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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
王都編
37/40

再び王都へ

 

 目を覚ますとそこは暗い場所だった。だるくて重い体起こすとすぐにフィアナと目が合った。ユウが起きる前にもう目が覚めていたのだ。

 ユウはすぐさま闇魔法の収納から自分の服を取り出し、フィアナに渡した。


「ユウ、ありがとう。ごめんね」


 フィアナから発せられた最初の言葉は感謝と謝罪。ユウとしては本当に苦しんでたから救いたかっただけで気持ちよりも体が先に動いていただけで、確かに苦労はしたが傷一つついていない。だから謝られる必要性はないと考えていたのだが当の本人はそう思っていないようで本当に暗い表情をしていた。


「私、全部覚えてるの。身体の自由はきかなかったけど全部見てたし聞いてたんだ。ユウがふれたときに体の主導権を龍から取り戻してだんだんと力が抜けていっちゃって、、、」


「ああ、わかってるよ。全部見えたから。」


 ユウはフィアナと繋がった時にいろいろな記憶や感情を見ていたので大体のこと理解しているしかしユウが一番気になることがあった。記憶ではほとんど見えなかった部分、研究所のことだった。


「フィアナ、どこのどいつにやられたんだ。教えてほしい」


 フィアナの手を握り、できるだけ不安を取り除けるように聞いた。フィアナは薬を無理やり投与され、血を抜かれおよそ人間として扱われていなかったのだ。その記憶を思い出そうとすることは当然つらいことで恐怖や不安がフラッシュバックし、精神的に不安定にある可能性があったからだ。


「うん、セントラルから龍の国に送られてるときにね、、、」



 フィアナは詳しく話した。急に眠らされて起きたら研究所で実験体になっていたこと。そして身体がいうことを聞かなくなり、研究員を皆殺しにし、脱出して逃げてきたこと。そしてその研究所の場所だが大体の方角を指さしてユウは余計に殺気が増した。


 フィアナが指さしたのは王都の方角だったのだ。

 つまりこの実験には確実に王都が一枚かんでいるということだ。一枚どころか国主導の実験だった場合、ユウはこの精霊の国をどうするかわからない。ひどければ王都の権力者を一人残らず排除する可能性だってある。

 ユウはますます王都へと急ぐことを決めたのだった。


「王都から招集されているから俺はこれから王都に向かい、実験について問い詰めてくるがフィアナはどうする?つらいならフェストの町まで送るけど」


 実験の場所に行くなどフィアナにすれば相当つらいことのはずなので強制はしない。

 しかし、フィアナはユウが思っているよりもよっぽど強い少女だった。


「いや!私もユウについて行く!」


 この返事には驚いたがユウとしても近くにいてくれる方が守りやすく安全であるため、快諾し、ユウはフィアナを抱えて飛び上がった。


 フィアナは前までは高いところが怖いと空を飛ぶことを嫌がっていたのだが、龍化した後遺症なのだろうか特に怖いとは思わないと言っていた。

 ユウとしては早く王都に着けるのでいいのだが、龍化、もしくはあの薬がフィアナに何か影響を与えている可能性があると考えると素直に喜ぶことはできなかった。



 本来ならばフェストから数日かかるだろう道のりをフィアナを抱えながら飛ぶユウはたった1時間で王都の門までたどり着いてしまった。


 今回は遠慮などしない。4属性の魔法使いとして招集されているユウは門の目の前に着地した。風の魔法を完璧に制御しているため、門のあたりにいた人達には風が当たることはなかった。



 しかしこの王都は他の街に比べると凄いの一言に尽きる。まずはセントラルでは壁だったのだが、王都は透明のドーム状の魔法を展開してこの広い王都全域を囲っている。ユウとしては門を通らなくても上から入ればいいと思っていたのだがどんな魔法かわからない以上、やめておいた。

 門とは言ったが、土でできた橋が架かっており、透明のドームに小さく空いた穴に続いているだけだ。

 王都の中は高層の建物が中央に集まっており、真ん中にはこれでもかと自慢げに立派な城が建っている。ここから城までまっすぐ歩けば1時間ほどかかるんじゃないかとすら思う広さに更にこの城は王都のど真ん中に立っているので城の前後左右全てに片道1時間の広さがあることになる。恐ろしい広さだった。




