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桜の雪  作者: mimuka
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出会いの桜

オレが始めて彼女を見たのは、桜の花がまるで雪のように舞い散る日だった。


その日は薄暗く、そして風が少し強かった。


決してお花見日和とは言えない日だったけれども、舞い散る桜の白い花びらは、とても美しかった。


学校から家へ帰る途中、桜の山に寄りたくなって、そこへ向かった。


山一つ、桜の木ばかり植えられた山は、季節外れにも白く染まっていた。


けれどこの風じゃあ、明日には茶色になっているかもしれない。


そう思いながら、人気のない山の中を歩いた。


花びらは吹雪のように舞い散り、視界を遮る。


それでも上っていくと、頂上に人がいた。


すでに細い土道しかない頂上に登る人間なんて、滅多にいないはずなんだが…。


けれどそこは桜の木が密集していて、とても幻想的な雰囲気が広がっていた。


そこに、彼女がいた。


長く美しい黒髪を風に揺らして、笑顔でその場に立っていた。


周囲の木より、一際大きい桜の木の下に立ち、舞い散る桜の花吹雪に身を委ねていた。


同じ高校の制服に身を包みながらも、その姿はまるで桜の精のようだった。


きっと、着物とか着たら、そう思っただろう。


「あっあの…」


思わず声をかけた時、彼女の笑顔が固まった。


「えっ?」


黒く大きな瞳が、オレを映した。


けれどいきなり突風がふいて、オレは思わず腕で顔を覆った。


「うわっ…!?」


桜の花が視界を覆う。彼女の姿を隠す。


そして風がおさまった頃には…彼女の姿は消えていた。


「…幻、だったのか?」


それにしては現実感があるし、何よりウチの学校の制服を着てたしなぁ。


…明日、学校行ったら探してみるかな。


しかし翌日、すぐに彼女は見つかった。


「1年生のみなさん、はじめまして。わたしは図書委員の副委員長です」


入った図書委員の、副委員長だった。


彼女は明るく、ハキハキとした人だった。


昨日見た時は、とても儚げに見えたんだけど。


そして委員会が終わって、彼女が1人になるのを見計らってオレは声をかけた。


「副委員長」


「はい?」


「昨日、桜の山でお会いしましたよね?」


「桜の山?」


キョトンと、可愛らしく首を傾げるも、その口元は微妙に歪んでいる。


「…もしかして、委員会をサボッて行ってたとか?」


「ぎくっ★」


自白してるし。


「みっみんなには内緒にしてくれると、嬉しいな」


「副委員長がデートしてくれるなら」


すると今度は本当にキョトンとしてしまった。


「えっと…」


「一目惚れです。オレと付き合ってもらえませんか?」


「えっ…ええっ!?」


白い彼女の肌が、桜色に染まる。


キレイな人だな、と素直に思った。


「誰か他に好きな人とか、恋人とかいるんですか?」


「いっいないけど…急ね」


「モタモタして、取られるのはイヤですから」


「んっ…。まあその考えは理解できるけど」


頬にかかる黒髪を上げる仕種。


指が細くて長い。


ツメも桜の花びらみたいに、キレイだ。


―キレイな人だ。


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