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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
序章
9/40

巣立ち

 

 目がさめるとベットの上だった。少しの吐き気とめまいがするがグラリと立ち上がってリビングに行くと例の4人がテーブルを囲んで話をしていた。


「お!ユウ、起きるの早いな普通なら1日ぐらいは眠ってるところだが流石だな!」

「おはよう、ユウ君大丈夫?フェルトはやりすぎなのよ」

「・・手加減はいらないって言った」

「いいんだよ、これでわかるだろうさ、強化の重要さをね」


 ユウはフェルトに威圧されて気を失っていたのだ。それに、加えて今レイラの口から出た「強化」という言葉。おそらくそれで威圧を防げるのだろう。


「強化、それがあったらアレを防げるの?」

「防げるかどうかはあんた次第だがあんたはとてつもない魔力量をしている。訓練すれば防げるようになるだろうさ。」

「わかった。それを教えて!」


 強化、これが魔法の練習の最終段階にある理由。それをこの後、ユウは身をもって実感するのだった。


「でも少し眠った程度で済んだってことは咄嗟にだけど無意識で発動したのね。」

「この中だとフェルトが強化も威圧も1番得意だからねフェルトから教えてもらいな」

「フェルト、お願い。」


 こうしてユウはフェルトに強化を教えてもらうことになった。

 威圧、おそらくあれは自身の魔力に意思をのせてそれを直接相手にぶつけてるんだろう。使われたからこそわかるこの感覚、正直フェルトをなめていたところはあった。だが今回のことで考えを一新した。あの4人は間違いなく4人全員がかなり強い。伊達に各属性のトップを名乗っていないということだ。


「・・・まずは、魔力を纏う。それを体になじませる。それが身体強化。ユウもやってみる。」

「わかった。」


 魔力による身体強化、これまでそんなことは一切やってきていなかったユウだが、フェルトの言ったとおりまずは全身に魔力を纏う。そして体中の皮膚や筋肉、細胞レベルでなじませていく。繊細な魔力のコントロールからかユウの首筋や顔には汗がにじんでいる。ここまででもかなりの魔力コントロールを習得したと思っていたがまだまだだったようだ。


「・・・力が入りすぎ。もっとリラックス」

「くっ!」


 リラックスといわれてもそんな場合ではない。かなりの集中力を使ってようやく制御しているのだ。

 それに比べフェルトはユウに教えながら何事もないように身体強化を行っている。この差だ。魔法の威力では負けていないと思うがコントロールする能力については圧倒的に差がある。


「・・・全然ダメ。これから毎日これをする。がんばる」

「・・・はい。」


 初めてだった。ここまで魔法についてのことでダメだしをされたのは。今までは確かに練習は厳しかったが出来ないことはなかった。しかし今回の身体強化というものはそうは行かないらしい。またもやフェルトのすごさを思い知らされた。

 それから毎日毎日、ユウが身体強化をする。フェルトが威圧する。ユウが倒れる。起きたらまた強化、威圧。その繰り返しの日々だった。




 そしてそのままユウは9歳を迎えた。

 集中してやるとフェルトの威圧はなんとか防げる程度まで身体強化を習得したユウは次の段階に進んでいた。



「はあっ!」

「おっ!今のはよかったぞー。だがまだまだだ、なっ!」

「くっ」


 今はリオンとの模擬戦をしている。あれから身体強化もだいぶ安定してきてさらに負荷をかけるためにリオンと肉弾戦をしながら身体強化を継続して行っている。しかし身体強化を行っていないリオンが想像以上に強かった。リオンは身体強化が苦手らしく、その代わりに体と精神を鍛えたらしい。とんでもなく脳筋だ。


「何でこんな強いんだよ。脳筋が」

「筋肉はいいぞー、ユウも鍛えるか?」

「いらない!」


 そんな無駄話をしている間も次々と拳や蹴りを打ち込んでくるリオン。それをうまく流しながら反撃するユウ。これだけ聞くと互角のようだが手数が違うのだ。ユウが1撃放つまでにリオンは5発は攻撃してくる。そんな中、リオンから思いもよらぬ言葉が飛んできた。


「ユウは大自然の魔力を使えるんだからもっと思い切って強化しろよ」

「あ!そうか!」

「っと、やべ」


 バキッ!

 リオンの言葉にユウの動きが止まった。そしてリオンの拳が顔面にクリーンヒットしてユウの体は意識と共に吹き飛んだ。


 リビングのソファで目を覚ましたとき右の頬が熱くて横にはアリアが立っていた。


「あ、大丈夫?一応治療はしたから痕は残らないとは思うけど、無理しないようにね。」

「ありがとうアリア姉ちゃん」


 まだ頬は痛むがリオンに言われたことを思い出しすぐに外に出たユウ。実は今までユウは自分の魔力を使って身体強化を使っていたので大気の魔力を身体強化に使うなど思いつきもしなかった。早速それを試してみることにする。