 門のすくそばに降り立つと門番であろう兵士4人が警戒しながら向かってきた。


「何者だ!身分証を早く提示しろ!!!」


 ユウはおきまりのパターンだと無言でギルドカードを提示した。まず招集していたのはお前達の方なのに失礼すぎるだろう。


 俺は今機嫌が悪いんだ


 とでも言うべきだっただろうか。いや、辞めておこう。まだこいつらが悪いと決まったわけじゃないから手は出さないでおこう。


 恐る恐るギルドカードをユウから取り上げた門番はギルドカードを見た途端、驚くほどのスピードで土下座した。


「「「「申し訳ございませんでした!!!」」」」



 あまりのことに周囲の人がドン引きしているのだが、門番達は辞める気配がない。

 さしずめ「4属性魔法の使い手ユウが訪れたら丁重にご案内しろ」とでも指示されていたのだろう。それを第一声が「何者だ!」だからな。

 ツッコミどころが満載すぎてむしろ面白い。


「王からユウ様がお越しになられましたら速やかに王城へご案内するよう直々に指示されています!ですが人相までは伝える手段がなく、まさか上空からのご登場とは思わず、勘違いをしてしまいました!!どうか今回だけお慈悲を頂ければ幸いでございます!!」


「「「どうかお願いします!!!」」」



 堅っっ苦しい謝罪と挨拶だが誠意はこれでもかと伝わってきた。例え実験を国がやっていたとしてもこう言う末端の人間が知るはずがなく、強く当たる必要もない。そう言う考えを持つユウで良かったなと我ながら思ったのだった。


「ああ、大丈夫ですから顔を上げてください。こっちが恥ずかしいです。」


 頭を地面に擦り付けていた兵士達は姿勢はそのままに顔だけこちらに向けたがその顔は捨てられた子犬のような顔をしており、(可愛いとかではない)汗がダラダラと流れていた。

 王都では4属性魔法の使い手を敵に回すというのはそれほどに恐ろしいことなのだろうかという疑問を抱いたまま兵士達を無理やりに立ち上がらせた。


「失礼しました。それではすぐにご案内させていただきます。」


 そういうと兵士の1人がユウを先導し、街中に入っていった。ドーム状の魔法を潜る時、ユウは何かが身体に入ってくるような違和感を覚えた。これはシギルの干渉魔法に似た感じだったので特にリアクションなどもせず、身体強化と無属性魔力で弾き返した。


 兵士に案内されたのは街に入ってすぐ右のこの辺りに似合わない豪奢な建物だった。そんなに大きくない建物の中に入ると魔法陣が設置されていた。セントラルの教会でも見たがその時とは紋様も全然違うものだった。


「ではこちらの転送陣にお入りください。」


 魔法陣のことを転送陣と言っていたのでおそらく王城の近くまで転送されるのだろうが今のユウ達は王都を信頼していない。


「大丈夫です。自分で城までいくことにしますから。」


 そういう時ユウはふたたびフィアナを抱え空を飛んだ。歩いたら1時間ほどかかる距離がなんだ。ユウならばすぐについてしまう。

 王城が目の前に見えてきたところで王城から1人の男がこちらに飛んでくるのが見えた。


 お互いにものすごい勢いで近づき、目の前でピタリと止まった。

 間違いなくこの男は強い。風の魔法をここまでコントロールしてるのは凄いことなのだ。


「なんだお前?うちに何の用だ?」


 口の悪い男だった。服は肩から先がなく、下は袴のようなものを着ている。色合いは白と黒。シンプルだが珍しいデザインをしている。整った顔には傷1つなく、前髪を後ろに流したオールバックになっている。

