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精龍の血  作者: 落ちこぼれた烏賊
王都編
34/40

龍の討伐依頼

 ユウはその日宿の中で闇の魔法を練習していたがそれ以上上達することもなかった。なんとか他に使う案を考えようとしたのだがやはり周りに被害が及んでしまっては元も子もない。

 諦めて眠りについた。


 次の日の朝早くにユウはこの街を出て王都へと向かいたかったので日が昇り始めた頃に目を覚ました。宿の料金も一日分しか払っていない。流石に時間が早すぎたのか受付には誰もいないのだが料金は先に払っているので特に問題はない。

 ユウはすばやく荷物をまとめると宿を出た。向かうのはこのフェストの街に簡易的に置かれているギルドだ。この街に入るときに3番隊の仕事について聞かれたので今はもう3番隊ではないユウが持っていていいものではないだろう。


 ギルドは宿と同じぐらいの大きさでセントラルに比べると驚くほど小さく、前に看板が出ていなかったら通り過ぎていたかもしれない。依頼も少ないし、受付の窓口も一つしか作られていない。


「おはようございます。何か御用でしょうか」


 受付の女性はこんな早朝だというのにハキハキと喋り仕事に勤しんでいた。

 こんなに小さなギルドであってもきっちりと働くことができるという証拠だろう。仲介役は何よりも信頼が大事だとされるからいいことだ。


「ギルドカードに記載されている3番隊の文字を消してもらいたいんですけど」


 頑張っている人を前にすると自分もしっかりとしないといけないという意識になる。ユウは丁寧に受付の女性に尋ねた。


「申し訳ありません。こちらのギルドはギルドカードの情報に関する仕事を請け負ってません。ここから最短はセントラルか王都ですのでどちらかのギルドで行ってください」


 少しそんな気はしていた。この建物の外見的にもそんなスペースはなさそうだったのだ。

 依頼を受けて掲示板に貼り付ける。報酬の管理ぐらいなのだろう。


「わかりました。じゃあ王都でやってもらいます。それでは」


「ちょっと待ってくれ!」


 端的に済ませ、その場を立ち去ろうとしたところを一人の男に止められた。

 その男は背中に大きな大剣を背負っており、いかにも戦士だという体格をしている。その後ろには二人の男女が立っていた。一人は引き締まってはいるが筋肉が膨張していない細マッチョな体格の男、その横に立っているのはいかにも魔法を使いますよと言わんばかりの帽子を目深にかぶった長髪の女性。紫色のローブをまとっているので体格はどうかわからない


(いや、俺は何故女性の体格を評価しようとしているのだろうか)


「あんたなかなか強そうだな。俺たちと組まないか?ちょうど仲間を探していたところなんだ。」


 悪い人ではなさそうだ。第一にユウのことを坊主だったり子ども扱いしていないところがいい。

 しかしユウはこれから王都に向かうことになっている。そんなに重要ではないことに時間を割くつもりはない。


「すまない。俺はこれから王t」

「龍の撃退か討伐なんだが」


 龍だと?ユウは一気に興味をそそられた。龍といえばフィアナと別れてからそんな話は聞かなくなったが精霊の国と龍の国の国交は一時的とはいえ途絶えている。精霊の国に龍が存在しているのだろうか。


「その話、詳しく聞きたい」


 ユウはまんまと話に乗っていった。

 今は早朝で飲み屋も空いていないのでギルド内に一つ置かれたテーブルに向かい合って座ったユウと男たち。


「まずは話を聞いてくれてありがとう。俺の名前はジン。この魔法使いがネム、それでこっちのひょろい男がヒョロイだ。」


「誰がヒョロイだ!サライだ。よろしくな」


「ああ、よろしく。俺はユウ、魔法使いだ。」


 ユウはこれまでの丁寧な態度を改め、同じ傭兵達や同業者には砕けた態度をとることに決めた。これはサラとルーシアさんにも言われたことで、ユウは幼い見た目から他の人になめられやすいので言葉遣いだけでもこうするようにしたのだ。


「それで龍がいるってのは本当か?精霊の国にいるのか?」


 ユウの頭にはもう龍しかない。自分の暴走を止めるすべを見つけることができるかもしれないのだ当たり前だろう。


「ああ、依頼によると王都とここフェストの街の間から龍の国方面に向かったところに龍がいるとあった。それを討伐するかもしくは龍の国まで押し返すのが俺たちの仕事だ。龍は確かに強えが撃退だけなら出来ないことはない。報酬もいいからな」


「それで君は魔法視等級は幾つなんだい?」


 サライが聞いてきた。ユウとしては魔法師等級は隠してないので正直に第6位だと答えた。


「はは!面白いことを言うな。その年で本当に第6位だったらすごいことだけどな!」


 ジンか豪快に笑った。ユウの強さを見極めての勧誘かと思ったが実際より弱く見られているらしい。

 ユウは即座にギルドカードを出して3人に見せた。3人はユウのギルドカードをじっくりとみると魔法師等級第6位を何度も見て驚愕の顔を浮かべた。ネムに関しては顔は見えなかったのだが。


「まじか、、すまねぇ、本当に第6位だとは思わなかった。いや心強いぜ。ぜひパーティを組んでくれ!」


「3番隊だったのか」


 ジンはすぐさま謝り、勧誘を再開した。その素直さと行動の速さには感心できた。

 サライは3番隊というところに疑問を持ったようなのでそれについてはもう脱退していることを再び説明した。


「なるほどな、それでどうだ?俺たちと一緒に依頼受けてみないか?もちろん報酬は4人で均等に割るつもりだ」


 正直言うとユウの中ですでに答えが出ていた。そもそもこの旅の目的は龍の国に行き、ユウの力の暴走の原因を突き止め、制御できるならいようというものだ。ここで龍に会えるなら会いに行くに決まっている。しかしなぜ精霊の国に龍がいるのかという疑問が少しこの依頼について怪しませ、ユウの気持ちを惑わせてる。