「お、ユウ起きたか!顔大丈夫か?」

「うん、アリア姉ちゃんが治療してくれたから。そんなことよりも大自然の魔力で試してみるよ。」


 もう何回か肉弾戦でリオンに殴られているから慣れているのだ。そういうとユウは目を閉じて魔力を繋げた。今までは魔力を使うだけと考えていたが今はそうではない。大自然の魔力を自分の中に受け入れて隅々までなじませていく。すると大自然の魔力は元からユウの体にあったかのように体内に流れ込んできた。その魔力はどこか暖かく懐かしく感じ、まるで喜んでいるかのように体になじんだのだった。


「っ!すごい!すごいよ!!」

「なんだ?どうした?」

「・・・完璧になってる。なにした」


 リオンには身体強化がわからないようだがフェルトは理解したようだ。ユウがこれまでとは比べ物にならないくらいの質の身体強化をしていることを。


「大自然の魔力を使って身体強化をしてみたんだ。そしたらさ、ん?何か来る。すごい勢いでこっちに向かってくるよ。ばあちゃんまた誰か呼んだの?」


 大自然の魔力とつながり、細胞レベルで馴染ませたユウはあたりの様子が手に取るようにわかるようになっていた。そしてそのおかげでここに近づく不自然なものにも気づいたのだ。


「いや、誰も呼んでないよ」


 4人が来たときのようにまたレイラが誰か呼んだのかと思ったが違うらしい。いったい何なんだろうと思っていると4人の魔力が急激に変化した。


「「「「っ!!!」」」」

「うわっ!」


 4人全員が一気に戦闘態勢に入った。あまりの魔力の変化から生じた圧に少しびっくりしたが身体強化のおかげで少しですんだユウ。


「ユウ!ここから全力で逃げな!!!」

「え?なに?」

「早くしやがれ!きちまうぞ!」


 わけがわからない。急に逃げろと言われたのだ誰だっていこんな反応になるだろう。しかし4人は全員本気だった。それはその戦闘態勢と顔や声から伝わってくる。しかし俺だけ逃げろとはどういうことだろうか。そうモタモタしているとユウの周りに急に風が起こった。


「おそい!!しっかり着地するんだよ!もうここには帰ってきちゃいけない!いくよ!」


 そう言うとレイラの風魔法によってユウはものすごい勢いで飛ばされた。勢いよく流れる景色を見ながら何があったのか考えていると飛ばされた方向からものすごい魔力の衝突を感じた。何かと戦っているようだ。その衝突はかなり離れているユウのところまで大気を揺らし伝わってくる。これまでにかなり強くなれたことを実感していたのだが、おそらくあの中に自分がいても足手まといになるだけだ。だがあの4人は間違いなく強い。そう簡単に負けたりはしないだろう。信じよう。とりあえずユウは着地に意識を向け森の中に着地した。ここがどこだかわからないレベルで遠くまで飛ばされた。もうここから家の様子は何もわからない。


「ん?なんだこれ」


 着地のときポケットに何か違和感を感じたので手を突っ込むと手紙のようなものとお金が入っていた。

 ユウは迷うことなく手紙を読み始めた。


「ユウへ

 10歳のお誕生日おめでとう。

 これを読んでる頃にはあんたは私に追い出されて旅に出てる頃だろう。

 これまでかなり大変な日々だったと思うけどよくがんばったよ。

 ユウが10歳になったら話そうと思っていたことがあるんだ。

 私の口から言えなかったときのためにここに書いておくよ。

 ユウ、あんたは私の本当の孫じゃないんだ。

 10年前、森の中から泣き声が聞こえてね。見に行くとあんたがいたんだ。

 そのときの光景は今でも覚えている、野生の動物たちが赤ん坊のあんたを囲んで守っていたんだ。

 人間なんだからそのままではいけないとあんたを拾ったわけさ。

 今まで黙っててすまなかってね。

 だけどね、一緒に住むうちにだんだん可愛くなってきてね。

 今では本当の孫だと思っているよ。

 だから、これからあんたは世界を旅して目標を見つけて、強く生きていっておくれ。

 近くに来たときにはたまにでいいから帰っておいでよ。いつでも部屋は空けておくからね。

 最後に、私の口からはいえなかっただろうけど、愛してるよユウ。

 レイラ」


 心が温かくなった。


「本当の孫じゃない。そんなことははじめから知っていたんだ。こっちこそ本当のこと言わなくてごめんね。ありがとう。。。よしっ」


 周りに誰もいないので感情を口に出したユウの目には魔法で集めたわけではない水分が溜まっていた。

 ここで勘違いしてはいけないことがある。ユウは今9歳だ

 どうやらこの手紙はユウが10歳になると家から追い出して旅立たせ、そのときに渡すつもりだったんだろう。それがさっきの緊急事態で今日になったというわけだ。一体どうやってポケットの中に入れたのかわからないが。。レイラの素直な言葉を聞けてうれしかった反面、自分は本当のことを言っていないという申し訳ない気持ちで複雑な感情だが感傷に浸っている暇はなさそうだ。今はここがどこだかわからない森の中、何の用意もないのでとりあえず街にいくことを決めるユウは風邪を纏い、空高く飛び上がりあたりを見渡した。すると案外近くに町を発見したのでそこに向かうことにした。


「ばあちゃん、いってきます」


 そういうとユウは最初の目的地セルグの町に向かって飛び始めた。


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