3年目の魔法試験
4人の師匠を迎えてから魔法の練習を初めて1年が過ぎ、2年が過ぎ、
そしてユウは8歳になった。
「さぁ、これまでの復習だよ、やってごらん」
家からは少し離れたところまで来た4人のうち、まずはレイラが声を出した。それに対して無言で頷いたユウ。ユウの足が浮き、人一人分くらいの高さまで浮くとそこからイメージしたのはいくつものエアカッター。それを同時に発生させる。そして放つっ!
「エアスラッシュ!」
暴力的な風が目の前の木々を粉々に切り刻んでいく。ユウがあたりの空気を完全に支配しているのだ。
「よくやったねユウ、合格だよ」
「よし、じゃあ次は俺が教えてきたのをやってみろ」
次はリオンからの指示だ。静かに地面に降りたユウはまたもや無言で頷いた。イメージしたのは火球。だがただの火球ではない。自分の方には熱がこないよう制御してある直径が人の身長ほどもある火球をユウは斜め前に生み出した。木々火球に触れてすらいないのに伝わってくる熱さからか周りの木が燃え始めた。ユウはそれを地面に叩き尽きる。
「フレイムメテオッ!」
ドゴオオオ!!!
凄まじい轟音と共にそこに1つの小さなクレーターが完成した。すぐさまアリアが火を消しているのはあらかじめ予定されていた行動だ。
「こりゃ文句のつけようがねぇや!合格だ!」
「じゃあ今度は私の水魔法ね。ユウ君やってみて」
アリアが言い終わる頃にはユウは周りに冷気をまとい始めていた。先ほどの熱とは正反対の冷たさ。足元の草が凍り始めている。そしてユウが右手を下から上に振り上げた。それは指向性を持った冷気の攻撃。
「アイスエイジッ!」
パキキキキキッ!
手を振り上げた方向がなんとも綺麗な氷の森と化した。地面に生えた草から大きな木まで目の前の全てを凍らせたのだ。
「ははっ、上手になったわね、合格よ」
「・・ユウ、アレを・・やる」
これでもフェルトは初めて会った時よりもだいぶ話してくれるようになった。
ユウはフェルトの声を聞くとすぐに両手を地面に付けて言い放った。
「ゴーレムフィスト」
すると目の前の地面が盛り上がり、そこに出てきたのは何かの鉱物で形成された強大な拳。その拳は地面から伸びてきてあたりの木々をなぎ払った。その速さに風が起こるがその程度で動じる人この中にはいない。
「・・完璧。合格。」
「ふぅ、、、よっしゃー!!どうだった!かなり練習したんだよこの魔法!」
集中を解き、全て合格を貰ったユウは喜んではしゃぎながら魔法の出来を4人に尋ねた。
「自分たちで教えといてこんなこと言うのもあれだけど、やっぱりユウ君の4属性魔法はすごいものがあるわね。」
「しっかし、本当にユウが魔力を無限に使えるからあんな地獄みたいな練習ができたけど、普通の子供なら死んでるぞ?」
「リオン!そのことは口に出すんじゃないよ。この短い期間であたし達が教えられることをほとんど教えたからね。大変だったろうに、よくやったよユウは。」
「・・おめでとう」
4人が口々に褒めてくれている。たしかにこの3年間は、かなりしんどい日々だった。朝起きてから夜寝るまでずっと魔法の練習だし夜は疲れ果ててベットに入るとすぐに眠ってしまっていた。そして起きるとまた魔法の練習だ。それを繰り返してきてようやくここまで来ることができた。
「たしかに大変だったけどまだ3年だよ?あと2年残ってるけど。」
そうなのだ。レイラは5年間鍛え上げると言っていた。そして今は3年が経っているがまだ3年だ。当然あと2年どうするのかと言う疑問は生まれてくるわけで。。
「ああ、それは今から説明するよ。アリア、あれをやるよ。」
「わかったわ。ユウ君、しっかりみとくのよ」
何が始まるのだろうか。「あれ」とは一体なんなのか、そう考えているとレイラとアリアが並んで立った。そして息ぴったりでこう唱えた。
「「空を走り、地に衝撃を与えよ。大精霊の怒りを我が力に!トールッ!!」」
ドゴオオオオオオオオン!!!
