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桜の雪  作者: mimuka
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3

「でも先輩はこれから大変ですね。受験勉強。少しランクが高いんでしょ?」


「ううっ…! 言わないでよ。くじけそうになるから」


「まだ時間がありますから、じっくり頑張ってください」


「う~…」


本気で落ち込みかけている彼女を見て、ちょっとかわいそうな気がした。


ちょうどそこで、あの山を通りかかった。


「先輩、気晴らしに花見しましょうか?」


「花見? あっ、この山…」


「はい、先輩とはじめて出会った山です」


まだ桜は咲き始めといったところだが、それでも屋台はもう出ている。


「何か食べましょうよ。奢りますよ?」


「ホント? じゃあクレープ食べたい! イチゴの!」


嬉しそうにオレの腕にしがみついてくる行動は、年上とは思えないな。


「はいはい。じゃあ行きましょうか」


屋台でクレープを買って、二人並んで頂上を目指して歩く。


「ここに来るのも久し振りね♪ 最後に来たのはお正月の初詣だったかしら?」


「そうですね。合格祈願参りしましたから。そこでお守りを先輩に買ってあげましたね」


「来年はわたしが買ってあげるね」


「もし先輩が合格したら、そのお守りをくださいよ」


「『もし』って何よ!」


「だってまだ、決まったわけでもないですしねぇ」


「う~! あなたってそういうとこ、イジワルよね」


「先輩があんまり可愛いから、イジメたくなるんですよ」


「…そういう恥ずかしいことは、アッサリ言うし」


「先輩の彼氏ですからね」


「ふぅ~んだ!」


彼女はむくれながらも、黙々とクレープを食べる。


やがて頂上にたどり着く頃には、2人ともクレープを食べ終えていた。


「う~ん。さすがにまだ満開まではいかないけど、コレはコレでキレイよね」


「そうですね。一斉に咲くのもキレイですけど、少しってのも良いもんですね」


彼女は駆け出し、あの木の下に立った。


そしてそっと、咲きかけの蕾に触れる。


「この分なら、あと10日ってとこかしら?」


「そしたらまた寄りましょうね」


「うん! もちろん!」


彼女が笑顔で、蕾をなでる。


その姿に、昨年の彼女の姿が重なって見えた。


―あの時、同じ学校の生徒だと分かっていても、消えてしまったことに、ひどく心が揺れ動いた。


きっとそう…あの感情は『悲しみ』。


喪失感から生まれた、負の感情。


彼女は本当に存在したのか?


もしかしたら、本当に幻だったのではなかったのか?


そんな考えが駆け巡ったから…。


思わず胸を押さえると、いきなり、あの時のように突風がふいた。


「きゃあっ…!?」


彼女は驚いて、蕾から手を離した。


乱れる黒髪で、彼女の顔が見えなくなってしまう。


オレは駆け出していた。


「先輩っ!」


突風から彼女を守るように、とっさに抱き締めていた。


消えないように、逃げないように。


強く、強く―!


…しばらくして、風はやんだ。


けれどオレは彼女から離れなかった。


「えっと…、風、やんだわよ?」


腕の中で、彼女が恐る恐る声をかけてきた。


「そう…ですね」


少し力を緩めると、彼女は顔を上げた。


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