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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
王都編
36/40

暴走するフィアナ

 龍の国に送られるはずのフィアナはなぜか精霊の国の王都に連れていかれた。

 そこで龍化する際に発されるエネルギーに注目している研究者に薬を投与され、暴れたフィアナは研究所を破壊して出てきた。国からは龍が暴れているとして討伐依頼が秘密裏に出された。

 たまたまそれをつかまされたジン達。




 ユウがみんなを制止するが3人は自分がやられるくらいならやる。当たり前だ。

 これまでジン達が生きてきたのだがそれには当然金銭が必要になってくる。そしてそれを稼ぐ手段としてあるのが依頼だ。依頼には安全で危険な要素がないものもあるがほとんどは危険なものだ。危険じゃないなら依頼する必要があまりないだろう。

 ジン達も危険な依頼を数々とこなしてきた。だからこそのこの連携の安定感、そして雰囲気、警戒力と対応力。まさしく数々の死線を潜り抜けてきたからだ。

 生きているということはそれだけ生にしがみつく意識が強いからだ。確かに依頼をこなすことや仲間を救うことも大事だ。

 では一番大事なことはなんだろうか?


『自分のことを一番に考えること』だ


 たとえ仲間が死んだとしても無理して危険になる必要なない。自分が生きることが一番大切なのだ。

 そういうことを考えるとユウの制止を聞いてくれるかどうかはユウとフィアナ次第になってくる。



 ユウはみんなより一歩だけ前に出た。


「フィアナ、、、だよな?俺だよ。覚えてるだろ?ユウだ」

 するとフィアナはいきなり突っ込んできた。そのスピードは大して早いものではなかった。ただし、ユウにとっては。


 フィアナの突進に一番に反応したのはジンではなくサライだった。サライは矢を2本同時に放った。矢には風の魔法が付与されていてさらに加速した。矢が空気を切り裂く音が聞こえたかと思うとフィアナの右手に1本の矢が刺さった。もう1本は近くの木に刺さったのだがそれでもすごいことだ。おそらくフィアナが動き出したのとほぼ同時に動き出している。あの一瞬で風の魔法を乗せて矢を放つのは相当の腕だ。おそらくユウにはできないだろう。


「ウギャアアアアア!!」」


 右腕に矢を受けたフィアナは悲鳴を上げた。そしてターゲットをサライに変えてきた。


「おい!やめてくれ!友達なんだ!!」


「サライ!助かった。立て直すぞ!ネム!やれ!」


 ジンはユウの言葉に少し戸惑ったがすぐに立て直し、ネムに指示を出した。

 ネムは魔法使いの中でも珍しく詠唱を始めた。

 フィアナはサライの方に突進し始めたがサライは動かずにもう一度弓を構えた。今度はフィアナは龍化した右手を前にだし、矢をガードしている。距離が詰まるがサライは動かない。そして


「フラッシュ!!」


 ガキンッ!!