なにかがはるか上空で大爆発を起こしたかのような轟音を響かせたかと思う、空と大地が一筋の光で繋がった。それは大自然の驚異。「雷」だった。
これまでとは一線を画す威力の魔法が目の前で放たれて、ユウの心にも少なくない衝撃を与えた。
「なに今の!ばあちゃん!アリアねーちゃん!」
「今のはね風と水の混成魔法トールだよ」
「混成魔法??」
ここに来て聞いたこともない単語が出て来た。だがおそらく今自分が思い浮かべている解釈で合っているのだろう。
「そうさ、水魔法と風魔法を同時に使いその2つを作用させて雷を生み出す。それがトールさ。4属性全てを使えるユウはこれを知っておく必要があると思ってね。後の2年はまずは混成魔法を習得してもらう。かなり難易度の高いものだから心が折れないように頑張りなよ」
やはり、思っていた通り、2種類の魔法を混ぜているんだ。これは魔法の持つ可能性が広がる話だな。何せ俺は4属性を使えるんだからな。
「ついにユウが混成魔法を使うのか、4属性魔法の使い手が使う混成魔法は凄いらしいからな。それにユウはまだ8歳だこれからどんどん強くなるだろうな。」
そう、それには俺も気づいていた。さっきレイラとアリアが見せてくれたのは2種類の混成魔法。だが俺は4種類全部の混成魔法を使えるかもしれないのだ。
「混成魔法は誰かのを真似するも良し、自分で作るも良しだからね。がんばんな!」
「自分で作るの!?」
びっくりした。魔法って作れるのか。でもそりゃそうか、教本にはイメージさえできれば魔法を行使できると書いてあった。つまりそれは存在しない魔法でもいいと言うことだ。ただその魔法をしっかりと想像できるかどうか、か。
「そうよ、さっきユウ君に見せたトール。あれはレイラが編み出した魔法なのよ」
「ばあちゃんが!?」
「ふんっ」
まーた自慢気な顔をしているレイラをみせられたユウだがトールを思いつくのはたしかにすごいことだ。
「まぁユウは後2年しかないからね、1つ作れたら上出来さ」
ほう、混成魔法は2年に1つできたらいい方ということか。それにしては今俺の頭の中にはいくつかの混成魔法の考えが浮かんでいるんだが。
「わかった!じっくり考えてみるよ。と言いたいところだけどさ、1つ試してみていい?」
「ん?なんだい?」
今浮かんだのは混成魔法とは呼ばないかもしれないほど簡単なものだが試してみたかった。
「火と風の混成魔法を思いついたんだ」
「ははっ!そう簡単にできたらレイラやアリアも苦労しねぇよ!」
「まぁまぁ、ユウ君、フォローはするからやってみて」
脳筋のリオンに馬鹿にされた気がしたのでこれは成功させるしかないと意気込みイメージをする。
火をつけ、そこに風魔法で酸素を送り込むイメージ。
「よっ!」
ボウッ
それはあっさりと完成した。前世ではよくやったガスバーナーと同じ要領だ。火をより高温にするために酸素を送り込んでみたがあっさり成功した。
「「「そんなっ!」」」
「・・・青い、炎」
4人全員がびっくりしているようだったのでおそらくこの魔法はまだないのだろう。
「成功。かな」
「おいおいおい!なんだこの色の炎は!俺でもみたことねぇぞ!」
火炎魔法のリオンさんが驚いている。さっきあんな言い方をしていたのでしてやったと少し嬉しくなった。
「これはね火の中に酸素を多く送り込み続けるんだ。そうすると普通の火よりも高温の青い火になるんだよ」
「普通の火より高温だと?ふっ、試してみようぜ」
そういうとリオンはユウから10メートルぐらい先に立って小さな火球を生み出した。
対してユウはリオンが生み出した赤色の火球と同じ大きさの青色の火球を生み出した。そう、今からこれをぶつけあってどっちが強いか試そうってことだ。
「アリア、フォローしてやんな。」
「ええ、任せて」
そういうとアリアはユウとリオンをドーム状の水で囲んだ。周りの森に影響が出ないようにしたのだ。
そういえば言っていなかったが、この森には不思議な力があり、木々や植物が驚異的な速さで育っていく。5歳の時に燃やしてしまった家の前の木も3年たった今では元どおりになっているのだ。だが、影響が出ないに越したことはない。
「さぁ、行くぜユウ!」
「いつでもいいよ」
「はっ!」
「よっ!」
お互いの火球がすごい熱量を持ちぶつかり合ったのだが、瞬く間に青い火球が赤い火球を飲み込み、リオンに迫っていった。リオンに届かない所で形をとどめて置かなくなった青い火球は火を散らしてしまった。
「あっつ!あっつ!あっつ!」
「あ、ほい!」
火がリオンの服を燃やし始めたのでその部分を凍らせて鎮火する。
「はー!やられたぜ!なんだよあの威力は!俺の火球を飲み込んだぞ?」
「さっきまで師匠だったのにリオンの完全敗北ね」
水のドームを解いたアリアがクスクスと笑いながらリオンに話しかけた。
「おいユウ!なんか水を使った混成魔法ないのか!アリアを黙らせてやってくれ!」
ユウに負けたことよりもアリアに煽られたことの方が気に食わなかったのかそんなことを言って来たリオン。だがそんなにポンポン完成させることはできない。思いついてはいるのだがまだまだ確信がないからな。
「残念だけどまだ思いつかないよ」
「すでに1つ完成させたんだよ、それだけでも十分すごいさ」
あれ?2年で1つの混成魔法を完成させればいいって言ってたからもう終わり?2年分の修行終わっちゃった?そう思っていたらレイラから提案があった。
「んー、混成魔法をこんなに早く完成させちまうとはねぇ。予想外だが最後に1つ、押さえておこうかな。フェルト!」
「ん、」
フェルトが一歩前に出てきた。するとフェルトは自身の魔力を高めたとか思うとその魔力にまるで敵意があるかなようにユウに向かってきた。いや、襲いかかってきた。正しくは襲われるような気がしただけでユウはその場から一歩も動けなくなった。フェルトから目を離すとすぐにでも自分の命が刈り取られてしまうのではないかという恐怖から汗をたらりを流している。
「どうだいユウ、これがフェルトの得意とする技。威圧だよ。」
ものすごい圧力だ。地面に膝をつきかけるギリギリのところで踏みとどまるユウ。これでも限界だ。足はガクガクになっている
「おお、さすがユウだな、フェルトの威圧を受けてもまだ立ってられるのか。普通の傭兵ぐらいなら気を失ってるぞ」
「・・手加減してる・・から」
「フェルト、手加減はいらないよ。本気でやりな」
「・・わかった」
さっきまででもすごかった圧が何倍にもなり、心臓を直接握りつぶされるような、まるでユウの生殺与奪の権利をフェルトが握っているような感覚に陥った。あまりの圧の強さと恐怖にユウは自分の意識を保つことが出来ずにその場に倒れ臥すこととなってしまった。