(迷っていても仕方ないな)


「わかった!俺も入れてくれ。一緒に龍を討伐しよう」


 ユウは立ち上がりジンに向かって手を差し出した。


「よっしゃ!よろしくな!」


 がっちりと握手を交わした2人は再び席に着きこれからの動きについて話し合いを始めた。

 内容としてはすでに馬車を用意してあるので目的地までそれで向い、ジンを前衛に後方から3人でたたくというシンプルなものだった。

 本当にこれで龍を倒せるのかという不安はまだぬぐい切れていないがジン達の自信満々な表情に押されてしまった。

 そうと決まれば善は急げだ。さっそく準備をしてフェストの入り口に集合ということになった。

 ユウは闇魔法の収納を利用して必要最低限のものしか持っていないのですぐに行けると伝えると、すぐに準備してくる。と3人は走って行った。


「さて、ついに龍に会えるな。話が通じるといいのだが、、、あと殺したくはないんだよなぁ。あの3人をどう説得するか考えておこう」


 3人は30分もしないで町の入り口に集まった。

 3人とも武装を完全にしているためさっきギルドで見た時とは比べ物にならないほど強く見えた。

 しかし表情や態度は先ほどと変わらずやわらかいものだ。


「またせたな、さぁ行こうか。」


 そういうと町の入り口にある馬車置き場の一つに向かい入り口まで引いてきた。

 その馬車に4人乗り込むと御者を務める男が前に乗り馬を走らせ始めた。

 距離は大体2日ほどかかるが道中の食事はジン達が持ってくれるらしい。その道中で陣形の説明やそれぞれの得意分野を話した。


 まずはジン。

 ジンは体の大きさや見かけによらず、素早い動きが取れる、さらに身体強化をすることで大剣を自在に振り回すことができる。技を受けるというより、かわすタイプのタンクなのだろう。


 次にネム。

 ネムは水と土の魔法を得意としている。魔法師等級第4位で上級魔法を使うことはできるが出来るだけ中級で終わらせたいらしい。考古学に興味があるので龍や精霊について詳しいかも知らない。


 最後にサライ。

 サライは魔法師等級と騎士等級どちらも持っている器用な男だった。得意なことは弓なのだが弓も騎士等級に当てはまるらしい。


 そんな話をしながら馬車に揺られ野宿をし2日目に道の途中で馬車は止まった。

 馬車で進めるのはここまででここからは森に入るため、徒歩になる。

 御者に礼を言い、ジン達は金を払った。ここに来るまでの料金はすでに払われているのでこれは帰りにここからフェストの街に送ってもらうための料金だそうだ。なのだ御者はここで1日〜2日ここで野宿することになるので少し高いがジン達が払ってくれた。



「よし、ここからは集中していくぞ。どこにいるわからねぇからな」


 ジンの言葉に頷いた途端にジンとネムとサライの雰囲気がピリついた。さっきまでの柔らかい表情や態度はどこへ行ったのか、今は完全武装し命をかけて戦う戦士の目をしている。

 ユウはこの辺かな少し気圧されそうになったが尊敬もした。これはそんな簡単に体得できるようなものではなく、これまでの多くの経験から 体が自動的にそうなったのだろう。

 いいパーティだと思った。


 先に打ち合わせしていた陣形で森を進む4人のパーティは特になんの問題もなくどんどん遠くへ進んでいった。

 途中、静止が支持されたが猪程度の動物が草陰から出てきただけで龍はまだ見えていない。


 その調子で順調に進んでいったがサライがあることに気がついた。


「ジンこれを見ろ」


 サライが指差したのは乱暴に腹の肉を噛みちぎられている猪の死体だった。


「みんな!警戒しろ。この辺りに猪を食べるような奴はいないはずだ。龍の可能性がある!」


 あたりを警戒し始めた時だった。ジンの前方奥の木の左側から強靭そうな爬虫類の手が見えている。



「グウォオオオオオ!!!!」


 あたりの空気がビリビリと振動するほどの咆哮を発して現れたのは異様な生き物であり、ユウはどこかで見たことがあるものだった。


 右手、首から上、右足、が龍と呼べる強靭なトカゲのようなものなのだが左足や身体の一部、左手は人間のそれなのだ。

 口からは涎がダラダラと垂れておりその目には4人のうち誰を見ているのかわからないがおそらくみんな『自分が見られている』と感じただろう。それだけの迫力がある。


 大きさも歪なもので人間の部分は子供のような大きさなのに右足、右手頭部を見るに全長4メートルほどはあるだろう。明らかにその部分は龍と言える。


「なんだこれは!!!お前らとりあえず打ち合わせ通りだ!いくぞ!!」


 キッ!と前に現れた龍のようなものを睨むジン。

 しかしそれを止めたのはだれでもないユウだった。


「待ってくれ!!この龍はもしかしたら知り合いかもしれない!少し時間をくれ!!」


 ユウにはその龍化した右腕や人間の左手に見覚えがあった。

(あいつに触れればわかるはずだ)


 ユウの目にはその目の前の歪な生物は龍化に失敗したフィアナに見えていた。


 あの時を思い出す。


 ユウの心臓がドクンドクンとなり、自分自身に恐怖しているのがわかる。


 しかしそれどころではない。ついこの前まで一緒に旅をしていた仲間がおかしくなっているのだ。


 ユウは速くなる心臓の鼓動を感じながら一歩ずつ前に進んでいった。



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