 サライの前に一瞬にして移動したのはジンだった。大剣を盾代わりにフィアナを受け止めた。


「ったく、前衛遣いが荒いなぁ、ひょろい君は」


 ジンの腕や額には血管が浮き出て全力でフィアナを受け止めているのがわかる。


「ひょろいじゃねえよ!」


 そういって再び弓を放とうとした。今度はフィアナは動きを止めていて距離も至近距離だ。今回は外すことはないだろう。


「死ね!」


 サライは言葉とともに殺意のこもった矢を放った。

 放たれた矢はフィアナの頭めがけて一直線に飛んで行き、命中した。


 ジン、ネムはそう思った。だがサライだけは自分が放っただけに何が起こったかよく見ていた。

 矢がフィアナにあたる瞬間に何やら黒い塊が矢の前に発生し、そのまま飲み込んだのだ。ネムはこんな魔法は使えない。となるとフィアナかユウだが答えは簡単だった。



「やめろって言ってるだろ」


 驚くほどに静かで、しかし強制力があるような言葉がユウから発せられた。その言葉の冷たさに周囲の気温が2度ほど下がったのではないかと思わされるほどだった。

 途端にフィアナの下に黒い影が広がりそのままフィアナを飲み込んだ。そのあと黒い影は龍と共に消えていった。


 そのすぐあとに氷の槍が複数ジンの真上に現れた。

 ネムの魔法だったのだが、ネムもジンもキョロキョロとフィアナを探している。闇の魔法の異世界に行ったとも知らずに。


 サライだけは違った。サライはキッとユウを睨み、いつ襲いかかられてもいいように隙のない構えをしていた。


「何をしたんだ!ユウ!」


 サライはユウを問い詰めるべく叫んだ。

 ジンとネムはこの間知り合ったばかりのユウよりもサライを信頼するのは当たり前だと言わんばかりに素早くユウに向かって構え始めた。


「フィアナを、龍を捕らえただけだ。もう問題ない」


「詳しく説明してくれないか?」


 問い詰めてくるサライに比べて静かで優しい声で聞いてきたのはジンだった。しかし構えを解くことはなくしっかりと警戒されている。


「サライがフィアナを殺そうとしたから俺が隠しただけだ。これ以上フィアナを狙おうと言うのなら俺も容赦はしない。」


 その言葉は3人に重くのしかかってきた。すぐさま天秤にかけられているのはフィアナと3人の命だと言うことを理解してしまう。それは先ほどの魔法が見たこともないものであり、さらに誰の目から見ても高度なものであると言うこと。

 幸いにも、はなから殺すつもりならフィアナとまとめてジンも飲み込んでおけばいいのだからこちらの対応次第で敵にも味方にもなるということがユウの行動から示されていた。


「わかった。これ以上俺たちがあの生き物を追うことはない。しかし約束してくれ。ユウもあの生き物をむやみに放つ事はないと」


 ジン達としては討伐もしくは撃退の依頼なのだからユウがむやみに放たないとなれば撃退したもの同じだろう。ユウとしてもむやみに放つつもりはなかったのだが、全員が納得できる点として正しいところをついていた。


 ネムが発動させた魔法、宙に浮かぶ無数の氷の槍をユウが極大な炎をもってして溶かしきった。それはほんの一瞬の出来事で氷が水になるのでなく、蒸発しきったのだ。しかし周りには暑さすら感じさせず、上がっていく周囲の気温に合わせて水魔法を常に使い、周囲の温度を下げ続けていた。短いとは言え詠唱を行い、発現させた魔法に対してユウは無詠唱の即時発動。その力量差は圧倒的でネムは杖を、ジンは大剣を、サライは弓矢を下げてしまった。もう襲わないことを約束していたとはいえ、戦意喪失してしまったのだ。


「わかった。それでいい。さっきはつい熱くなってすまなかった。でも本当にあいつは知り合いなんだ。許してほしい」


 さっきまでの緊張した空気は何処へやら張り詰めた糸が切れたかのようにユウの笑顔と言葉に緊張感はどこかへ去っていった。

 あまりの変化にネムはおろか、ジンまでも地面に座り込んでしまった。



「ハハッ!ユウお前どこでそんな魔法教わったんだ。強いとは思っていたが正直想像以上だぞ」


 ガハハ!

