巨大統領
パラプラの本編中のお話です。
人間連合最終防衛障壁、見上げれば頂きは雲に隠れ、見渡せば末端は霞みに消え、その基礎は地中深く突き刺さる。纏わり付く大気は澱み、朝靄の様に薄く地表を覆う。
陽さえ遮る巨壁の影から宝杖がゆっくりと突きだされる。
片手に身の丈ほどの宝杖を持ち、ゴシック調のドレスに身に包んだリリチェルは、空いたもう片方の手で感慨深く壁を撫でた。
彼女の足元から悲鳴が上がると共に、砲撃音や爆発音が弾け靄を吹き飛ばす。
壁に設けられた観測所から壁面スピーカーを通して注意が入る。
「リリチェル大統領、壁への接触はご遠慮願います。今一度ご自身と我々の体格差を認識していただきたい」
「あら、しつれい」
リリチェルがそう言い、ささくれ立ってしまった壁を直そうと指で押し込む、とどめを刺したか剥がれ落ち、「「「あっ」」」と辺りがざわめきたつ。
「おっと、しつれ「余計なことをするなぁああああ!!!」
制止する声も既に遅く、リリチェルが剥がれた壁を空中で掴もうと手を伸ばす。光学神経に鉄骨鉄筋、全長800mを軽く越えるその巨体は、何気ない動作が音速の倍を超え、衝撃波により辺り一面を吹き飛ばした。
「あらら、やっちゃった。しつれい」
本編に出て来るのにあと何年かかるか分からないので………