 表情はこちらをこれでもかと睨んできているのだがこれがガンをとばすというやつなのだろう


「何の用だ?はこっちのセリフだ。お前らが呼んだんだろう」


 そうなのだ。王都側がユウを招集したのだ。こちらが用があるわけではない。


「ははん、お前がミキさんと同じ4属性魔法の使い手か。弱そうだなっ!」


 オールバック袴がユウめがけてエアカッターを打ってきたのだがユウは魔力に無理やり侵入し、力技で消し去った。


「おお!なかなかやるじゃねぇか!ならこれでどうだ!!!」



 ユウの周り全方向に発生したエアカッター、そして小さな竜巻も発生している。見た感じだと竜巻の中に極小さな小石が含まれており、この男が土と風の2属性を間違いなく使えることがわかる。見た目の割に器用なことをするものだ。


 ユウは再び魔法を消した。一瞬で消した。もはやユウには魔法は聞かないと言っても過言ではないのだろう。


「動くな」


 ユウが短く言葉を放ったのだが。その時にはすでにオールバック袴の首元に氷の槍が突きつけられていた。少しでも抵抗すればすぐに刺すことが出来る距離にある。


「くっ!」


 オール袴が苦々しく表情を歪めて動きをピタリと止めた。しかしその首に突きつけられた氷の槍にヒビが入る。


 パリンッ!


 と綺麗な音がなり、氷が弾けた。そして城からもう1人の男が飛んできた。

 その男が纏うオーラはまさしく「静」辺りの魔力すらも落ち着かせるほどに自然体で静かなものだった。

 服装はまさに和装で袴をすごく軽くした感じだった。

 こちらの色も白と黒を基調にしており、金色の刺繍が入っていた。


「リグ、辞めろ。王が呼んでるぞ」


 静かな雰囲気からどんな風に言葉を発するのか気になってしまったのだがいたって普通の喋り方だった。


「初めまして、キミがユウ君かな?僕はセイン。魔法師団1番隊隊長。こっちはリグで副隊長だよ、よろしくね」



 まさかだった。年はおそらく20前後。その若さにしてこの精霊の国最高戦力の魔法師団1番隊隊長だという。ユウの想像では全身傷だらけで歴戦の激しさが垣間見えるような見た目をしているのだと思ったがそんなことはなく、美少年といった感じだ。肌の色も白く、サラサラとした明るい緑色をした髪。見る人が見ればわかるが普通の人には凡人かアイドルに見えるだろう。


「おい、邪魔すんなよセイン!今こいつを試してるところだろ!」


 リグは邪魔されたことに怒り、セインに怒号を浴びせていた。


「黙れよ、僕の言うことを聞け」


 言葉の力だけでピシャリとリグを黙らせる。のではなく、小さな氷の棘がリグの手に刺さっていた。

 本当に細く、注射針ぐらいだったので大怪我というわけではないがそれでもそんなことするのかと、驚愕だった。

 このセインという男はどこかおかしい。


「さぁ、付いてきてくれ。」


 何事もなかったかのようにユウを城へ案内し始めた。

 そしてまず通されたのは豪華な部屋だった。

 セインによるとユウが王都で滞在中好きに使っていい部屋だそうだ。

 大きなベッドに大きなクローゼット、他にも机や椅子、花が飾られている花瓶に壁にかかった絵。全てがどことなく高級感を漂わせている。


「好きに使っていいってことは壊してもいいのか?」



 意地の悪い質問をしてみたがセインからは予想外の答えが帰ってきた。

 ユウとしては壊すことは遠慮してほしい。それなりに高価なものだから。などと帰ってくると思っていたのだが



「ああ、気に入らないものはなんでも排除してもらって構わない。この部屋ごと君にあげたようなものだからね」


 だった。

 本当に好きにしていいらしい。それほどに4属性魔法の使い手は貴重なのだろう。

 とりあえずセインに礼を言い、ユウは着替えた。

 セントラルで用意してもらった自分用のタキシードに着替えた。フィアナはそのままでもいいと言われたのでそのままだ。



「それじゃあ行こうか。」


 そういう時この広い城内を迷うことなくスタスタと歩き、大きい扉の前に着いた。すると扉が勝手に開き、明るい照明が整ったホールに出た。そこには派手で豪華なドレスに身を包んだ婦人や、タキシードでキチッと決めている男たちがテーブルに置かれた料理や酒に舌鼓を打っていた。