 と豪快に笑うのはジンだけでネムは肩で大きく息をしていた。


 こうして龍の討伐依頼は無事に完了した。

 依頼の報告と報酬だが、ユウはわがままを言ってしまったからと辞退した。3人はファストに報告しに行くそうだが馬車のところで別れ、ユウは王都へ向かうことにした。

 馬車で別れるまでネムがこちらのことを何度も見て何か言いたげにしていたが結局何も話されずにお別れとなった。



 1人になったユウは飛び上がり、道沿いに王都へ向かう事はなく、森の奥へと進んでいった。


「この辺りでいいかな」


 ユウは着地すると右足で地面を軽くふみ鳴らした。

 足が地面に触れ

 ザッ

 っと小さな音がなる。次になったのは轟音。あたりの地面がゴゴゴゴと音を立てて起伏していき、直径20メートルほどの土のドームを作り出した。


「こんなもんかな」


 そしてドームの中の地面に闇魔法を展開してフィアナを出した。


 あいも変わらず半流半人のフィアナ辺りをキョロキョロと見渡したがユウのことを見つけるとすぐさま逃げようとした。

 理性は失っているがユウに勝てないことが本能でわかってしまったのだろう。

 土の壁に向かい龍の右腕を振り下ろした。今のフィアナはものすごいスピードになっているのだが土の壁に傷1つ付けることは出来なかった。


 ユウはただの土のドームを作ったのではなく、土に常にユウを経由して魔力を流すことで高硬度の壁を作り出したのだ。


 ガツガツと何度か壁を殴り、破壊できないことを悟ったフィアナは呻き声と共にユウを睨んだ。


 窮鼠猫を噛む。とは油断していないと起こったりはしない。例えフィアナが背水の陣だとはいえユウはこれっぽっちも油断していない。その証拠にユウの身体はすでにバチバチと電気を纏った状況だった。


 ユウはすでにどう言う手段を取るか色々考えていたのだが1番可能性が高い方法でいこうと思っていた。そのためにはフィアナに近づき、触れる必要があったので突進を開始したフィアナをギリギリまで動かずに待っていた。

 そして突き出された龍の右腕を体を少しずらして左手で受け流した。



 ドクン。




 やはりフィアナと出会った時と同じ。龍人同士が触れ合うとお互いが龍人だとわかると言うもの。

 ユウがなぜわかるのかは理解出来ないがこれはつまりお互いの中にある何かが繋がる瞬間があると言うことだろう。これを利用してフィアナの内側から龍化を解く。

 これがユウが考えていた方法だ。

 正直これ以外の方法は電気ショック療法とか何の信憑性もないものばかりなのだ。


「よし」


 ユウはその勢いのまま右手を捻り上げ、フィアナを組み伏せた。半分人ということもありバランスが悪いのだろう。すぐに倒れてくれた。

 そのまま土でフィアナを拘束した。当然高硬度のものでだ。


 フィアナはうめき声をあげ、よだれをダラダラと垂らしながら暴れようとしているのだがユウの土魔法がそれを許さない。

 そんな状況になってもまだユウを殺そうと動き続けるフィアナを前にユウは悲しみや哀れみに勝る怒りが込み上げてきた。

 フィアナをこんな風にした人を簡単に殺してなるものか。とすでに死んでいる人間を憎んだ。



「フィアナ、今楽にしてやるからな。ちょっとだけ我慢してくれ。」


 ユウはフィアナの目の前に座り、フワッと優しく頭に触れた。


 ドクン、ドクン!、ドクン!!、ドクンッ!!!


 ユウの心臓が高鳴り出す。龍魔法を使った時の反動を思い出したからだ。しかしこれをやめればフィアナは助からない。ユウは強行することにした。


 フィアナとの繋がりを意識する。

 微かだがユウからフィアナへ、フィアナからユウへ流れるものを感じる。


「これかな。いくぞ、フィアナ」


 ユウはより繋がりを意識した。

 するとさっきまでうめき声をあげていたフィアナは静かになった。

 余計にユウが集中する。


 どんどんとフィアナがユウの中に、ユウがフィアナの中に入っていく。するとフィアナの記憶が見えてきた。それは極々うっすらとしていてよくは見えないのだがその中に恐怖を感じた。そしてその近くに何かフィアナのものではない、青黒く不気味なものを感じた。ユウは直感でこれがフィアナを暴走させている原因だと思い、フィアナの中で青黒い物体をかき集めた。少しでも残しては悪影響が後遺症として残る可能性を考え、これでもかと入念にかき集め、まとめるイメージをした。


 するとフィアナの龍化した部分の鱗や肉がボロボロと剥がれ落ち始めた。剥がれ落ちたものは宙を浮き、1つにまとまった。龍化していた部分の肉が全て落ち、中からはか弱い少女の腕、足、頭が出てきた。もうフィアナは人間と変わらない状況だった。


 龍化していた部分は1つにまとまると青黒いボコボコとした硬い塊となって地面に落ちた。


「はぁ、はぁ、なんとかフィアナを元に戻せた」


 ダラダラとユウは大量の汗をかいていた。手がガクガクと震え、全身に力が入らなくなってしまった。おそらくさっきの行動が無理やりすぎて集中力やよくわからないが力を使いすぎたのだろう


 ここはユウが作ったドーム内で安全だ


 その安心からユウは地面に倒れ、目を閉じたのだった。


 しっかりとフィアナの手を握って



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