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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
王都編
39/40

精霊国の来賓


「ようこそ、真の4属性魔法の使い手ユウ!ここにきてくれたことにまずは感謝したい。そして先程試すような真似をしたこと、全てはこの国のため、許してやって欲しい。しかし今はひとまずユウを歓迎させてほしい。宴を始めよう!!」


そういうと右に手を伸ばした。その方向には様々な楽器を持った男女が座っており、王の手に合わせて演奏が始まった。

その部屋には左右に兵が控えており、中央には大量の食事が置いてあるテーブル、そしてそこに座るのはドレスとスーツに身を纏った男女だった。すべての人がこちらを見ている。

左右に控える兵士達の顔をよく見ると先程の部屋にいた貴族のようだった者達ではないか。

つまり本当の貴族には危険なことはさせず、兵士に貴族の振りをさせていたのだ。あの空間全てが嘘だったと言うこと。してやられたのであった。


ユウはため息をつくとフィオナの顔を見たが困った顔をしていた。おそらくユウも同じような顔をしているだろう。

ユウ達は立ち尽くしていても仕方ないと王から一番遠い席に座り食事を取り始めた。サラダや丁寧に焼かれた肉、その肉には光沢がありどうしても食欲をそそる物となっている。テーブルを見渡すと魚のようなものもあることがわかる。王はしきりにこちらをチラチラと見ては微笑んでいる。どうやら意外と気にしてくれているようだ。

許す許さないは別にして、、、


「ユウ君、どう?結構美味しいでしょ?ここのご飯好きなんだよねー。あ、僕はミキ!魔法師団の第一部隊隊長だよ、よろしくね」


もぐもぐと口に食べ物を突っ込みながら話すこの男、王の前だと言うのに食べ方が汚い。

他の豪奢な服を着た大人達は姿勢を正しく、ナイフとフォークを使って綺麗に食べている。しかしミキの汚い食べ方を指摘する者は1人たりともいない。それどころか気にしている者すらいないように感じる。


「はぁぁ、、、」


ユウは思わず大きなため息をついてしまった。王から召喚されて気を張っていたものがどこかへ吹っ飛んだわけだ。それに横に目をやるとガツガツと食事にありつくフィアナの姿がある。


(こいつは遠慮というものを知らんのか、それでなくてもついこの間騙されて拉致されて酷い目にあったというのに)


「ユウ!食べないなら貰ってもいい?」


ダメに決まっている。

ユウは無言で食事にガッつき始めた。

それを見た王も安心し笑顔になった。その笑顔は優しさに溢れており、自分も食事を始めながら尋ねた。


「してミキよ、ユウの実力はどうだった?」


先ほどで華やかな声色で彩られていた部屋が、しん、と静まり、ピタッと食事の手が止まった。


「んー、そうだねぇ。ユウ君は僕以上のモノを持っている。それも圧倒的にね。」


ミキのその言葉に会場がざわついた。精霊の国最高戦力のミキが自分よりも凄いと言っているのだ。

今は同じテーブルを囲んでいるとはいえ先程の無礼を知らぬ者はいない。ミキでも勝てないかもしれない相手に無礼を働いたのだ、不安と焦りが今更になってふりかかってきているのだろう。


「でも今ならまだ僕が勝つよ」


ピクリと反応してユウはミキを見た。ミキもこちらを見ている。


「ほう、そうか。ユウよ、その歳でその実力とはどうやって身につけたのだ。」


ミキの発言に場の空気が少し緩んだ。この場における最高戦力が味方であることを知り、少しの安心がそうさせたのだろう。

王はユウがミキを唸らせる実力者だと知るやいなやその出所を探ってきた。王からするとただの日常会話程度なのだろう。

ユウは特に隠すつもりも必要もないと判断し素直に答えることにした。


「ばあちゃんとその友達が教えてくれた。」


「ばあちゃんとは、、、ハッハッハ!その年齢の女性でそこまでできるのは風殺の魔法使いぐらいだろうな!ハハッ!」


王はユウが冗談を言っていると思ったのだろう。笑ってしまった。だがその発言にユウも吹き出し笑ってしまった。

王からすれば冗談を笑っている。しかしユウからすれば風殺の魔法使いなどと呼ばれてることに笑ってしまったのだ。だってレイラはこの二つ名を気に入っていなかったのだから。


