達の親と同じく『二十四英勇』を親に持つ少年であった。
その証拠に胸は全く膨らんでおらず、喉仏も見えた。
「何か用か? オスカー」
「そうよ。何か用なの? オスカー」
エドワードとアルティナは仲裁する者に詰め寄った。
「仲が良いのは結構だけど、何時までも二人がこの教室を占領していたら、授業に使う人達の迷惑だよ」
二人に詰め寄られたオスカーは笑顔で宥めた。
そう言われた二人は改めて周りを見ると、自分達以外の生徒達の姿が無い事に気付いた。
二人はバツが悪い顔をした。
そんな二人を見てオスカーは微笑んだ。
「今日は二人共、何も無いの? じゃあ、久しぶりに遊ばないかい?」
「あ? 面倒」
「良いわよ。どうせ、暇だし」
エドワードは怠そうに断ろうとしたら、アルティナが被せるように言い出した。
エドワードは言葉を続けようとしたが、オスカーは何も言わせないとばかりに話しかけた。
「それは良かった。今日は僕達以外にも同年代の幼馴染達も呼んでいるから」
「げっ、マジかよ」
「勿論」
当然だろうとばかりに笑うオスカー。
「あ、俺。今日はまだ受ける授業があるから」
エドワードは体のいい断りの言葉を言ってその場を離れ教室の戸の所まで来た。
そして、戸を開けようとし手を伸ばそうとしたが。
手が届く前に戸が開いた。
誰が開けたと思いエドワードは目を向けると。
「エド。何処かに行くの?」
「……」
エドワードの前に居るのは二人であった。
二人共男子であった。
エドワードに話しかけたのは、ハニーブロンドの腰まで届く程に長くして纏めていた。
そばかすはあるが可愛い顔をしていた。アルティナよりも若干低い身長。
大きな目に青い瞳を持っていた。
この者の名はシモンファルト=マクシミリアンという。
エドワード達と同じく『二十四英勇』を親に持っている子であった。
ちなみにエドワードと同じ両親が『二十四英勇』であった。
もう一人は精悍な顔立ちをしていた。
その顔立ちに見合うように身長もエドワードたちに比べても高くアルティナの腰ぐらいは有りそうな位に太い腕に腰。体格が大きい上に制服をキッチリと着ているので、制服がパツンパツンであった。
この男子の名はランドルフ=ゾンバロードスと言う。
この者もエドワード達と同じく『二十四英勇』を親に持つ幼馴染の一人であった。
「何処に行くって、授業に」
遊びに行くのは嫌なので逃げようとしたのだが、ランドルフは首を横に振る。
「…………もう授業が始まっている。今から行っても単位は入らないぞ」
「ぬっ」
ボソリと冷静な意見を言うランドルフ。
エドワードは言葉を失っていた。
「そうだよ。単位が入らないんだから、今日は遊ぼうよ~」
シモンファルトは笑顔でエドワードの手を取り一緒に行こうと引っ張る。
エドワードは嫌そうな顔をするが、ランドルフはエドワードの肩を優しく叩き首を横に振る。
「逆らっても無駄だって言うのか? ランディ」
「……(コクリ)」
エドワードはランドルフの愛称で訊ねると、ランドルフは無言で頷いた。
前はシモンファルトとランドルフ。後ろはオスカーとアルティナ。
逃げ場などないと分かりエドワードは溜め息を吐いた。
「ああ、分かったよ。何処かに遊びに行こうぜ」
エドワードが観念した様に呟くとシモンファルトは飛び跳ねながら喜んでいた。
「やった~、久しぶりに皆と遊べるんだ~。嬉しいな~」
その心底嬉しそうに喜んでいるので、エドワード達は微笑んだ。
そして、五人は教室から出て行った。




