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短編・外伝  作者: 真暗森
3/12

腕試し

パラプラの今後も使わないだろうなといったお話です。

 兎月(うづき)美婦(みふ)が正座の状態からモモエちゃんへと飛びかかる。座した死角に忍ばせていた刀を脚で撫で上げ順手で柄を掴む、鞘を足指で挟み引き抜き、抜き身の刀身を全身で振り被る。


 モモエちゃん飛び退って間合いを外し、縁の下に潜って予め置いておいた刀を抜き追撃を待つ。

 さっきまでモモエちゃんが座っていた畳が真っ二つなったのを見て舌を巻くサキョウさん、脚が痺れて動けない。

 それを尻目に美婦がたっぷりと溜めた動作で刀を担ぎ上げ、身体がネジ切れんばかりの勢いで振るうと、畳ごと床ごと縁の下が打ち抜かれる。返す刀が一閃二閃と瞬くと、40畳の広間いっぱいに明らかに刀身よりも長い亀裂が刻まれて行く。

 後一撃で縁側まで届くといったところでモモエちゃんが縁の下から中庭へ飛び出す。

 一度の跳躍で自身の切り裂いた広間を飛び越える美婦、着地寸前で縦一文字、勢いだけで前方宙返り。

 広間を抜いた際に摩擦で焼き付いた木屑と(やに)が刀身に沿って射ち出され、着地時の隙を狙ったモモエちゃんの機先を制する。

 美婦の突きを中心とした連撃を捌くのは、降る雨を刀で凌ごうとするようなもので、1つ躱すごとに2つの切り傷、3つ止めるごとに4つの穴が身体に開いた。


「いたいいたい、痛いたい!ですぅ!!」

「喋れるのならまだ余裕がある」


 美婦の上段突きから変則の振り下ろし、見事にはめられたモモエちゃんが、同じように刀を重ねて小手を狙うと、美婦は狙われた(つば)に近い右手を離して躱し、柄頭ギリギリを握ったもう片方の手を伸ばす。

 両手持ちから片手持ちになり更に半身を逸らした一撃は大きく延びて、モモエちゃんの躱そうと引っ込めた右の手の甲を骨が見えるほど深く、付け根薄皮一枚残して削ぎ落とした。


「いった〜〜〜いっ!!!」


 転がるように下がるモモエちゃん、庭一面に敷き詰められた白玉のような玉砂利に足を取られ本当に転がる。思わず手をつくと剥がれた肉が手の甲を打ち悶絶した。


「ちょっと、師匠やり過ぎでしょ〜………」

「まだ余裕そうね」


 美婦の刀身が曲がったのではと錯覚するほど素早くコンパクトな燕返し、受けの刀を2度躱しモモエちゃんの左耳が飛ぶ。

 座して片手で刀を地面に突き立てなぎ払いをいなすモモエちゃん、連続で捻るように刀を持ち替え風車のようになぎ払いを重ねる美婦、膝立ちになり摺下がろうとするモモエちゃんを見て、すかさず身体を捻りなぎ払いを加速する。

 刀身一枚分速く受けの下を潜った美婦の切っ先がモモエちゃんの右足の親指と人差し指を撥ねた。


「んんぅ………」

「………」


 美婦の打ち下ろし、左手一本では受け切れず、弾かれた峰がモモエちゃんの額を叩く。そのまま刀を押し付ける美婦、刀を寝かせて額に乗せ何とか耐えるモモエちゃん。

 美婦が押し付け続ける刀を手前に引く、上手く鎬を合わせて刃を削り落とす。瞬間、美婦が突くように撫で上げるとこぼれた刃先が引っ掛かり、モモエちゃんの刀を跳ね上げつつ額から頭頂部をパックリ切り裂いた。

 でたらめに刀を振って距離を取る、拭ったそばから溢れ出す血液でモモエちゃんの左目が潰れる。


「………」

「こんなところかしら………」


 美婦が両手を重ねて刀を握る変則の持ち手で大上段に構える。モモエちゃん腰を落とし足を玉砂利に捻じ込み足場を固めて待ちの構え。

 息をつかせる間も無く美婦が仕掛ける。大股で力強い一歩、踏み付けた玉砂利が砕け下地にめり込む。つづけて二歩、陥没した地面の縁から玉砂利が跳ね上がる。三歩目を振り上げ、舞い上がった玉砂利を蹴り飛ばしつつ、刀を頭の後ろまで振りかぶり握りを隠す。


 白玉だんごのように一つ一つ丁寧に磨き上げられた玉砂利は、ボコボコと鈍い音を立ててモモエちゃんを打ち、唇の間を縫ったひとつが前歯を砕いた。


(頭の出血が酷い、左手だけじゃ受け切れない、足場が悪過ぎる、これ以上痛いのはやだ!握りが見えない、打ち込まれる角度が予測できない、左脚はまだ無傷だ、左脚を狙うだろうか?)


 走馬灯の如く思考を巡らせるモモエちゃん、美婦の三歩目が地面に到達する。


(くそう、もういいや、これで………)


 焼けクソで突きを繰り出す。残念そうな顔をしながら美婦が刀を打ちつけていなし、モモエちゃんの左膝(ひだりひざ)の皿を落とす。


「あぁっ!もう、やだっ!!」

「今の突きはないでしょう?」


 苦し紛れに再度突き、はぁ、と美婦がため息混じりに外へ弾き、真正面から渾身の兜割、音を置き去りに刀身が煌めく。


 モモエちゃん諦め、今更ながらなんでサキョウさんは助けてくれないんだろうと目を向けると、方々(ほうぼう)ずっこけ回るサキョウさんが目に入る。慣れない正座で脚が痺れているらしい。なぁ〜んて愛狂おしいんでしょう!ちょっと、元気が出る。


 打ち放たれた刀の打点を首を振ってずらし、こめかみと右手のひらで白羽取り、勢いを殺し切れず右耳が頬と共に削がれ、刀が下顎の骨に引っ掛かってようやく止まる。


「おぉ………!


 美婦がハッとして引いた刀に、文字通り喰らい付き封じ込めるモモエちゃん。下から突き出した3度目の突きは、美婦の下腹部を入り口にして、元々そこに穴が空いていたのでは無いかと言うほど抵抗なく飲み込まれて行き、途中心臓を串刺しに肩口まで貫いた。


………お見事!」

「………ありがと」




挿絵(By みてみん)

心臓貫かれようが、脳髄吹き飛ぼうが人格はともかく、身体は治せる世界観ですが、主役の身内とこれはやり過ぎなのでは?そもそも、先の話過ぎるのでカット!

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