そうしてこの食事会は幕を閉じ、ユウとフィアナは王城の一室へと通され王都フェアリオンではここで過ごすこととなった。もちろん番兵など顔パスだ。


「フィアナ、見覚えのある顔はあったか」


フィアナは首を横に振った。


「それにあの人達からは悪意を感じなかった。多分あの人達じゃない」


「そうか、あの参謀も協力してくれるみたいだし、少し時間がかかるかもしれないが俺たちでも調べてみよう。」


コクンと首を縦に振ったフィアナは早くもベッドに潜り込んだ。ユウも早く寝たい気分だった。お互いかなり疲れている状況でここまできていたので体が睡眠を求めているのだ。それにここのベッドはめちゃくちゃ気持ちがいい。




次の日の朝、コンコン というノックで目を覚ましたユウとフィアナは世話係を担当する合計5名のメイドに起こされた。太陽が登り始めた朝、とても規則正しい生活リズムだった。部屋を見渡すと先日脱ぎ散らかしたはずのタキシードが綺麗に壁にかかっている。このメイドたちがいつのまにか片付けてくれたのだろう。

5人のメイドは熟練された動きで一つの無駄もなくユウとフィアナの着替えや身支度を整えていく。

もちろんユウもフィアナも初めての経験でどうしていいのか分からなかったが、それでもスムーズに進むのはこのメイドたちの動作一つ一つが熟練されているからだろう。

用意された服は動きやすく少しゆったりした服と、体にピッタリあった正装に近い服装の2種類だったためゆったりした服を選び、今後服の用意は要らないと言っておいた。


「本日は何をなさいますか」


メイドの1人がユウに尋ねる。

まるでこれまでもずっとユウについていたかのように。


「今日はギルドへ行き、『3番隊』の文字を消してもらって、その後服屋などで必要なものを買い出す予定です」


服を毎回用意されるのも嫌なので自分たちで選んで買いたい。3番隊の文字をファストの町では消して貰えなかったのでここで消すしかない。この肩書きは便利だがもう属していないのにずっとついていても勘違いされてしまうだろうし、ユウとしても早く消したかったのだ。


「承知いたしました。では朝食の準備が整いましたのでどうぞお召し上がり下さい。」


ノックで起き、大きなボウルに入ったぬるま湯で顔を洗い、着替えさせられながら髪型を整えられた。

ここまでおよそ10分ほどだ。

この大きな部屋にあった丸テーブルに白いクロスがひかれ、その上にはスープや魚料理、サラダと並んでいる。ユウは違和感を感じながらも渋々椅子についたため、フィアナも続いて座った。


カチャカチャと食事の音だけが聞こえ側には5人のメイドが控えている。

4属性魔法を使えるだけでこの待遇なのはユウとしても、いやフィアナが1番息苦しそうだ。

朝から何やらうるさく話していそうなフィアナが朝食を口に運びながらチラチラとメイドの様子を伺っている。堅苦しい場に慣れていないのが丸わかりだ。

ユウも慣れていないのだが、まるで慣れているように振る舞えるのは前世の記憶があるからだろう。


「ご馳走様でした。」

「ご、ごちそうしゃまでした!」


盛大に噛んだ。フフッ、と笑ってしまったのはユウだけでメイドの誰1人フィアナが噛んだことを笑うことはない。

これはオナラをしてしまった時に黙られると気まずいのと同じでフィアナの顔が赤くなっていた。


「よし、僕はギルドに行こうと思うんだけど、フィアナはどうする?」


「私はお金も無いし、、どうしよう。」


忘れていた。フィアナは元々お金を持っていないので別行動をするのも難しい。仕方ないまたお金を少し貸してやるかと思っていたのだが、メイドから思いもよらぬ言葉が出てきた。


「フィアナ様とユウ様には我が王より、金貨50枚ずつお渡しするよう仰せつかっております。」


その言葉を発した両隣のメイドが金貨が50枚も入った袋を2人に手渡した。


「先日の試験の謝罪と召喚に応じてくれたお礼。そしてここ王都フェアリオンを楽しんでもらうための資金に。とのことです。」


金貨50枚といえば大金だ。一般の人が稼ぐのには相当な苦労がいるだろう。

この間の龍の討伐依頼の報酬でさえ金貨までは行っていないのだから。

フィアナは大金を目にしたがユウの顔を見た。

(これ貰っていいのかな??)

そんな目をしていた。これを受け取れば事実上2人はフェアリオンの国賓として迎え入れられ、それを快く受け入れたという証明になる。王は4属性魔法の使い手との繋がりが保証されるということになるのだ。

しかしユウとしてはこれを返す気はない。「これは受け取れません」こんなセリフ何回も聞いたが普通受け取るだろう。裏の意味をわざわざ考察して自分の行動の幅を維持する。

そんなこと10歳前後の男児はやらないからだ。


「ありがとうございます。これはありがたくいただきます。フィアナも受け取っておいた方がいい」


「ありがとうございます!」


目が飛び出そうなぐらいに金貨を見ているフィアナは面白い。



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