第1話 射貫かれた竜
竜が墜ちてゆく。
少女は茫然と、空をつんざく女の悲鳴を聞いていた。
「嘘よ、そんな……」
今日は自身の初陣であった。従姉妹がその世話役を買って出てくれ、つい先ほどまで、年相応の話に花を咲かせていたその時――突として飛来してきた矢が、従姉妹の竜の頭を貫いたのだ。
「馬鹿な……」
少女が乗る竜は愕然としていた。
「竜の目よりも向こうから、それも地の者が、一撃で竜の頭を射抜けるものか……!」
その目は遙か遠くを見渡し、その耳はいかなる音も聞き逃さないと語られている。ゆえに『竜を倒せるのは竜だけだ』と、言われていたにも拘わらず、それが今、真っ向から否定されたのだ。
「ルトランッ、ピステを助けに行って!」
従姉妹の悲鳴が、どんどんと遠ざかってゆく。
頬を震わせていた少女は歯を食いしばり、意を決して竜に命じた。
「な、何を言うッ!」
「ピステはまだ生きてるのよ!」
「この高さでは助からん! 諦めろ!」
ルトランと呼ばれた竜は語気を強め、『後ろを見ろ』と言うかのように振り返る。
少女も身をよじった。曇天を背に、竜に跨がった仲間たちが広がっている。……なのに、みな顔を強張らせたまま、自分と同じ考えをする者は誰一人としていないようであった。
「竜は個のために多を犠牲にせん。残念だが――」
「なら、身内の私たちだけでも……僅かでも、ピステが助かる見込みがあるのなら!」
すがるような声で叫び、前に進めと竜の背を押した。
「判らぬかッ! 遅きに失していると言うのだ、ゆけばお前も死ぬのだぞッ!」
「判っているわよ! でもあなたは、この竜群の中で最も古い。戦場の空をよく知るのなら、助かる道も見つけられるでしょうッ!」
ルトランは口を噤んだ。
少女は背を何度も押し、切な声をあげ続ける。「お願いッ!」
「……なら、これだけは約束しろ。もし我が討たれ地に墜ちれば、辱めを受ける前に懐の短刀で喉を突け! いいなッ!」
少女は一瞬、この言葉に動揺を見せた。
しかしすぐ顔を引き締め、「行ってッ!」と命令を下す。