 そして扉が開いた瞬間、視線が一気にこっちに集まったのだがユウは目をそらすこと無く、しっかりと前を向いて中に入った。


 中にいた人達は口々に話し始めた。


「あれがセイン様ね」

「後ろの子供が4属性の」

「あんな幼い子がか」

「後ろの子供はなんだ」

「セイン様は今日もお綺麗ね」

「あんな子供に何ができるんだ」


 多くの方が話をしているがなぜかユウに聞こえてくるのは否定的な意見のみだ。本来そんなことはないのだろうが現在王都を信頼していないユウにはそう聞こえてしまう。そんなものだろう。


 ホールの奥には階段があり階段は途中で左右に分かれどちらからも上に登れるようになっている。その上には王冠を被った明らかに「王」という男性が立っていた。


「ようこそ!私は精霊の国の現王!レマット・フェアリオンだ!4属性魔法の使い手ユウ君!君が来てくれたこと、実に嬉しく思う!今日はみんなも楽しんでくれ!!」


 パチパチパチパチ


 別に内容のあるスピーチではなかったのだが拍手喝采だ。

 他の者達は誰が先に声をかけるかというところでみんなチラチラとこちらを伺っているのみで誰も近づいて来ない。

 ならばとユウはこちらからと声を張り尋ねてやった。


「王に聞きたいことがある!俺には龍人の友達がいるのだが」


 まだ話の続きだが「龍人」という言葉に王はピクリと反応を示した。これは間違いなく何か知っている反応だった。


「先日非人道的な実験の被験者として捉えられ、無理矢理な薬を投与された!その研究所がこの王都のすぐ近くにある!何か知っているなら早く吐け」


 もうすでにユウは怒り出している。この質問に反応した時点でほとんど加害者決定だ。


「ふむ、どのような実験内容なのか知らないが、ユウ君が気にすることではない。龍人の友達など辞めた方がいいぞ。いずれ戦争になると殺し合うかもしれないからなぁ。ハハハハハ!」


 王が笑うと同時に辺りの奴らも笑い出した。

 ユウはだんだんと怒りが熱を持ち始め、辺りを風が吹き始めた。それはユウの感情の荒ぶりを表しており、周りの人間は違和感を感じて始めた。


「おい、お前は俺の友達を馬鹿にするんだな。それは俺を敵に回すって事でいいな?」


 辺りの食事が凍り始めた。だんだんとユウを中心に巻き起こっている風が強くなってくる。集まっていた人達は壁や柱にしがみついたり床に座り込んだらして飛ばされないように耐えている。

 だが急に風や冷気が治った。いや、止めれたのだ。ここの最高戦力、1番隊隊長セインによって。


「ちょっとユウ君。暴れてもらっちゃ困るよ、ここは親睦を深める場なんだから落ち着いて話をして欲しいな」


 ユウの魔法に無理矢理入り込み力技でねじ伏せる。やられたのは2回目だがやはりなかなか厄介な男だな。


「邪魔しないでくれ、用があるのはあいつだ」


 いきなり氷の棘がユウの首めがけて飛んできた。

 素早く反応し、炎で溶かしたのだが細いとはいえ首に刺されば軽傷では済まなかっただろう。


「あいつじゃなくて王だと言っている。これ以上の侮辱は許せないよユウ君」


 どうやら王を慕っているらしく、あの静かそうなセインが怒っている。

 お互いの魔力がぶつかり合い、ビリビリと辺りの空気が震え出した。地鳴りがし、すでにこのホールには誰もいない。セインがユウの風を止めている間に兵士たちが避難させたのだ。

 王の元へ行くならセインを黙らせるしかない。


「セイン、君は俺には勝てないよ」


 そう、魔力の量がユウは無限、セインは有限なので長期戦になったとしてもユウが負ける前にセインの魔力が切れるので負けることはない。


 だがここで時間を使うわけにはいかないので素早く終わらせる。だが殺したくはないからどうしたものか。

 ユウが考えていたのはどうやって勝つかではなく、どうやって殺さず無力化するかだった。


 今、世界的に希少な4属性魔法の使い手と精霊の国最高戦力との戦いがこの城内で始まろうとしている。










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